MaaSとは、Mobility as a Serviceの略で、運営主体を問わず通信技術の活用により、マイカー以外の交通手段による移動を1サービスとして捉えシームレスにつなぐ新たな移動手段の概念です。AOSデータ社は、MaaSをより安心して利用できるよう、リーガルテクノロジー(自動車フォレンジック)で貢献します。
自動車フォレンジック関連サービス(Related forensics services)
AOSデータ社の自動車フォレンジック関連サービスは、予期せぬインシデントが起きてしまった場合、事後対策として車載デバイスやメディアなどから、お客様の必要とされるデータの抽出・解析調査・レポーティングを迅速に行うサービスです。
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Impressions:6月13日 6月4日の午後11時ころ、韓国釜山市の南海高速道路のトールゲートを通過中であった現代自動車(Hyundai)の「IONIQ 5」が緩衝具に突っ込み火災が発生した。消防隊が午後11時15分頃現場に到着し、消火作業を行ったが、同車は全焼し乗員2名は車外に脱出出来ず、死亡した。監視カメラの映像からは、車両が衝突から約3秒で炎に包まれたと聞く。同車は2021年2月に現代自動車が公開した中型のクロスオーバーEVだ。衝突後、バッテリーの温度が一気に高温(約800℃とされる)になるバッテリー熱暴走が起きたものと思われる。ちなみに800℃はどれくらいの燃焼温度か?というとたばこの先端の燃焼部分(850℃)とほぼ同じ温度域だ。家庭用のガスストーブやガスコンロなどの燃焼温度は、約1700℃と言われる。火は一旦鎮火したように見えたが、再び発火、その後完全に鎮火するまで、約7時間を要したという。日経クロステックには、2021年3月5日の「EV火災事故の原因はLGの電池か、韓国企業の争いでCATLに漁夫の利」には、現代自動車の「IONIQ 5」が同グループで展開するEV専用プラットフォーム「E-GMP」(Electric-Global Modular Platform)を初めて適用した車種であることが書かれている。韓国国土交通部は「IONIC 5」の公開翌日に、自動車安全研究院と共同で実施した、現代自動車の「Kona Electric」の火災事故に関する調査結果を発表している。当時原因とみられていた電池セルの分離膜損傷に関しては、再現実験の途中であり、今のところ実験では火災が発生していないとしている。(※今回6月4日に起きたの事故原因とは異なるので、留意して読み進めて頂きたい)この際、現代自動車は、リコール関連費用の総額を1兆ウォン(当時で約954億、2022年6月現在、約1034億円)と試算し、最終的な費用は電池のサプライヤーであった「LG Energy Solution」と分担する方針を表したが、「LG Energy Solution」はこれに「再現実験では火災を引き起こさなかった」「BMS(電池管理システム)の充電マップについて、当社が提案したロジックを現代が誤って適用したのを確認した」と反論し、電池が火災事故の原因ではないとの立場をとった。この記事から読み取れるのは、韓国の国土交通部や自動車安全研究院が、バッテリーに関する事故調査を行うことが出来る立場にあるということと、再現実験の結果、EVの核心的な部品とも言えるバッテリー部分に問題があるとされた場合、自動車メーカーも電池メーカーも、それ相応のリコール費用を覚悟しなくてはならないという事実だ。また、日経の同サイトでは、EVの火災事故が世界各国で相次ぎ、衝突に伴う炎上など原因は様々だが、共通するのが事故処理の難しさあると指摘する。今回6月4日に起きたの事故と同様、一度鎮火しても、バッテリーの発熱によって再燃してしまう点が挙げられている。これの問題については米国の全米防火協会(NFPA)や米国家運輸安全委員会(NTSB)の調査結果があるようだ。米国では、2021年4月17日にテキサス州ヒューストン北部でTeslaの「モデルS」が樹木に衝突し炎上し、乗員2名の命が失われている。同年8月14日には、ドイツのVWのEV「ID.3」が、オランダで充電後に発火している。米国GMの「Bolt EV」も充電中に電池から発火した例は複数、GMは3回にわたってリコールを発表している経緯がある。これらの事故の結果、明らかになったのは、EV車両火災の危険性の高さだ。Tesla車の事故の件で消火に使われた水の量は、10万599リットルと伝わる。鎮火まで4時間を要した。通常、内燃機関車の火災の場合、消火は数分で終わる。事故の経過の記録を見ると、事故車は消防隊の現場到着後に、一旦鎮火するも、はじめの消火開始から約25分後に一度消したはずの火が「再燃」している。この件では、消防隊は事故を起こした車両を「つり上げ」、バッテリーのある車両の底面に水をかけて、再度冷却を実施している。再発火現象は、リチウムイオン2次電池(1次電池とは一度完全に放電してしまったら捨ててしまう、使いきりの電池のこと。2次電池とは充電して繰り返し使用出来る電池のこと。)は、+極と-極のショートが起こると、大電流が流れ、結果発熱し、その熱がさらに次の発熱を誘発し「熱暴走」が起こり、遂には発火を引き起こす。現在では、バッテリーが損傷した場合、「熱暴走」に至る前に電池内からエネルギーを逃がす手立ては確立されていないため、消火後の電池が再度発火に至るケースがある。発火を回避するには電池を冷却するのが最良の方法だが、電池がシャシー(車台)に搭載される車種の場合、構造的に直接の冷却が難しくなる。韓国のバッテリーメーカーである「SKイノベーション」のWebサイトを拝見すると、「SKオン」の電気自動車バッテリーの項目には、EV用、PHEV用、HEV用それぞれのバッテリーが、性能と安全に対する信頼性を最優先におき、すべての生産・供給過程において厳しい標準が適用されていることが説明されている。韓国のバッテリーメーカーである「LG Energy Solution」では、Webサイトに「リチウムイオン電池安全ガイド」を用意し、「使用と取扱いに関する注意」から始まる実に様々な注意事項や禁止事項が並んでいる。一方ジェトロ(JETRO)では、ビジネス短信で米国連邦政府独立機関の国家運輸安全委員会(NTSB)が、2022年6月1日、自動車メーカー8社*が、NTSBの勧告に従う形で、電気自動車(EV)用高電圧リチウムイオンバッテリーの火災に対する緊急ガイドの見直しを行うことに同意したと発表した。*自動車メーカーは、ホンダ、現代、三菱自動車、ポルシェ、フォルクスワーゲン、ボルボ、大型商用車メーカーのプロテラ、バスメーカーのバンホール。同勧告は2021年1月にEVメーカー22社にも提出されており、GM、フォード、トヨタ、テスラなど12社でも受け入れの検討を進めているとする。米国のEVバッテリー火災は、2017年以降、複数回発生している。最近では、GMがEV「ボルト」の火災発生後、約11万台のリコールを発表している。この勧告は、NTSBが2020年11月に発表したEV車両事故の事例分析である「安全レポート:EVリチウムイオンバッテリーの火災における緊急対応者への安全上のリスク」に基づいて行われている。EVリチウムイオンバッテリー火災時に起こる「熱暴走」の発生時に、一旦鎮火したと見えるバッテリー内部に潜む「取り残されたエネルギー」。残存すると、上記の通り再燃焼や感電事故といった「EV特有の危険性」が指摘される。自動車メーカーでは、過去「取り残されたエネルギー」の処理方法や、緊急時の対応要員(鎮火に当たる消防士や車両の牽引者など)が、晒されるリスクに関する情報が扱われていなかった。また連邦政府においても、現行の安全基準にバッテリー搭載車の高速で被害の大きい衝突事故に関する対応を盛り込んでいないことから、NTSBは、メーカーや安全基準を所轄する機関である、NHTSA(米国運輸省道路交通安全局)に対し、ISOやモビリティの専門家を構成員(約9万人)とする米国の非営利団体、SAEインターナショナルの定める基準に基づき、緊急ガイドや査定基準を作成するよう求めていた。NTSBは全米防火協会や、車両の牽引に携わる業界団体等に、同団体が提案する具体的な安全対策の実行などを促しているとする。日本国内における状況はどうだろう。国交省によると、平成21年度における自動車メーカーから、同省に報告された自動車の不具合の事故・火災情報(事故171件、火災1,053件)のうち、バッテリー付近から出火した車両火災の情報は、98件あり、要因別では、バッテリー交換作業中:28件、後付け電装品を不適切に取り付けたと推定される火災:28件が二大要因となっているようだ。このため平成22年度に当該事象に着目し、火災発生に至るメカニズムなどの調査を行い、ユーザー等への注意事項をとりまとめたとしている。翌平成22年の事故・火災情報の件数は、1,202件(事故193件、火災1,009件)だった。現代自動車は、現在ホームページ上で「IONIC 5」と「NEXO」2車種について、緊急時対応マニュアルを掲出している。「IONIC 5」のマニュアルは22頁あり、マニュアル中には、「緊急時の対応」「ロードサイドアシスタンス」が示されている。「緊急時の対応」の項目中、車両の火災>消火活動の項目には、リチウムイオンポリマー電池には、300℃ F/148℃を超える温度にさらされると、流出、発火、火花を発生させる可能性のあるゲル電解質が含まれていること、フレア燃焼効果で急速に燃焼する可能性があること、高電圧バッテリーの火災が消火されたように見えた後でも、新たな火災または遅延火災が発生する可能性があることなどが、明示されている。対処として、赤外線カメラを使用し、消火活動を終了する前に高電圧バッテリーが完全に冷却されていることを確認すること、バッテリーが再着火するリスクがあることを常に二次対応者に通知すること、高電圧バッテリーを危険にさらした火災、水没、または衝突を起こした車両を保管する際は、周囲50フィート以内に物品のないオープンエリアに保管することなどが、記載れている。また、バッテリーが燃焼すると、フッ化水素、一酸化炭素、および二酸化炭素ガスが放出される可能性があるとし、NIOSH/MSHA承認のフルフェイス自給式呼吸器(SCBA)と完全保護具を使用する必要があることにも言及がある。「高電圧バッテリーの損傷と液漏れ」の項目には、高圧バッテリーアセンブリーは、車両のシャーシ(車台 *前述のシャシーと同義)に、しっかりと取り付けられた頑丈な金属ケースに収められており、この構造は、深刻な衝突事故などが発生した場合でも高電圧バッテリーアセンブリーの損傷を防ぐのに役立つこと、このセクションでは、緊急時対応者に、損傷した高電圧バッテリーアセンブリーまたはゲル状電解液の流出の深刻さを軽減する方法に関する情報を提供しますが、そうなる可能性はほとんどありません、と記載されている。続く項目にも、対処時の注意や装備、刺激性物質への注意等が並ぶ。日本においても急速なEV普及に際して、様々なメーカーのバッテリー搭載車により、路上で同様の事故や火災が起こる可能性は否定できない。バッテリーについては、保証内容や急速充電器の普及などの話題が先行しがちだが、安全技術が「EV特有の危険性」を完全にコントロールできる域に達するまで、管轄省庁やメーカー、自動車関係機関、メディアなどは、消費者や緊急時の対応要員に、有事の「危険」に対する意識を啓発して行く必要がある。
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