1月31日 自動運転における要と言われる技術は幾つかあるが、その一つが「高精度3次元地図データ」と言える。現在、国内の各所で自動車をはじめ、鉄道、船舶、ラストワンマイルを担う様々な小型モビリティ、配送用モビリティ、ドローンの飛行などで実証実験が進んでいるが、多くの実験で必要とされるのが「高精度3次元地図データ」「3次元点群データ」だ。しかし、現状は自動運転技術を開発する団体が改めてコースの地図作りからスタートするケースが大半と言えるのではないだろうか。実証実験の目的や性質により、どこまでの精度が必要なのか、何をデータ化出来ればよいのかは異なるものと思われるが、何をさておき、国内の実証実験のペースを上げるためには地図データである。DMP(ダイナミックマップ基盤株式会社)は、そのような背景からオールジャパンでの協力体制を築き、よりスムーズな「高精度3次元地図データ」を整備・提供する使命を担った会社だ。同社の高精度3次元地図データは、2017年にGMの「Super Cruise」に世界で初めて採用され、昨年ホンダからリース販売された「レジェンド(LEGEND)」に搭載された「Honda SENSING Elite」や、日産の「Pro PILOT」、トヨタの「Advanced Drive」などにも採用されている。そして同年4月には高速道路と自動車専用道路から一般道へ整備路線を拡張したHDマップを導入している。ホームページでは、2020年度現在高速道路・自動車専用道路でカバーされたのは、31,777km、2024年度にはこれらに一般道路を追加し、約130,000kmまで地図を整備・拡張するとしている(*2021年3月31日時点での計画)。事業内容としては、日本と北米向けで異なるHDマップのフォーマットの統一や、高度な位置補正技術を用いたモービルマッピングシステム(MMS)で各道路を計測、統合しそれらを高精度3次元点群データに仕立てる等を行っている。同社は、2019年に米国のUshr(アッシャー)を買収、自動化技術を全面的に導入することで、製造コストの低減を図っている。この技術により、データのユーザーとなる自動車メーカーでは導入ハードル、車両の開発コストが低下し、開発効率が向上する筈だという。また当初DMPとUshrでは、異なるフォーマットでデータを提供していたが、これらを統一させ、さらに車両開発期間の短縮も狙う。MMSを計測車両に搭載するには、1台およそ1億円のコストがかかるという。DMPでは10台前後の車両を使用して道路の計測を行っている。システムを構成するのは、GNSS、ジャイロセンサー、磁界センサー、気圧センサーなどを備えたIMU(慣性計測ユニット)、全方位カメラ、LiDARなどのレーザー計測機器、積算走行距離計(オドメーター)を検出するセンサー、車内にも各装置をモニターする複数のPC、モニター等々。一般的には、これらに人件費、車両本体、車両燃料代、車両維持費なども発生する為、地図の作成には相応の投資や人材が必要となると言える。前述のシステムにより整備される「高精度3次元地図データ」は、衛星測位による位置補正データ、計測による点群生成データ、これらの図化により地物化データまでを統合し「3次元一共通基盤」を創り上げることで、実現できる。これらの技術支援を行うのは、三菱電機やパスコ、ゼンリン、アイサンテクノロジー、インクリメントP(現:ジオテクノロジーズ)、マップスターなどだ。DMPの現在資本は1億円だが、出資企業は株式会社INCJ(産業革新機構から2018年9月に新設分割)や三菱電機、JII(ジャパン・インフラストラクチャー・イニシアティブ)、三井物産、SBIインベストメント、ゼンリン、パスコ、アイサンテクノロジー、ジオテクノロジーズ、トヨタマップマスター、TGVest Capital Inc.、三菱UFJキャピタル、みずほキャピタル、いすゞ自動車、スズキ自動車、SUBARU、ダイハツ工業、トヨタ自動車、日産自動車、日野自動車、本田技研工業、マツダ、三菱自動車工業などで、2017年の6月に発表された「自動走行システム向け高精度3次元地図データの提供に向けた事業会社化について」では、出資受け入れ後の資本総額は40億円となっている。*出資比率の筆頭は産業革新機構(33.5%)。電機・地図・測量会社と自動車会社が共同出資し設立されている。自動走行分野において最終的なユーザーとなるのは上記の自動車メーカーと、統合データにさらに必要な個別データを追加する等して利用する「自動車メーカー以外」の活用者だ。今年1/14のニュースリリースによれば、DMPと東京海上日動火災保険㈱長野支店は、1/17(月)~長野県飯山市において「除雪支援システム」の実証実験を行っている。従来の除雪は各地の道路事情に長けた除雪車のオペレータが担っていたが、近年オペレータの高齢化が進み、雪のない時期の道路状況のビデオやストリート・ビューやGPSガイダンスを利用した除雪作業に切り替えたものの、ノウハウの伝達には限界があるため、新たに「高精度3次元地図」と自己位置推定が可能な「PTK測位」に基づいた位置情報を元に、現場周囲の「構造物を見える化」することで、構造物との接触を避けた安全な除雪作業の導入を試みる。将来的にはオペレータなしの完全自動運転による除雪作業を目指す。本実験で利用されたシステム構成は、ソフトバンクの高精度測位サービス「ichimill」の「GNSS受信機」「GNSSアンテナ」、画面表示用のタブレットだけで、自動運転向けに整備した「高精度3次元地図データ」を流用し、且つシンプルな構成で「低コスト化」を実現したものだ。各地でレベル4の声が聞こえ始めた日本。急ぎ、完成車メーカーにも、実証実験等でも必要とされる「高精度3次元地図データ」「3次元点群データ」の量産(全国一般道のカバー)に入らなければならない。量産を実現させる為には、地図作成コストの削減とシステムの簡易化・効率化、各所にある地図データの集約に注力することだ。
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自動運転AIチャレンジ、競技結果発表…国内外から164チームが参加 他
1月28日 テスラのCEOであるイーロン・マスク氏は、2020年の7月~9月期の決算発表において、「今後、自動車事業のバリューの30%~40%は保険事業になるだろう」と発言している。同社はその後、自動車保険を「Tesla Insurance」というかたちで自社販売している。最新のニュースでは「Tesla Insurance」は米国においてiOSのWalletに追加になった(参考:App Storeプレビュー https://apps.apple.com/jp/app/tesla/id582007913)。確かに、ストア上のTeslaアプリ(バージョン4.5.0)の新機能において「Tesla保険証券所有者は保険証書をApple Walletに追加することが出来ます」との記述がある。「Tesla Insurance」は、現在アリゾナ、カリフォルニア、イリノイ、オハイオ、テキサスのTesla所有者の利用できる保険となっているが、将来的には米国の他の追加された州においても利用できるようになる見通しだ。Teslaの保険会社としての強みは、車両その物や技術、安全性、修理コストを従来の保険会社の観点や評価指標からではなく、自動車メーカーとしてのポジションを活用した点にある。自動車保険業界の潮流は、インシュアテック化(テレマティクス化)や支払可能な保険についての手続き自動化などだ。同社の保険の使い方や仕組み、スコアリングの考え方を調べてみた。この保険の利用にあたって、日本国内の自動車保険会社によくみられるドライブレコーダーなどの機器を車両に追加設置する必要はない。Tesla車は車両の特定の機能を使用して、車両のプレミアムを評価する。Tesla保険は、ポリシーを購入し、Teslaアカウントにサインインするだけで開始できると謳われている(実際は、この後の流れで「運転免許情報」「住所」「生年月日」などの詳細入力、ポリシーにドライバーや車両情報を追加する)。購入後は、確認メールが届き「テスラ保険証」が、Teslaアカウントにダウンロードできるようになる。上記のTeslaアプリからも、直接ポリシードキュメントにアクセスして、ポリシーを変更、新しい請求を送信することが出来る。申込者の保険プランは様々であり、各ドライバーの「ニーズ」と「リアルタイム運転行動」により補償レベルが変化する。「リアルタイムの運転行動を利用した保険」とは、上記の州に居住するモデルS、モデル3、モデルX、モデルYの所有者が利用できるとされ、車両内の特定の機能を使用して、ドライバーの実際の運転に基づいて「プレミアム」を評価する仕組みとなっている。利用者はクレジットや、年齢、性別、請求履歴、他の保険会社が使用する運転記録などの従来の指標ではなく、あくまでドライバーの運転行動に基づいて毎月の保険料を支払う仕組みを構築した。保険料は、運転する車両、提供された住所、運転量、選択した補償範囲、そして車両の「安全スコア」に基づいて決定される。同社は、平均的な(安全運転を志す)ドライバーは、20%~40%保険料を節約でき、最も安全なドライバーは、30%~60%の保険料節約できると謳う。*「安全スコア(β版)」は、安全率と呼ばれる5つの指標に基づいて運転行動を評価するものだ。5つの安全率とは「1,000マイルあたりの前方の衝突警告」「ハードブレーキ(急制動)」「アグレッシブターニング(急ハンドル)」「安全でないフォロー(車間距離)」「強制的なオートパイロットの解除」を指し、これらを車載センサー、オートパイロットソフトウェアを使用して、Tesla車両自身が測定する。ドライバー自身は、これら「安全スコア」の各安全率を改善することで(つまり日頃から安全運転を心がけることで)安全スコアを改善することが出来る。ドライバーに安全運転を進める国内最大のエバンジェリストである警察庁が、この評価の仕組みを取り入れたら面白い。違反者への取り締まりや、罰則の規定だけでなく、ドライバーの安全運転スコアに応じてポイントを用意し、常日頃、安全運転を心掛ける事業者や個人ドライバーに対して、保険支払いを補助するような仕組みを創設することはできないだろうか。ちなみに警察庁の「違反種別ごとの交通違反取り締まり状況(令和元年及び令和2年)」によれば、道路交通法違反のうち、車両等の運転に関する違反ワースト3は「一次不停止(27.9%)」「携帯電話等(5.4%)」「歩行者妨害(5.1%)」である。*()内は構成比。これらの違反から徴収された反則金は、交通安全対策特別交付金というかたちで、地方公共団体が単独で行う道路交通安全施設整備の経費に充てる財源として使われている。今のところ交付金の使途は、信号機、道路標識、横断歩道橋、さく(ガードフェンス、防護柵)、道路反射鏡(カーブミラー)などだ。ちなみに、警視庁の「交通安全対策特別交付金の交付に関する経理の資金フロー(令和3年度予算)」を拝見すると、交通安全対策特別交付金の歳入は612億円、内訳は「一般会計より受入」が530億円であり、「前年度の余剰金受入等」は82億円だ。歳出は530億円。内訳は交通安全対策特別交付金526億円、諸支出金等が4億円となる。差額82億円は、令和4年度の交通安全対策特別交付金等の財源になると記載されている。補助の財源とするには微力か?
「超高速での直接対決」は自動運転技術の進歩に何をもたらすのか 他
1月27日 去る1月7日、CES開催期間の最終日、ラスベガス郊外にあるラスベガスモータースピードウェイで「インディ・オートノマス・チャレンジ@CES」が開催された。参加チームは、Autonomous Tiger Racing(アラバマ州)、KAIST(韓国)、PoliMOVE(伊:ミラノ工科大学/米:アラバマ大学)、TII EuroRacing(伊:モデナ・レッジョ・エミリア大学/アラブ首長国連邦:テクノロジーイノベーション研究所)、TUM Autonomous Motorsport(独:ミュンヘン工科大学)の5団体であった。レースの主催者はESN(Energy System Network)で、「エネルギー生成、配電、構築環境、輸送など、エネルギーランドスケープのすべての側面を統合するエネルギーエコシステムを構築する」というインディアナのNPOだ。(開発する統合エネルギーソリューションにより)コスト・排出量・廃棄物の削減、影響力のある政策と、技術革新を進めるとしている。2009年4月にCentral Indiana Corporate Partnershipの子会社として設立された非営利団体だ。そのような設立の経緯もあり、2021年10月には、かのインディアナポリス・モーター・スピードウェイ(1909年に開設された世界の3大レースの1つ「インディ500」に使うコース)で史上初の自動運転車車レースを開催し、世間の耳目を集めた。主催者であるESNは、高速道路での自動運転技術の「限界打破」を狙う。近い将来、実際に高速道路上で自動運転車が走行する際には、既存の非自動運転システム搭載車がそうであるように、一度に複数台が接近し走行するシーンが想定される。高速のレースで、テスト車両を競わせることで、自動運転車(商用車)の安全性と機能向上を図り、市販車への技術的なフィードバックを目論む。ちなみにレースのスポンサーは、自動運転車向けに視覚ベースのLiDAR及び機械知覚技術で有名なLuminar Technologies社と、アラブ首長国連邦のテクノロジーイノベーション研究所であった。昨年リース販売されたホンダレジェンドの搭載する「SENSING Elite」(安全運転支援システム)のセンサー類とセンシングイメージは、ライダーセンサー×5、レーダーセンサー×5、フロントセンサーカメラ×2、ソナーセンサー×12の構成で、自車周辺360°を把握する。ホンダは「運転の疲労をなくして、ヒューマンエラーをなくしたい」として「トラフィックジャムパイロット(渋滞運転機能)」を搭載、国交省から自動運転レベル3(条件付自動運転車/限定領域*SAE準拠)の形式指定を取得している。同社のWebサイトでは、Honda SENSING Eliteの各機能の能力(認識能力・制御能力)には限界があること、高速道路や自動車専用道の本線ではない道路での使用、システムに頼った運転、運転者がシステムからの操作要求に応じない場合、思わぬ事故につながり、死亡または重大な障害に至るおそれがあると筆舌を尽くし注意喚起している。高速道路や自動車専用道本線上のあらゆる状況でアクセル・ブレーキ・ステアリング操作をするシステムではないことも明示されており、各機能の能力を過信せず、つねに周囲の状況に気をつけ、安全運転をとのメッセージと、システムから操作要求があった場合にすぐに運転操作が可能な状態を保って欲しい旨などが記載されており、安全性が増した安心と同時にシステム利用者の運転能力を主体と考え、運転を支援する「レベル3の限界」を実感する。ちなみにLuminar Technologies社の「Iris」(レーザーセンサーテクノロジーとソフトの組み合わせたフルスタック・プラットフォーム/2022年以降の量産プログラム用の低コストパッケージ)は、120°の視野角と26°の垂直視野、最大範囲を600m(10%の反射率で250m)、1cmレンジの高精度反射率、300pt/sqdegというカメラのような解像度を有し、(走行の際の)検出と追跡能力については、道路及び運転可能スペースで80m、車線マーキング150m、オブジェクト及び車両は250mまで、環境値としては、防塵・耐水についてはIP69K(ドイツ工業規格(Deutsche Industrie Normen)のDIN40050 PART9で規定されている高温・高圧水に対する保護規定)、振動に対してはISO 16750-3、衝撃に対してはIEC 60068-2-27を誇る(2022年1月 現在)。かつて、F1やダカールラリー(旧称:パリダカールラリー)など世界的権威・知名度を持つレースには、世界の自動車メーカーやユーロミルホー(ポルトガルで「ロト」を販売)、テレフンケン(独の電機メーカー)、TotalEnergies(仏:石油メーカー)、日本からはパイオニア(1988-1991)等のスポンサーがひしめいていた。時代を超え、自動車レースが自動運転車レースに変遷し「インディ・オートノマス・チャレンジ」によって再び活況を得るのか?期待したいところだ。
東京海上HD、米May Mobilityとの提携で自動運転時代の新たな保険商品を開発 他
1月26日 1月下旬発売というから、そろそろ頃合いだろう。JVCケンウッドから2カメラドライブレコーダー「DRV-MR570」と駐車録画対応電源ケーブルが同梱された「DRV-MR575C」が発売される。ソニー損保「2021年 全国カーライフ実態調査」によれば、「あおり運転対策として効果があると思うもの」との設問に対し、回答者の73%は「ドライブレコーダー設置」と回答している。「安全運転支援機能の搭載状況」の項目における「ドライブレコーダー」の搭載率は43%、「自動ブレーキ」の搭載率は31.4%だった。「ドライブレコーダー選びでの重視点」では1位が価格、2位が画質、3位は前後の映像を記録できることである。ちなみに、今乗っている車に付いているドライブレコーダーの価格は、平均23,088円だそうだ。自動車保険の調査会社から依頼を受け、事故後の調査支援サービス「自動車フォレンジック」を提供する立場から申せば、適切な投資と言える。冒頭で紹介したケンウッドのドライブレコーダーは「あおり運転」を受けた際などに、素早く録画を開始できる「緊急イチ押しボタン」が本体の底面にあり、押し下せば即座に録画が開始され、録画された映像は上書きされないイベント記録専用のフォルダに自動保存される仕組みだ。カメラは水平131度、垂直68度、対角約163度の広視野レンズを備え、F1.8のレンズが装着されており、夜間やトンネル、自車周囲などを考えても、守備範囲が広いと思われる。せっかくドライブレコーダーが搭載されていても、撮影された画像に相手が映り込まなければ意味がなくなってしまうからだ。「交通事故慰謝料ガイド」では、万が一の際、ドライブレコーダーの情報が慰謝料の金額に影響を与えるとの調査結果が公開されている。稀に事故による電源の瞬断などの理由で、ドライブレコーダー等の機器や、microSDカードなどの記録媒体に異常が生じ、必要な記録データが読みだせないケースなども散見される。或いは、記録された画像が再生・閲覧可能な状態であっても、記録された画像の角度などから、相手方のナンバーなどの識別が困難なケースなども見受けられる。データの復元、動画フレームの復元、画像の鮮明化などが可能か否かなどを追求する必要がある際は(実際にお預かりする機器やデータの状態次第ではあるが)「ドライブレコーダーフォレンジック」と呼ばれる技術が、事実究明のお役に立つ場合がある。(ご参考:https://www.fss.jp/driverecorder/)
100年に一度の大変革!自動運転の普及に伴う法整備はどうなる? 他
1月25日 昨年「VISON(https://vison.jp/)」の開村で話題に上った「三重県広域連携スーパーシティ構想」。スーパーシティ構想とは、内閣府の地方創生推進事務局『「スーパーシティ」構想について』によれば、AIやビックデータを活用し、社会の在り方を根本から変えるような都市設計の動きが、国際的には急速に発展していること、(我が国が)先行している部分もあるが、世界各国でも以下のような「まるごと未来都市」は、未だ実現していない、との背景がある。「以下のような」とは、エネルギー、交通などの個別分野にとどまらず生活全般にわたり、先端技術の実証を一次的に行うのではなく暮らしに実装し、技術開発側・供給側の目線ではなく住民目線で未来社会の前倒し実現すること。我が国にも、必要な技術要素は、ほぼ揃っているが実践する場がない。スーパーシティは言うなれば、住民が参画し、住民目線で、2030年頃に実現される未来社会を先行実現することを目指すもの。ポイントとなるのは、生活全般にまたがる複数分野の先端的サービスの提供であり、複数分野間でのデータ連携、そして大胆な規制改革を含む、実践の場と言うことが出来る。「三重県広域連携スーパーシティ構想」を構成する三重県多気町、大台町、明和町、渡会町(わたらいちょう)、大紀町(たいきちょう)、紀北町の6町は、経済産業省の「地域新MaaS創出推進事業」と国土交通省の「スマートシティモデルプロジェクト」に選定されている。係る構想の「複数分野」のうちの一つは、これらの地域住民への医療やヘルスケアの提供である。6町には高齢者の医療費高騰、公共交通機関縮小によるアクセス不良、慢性疾患者の放置による医療費の増加、地域医師高齢化に伴う中長期的な不安があり、特に医療費の高騰や、医療施設へのアクセス不良、慢性疾患未治療者の地域格差は6町共通の課題とされていた。地域自治体は住民にデータ連携によるウェルネスの創造、医療MaaS(診療・薬剤)の提供、海外からのオンライン診療の提供を提案し、必要な規制改革として医療法や医師法、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)を上げ、同時に必要な規制緩和として医師法、歯科医師法、保健師助産師看護師法、国家戦略特区規制改革メニューなどを上げた。つまり「大胆な規制改革」に当たる。これらの改革の後、住民には医療アクセス改善による疾病放置の未然防止(自助推進・互助実現)、デジタル融合に拠る地域システム(互助)実現、デジタルと自然の融合で地域共助を創造するなど、住民の暮らしや体験に変化が起こることが期待されている。また、海外からの観光客も安心して長期滞在が可能となり、観光客のサポートを充実させることも出来る。地域では医療資源を効率的に活用することが出来るようになり、デジタル連携で地域医療の概念を見直すことが出来るという。キーワードは「規制改革・緩和」だ。地域を考えて作られて来た様々な規制の枠、今この枠組みを一度取り払うことで、地域住民は様々な恩恵を享受できるようになる。医療のデータ連携、医療機関へのアクセスの確保や、多目的車両を運行させることで、訪問医療の提供が実現される。また海外医療機関との「オンライン診療」が旅行者やビジネス滞在者の「安心」を増し、地方の働き手として重要な海外長期滞在者の長期滞在や定住にもつながる。地方創生は単に「地図上の自治体管轄」と考えず、地域に協力してくれる様々な「分野」に広く門戸を開き、同時に協力を仰ぐことも必要であり、地域医療の恩恵を受益する市民自身も、マイナンバーポータル連動(オプトインデータ活用)などに理解や協力を示してこそ、早期に実現できるのではないかと思う。
交通事故データとタクシー配車システムを連携、交通事故防止に向けた実証実験開始 他
1月24日 ホンダは米国カリフォルニア州にあるHelm.aiの3000万ドルのシリーズB資金調達に投資する。目的は最先端の人工知能ソフトウェアの継続的な開発を強化するため、としている(ホンダの発表では、AI技術やコンピュータビジョン(コンピュータによる視覚情報から特定の要素を認識し、その結果から必要となる情報を提供する技術)といった領域におけるソフトウェア技術の開発強化となっている)。Helm.aiは、2016年11月に設立されたスタートアップで、ホンダのオープンイノベーションプログラム「Honda Xcelerator」(スタートアップ企業へ事業開発のリソースを提供するプログラム)を通じて、2019年からコラボレーションを行ってきた。同社は「教師なし学習」によるAI画像認識技術に強みを持つという。教師なし学習とは、AIを支える技術である機械学習の手法の一つ。入力データに対してどのような正解を導き出すかを学習させる「教師あり学習」と異なり、機械に正解を与えず学習させ、自力でデータの規則性や特長を導き出す学習方法のことだ。この投資により、Helm.aiのAIソフトとホンダの持つテクノロジーの組み合わせにより、ホンダの自律型ソリューションの研究開発に弾みが付く。Helm.aiのCEOであるVladislav Voroninski氏は、「ディープティーチングによるスケーラブルなAIアプローチが、自動運転とロボット工学の未来に独自の価値提案を提供することを更に証明していきます」と述べている。また同氏は「セーフクリティカルシステムの自動化への人工知能の適用において画期的な進歩を遂げることに興奮しています」とも述べている。自動運転システムには、大量の歩行者、車、標識、その他オブジェクトのデータが画像とともに取り込まれる。これらのオブジェクトの殆どはシステムが自分で、それらを認識出来るようラベルを付ける必要がある。ラベル付けされたデータセットが存在しない場合、教師なし学習(自己監視学習とも呼ばれる)は、ドメイン知識(または領域知識は、はっきり限定された、ある専門分野に特化した分野の知識)のギャップを埋めるのに役立つという。helm.aiのシステムはダッシュカメラからデータを取り込み、画像を処理してクラスター化し、自動的にタグ付けします。この手法を活用することで、同社はフルスタックソリューションが急勾配で曲がりくねった山道のデータをトレーニングしなくても、1台のカメラを使用してこれらの道路を運転できると主張する。一般的に「教師なし学習」では、システムの予測に偏りや欠陥がある可能性を排除することは出来ないと言われている。一部の専門家は、これらのバイアスを取り除くには、特定のバイアスを「教える」ためキュレートされた追加のより小さなデータセットを使用した「教師なしモデル」の専門的なトレーニングが必要になるという。Helm.aiの30人の従業員はバイアスの緩和策については口外していないようだが、ホンダのオープンイノベーションプログラム「Honda Xcelerator」に参加するチップ企業と自動車のTier1に加え、「いくつかのトップOEM」と協業していると述べている(https://helm-ai.medium.com/?p=14732a70046b)。ホンダが「Honda Xcelerator」で協業する企業はいくつかあるが、同社はこれまでにDrivemode、Moixa、SoundHound、ubitricityなどと戦略的な出資や買収を行っている(https://techblitz.com/svs2019-sv-honda/)。既に2021年にLevel3のリース販売を実現させ、GMや同社傘下のクルーズとともに、Level4での車両運行を目指すホンダ。また、昨年9月から栃木県宇都宮市・芳賀町のテストコースにおいて「クルーズAV」を走行させ、高精度HDマップを生成するMMSを開発している。現在、ADAS対応(死角の視認など)やあおり運転への自衛措置(記録/テレマティクス)などの潮流により、市販車へのドライブレコーダーや車載カメラの搭載率も急速に上がっている。Level4におけるカメラの搭載や画像解析の主な目的は、従来の周囲の記録や視認から自律運転システムを搭載した車両が安全に走行するための認知や判断に必要なデータ収集に遷移していく。Level4においては、自車の周囲200m以上もの広範囲の把握が求められることになるという。Level4の自律運転システムを安全に走行させるためには、高精度HDマップなどの技術に加え、今まで以上に「認知」方面でも精度向上が求められることとなる。helm.aiへの投資には、そのような背景もあるのではないかと思われる。
Autopilotで死亡事故を起こしたテスラオーナー、一般向け自動運転機能に関し初の重罪に問われることに 他
1月21日 2019年に米国カリフォルニア州で発生したテスラ「Model S」の「Autopilot」使用中に赤信号を無視して走行した結果、別の車に衝突し、二人を死亡させたリムジンサービスの運転手に対して、カリフォルニア州の検察官は、2件の過失致死罪を提起した。事故発生から調査を進めて来たNHTSA(米運輸省道路交通安全局)は、最近になり同社のAutopilotが起動状態であったことを突き止めたとしている。NHTSAは停車中の緊急車両にAutopilot起動中のTESLA車が突っ込む事例が11件発生し、17人が死亡していることから、昨年8月にTESLAに対する調査を開始している。NHTSAは、部分的に自動運転システムを搭載する自動車であっても「すべての車両は常に人間のドライバーがコントロール可能な状態にある必要がある」との声明を発表している。自動運転システムを起動中であっても、ドライバーが告発されるケースとなった。国内に目を移すと、1/22~2/4まで西新宿で、自動運転サービスに向けた実証実験が大成建設、ティアフォー、アイサンテクノロジー、損保ジャパン、プライムアシスタンス、大成ロテック、KDDI、日本信号、小田急電鉄らにより行われる。使用される車両(ジャパン・タクシー)にはレベル4相当の機能が搭載されている。車両には、自動運転システム用オープンソースソフトウェア「Autoware」、LiDARや各種カメラ、GNSS(全球測位衛星システム:GNSSはGPSを含む。人工衛星で自分の位置を調べることが出来、上空が開けていないビル街などでも十分な数の衛星からの電波を受け、自己位置を調べることが出来る。)、IMU(慣性計測装置)などが装備されているとのこと。実験では5Gとセンサーの活用により、信号情報やルート上の危険情報の連携、センサーや特殊塗料を用いたトンネル内での走行支援を行う。信号付近では、現在の信号の色と次の信号の色に切り替わるまでの残り時間を車両に通知、これにより通過直前での信号の霧代わりによる急減速や、青色に切り替わる直前に発進準備が可能となり、日差しや街路樹により信号が視認しづらい場合も、安全でスムーズな運行を目指す。交差点では右左折する際の安全性確保のため、センサーを設置、対向車や横断歩道の歩行者を検知させる。これにより車載センサーだけでは検知出来ない死角の検知を補う。急なカーブで構成される駅前ロータリーにおいても、路上に設置されたセンサーが死角の安全確認に活用される。V2I(V:Vehicle、I:インフラ)の技術も含めてだが、AutoPilotが搭載されたTESLA車の赤信号の無視を解決できる可能性を持つ技術が着々と発展する様子も伺えるが、足元では自動運転以前に「逆走による事故」なども、まだ頻発していると言える。国土交通省の高齢運転者交通事故防止対策に関する有識者会議(第4回)が平成29年5月に発表した「高速道路における逆走対策」によれば、平成28年の逆走件数は249件、内約2割が事故に至っている。75歳以上の割合は、運転免許保有者の6%であるのに対し、逆走した運転者の45%を占めるとの調査結果がある。高速道路上では、インターチェンジやジャンクション、料金所付近で起きることが多い。このため同省は、平成28年度末時点で「分合流部・出入口部」について、約7割の施設で対策を施した。本線合流部には「大型矢印路面標示」や「ラバーポール(オレンジと白のポール)」、ランプ合流部には「高輝度矢印板」、「大型矢印路面標示」、サービスエリア、パーキングエリア合流部や入口部にも「注意喚起板」、「高輝度矢印板」、「大型矢印路面標示」などを設置した。これらは高速道路出口の一般道路合流部や平面Y型交差部などにも施されている。同省はその後、平成28年11月22日~翌年2月10日まで更なる対策を募った(公募主体は東日本高速道路、中日本高速道路、西日本高速道路)。テーマは①道路側での逆走車両への注意喚起、②道路側で逆走を発見し、その情報を収集する技術、③車載装置による逆走車両への注意喚起である。①にはセンサーとLED表示板、音、光等を用いた注意喚起等、②には路側カメラ、3Dレーザーセンサー等の路側機器・路側センサーの活用、道路管制センターとの連動、③には車載機器による逆走車両への注意喚起、カーナビにより、ドライバーに対し警告等が選択されている。尊い人命を守るため、5GやV2Xの進化とともに、開発者・遠隔監視/操作者、ドライバーへの安全運転の啓蒙や、万が一の事故後の検証、開発にフィードバックされる情報の一角として「フォレンジック」も広く認知されて欲しいと願う。
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1月20日 2015年の年末にあいおいニッセイ同和損害保険株式会社は三井海上火災保険株式会社とともに「自動走行実証実験総合保障プラン」の販売開始を発表し、自動運転者の実証実験を取り巻くリスクを保証する「自動走行実証実験総合補償プラン」を共同開発している。当時想定されたリスクには、運行に関わるリスクとして、①運転者(事業者従業員)には、緊急時の操舵によるリスク(自動車保険、自賠責保険)、②事業者には、運転者が原因で事故に遭った場合、企業側が損害賠償請求を受けるリスク、整備・点検不足による事故のリスク、自動車の不具合により、事業者が損害賠償請求を受けるリスク(自動車保険、自賠責保険)、③自動車製造業者等には、自動車の欠陥が原因で事故が発生し、自動車製造業者等が損害賠償請求を受けたときのリスク(PL保険)がある。また、運行に関わるリスク以外のリスクとしては、事業者が、サービス利用に登録した個人情報の漏えいリスク(情報漏えいプロテクター/情報漏えい賠償責任保険)、各企業との提携・連携等、役員の損害賠償責任リスク、実証実験等のオペレーションミスによって発生する事故の損害賠償リスク(施設所有(管理)者賠償責任保険)がある。2社はこれら保険以外にリスク評価コンサルティング(予めリスクを低減させるサービス)も用意した。およそ5年後に当たる2020年3月には、自動車事故が起きた際、フォレンジックの技術を用いた原因調査の概念が加わり、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社はグループのあいおいニッセイ同和損害調査株式会社に業界初となる「画像解析フォレンジック」が本格導入されている。リリースを拝見すると、テレマティクス自動車保険が開発されたことや、テレマティクス保険を提供する中で得られるデジタルデータ(運転挙動データ、ドライブレコーダー動画)を活用し、万が一の際にも事故事案の解決を迅速かつ適切にサポートする体制が構築され、サービス化された様子を伺うことが出来る。また、昨今事故の原因調査の場面において、ドライブレコーダー動画等のデジタルデータを重要な証拠として取り扱うケースが増加していることが紹介されている。話は陸から海へと移るが、日本財団では「MEGURI2040プロジェクト」が進められている。このプロジェクトは、無人運航船の実証実験を成功させることにより、この分野の技術開発への更なる機運を醸成、日本の物流及び経済・社会基盤の変革を促すとともに、当該分野の技術開発を支援する。背景には、内航船員の急速な高齢化や、国内に約400あるとみられる有人離島の生活航路の便数不足や離島航路の維持、さらにヒューマンエラーにより引き起こされる海難事故への対処などがある。また実証実験を通し、関連分野の技術力向上、無人運航船に係る国際基準化・標準化の先導、無人運航船への社会受容度の向上などが期待されている。プロジェクト名には、無人運航の実現により流通、人、コスト、交通などの循環が改善し、ひいては日本の循環が良くなって欲しいとの願いが込められている。国内では、これまで自動車を中心に鉄道や産業機械方面での無人化(自動運転化)が活発に進められているが、海運関係については船陸間の通信環境の整備や、障害物の回避技術、経済面(開発費が莫大)などの事情があり、無人運航船の開発は足取りは重かった。しかし、IoTやAI画像分析技術などをはじめ世界的に高い水準の技術を保持していることから、技術を持つ複数の企業の連携も進み始めている。日本海洋科学など29社が参加する「無人運航船の未来創造~多様な専門家で描くグランド・デザイン~」や、三井商船など7社が取り組む「内航コンテナ船とカーフェリーに拠る無人化技術実証実験」、ITbookホールディングス他4社・団体が取り組む「水陸両用無人運転技術の開発~八ッ場スマートモビリティ~」、丸紅他3社・団体が取り組む「横須賀市猿島プロジェクト」、新日本海フェリー、三菱造船の「スマートフェリーの開発」などのコンソーシアムが立ち上がり、新たな装備やシステム、技術の開発が進む。2021年11月現在、各陣営では2021年度末の実証実験に向け、新たな装備やシステム、技術、仕組みを開発している。今回の実証実験の特徴は、船舶交通量の多い海域の航行、長距離航行、大型船を用いた世界初の試みとなるという。1/17に本プロジェクトの一環として、大型フェリー「それいゆ」を活用し北九州市の新門司~伊予灘の海域(約240km)で、日本財団と新日本海フェリー、三菱造船により、無人運航船の実証実験が行われた。技術開発は船舶自動化、省力化を行う航海支援システムの開発の実績を持つ三菱造船が行い、システム全体の統括までを担当、システムの要件設定と運航は新日本海フェリーが担当した模様だ。今回使用された「それいゆ」には、赤外線カメラにより夜間でも他船検出が可能な物標画像解析システムや、自動避航機能を含む自動操船システム「SUPER BRIDGE-X」、自動化が困難な船の回頭や後進を伴う高度な自動離着岸操船システムなどが搭載されている。「MEGURI2040」の直前となる2021年9月8日から、日本郵船や㈱MTIは、イスラエルのORCA AI LTD.が開発した船舶の見張り業務をサポートする「船舶自動物標認識システム」の試作品を日本郵船グループ運航船に試験搭載し検証を行っている。これら2社は2021年11月5日から、東京計器、日本海洋科学、古野電気らと国交省の令和3年度「海事産業集約連携促進技術開発支援事業」の補助対象事業に採択された「自動運航システムの開発基盤の確立と自動運航システムの要素技術開発」を開始している。近年、世界で急速に進む自動運航船は、周辺情報の認知や避航ルートの判断、避航対応などを担う複数の機器やシステムで構成されているため、安全性や経済性などを検証し、評価する体制や方法、評価軸が複雑化しており、それらの整備が喫緊の課題となっているという。陸上の事故調査におけるフォレンジック技術(画像解析)の有用性が認知され、サービス化されるまでに凡そ5年。海上においてフォレンジック技術が認められるのはいつになるだろう。運輸安全委員会ダイジェストNo.23によれば、内航貨物船・内航タンカーが関連した事故等全体の発生件数は、平成23年が282件、平成27年が138件で半減しているが、船舶同士の衝突の発生件数は(318件、年平均63.6件)は、ほぼ横ばいで減少しているとは言えない状況と言える。(参考_https://www.mlit.go.jp/jtsb/bunseki-kankoubutu/jtsbdigests/jtsbdigests_No23/No23_pdf/jtsbdi-No23_02.pdf)
自動運転の主戦場は「物流」に、ウェイモがJBハントと提携 他
1月19日 この国には中央銀行でも、都市銀行・地銀や信託銀行、ネットバンクですらない、街中で同行の看板を見る人も殆どいないであろう巨大銀行が存在する。分類上は政策金融機関(政府系金融機関)であり、同区分に入る銀行は日本政策金融公庫、国際協力銀行、沖縄振興開発金融公庫、地方公共団体金融機構、住宅金融支援機構など。その銀行の名は、日本政策投資銀行。株式会社日本政策投資銀行法に基づき設立(2008年10月1日)された。前身は復興金融金庫、日本開発銀行、北海道東北開発公庫、旧日本政策投資銀行。現在は民営化。金融サービスとして、融資、投資、認証・独自プログラム(地域緊急対策プログラムなど)、コンサルティング/アドバイザリー(イノベーション創造サポートなど)、アセットマネジメントなどを行う。調査研究レポートなども発表しており、MaaS関連などで言えば、「観光地型MaaSの現状と展望-新常態における"観光立国"関西の飛躍に向けて-」(2021年4月_同行関西支店)や、自動運転関連などで言えば「自動運転開発をめぐる国内外の動向~北海道における自動運転技術の開発拠点化を考える~」(2017年1月_同行北海道支店、産業調査部、NY駐在員事務所)など、自動運転やMaaS開発に携わる人々にとっては大変興味深く、事業開発の参考となるレポートも発表している。同行の産業調査部は、1/28(金)に「2022年自動車業界展望~CES2022調査報告・市場動向と技術トレンド~」と題して、オンラインセミナーを行う(主催:㈱イード/有料)。講師である日本政策投資銀行 産業調査部 産業調査ソリューション室の青木室長は、昨年のトレンドは脱炭素や環境、コロナ禍後の消費者の価値観の変化、2050年を見据えた企業行動であったと考える。本年初めのCESでは、ロボティクスとメタモビリティ、VR/AR、「メタバース」が盛んに取り上げられた。2020年のキーワードとなりそうなのは「C-V2X(Cellar-V2X)*」「メタバース(デジタルツイン)」「バリューチェーンの変化」だという。* C-V2Xは通信に5Gを含む携帯電話の無線技術を利用するための規格。そして、これら3つのキーワードを支えるのは「OTA(Over the Air)」だと分析する。もう一人の登壇者は、同行の産業調査ソリューション室の前川副調査役である。同氏は、講演で「自動運転の社会実装に向けて」と題して、コロナ禍により影響・変化を受けた経済を背景に、CASEの「A」つまり、Autonomous(自動運転)周りの技術トレンドをもとに、今後の社会実装の在り方について考察する。昨年の自動車業界は半導体の供給不足や、コロナ再拡大による部品供給の制約により、OEM各社が生産調整した結果、消費者側の需要は回復したものの、供給不足に陥っているのが現状だという。その他、自動車業界に影響を及ぼすとされる要因は、米中摩擦やオミクロン株、寒波やエネルギー不足などだ。市場は、コロナの影響で拡大する巣ごもり需要によって物流の増加、ドライバー不足などに直面しているが、これらの変化は自動運転の社会実装を後押しする要因になるとも考えられている。自動運転化の波は、C(コネクティッド)やE(EV/電動化)と相まって車両価格を押し上げる結果、クルマは所有から、リースや相乗りなどシェア、サブスクリプション利用などが進むと予測されるという。自動車産業自体は、CASEにより、従来のハード中心からソフトの重要性がさらに高まる流れになると考えられている。同氏は法制面では、官民がバランスよく進めていく必要があり、インフラ整備や法整備は官、技術開発は官民が上手く連携・配分することが望ましいとしている。これらの環境を踏まえ、企業は注目すべき自動運転技術をどのように捉えたら良いのか?アナリストである前川氏は、どのような技術に注目が集まっているのかは「特許」を元にした技術価値分析が可能と考えている。従来の特許による分析は取得件数を指標にすることが多かったが、それでは技術(特許)の価値が判然としないが、特許が引用される件数や出願国の市場規模など「複数の要素に重みを付け分析する」ことで特許の価値を定量化し、さらにテキストマイニングにより「技術分野を特定・分類する」ことで、分野や技術ごとの価値や動向も明らかに出来るとしている。自動車業界、自動車関連業界における特許調査、マーケティング、投資や融資、技術開発などの面で、当社グループのTokkyo.Ai㈱の知財ポータル「Tokkyo.Ai」などの知財検索サービスが、皆様のお役に立つことができる時代が到来していると感じる。
油圧ショベルの自動運転を実証、施工中の現場に適応 他
1月18日 国内建機メーカーと言えば、小松製作所(KOMATSU_11%)、クボタ(KUBOTA_-)、日立建機(4%)、コベルコ建機(-)、海外勢では日本キャタピラー(米・キャタピラー社の日本法人_25%)。その他ではタダノ(-)、住友建機(-)、川崎重工(-)などか。*()内の数字はhttps://kikaiyablog.com/の世界の建機メーカーシェアランキング(2018年)、(-)はデータなし。少し前のデータとなるが、国内の油圧ショベルシェアは、小松製作所(28%)、日立建機(23%)、キャタピラー(18%)、コベルコ建機(14%)、住友建機(7%)、その他(10%)である。*三井住友銀行(2018年1月「国内建機業界の動向」)。小松製作所(コマツ)は、労働力不足やオペレータの高齢化、安全やコスト・後期に関わる現場課題の解決に向け、2020年から「スマートコンストラクション」に取り組む。工期短縮やムダな工程の削減を目指し、DXを推進、まずは全工程のデータ化、実際の現場とデジタルの現場(デジタルツイン)を同期させ、施工の最適化を図る。将来的には、1件の施工をデジタル化することで、複数の施工をリアルタイムに遠隔で繋ぎ、最適化を目指す。ちなみにコマツの建機の稼働管理・分析を行う遠隔システムは「Komtrax」というが、同社は、2021年7月から、新会社「EARTHBRAIN」を設立、NTTドコモ、ソニーセミコンダクタソリューションズらとプラットフォームやアプリケーション、現場の見える化のためのデバイス開発・提供を進める構えだ。これら建機の電動化や自動化により、現場の生産性向上、建機の燃費向上、稼働機械の台数削減を実現し、CO2削減に繋げたい。クボタ(KUBOTA)は、農業ソリューション事業で、データ活用と自動化を合わせた新しい農業の在り方「スマート農業」を推進、農業人口減少、今後訪れる世界の人口増加による食糧不足を農業の生産性を向上させることで解決しようと挑む。農業における情報をクラウドに収集・活用し、営農を支援する精密農業システムKSAS(クボタスマートアグリシステム)や無人作業を可能にする自動運転農機(トラクタ・田植え機、コンバイン)などを活用したスマート農業が効率的・高利益な農業経営を実現させるとしている。世界に販路を持ち、現地の課題に真摯に向き合うスタイルは健在だ。2022年1月14日に日立製作所から、伊藤忠商事・日本産業パートナーズが折半出資する「HCJIホールディングス合同会社」への日立建機の株式譲渡による筆頭株主の移動が発表されたばかりの日立建機は、道路工事やダム・空港・宅地造成などに用いる土工用振動ローラに、転圧システムの自律化を試みる。24時間365日の稼働が期待される鉱山現場などでは、超大型油圧ショベルの長距離遠隔操作や自律運転の開発とともに、ダンプトラックの自律走行システムの開発を推進している。また自律型建設機械向けシステムプラットフォーム「ZCORE(ズィーコア)」は施工現場内の人、機械、現場環境の情報を連携させ、現場全体の安全性や生産性の向上を図る。日頃メディアで目に触れ華やかとも言えるオーナーカーやサービスカーの自動運転化とは、一線を画す産業用機械の分野においても、ハイブリッド化からピュアEV化、自動(自律)化などは、利用者側となる大手建設会社とともに、日々活発に進展していると言えよう。