8月19日 愛知県は、名古屋市の鶴舞周辺にあるイオンタウン千種→JR鶴舞駅→イオンタウン千種間(鶴舞駅ルート:1.6km)と、イオンタウン千種→名古屋工業大学→イオンタウン千種間(名工大ルート:1.4km)の2ルートで、自動運転によるビジネスモデルの構築を進める。実施日程は、8/18(水)~10/29(金)まで。実施は昼間(期間中の祝日を除く水・木・金、午前10時~午後5時まで)及び夜間運行(8/14,15,20,21,22,27,28の7日間、午後8時から午後10時まで)に分けて行われる。一日辺りは7~14便の運行を見込む。この実証実験の一環として名古屋市鶴舞周辺において「都心における自動運転を利用した移動」をテーマに幹線道路を含むルートで、交通事業者が自動運転車両を運行する。本実証実験には、WILLER、名鉄バス、WILLER EXPRESS、ST Engineering、BOLDRY、名古屋工業大学、イオンタウンが参画する。実証実験は、若宮大通りなどの都心部の幹線ルートにおける自動運転車両の技術オペレーション面における安全運行の確立と、長期間の実証により、自動運転への社会受容、理解を得ることを目的とする。また車両の運行はWILLERグループと名鉄バスが担う。使用する自動運転バス車両は、茨城県境町や羽田イノベーションシティでも、実績のある自動運転シャトルバス「NAVYA(ナビヤ)」だ。衛星測位システムを用いて、自己位置を把握、センサー等で障害物を検知する。前方3m以内に障害物を検知した場合、自動で緊急停止する機能を備えるのと、常に操作者が車両を監視、危険を察知した場合は、手動モードに切り替えて走行を続行するなどの安全対策を施す。ちなみに車両は名鉄バスをイメージさせるカラーに仕上げられている。都心の鶴舞駅や名古屋大学医学部附属病院、鶴舞公園や名古屋工業大学、イオンタウン千種(ショッピングモール)付近では、人や自転車による道路の横断、幹線道路部分においては、他車の割り込みなどのシチュエーションも起こり得るかも知れない環境だ。境町や羽田のイノベーションシティといった自動運転車両にとって有利な走行環境から一転、都市部への社会実装のため、より実践に即した実証となると思われる。また、名工大の学生にとってはMaaSやCASE、自動運転などの技術を身近で触れることが出来る、またとない機会が提供されることになる。様々な面で期待の大きな実証実験だ。最後まで安全に運行され、都心部での走行における様々な課題を洗い出す機会となることを願いたい。写真提供:(公財)名古屋観光コンベンションビューロー
MaaS・CASE関連の最新ニュース(21 / 65ページ目)
令和3年度 北海道におけるMaaS普及啓発イベント開催事業に係る一般競争入札 他
8月18日 8/17に、経済産業省 北海道経済産業局が「令和3年度 北海道におけるMaaS普及啓発イベント開催事業に係る一般競争入札」を開始した。これまでの、北海道におけるMaaSの導入状況を調べるため「北海道におけるMaaS導入状況について~調査結果(中間報告)~」(2021年1月18日 北海道経済産業局 地域経済部 製造・情報産業課)を拝見した。内容は三部構成で、調査概要とアンケート調査結果、道内自治体のMaaS導入取組事例となる。調査は当局より道内の自治体や交通事業者を対象に、MaaSへの関心度や導入意向などをアンケートしたものだ。この調査によるとMaaSに関心のある自治体は6割に上り、実際に導入に取組んでいる自治体に取組みの内容や進捗状況をヒアリングしている。令和元年度の調査では、自治体(139自治体)や交通関連事業者団体(95事業者)に、令和2年度の調査ではMaaS導入に取組んでいる自治体(20地域程度)、MaaS関連事業者(5事業者)に対して調査が行われている。アンケートの結果では、地域交通・観光客向けの二次交通の課題として、路線バス事業者への補助金増加が最も多かった(石狩振興局ではデマンド交通の担い手確保、地域住民の理解が多かった)。地域交通確保のための施策として何らかの施策を講じている自治体は9割を超え、やはり「バス事業者への補助金」が最も多かった。実際に投じている予算では、「バス事業者への補助金」に次いで「コミュニティバス」が多かった。*ちなみに2次交通とは、前述の2者以外では、デイサービスバス、直営路線バス、乗合タクシーなどだ。しかし、観光客向けの二次交通確保のための施策は、8割以上が「施策なし」、講じている施策としては「レンタルサイクル」が最も多く4割を超えた。次いで「期間限定観光バス」が続く。予算の投入割合としては、観光シャトルバス(21%)が多かった。自治体に於けるMaaSの認知度は「聞いたことはあるが詳しくは分からない」(45%)、次いで「知っている」(41%)。札幌近隣の都市圏や胆振、日高、十勝では認知度が高く、反対に釧路、根室管内、留萌、宗谷管内等は観光地を有するエリアでも認知度は低かった。一方、導入済み、検討中、情報収集中の自治体は6割に上り、うち情報収集中は半数以上である。関心がないのは4割程度。MaaS導入の課題としては「導入費用」(100%)、「情報不足」(92.4%)。他方、交通事業者においては「知っている」が4割程度、事業者別では空港ターミナルビル運営事業者は「知っている」の割合が6割を超える。関心度については、6割が「関心はない」という結果だ。しかし、地域交通・二次交通の確保が新たなサービスに繋がると考えている事業者は8割に上る。MaaS導入の課題については「情報不足」「導入費用」「人材不足」が3つが大きな課題だ。オープンデータ化については5割が「対応済み」、「今後対応予定」である。これらの調査結果からMaaS導入における自治体の最大の課題は「財源確保」であり、地域住民の理解を得ることの難しさであり、現段階では他の自治体の導入事例や、国や道の支援制度等の情報の取得だ。MaaSビジネスによる自主的・長期的な収益源の確保という意識には至っていない。交通事業者の課題は、札幌圏では一定程度浸透しているものの、他地域ではあまり浸透しておらず、費用対効果などについての懸念が多い。道の推進方針や事業者にとってどのような利益につながるかが、明らかになると関心度合いが挙がることも期待される。タクシー会社やバス会社では投資額に対する効果が見えないため、二の足を踏んでいるという意見も見られたようだ。国や道庁の積極的な情報共有、ビジネス性に関する丁寧な説明が必要だ。コロナの感染状況にも拠るが、自治体がMaaSの導入効果を味見できるような「TOHOKU MaaS」のようなイベントをオール北海道で経験する、或いは「TOHOKU MaaS」を実施したJR東日本などが成果を共有する等出来たらよいのではないか?
Amazonが「NVIDIA DRIVE」採用の自動運転トラックを1,000台導入 2022年にはNVIDIA DRIVE Orinに移行へ 他
8月17日 福島県浪江町の棚塩産業団地は、3つのエリアからなる。「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」「企業誘致エリア」「福島ロボットテストフィールド」である。ちなみに「福島ロボットテストフィールド」は、ロボットテストフィールドと言いつつ、立派な滑走路を備える飛行試験、操縦訓練に使用する施設、つまり立派な飛行場である。「福島水素エネルギー研究フィールド」は再生可能エネルギーを利用した水素エネルギーシステムを、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、東芝エネルギーシステムズ(株)、東北電力(株)、岩谷産業(株)などが、同町で建設を進めて来た、10MWの水素生成装置を備えた水素製造施設である。本プロジェクトの特長は、再生可能エネルギーから水素を製造することで、CO2排出量削減を試みる。1日の水素製造量(1時間当たり1200Nm3)(Nm3は、ノルマル・リューベと読み、標準状態(0℃、1気圧)に換算した1㎥のガス量のこと)で、一般家庭、約150世帯(1ヶ月)の電力を供給、或いは560台のFCV(燃料電池車)に水素を充填できる。また、再生可能エネルギーの利用拡大を実現することである。水素需要を予測する「水素需要予測システム」と、電力系統の需給バランスを監視制御する「電力系統側制御システム」からの情報をもとに、「水素エネルギー運用システム」が最適制御を行うことで、再生可能エネルギーの利用拡大を狙う。最適制御とは、電力系統の需要より供給が多ければ、水素の製造量を増やし、反対に電力系統の供給より需要が多ければ、水素の製造量を削減するということだ。システムを簡単に述べると、太陽光発電や、風力発電など再生可能エネルギーから得た電力に、系統電力(前述の発電に火力発電を加えたもの)を加え、水素を製造、これを施設内に貯蔵する。貯蔵された水素は、前述の水素エネルギー運用システムにより、最適制御され、輸送車により水素発電(燃料電池)で電力化され、電力市場で使用されるか、水素ステーション経由で燃料電池車、燃料電池バスなどで利用される。また、工場などの産業用途で利用される。水素はメタンCH4(都市ガスの成分)などと比べると、検知し難く、最も軽い気体なので拡散し易い、燃焼可能濃度範囲が広い、着火し易いなどの性質を持つが、安全対策として漏らさない(法規に基づく適切な設計・施工、有資格者による保安管理)、検知したら止める(各所に検知器を設置、水素を検知した場合は、機器単体とプラント全体の両面で安全停止を行う)、万が一漏れても溜めない(設備に水素がたまらないよう、換気風量を確保)、着火させない(導電性の高い床素材、適切なアース接地、静電気を溜めない)など安全対策を施し利用する。同施設で製造された水素はこの7月から、いわき市鹿島町の水素供給施設「いわき鹿島水素ステーション」で一般FCV向けに供給されている。浪江版地産地消モデルが実績を積み、早期に全国展開されることに期待したい。
日立、仏タレス「鉄道信号事業」買収の全舞台裏 MaaS展開拡大へ「料金収受システム」にも着目 他
8月16日 日立製作所の鉄道システム事業におけるグループ会社、日立レールがThales S.A.(タレス社)を買収した。対象事業のの事業価値は16億6,000万ユーロ(約2,150億円)。タレス社の持つ鉄道信号関連事業(以下「同事業」)は、①鉄道信号システム、②鉄道運行管理システム、③通信システム、④チケッティング分野。同社の2020年度の売上高は、16億ユーロ。本買収で日立は鉄道信号システム事業をグローバルに拡大したい意向で、更に日立の強みとタレス社の鉄道信号関連事業のデジタル技術をかけ合わせ、MaaSソリューションのグローバルでの事業展開を加速させることを目的としている。これらの事業は買収クロージングから4年後となる2026年度に売上高1兆円、二桁の調整後営業利益率の達成を目指す。タレス社の同事業は、幹線鉄道向け信号システム、都市鉄道向け信号システム、統合通信システム、料金収受システムの4事業で構成され、うち50%はデジタル関連事業であることから、モビリティーセクターにおけるデジタル人材を豊富に抱えている。タレス社の上記の事業を細分化すると、以下のようだ。①は列車制御システム、トラフィックマネジメントシステム、進路制御システム、②は列車制御システム(CBTC:無線式列車制御システム)、路線制御システム、③は運行管理センター、監視カメラ・セキュリティシステム、人流解析システム、アダプティブ接続システム、予知保全システム、路面電車・ライトレール向け信号システム、④は料金収受システム、駐車料金決済システム、道路通行料決済システム。タレス社の幹線鉄道向けの信号システムは、近年都市鉄道で導入の進むCBTCは40か国を超える世界の国々で採用されている。2013年にはJR東日本から常磐緩行線・綾瀬~取手間のCBTC設計メーカーとして選定されたが、コスト面や導入後の保守の担い手の問題から導入が見送られ、JR東日本が開発した「ATACS」が採用された経緯があるようだ。一度はJRが海外メーカーを選定したとの事実は関係者間で話題となった。現在、日立が持つ社会情報システム(交通分野)のメニューは、https://www.hitachi.co.jp/products/it/society/product_solution/mobility/index.html を閲覧すれば一覧できる。ジャンルは、チケッティング、トランスポート、ナビゲーション、メンテナンス、その他となっているが、売り上げの比率などは別として、単純にメニュー数で見るとトランスポート分野(在来線混雑可視化システム、車両トータル運用支援システム、鉄道輸送ソリューション)のメニュー数が少ないように感じる。今後、タレス社の①②の事業がどのように、トランスポート分野を補強して行くのか見守りたい。
セイノーが「空の宅配便」 10月からドローン配送参入 他
8月13日 西濃運輸は10月から山梨県北都留郡小菅村(きたつるぐんこすげむら)で、ドローンによる配送事業を行う。遡れば、今年の1月にセイノーホールディングスは、産業用ドローンの機体設計構造技術の研究開発などを行う株式会社エアロネクストと、新スマート物流の事業化について業務提携契約を締結、ドローン配送サービスを主事業にする戦略子会社、株式会社NEXT DELIVERYを設立、セイノーが同業他社に小菅村への共同配送を呼びかけ、効率化を図るとともに、既存の陸上輸送とドローン配送を合わせたスマートサプライチェーン「SkyHub」を、エアロネクスト社と共同開発する意向を示していた。4月からは同村で全国の過疎地への普及を見据え、ドローンによる配送サービス(実証実験)を行いながら、顧客にも協力を求めたり、顧客の意見を取り入れながら、事業開始のため準備が進められて来た。村内には、「ドローンデポ」が置かれ、ここでは、既存物流により運ばれて来た荷物を一時保管するとともに、村内にドローン配送する起点倉庫の役割を担う。「ドローンデポ」からは、村内に設置された「ドローンスタンド」まで、ドローンで荷物を運び、荷受人は置き配された荷物を受け取る。(*スマートサプライチェーン「SkyHub」の概念図では、「ドローンデポ」から、自動配送車や貨客混載、ギグワーカー等による配送なども想定されている)。セイノーは起点倉庫に食品や日用品など、300品目を村内の倉庫に常備する予定。常駐スタッフが電話やLINE経由で注文を受け、品物を箱詰め(80サイズ、5kg未満)し、発送する。最も遠い「ドローンスタンド」まで、3kmを、片道7分で配送する。ドローンに積載された箱は、着陸後に自動で切り離すことが出来る。トラックによる陸送の場合、配送は週3日だったが、日用品などの買い物代行サービスは毎日注文を受けられるようになった。荒天時は、トラックでの配送も並走させる。Amazonのドローン配送サービス「Amazon Prime Air」プロジェクトは、2020年8月にFAA(米国連邦航空局)による認可を受け、実用化にめどを付けている。日本国内では、今年の6/15に日本郵便が、ドローン配送サービスの実用化に向け、国産のドローン開発を手掛ける自立制御システム研究所(ACSL)が業務提携を結び、あわせて日本郵政キャピタルは、ACSLに30億円を出資するなどしている。今後の空の配送サービスの動きにも注目して行きたい。
第2回“浜松市モビリティサービス推進コンソーシアム”オンラインセミナーを開催します! 他
8月12日 「春野医療MaaS」で名を馳せた浜松市モビリティサービス推進コンソーシアムが、この9/2_13:30~15:30にオンラインセミナー「国土縮図型都市・浜松から展望する"自動運転が実装する社会"」をテーマに開催する。予備知識として令和3年3月17日に行われた第4回会議の資料を拝見した。令和2年4月1日に設立された、同コンソーシアムの共同幹事は、浜松市、遠州鉄道株式会社、スズキ株式会社が担う。今年の7/20現在の一般会員は73団体を数える。ちなみにアドバイザリーとして、MONET Technologies が参画する。同市が国土縮図型都市と呼ばれるのは、昭和20年代から周辺の町村との合併で拡大を続け、平成15年には天竜川・浜名湖地域合併協議会が設置され、平成17年7月には12市町村が合併、新浜松市の誕生となった経緯からだ。図らずも、海沿いの都市部から中山間地域までMaaSの全ての型(都市、郊外、中山間地域)を包含することとなった。2020年9月現在、人口は80万人を超える。同コンソーシアムが今までどのような課題を持ち、解決のためどのような活動をして来たのか?背景には、国の地方都市活性化に向けた環境整備や日本版MaaSの推進があり、同市の人口減少や少子高齢化による公共交通機関の維持の必要、買い物や医療など生活サービスの維持があり、このため各種サービスとモビリティの連携により、持続可能なまちづくりが求められている。課題解決のため、スマートシティー化への取り組みの一環として、MaaSへの取り組みが行われている。同市が第一期(2020年度~2024年度)と定めた取り組みでは、重点分野として、移動診療、自家用車乗り合い(自家用有償旅客運送)、フードデリバリー、浜松テレパーク構想(車をオフィス化、駐車場等の空きスペースを利用)、ドローン活用(平時・有事)があり、基盤づくりとしてエコシステム構築(官学企民)やデータ利活用(データ利活用の勉強会)が挙がる。第一期として動き始めているのは、①フードデリバリープラットフォーム、②前述の春野医療MaaSプロジェクト、③浜松テレワークパーク構想、④アイデアソンなどだ。①などは、浜松版のデリバリー&テイクアウトプラットフォーム「Foodelix」を構築しようとの動きだ。コロナ禍でテイクアウトのニーズが増えるものの、決済や配送エリアも異なる事業者単位でのサービスを一元化しようとの動きだ。デリバリーを利用したい事業者側のノウハウ不足の解消も狙う。②は中山間地域向けに「医療を届ける」試みだ。市の奥座敷となる天竜区の高齢化、免許返納による移動困難者の存在、地域交通の衰退による通院困難、医師不足などへの対応を図る。移動診療車によるオンライン診療や服薬指導、ドローンでの薬剤配送などを実現を目指す。③はテレワークのコワーキングスペースを、机や電源付きのレンタルオフィス車と駐車場としたものだ。電源さえあれば浜松の地の利を生かし、海でも山でも駐車場でも仕事ができる。④本コンソーシアム参加企業同士での「意識共有」「関係構築」「価値創造」を促進する事を目的としている。これまで全国で行われた様々な分野・技術・業種による実証実験の成果を、いか迅速に地域に取り込むのか?自治体が先導、或いは地域企業にビジネス的なモチベーションを持って連携してもらうか、どのように収益化・持続可能なMaaSを構築していくのか?この段階において、地域「コンソーシアム」が果たす役割は大きい。
移動手段の効率性提供、青森県がMaaS勉強会 他
8月11日 青森県でもMaaSの社会実装に向け、本格的な取り組みが始まった。7/9に青森市新町のウェディングプラザアラスカ 4F ダイヤモンドで「第1回青森県地域交通デザイン講座及び第1回あおもりMaaS推進会議」が開催された。市職員向けの講座を開催し、市町村における地域公共交通のあり方の検討、地域公共交通計画の策定支援、青森県型地域共生社会実現に向けた域内交通ネットワークの形成促進を図る。また、地域公共のデジタル化の促進とともにMaaS導入への取り組みを促進、地域活性化、利用者の利便性向上などのため、「あおもりMaaS推進会議」を立ち上げ、市町村交通におけるオープンデータ化を促進する為の勉強会を開催する。また同時に専門家を招き、セミナーを開催、県内の交通事業者やIT事業者の育成にも取り組む。青森県は令和3年度「選ばれる青森」への挑戦推進事業(令和3年度当初予算及び令和2年度2月補正予算)において、5つの戦略プロジェクト、4つの分野別取組みにより、政策・施策の取り組みの重点化を図るとしている。また地域県民局では、地域別計画に掲げる地域の目指す姿の実現のため、地域別計画推進事業を実施するとしている。戦略プロジェクト中、④未来へつなぐ「地域のゆりかご」プロジェクトに交通ネットワーク形成・買物支援の推進のための5事業には、5311万の予算が付く。内容は①持続可能な地域公共交通ネットワーク構築事業、②地域交通MaaS推進事業、③商店街コミュニティ機能再生・魅力創造事業、④QOL向上に向けた生活交通MaaSモデル構築事業、⑤産直と高齢農家をつなぐ「食の輪」づくり推進事業などで構成される。青森県では、現在の「青森県地域公共交通網形成計画」の計画期間が令和4年度までとなる。現在は次期計画となる「青森県地域公共交通計画」(令和5年度~令和9年度まで)を令和4年度内に策定するための協議期間だ。この計画は、「持続可能なバス交通ネットワーク再編に向けたワーキング会議」及び「持続可能なバス交通ネットワーク再編に向けたワーキング会議地域分科会」において具体的な検討を行うとあるので、主に路線バス中心の計画と言える。国交省では、地域の多様な主体の連携・協働による、地域の暮らしや産業に不可欠な交通サービスの確保・充実に向けた取り組みを支援する「地域公共交通確保維持改善事業の概要」との資料なども出している(令和2年度の予算額で、204億円、令和元年度補正予算額49億円を加え、前年度比1.15)。青森県の「青森県地域公共交通計画」を見ると、まずは路線バスの交通網の維持・確保優先と言った印象が強い。地域的には冬期の雪の影響も大きく、実際に県民の足として身近な公共交通と言えるのは鉄道網より、バスネットワークということかも知れない。交通網はその基幹から末端までがシームレスに繋がり、地域にある程度の便数を投入できて、はじめて利便性という高い移動価値を生み出す。あおもりMaaS推進協議会が発足により、他県の取り組みなどの情報が充実することや、各交通モードへの注力度合いが平準化され、地域に見合う豊かな移動アイデアが生まれることを期待したい。
持ち主か、開発者か、メーカーか…自動運転の責任は誰? 法整備進まず導入足踏み 他
8月10日 ここ数年、国内の主要紙や経済誌が継続して、自動運転中に起きる事故の責任主体について、今後法的な整備はどのようになるのか?との話題を扱っている。「国交省 自動運転 事故 責任」「法務省 自動運転 事故 責任」などの語で検索を行うと、関連が深そうなのは、①「自動車損害賠償保障制度に係る最近の動きについて」(国土交通省自動車局 令和3年6月4日)や、同じく同局が平成30年3月に作成した②「自動運転における損害賠償責任に関する研究会 報告書」などだろうか。①では、・現在の自賠法では、民法の特則として、運行供用者(所有者等)(※1)に事実上の無過失責任を負わせている(免責3要件(※2)を立証しなければ責任を負う)が、自動運転システム利用中の事故における本制度の維持が論点。・平成28年11月より、自動運転における損害賠償責任に関する研究会において検討を行い、平成30年3月20日に報告書をとりまとめ・公表。・主要な方向性については、平成30年4月にとりまとめられた「自動運転に係る制度整備大綱」にも盛り込まれたところ、自動運転車の導入初期におけるレベル4までの自動運転システム利用中の事故については、迅速な被害者救済のため、従来の運行供用者責任を維持することとした。また、保険会社等から自動車メーカー等に対する求償の在り方等については、関係者間で検討することとした、とある。※1:運行供用者は自己のために自動車を運行の用に供する者、自動車の運行についての支配権(運行支配)とそれによる利益(運行利益)が自己に帰属する者と解釈される(自賠法第3条)(判例・通説)。※2:免責3要件とは、自己及び運転者が自動車の運行に関し、注意を怠らなかったこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと、自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったこと(自賠法第3条)。求償に係る協力体制の在り方に関する検討状況については、保険会社等から自動車メーカー等に対する求償権行使の実効性確保に係る協力体制を構築するため、作動状態記録装置に記録されるデータ項目も踏まえて、検討すべき事項(データ提供の対象となる事故の条件、ユーザーからの同意の取得方法等)を整理し、関係者が協調して検討中。令和3年4月1日に、自動運転に対応した自賠責保険約款の改訂を実施。また、ハッキングにより引き起こされた事故の損害(自動車の保有者が運行供用者責任を追わない場合)について、どのように考えるか。自動車の保有者等が必要なセキュリティ対策を講じていない場合等を除き、盗難車による事故と同様に政府保障事業で対応することが適当、とある。事故の責任主体の定義も続けて進化してきている。今後も自動運転に関する法の整備についてフォローしていきたい。報告書には見当たらないが、事故の究明には、自動車メーカー、運行供用者、保険会社等の中に警察や実際の作動記録装置の調査を行う調査会社が含まれる。場合によっては街頭に取り付けられた監視カメラの記録映像、ニュースなどでも頻繁に利用されるようになったが、歩行者が持ち合わせたスマートフォンの写真や動画なども真相究明の一助となる。IoT社会においては事故の責任主体を明らかにするための相方である「調査関係者」の概念もあわせて刷新されるべき時期かもしれない。
MaaSは超高齢社会の移動問題を解決するか~バス会社「みちのりホールディングス」の取り組みから考える~ 他
8月9日 ニッセイ基礎研究所が発表したMaaSは超高齢社会の移動問題を解決するか~バス社会「みちのりホールディングス」の取り組みから考える~を拝見した。これまで国により進められて来た地方都市型、地方郊外、過疎地型MaaSについて、現時点でもう一度深堀りすることが必要な幾つかのポイントがまとまっている。①地方ではMaaS構築以前に、交通手段自体を増やす必要がある事。デマンド交通などのサービス充実、基幹交通の自動運転化などが対策に当たる。②また丘陵地帯に開発されたオールドニュータウンに住まう高齢者・免許返納者の交通手段確保。ここでもやはりデマンド交通が解決策となる。地方における移動ニーズは、基幹交通ではなくラストワンマイルの比重が高いことが分かる。また高齢者が移動サービスを利用するにあたっては、スマホアプリやカード決済のハードルは高く、ここには電話対応(コールセンターもしくは担当者設置)が求められる。③事例には、みちのりホールディングス(以下、同社)が2019年度に日立市と近郊エリアで行ったデマンドサービスの例が挙げられている。大型バスを朝夕に1本ずつ運行し、事前に予約があった乗降所に立ち寄り最短ルートで運行、運賃は500円に設定したところ利用者は当初の予想を下回った。この事例から明確に分かるのは、通勤者は支給される通勤費用以上の交通機関利用には慎重である点だ。企業内の通勤費支給ルールにもデマンドサービスが加わる必要がある。地域企業の協力を得られれば、交通事業者は通勤者の人流という大きな収入源を得られる。④地元高齢者にMaaSを利用してもらうため、同社は地域の店舗との連携を進める。理由は、移動という手段と買い物や通院などの目的はセットだから、目的と手段のチケットをセット販売したということと、デマンドサービスなど新しいサービスの認知や普及は容易でないことから、地域の店で商品を購入する際、バスチケットと商品を一緒に変えると周知してもらった。地域に密着した小売店に協力を仰ぐというアイデアが創出・実践されている。その見返りとして、地域店舗はMaaSアプリ(ナビタイムジャパンが制作)に店舗情報を安価で登録できる(参加店が増えれば一店舗当たりの負担が抑えられる仕組みを構築している)。⑤デマンドサービスと既存交通(タクシー等)の競合問題。同社はデマンド交通の域外への移動ニーズが発生することを予測、その際はパーソナルなサービスを提供し、プレミアム料金を支払って貰う、コストが見合えばO.K.との柔軟な姿勢を見せる。(但し、この判断は同社がバス事業及びタクシー事業を包含する企業ゆえ、実現が可能ということかも知れない)。地域での新規参入事業者となるオンデマンドサービスと既存交通の棲み分けは、どう解釈されるのか?同社は末端交通と基幹交通を組み合わせた交通システムが効率が良く、それこそがMaaSの概念だと考える。地域交通事業者の業務提携やM&Aが進み、台所が統一されれば、徐々に解決される問題なのかもしれない。⑥MaaSの核であるオープンデータ化の問題。同社が1年目の実証実験で作成したアプリでは、JR東日本の運行情報も検索出来たが、2年目に作成したアプリでは、グループ内の事業者の運行情報のみとなった理由について、同社は鉄道事業者の運行データの取得に高額なコストがかかる点を挙げている。日本は、MaaSの主体が国ではなく民間企業ゆえ、交通事業者間の協力体制が課題となる。鉄道事業者側にも莫大なコストを投じて、運行データを整備してきた経緯がある。オープンデータ化とその連携は、MaaSの根幹であるため、国主導で例外として認可した自家用有償旅客輸送を担う事業者まで含め、オープンデータ化やデータ連携で事業が推進できない事業者を可視化し、急ぎ支援したい課題だ。⑦当初見えなかった収益問題。ここ数年は初期投資が必要となるが、利用者の回復や増加に至る時期も、さほど先ではないとの見方だ。収益改善のポイントは、サービスの認知・浸透。後押しする要素としては、コロナ回復経済、それに伴うインバウンドや観光需要の回復などがある。同社は地方MaaSレベルでの地元利用者の利便性向上を考え、路線バス再編などにも着手している。再編内容は、既存路線のバス停の削減による待ち時間短縮、運行本数の増加。そして、バス停からのラストワンマイルにデマンドサービスを接続させるなどの施策だ。この国のPDCAのうち、Cの機能が上手く機能するかが問われる局面ではないだろうか。
日本初、複数都市の自動運転バスを1か所で遠隔操縦 東急が実験 車両は「タジマ」 他
8月6日 静岡で東急株式会社が始動した。前回は伊豆半島から県西の静岡空港までを範囲とするMaaSの実証実験を行い、貴重な成果をレポートした。コロナ下での実証ゆえ、コロナ前の健常な旅行環境での数値的とは隔たりがあった筈だ。今回は静岡県の自動走行実証事業「しずおか自動運転ShowCASEプロジェクト」を受託している。東急の静岡への熱意が感じられる。同事業は静岡県内の各地域が直面する地域交通の運転手の人手不足や過疎地域などの高齢者移動支援を念頭に地域の交通事業者が新たなモビリティサービスを展開、社会実装することを目的としている。これまで東急は静岡県内で観光列車・観光型MaaSなどの事業を通じ、地域の活性化や防災力強化に向け、2019年より県と各種連携協定を結び、課題解決に取組んできた。2020年に伊豆高原駅付近に複数台の自動運転車を監視・操縦する「遠隔コントロールセンター」を設置、運行車両の遠隔監視や、遠隔操縦技術を検証したが、この取り組みの内容が静岡県から将来の社会実装時に向けて、最も親和性が高いと評価され、今回の受託に至ったそうだ。今回は県内の賀茂郡松崎町(過疎地)、伊東市、沼津市(都市部)、掛川市で複数都市の車両の遠隔監視、遠隔操縦を行う。目新しいのは夜間の時間帯の自動運転、遠隔監視・操縦を項目に加えていることだ。実証には、名古屋大学、ソリトンシステムズも参画する。松崎では、遠隔監視・操縦オペレーションを検証、伊東市では車両を2台に増やし、狭隘道路での自動運転車両の運行(AI監視カメラと仮設信号機を設置、自動運転車両通過時には対向車側を赤信号にする)なども検証される。沼津と掛川は、複数都市・複数台での遠隔監視・操縦とともに信号との連携(信号情報非対応の交差点では、センター方でシステムを用いて円滑な加減速を行う技術を実証)、夜間時間帯の遠隔監視・操縦が試される(掛川市は協議中)。一般車両との安全な運行を実現するため、自動運転車両の後方に案内モニターを設置、一般車両との協調が可能かを検証する(関係者と協議中)。また、自動運転車両の車内には案内システムを設け、行先や次のバス停の案内、観光情報の放送など運転手が乗車しない際の、乗客への案内の充実を図る。遠隔コントロールセンターは伊東市に設置される。車両はタジマモーターコーポレーションの車両を用い、地域の交通事業者が遠隔監視・操縦、車両の保安要員を請負う。MaaS関連事業者は年を追うごとに実証実験の内容が、より実践の場を想定した作り込みを迫られるようになる。今回の内容を見てもそのような雰囲気がひしひしと伝わってくる。今後行われる、各実証実験の技術的な区分や情報共有、調べやすい・分かりやすい共有を望みたい。