8月5日 尾道市では、地域課題の解決や豊かな市民生活の実現に向けて、地域における先端的なデジタル技術の活用、新規産業の集積、ブランド力向上を目的として、スマートシティ推進のための実証実験を募った。「尾道市実証実験サポート事業」と命名されたこの事業に、計10件の実証実験が採択された。提案された内容は、高齢者の健康増進や見守り、道路環境の美化、デジタル・トランスフォーメーションの人材育成やプラットフォームの導入、罹災証明書の迅速な発行、高齢者施設事業者向けの見守りサービス、急病の早期発見、見守り要員自身の効率化、人口非集中型地域でも、採算性やオペレーションの双方から成り立つモビリティシェアリングの検証や構築、地域コミュニティ内や、観光客向けの情報をデジタル化など多岐にわたる。その中でJR西日本と(株)ギックスが旅行者向けの観光スポットや公共交通機関のフリーパスを個人の嗜好に合わせ、AIを活用したスタンプラリーを通じ、市内の回遊や観光消費の促進、公共交通機関の利用促進を図るための個客選択型スタンプラリー「マイグル」を活用した実証実験をしている。JR西日本のアプリ「WESTER」や「setowa」に、この個客選択型スタンプラリー「マイグル」を積み、旅行者の嗜好に最適化された複数の選択肢から、オリジナルのスタンプラリーを生成することが出来る。旅行者は好みにより選択したお店で飲食をしたり、買い物をしたりするとポイントが得られる仕組みだ。旅行者自らの意思で立ち寄りたい店舗や食べたい食事や、試してみたいサービスを選択出来るので、ラリー参加率や、継続率を高めることが出来る。従来型のスタンプラリーのように参加者全員に、同じ提案内容が勧められることはない。お店側は既にある会員アプリを「マイグル」に置き換えて、新たにアプリを構築する必要はない(既存の会員アプリ内でスタンプラリーを起動させるため、WebViewでスタンプラリー画面を実装、POSシステム/ポイントシステムとAPI連携させる)。「マイグル」導入後は短期間でスタンプラリーを実施することが出来る。一昔前なら旅行者は、旅行雑誌や、ガイドブックを片手に、下調べの手間をかけ、出かけたい場所を探し、食べたい食事を探していた筈だ。そのような時代であれば、自ずと行きたい場所や店舗、観光スポットに向かうわけだが、昨今、Web上で出会った宿泊施設や、周辺情報に惹かれたり、ショップの発信する情報に触れ、旅を決めることも増えているのではないだろうか。更に尾道のような有名観光地であれば、様々なお店や観光スポットを、自分の好みに合わせて網羅することは至難の業と言えよう。現地に降り立ち、宿で一息ついた時「さあ、どこに行こうか?」、場所を選んでいるうちに一日目のお風呂や夕食というシチュエーションもあるのではないか。尾道の歴史は古く、瀬戸内海やしまなみ海道沿いの特徴ある景観とあいまって見どころは多彩だ。瞬時に好みに合った観光情報を提案してくれる「マイグル」は結構便利かもしれない。そして一度では見切れないこの街を何度も訪れたい「お得意さん」にとっても「マイグル」のポイントシステムは重宝するものとなるに違いない。
MaaS・CASE関連の最新ニュース(22 / 65ページ目)
境町の自動運転バス、路線距離を4倍に拡充…「LINE」でオンデマンドも開始へ 他
8月4日 茨城県境町の自動運転バスの走行路線が、5Km(1路線)から20km(2路線、一部の路線は共用)に延長された。本日までの累計乗車人数は、3,177人(twitter.com/abi_sakai より)。全国初の自治体導入事例である境町の事例を、やはり全国の市区町村が注目しているものと思われる。自動運行バスの運行ルート選定・設定、3Dマップのデータ収集、障害物センサー・車両設定などは、BOLDRYが、車両のメンテナンスは引き続き、マクニカが行っている。今回のリリースの目玉は、この7月から運行が開始された、東京駅~境古河バスターミナルまでの直通高速バスと自動運転バスとの接続だ。高速バスの運行は、ジェイアールバス関東と関東鉄道が共同運行する。上り便はJR京浜東北線や東京メトロ南北線、都電荒川線の接続駅となる「王子駅」にも停車させる。経路となる首都高の渋滞時に備え、乗客の混雑回避ルートを考慮したものだ。境町の人口は約2万4千人(令和3年4月1日)、東京から60km圏内ながら、町内には鉄道路線を持たない。2017年2月に開業した圏央道の茨城区間全線開通の地の利を、最大限活用し、成田空港や都心へのアクセス性を大幅に向上させた。また、もう一つの目玉は、今夏モニターを募集して行うオンデマンド運行だ。バス停を新規に10ヶ所追加の上、モニターに「LINE」を使ってバスの予約と定時便の時刻表などを配信する。また、スマホを使わないバス利用者向けには、複数のバス停に自動運転バス呼び出し用のタブレットを設置する。LINEで受け付けた予約は、BOLDRY社の自動運転車両運行プラットフォーム「Dispatcher」が捌き、各バスに最適な配車指示を出す仕組みだ。コミュニケーションツールの中でも普及率の高い「LINE」、利用者の使い勝手の改善も試みる。また境町は、持続可能性を高めるため、自動運転バスを運行する経済面の作り込みも進めている。町内で定期的に輸送している食品などを自動運転バスに混載、将来的には町内の産品を東京駅に直通する高速バスに積載し、都内に出荷する青写真を描く。モノの移動・産品販売についても、運賃外の収入源として考慮して検討している模様だ。別な観光MaaSの話題とはなるが、利用者の移動体験を「LINEミニアプリ」を導入すれば、高速バスのチケットの予約・購入、決済、経路検索、混雑状況の把握が出来たり、予定外の渋滞などで計画通りに移動できなかった利用者も、外部の地図サイトや自社の経路検索サイトと連携し、継続したアクセス情報を提供・フォローできたり、また一度、サービスを利用した顧客に「お得な情報(お土産の購入や季節ごとの産品の紹介情報など)」を配信したり、割引クーポンを発行したりも出来る。境町は、古河、坂東、常総、八千代とともに、茨城県西部の猿島台地に位置、下総国の名産「さしま茶」の産地に数えられる。ぺリーの黒船が来航した時分、地元の豪農、中山元成は海外貿易の必要性に目覚め、アメリカ総領事ハリスに接触、1859年日米修好通商条約発行と同時に「さしま茶」の輸出に成功している。キリンビバレッジの「キリン 午後の紅茶 ミルクティードルチェ 和栗モンブラン」(2017年1月24日から数量限定で発売)にも、「さしま産紅茶」として同じく茨城県産の「和栗」とともに使われた銘茶だ。1937年にアルゼンチンとの交流の証として建てられた文化施設「モンテネグロ会館」に移転オープンした「chabako」では、ランチタイム以外に緑茶の試飲をしたり、「さしま茶」や「SASHIMA CRAFT TEA」を試飲したり購入したり出来る。また、紅茶のテイスティング体験(こちらは有料)も出来る。LINEミニアプリとあわせて地元逸品の経済効果も、ぜひ実証して欲しいところだ。
自動運転トラック開発のTuSimpleが貨物ネットワーク構築に向けRyderと提携 他
8月3日 自動運転トラック開発のTuSimpleは、米国のフリート、輸送、サプライチェーン管理のRyderと提携した。Ryder社は1933年にジム・ライダー氏がモデルAフォードトラックに可能性を見出し、コンクリート運搬事業から出発した会社だ。5年後にはマイアミの飲料事業者(シャンパンベルベットビール社)が、同氏から5台のトラックをリースしたことから、同社の「フルサービスリース事業」がスタートする。1971年頃から「メンテナンスへの革新的なアプローチ」を立ち上げ、1987年にはケンタッキー州において、最先端の自動車工場をサポートする北米初の大規模なジャストインタイム供給配送システムを実装、1992年には数百のメンテナンス施設のネットワークを、コンピュータおよび自動診断ツールで繋いだ。2000年にはテキサス州ダラス/フォートワースにWeb対応の輸送管理センターを開設、地上(陸運)、航空、鉄道、海上貨物輸送の1500を超えるプロバイダのネットワークを通じて貨物輸送の管理をしている。2010年には天然ガス自動車を用いた大型トラックのレンタル及びリース事業を導入、翌年にはカリフォルニア州ランチョドミンゲスに初の天然ガス自動車メンテナンス施設を開業、大型天然ガス自動車の配送を開始した。自動運転トラック運用にあたり、Ryder社はTuSimpleのAFN(自動運転貨物ネットワーク)に必要なサポートを培って来た輸送管理のプロと言える。AFNは2024年までに米国内で展開が計画されている自動運転トラックのための配送ルートとターミナルの集合体のことだ。TuSimpleのAFNは自動運転トラック、デジタルマッピングされたルート、貨物ターミナル、顧客がオペレーションをモニターし、貨物のリアルタイム追跡が出来る。日本国内でもトヨタを中心とする大手商用車メーカーの連携が進むが、伝わってくるのは専ら自動運転車両の普及や高精度地図(いわゆるCASE視点)についての内容が多い。メーカーはメーカーゆえ、正しい潮流と言えるが、この動きを支援する足場(物流MaaS)についても、宅配事業者や倉庫事業者、陸運、海運、航空各社間などで積極的な動きが必要だ。TuSimpleが、Ryder社と提携した視点の中には、いわゆる貨物の受け渡しを行う物流センターとの意味だけでなく「調整された自動運転システムが使われているセンサーを必要に応じて搭載したりできる戦略的ターミナル」(ダウンロードサービスも含めた)との視点が存在する。日本でもこれらの機能も包含した拠点ネットワークの早期整備が望まれる。国交省に「特定整備制度概要」との資料がある。交通政策審議会 陸上交通分科会 自動車部会 自動運転等先進技術に係る制度整備小委員会報告書では、先進技術の点検整備のあり方について、現行制度を、近年の自動車技術の電子化、高度化に伴い、「現行の分解整備の対象となる装置の取り外しを伴わない整備又は改造であっても、当該装置の作動に影響を及ぼすおそれがあり、その結果として保安基準適合性に大きな影響を与えるものが増加している」と評価、今後は「国においては、自動車整備自動車が行う自動ブレーキ等の先進技術を搭載した車や自動運転車(以下「自動運転車等」)の整備について、その確実な実施を担保するため、これらの整備を行う自動車整備事業者を、「自動車特定整備事業者」(仮称)として認証することが必要である。また、使用者がこれらの事業者を判別出来るようにすることが必要である。」としている。今のところ、①対象となる作業は、自動運行装置の取り外しや作動に影響を及ぼす恐れがある整備・解像、②衝突被害軽減制動制御装置(いわゆる「自動ブレーキ」)、自動命令型操舵機能(いわゆる「レーンキープ」)に用いられる、前方をセンシングするためのカメラ等の取り外しや機能調整(※)※カメラを接続したことをECUに認識させるコーディング作業やカメラを取り外さずに行う光軸調整など、上記の取り外しを伴わない整備・解像、③ ①、②に係るカメラ、レーダー等が取り付けられている車体前部(バンパ、グリル)、窓ガラスの着脱※その後、カメラ等の機能調整が必要となるため、としている。①はレベル3以上の車に関係してくる。物流に携わる商用車から進む自動運転。普及にとっては、これらのサービス拠点をどこから配置するかも重要なポイントだ。
AI運行バス+自動運転技術の可能性とは? 日産がドコモと実証実験を実施 他
8月2日 横浜市に「I▫TOP横浜」(IoTオープンイノベーションパートナーズ)というIoT等を活用したビジネスに向けた、交流、連携、プロジェクトの推進、人材育成の場がある。市内の製造業(約6000社)、IT産業(約3000事業所)を客体として、個別プロジェクトの実施とマッチング、新ビジネスの創出や社会課題の解決、中小企業の生産性向上、チャレンジ支援などを行っている。IoT等を活用してオープンイノベーションにより、新たな製品・サービス開発に取り組める企業・大学・団体などの参画が想定されている。取り組む活動に中小企業が参画している、参画できる可能性があることが前提とされている。市はこれら団体に対してビジネス支援、マッチング、プロジェクト支援、人材育成支援、展示会出展、情報提供などを行う。この「I▫TOP横浜」の個別プロジェクトの中に自動運転PJがあり、これまでにも幾つかの取り組みが行われ、持続可能なモビリティサービスや物流サービスの実現、地域内の交通利便性の向上に向けた取組を推進している。一つ目は自動運転に関する実証実験(第一弾:H30.3、第二弾:H31.2-3)、二つ目は、まちの回遊性向上に関する横浜MaaS「AI運行バス」実証実験(H30.10-12)、AIを活用するタクシー配車アプリの実証実験(H29.9-10)。7/19(月)に日産自動車とNTTドコモは、横浜みなとみらいおよび中華街エリアにて、自動運転車両(自動運転SAEレベル2相当)を用いたオンデマンド配車サービスの実証実験を、今秋、9/21(火)から開始すると発表した。本実証では、自動運転車両を用いた交通サービス「Easy Ride®」と人工知能を活用したオンデマンド交通システム「AI運行バス®」を組み合わせて行います。進化した日産の自動運転車両と今回新たに自動運転車両の配車に対応したドコモの「AI運行バス」を組み合わせることで、将来の完全自動運転による交通サービスをイメージさせる最新技術やサービスを、今回に募集する一般モニター(約200名)に体験してもらい、その実用性を実証する。今回の乗降ポイントは23カ所に拡大され、配車予約に利用される「AI運行バス」は、自動運転車両と電気自動車両、双方に対応し、自動運転時のドアの開閉との連携や、車両の電池残量を考慮した配車制御を新たに実装している。またアプリ上では、行きたい場所を地図から直接指定する以外に、ショッピングや食事、観光などのカテゴリから目的地を選択することが出来る。モニター募集は7/19(月)~8/15(日)までとなる。横浜中華街では、9/21(旧暦8月15日)に中秋節を迎え、中華菓子店に様々な月餅が並ぶ。
定額機器利用サービス「エネカリ」 他
7月30日 少し前の話となるが、6/3に日本自動車工業会のオンライン記者会見で、豊田章男社長がEV充電インフラについてコメントしている。「数だけを目標にすると、結果として使い勝手が悪いことになりかねない」と指摘した。質疑の発端は、朝日新聞の記者からの質問だった。質問は「政府が成長戦略で2030年に急速充電器を3万基、水素ステーションを1000基に増やす方針を打ち出した。この数字をどのように受け止めているか。また、EVやPHEV、FCEVを本格的に普及させるために、どんなところに、どのように増やせばいいと考えるか?現在の課題、誰が設置を担うべきか?」との内容だ。豊田会長は一点目に政府の成長戦略を挙げ「2030年、急速充電器、水素1000基?急速充電器は15万基でしたっけ?を増やすという計画だが、設置することだけを目標にしてほしくはない」と指摘。令和3年6月2日に内閣官房、経産省、内閣府、金融庁、総務省、外務省、文科省、農水省、国交省、環境省が連名で作成した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略(案)」に基づいた発言のようだ。成長戦略案中では「充電・充填インフラの不足は電動車普及の妨げとなる。(中略)既存のインフラを有効に活用できるサービスステーション(SS)における急速充電器1万基等、公共用の急速充電器3万基を含む、充電インフラ15万基を設置し、遅くとも2030年までにガソリン車並の利便性を実現することを目指す。充電インフラの普及促進や規制緩和等により、最適な配置やビジネス性の向上をすすめるとともに、充電設備の普及が遅れている集合住宅に対する導入を促進する。(中略)また、充填インフラについては燃料電池車・燃料電池バス及び燃料電池トラックの普及を見据え、2030年までに1000基程度の水素ステーションについて、人流・物流を考慮しながら最適な配置となるよう整備するとともに、規制改革に取組む。」豊田社長は「目的はカーボンニュートラルであり、BEV(バッテリー式電動自動車)とFCEV(燃料電池を搭載した電気車)は、インフラとセットである。しかし、数だけを目標にすると、設置できる場所に設置していくということになり、結果として使い勝手が悪いと言うことになりかねない、故にカーボンニュートラルの達成速度に影響がある」ことを懸念していると思われる。充電・充填インフラの設置場所は、考えを広げれば、充電中の消費行動が期待できる人流を作る。上記案を見る限り、政府は、既存のサービスステーション(SS)の活用、集合住宅などへの設置を考えており、トヨタは「もう少し、自動車業界を当てにしてほしい」と考え、その論拠に、コネクティッド技術を使えば合理的に電動車が多く走行する場所や、集まる場所を特定でき、再エネの蓄電機能、車両・部品のトレーサビリティ&リサイクルへの貢献、CASE技術による物流効率化→社会全体の省エネ貢献、電動車の給電機能(災害貢献)等を挙げる。自動車メーカー大手4社(トヨタ、日産、ホンダ、三菱)は、国内の充電インフラ構築を担う「e-Mobility Power」にも出資する(但し、東京電力HD、中部電力なども出資)。同社の期待する充電・充填インフラの設置場所は、高速道路のSA/PA、旅先のホテルや旅館の駐車場、ショッピングセンター、集合住宅の駐車場などだ。また東京電力パワーグリッド株式会社(一般送配電事業/主に発電所から発電された電気を変電所や鉄塔、電柱を通じて顧客に届ける)では、送配電事業の安定、効率化、価値向上の観点から「ゼロエミッション(CO2の排出ゼロ)」や「レジリエンス(回復・復元力)向上」「分散化社会の構築(各地に分散する電源を活用)」につながる付加価値事業の創出にも取り組むが、その一角に分散型の電源として「EV、PHV」が想定されている。EV=再エネの発電量のばらつきを抑える蓄電池と捉えられている。同社の想定する充電・充填インフラの設置場所は、企業などの業務用車両を充電する「自社の駐車場」であり、V2H(Vehicle to Home)を想定した「一般家庭」である。これらの「使い勝手(充電ポイント)」をどのように配置してゆくか、関係業界と国が早期に足並みを揃え、普及を図る必要がある。
選手村、自動運転バスをオーストリア代表が紹介 「ついにこんなものが」と驚きの声も 他
7月29日 最近、めっきり報道の機会が減ったトヨタの「e-Pallet」。オリンピック直前に発表された東京、埼玉、千葉、神奈川の一都三県における「無観客」での実施や、コロナウイルスの感染拡大による4回目の緊急事態宣言など、「e-Pallet」関係者には辛い報道が続いた。当初選手村での選手や大会関係者の輸送を担うと宣言し、業界や大会関係者からも期待を集めていた。この期間トヨタを始めとする「e-Pallet」関係者はひたすら準備を積んできた。選手の入村も済み、ついに迎えた大会期間。7/23、豊田社長は大会会場でなく選手村にいる運行チームの現場に訪問した。「e-Pallet」は約束通り選手村を誇らしげに、そして静々と走行していた。Webには、オーストラリア代表(ビクトリア・ウォルフハルト氏)が「選手村を乗り物でめぐってみるのはいかが?」と「e-Pallet」の運行されている様子を投稿している。話は変わるが、移動スーパー「とくし丸」は冷蔵機能を備えた軽車両に生鮮食品や惣菜、日用品などを揃え、スーパーの超大型店化と郊外化による、街中のスーパー消滅で生まれた「買い物困難者」のニーズに応える移動型スーパーだ。ネットスーパーを使えるお年寄りは限られる。また弁当の宅配も、確かに便利で調理の手間も省けるが、長期利用となるとメニューや味に飽きてしまうとの現実もある。自治体などの送迎サービスを使うのも気が引けるなどの声もある。「とくし丸」の軽トラックに積まれる商品は訳400品目、約1200~1500点。おばあちゃんの「セレクトショップ」の位置を確保してきた。販売の訪問は3日に1回程度、御用聞きの役割も果たす。そしてコロナ禍においても対面販売形式を続ける。理由は顧客との関係性を重んじるからだ(トラックは屋外なので密な環境にはなりにくい)。コンビニ網の合間を縫う生鮮食品店となっている。「とくし丸」が築く、顧客との信頼関係をベースにした「ヒューマンネットワーク」は、そのまま様々な物品販売の小売りルートに転用が可能だ。そして、自治体内での高齢者の「見守り隊」ともなる。オリンピック選手村を支えた「e-Pallet」の技術の次の舞台は全国展開(社会実装)だ。この優良「ヒューマンネットワーク」を「e-Pallet」に載せ、DX(デジタル・トランスフォーメーション)させることは出来ないか?
ウーブン・プラネットがCARMERAを買収、自動運転の高精度地図作成加速へ! 他
7月28日 今春~今夏にかけて、物流MaaSや商用車の電動化におけるニュースに接する機会が増えた。世界でもCASEや自律運転は物流向けのサービスから着手される傾向が目立つ。その間隙を縫って、ロボタクシーや自動運転バスなどの話題が並走する。国内ではトヨタを旗艦とする小型商用車連合への合流も進む。当初はいすゞ、日産、先日はスズキとダイハツが艦隊に加わる意向を示した。トヨタの子会社、ウーブン・プラネット社は、7/15にCARMERA社(米国のスタートアップ)を買収、高精度地図の生成・リアルタイムの道路情報解析の技術を強化した。車載カメラや各種のセンサーで取得した映像データを解析し、刻々と変わる車線や信号、標識などの変化を迅速に高精度地図に反映させることが出来るようになる。また経済産業省は「物流MaaS推進に向けた実証事業を実施」、2021年度は①「トラックデータ連携の仕組み確立」②「見える化・混載・自動化等による輸配送効率化」③「電動商用車活用・エネルギーマネジメントの導入ユースケース等に係る検証」を推進していく。このうちの③では、ミツバが交換式バッテリーを搭載した「軽貨物EV」を制作、テストコースで配送サービスを模した運用を実施する。また、みちのりホールディングスは「小容量バッテリーのEVバス」を地方の路線バスとして活用、運行管理とエネルギー管理をエネマネシステムで行う。長瀬産業は支線輸配送業務向けに設計した「ミニカー区分の小型電動車」を宅配業務の現場で実際に運用、小型電動車の課題や現場ニーズに応じた仕様、望ましい運用システムや関連設備の在り方を検証、とある。艦隊は、艦隊を支える湾内のタグボートや燃料補給船、浚渫船、サルベージ船のような、様々な用途で利用される特殊自動車(救急車や消防車、パトカー、空港や自衛隊の特殊車両、果ては建設用の重機や自転車、電動キックボード、ベビーカー、電動車いす、LRTなどに至るまで)など、少数勢力(メーカー)も束ねて、取り込むことを忘れてはならない。少数勢力の積み重ねは、即ち見えない大勢力となり、数の力はコスト削減け、路面の詳細情報の収集を助けるからだ。
物流MaaSの推進に向けて! 他
7月27日 物流分野を取り巻く背景を簡単に述べると、運輸・郵便業は日本のGDP第6位、約5%を占める。市場規模は25億円と言われる。トラックの輸配送は国内貨物輸送の9割を占め、同市場規模(15兆円)は旅客輸送市場に匹敵すると言われる。耳に痛い話だが、市場のMaaS化で課題となっているのは環境対応(積載率低下、トンキロ当たりのエネルギー消費は悪化)、人手不足(ドライバ減少、有効求人倍率は3倍)、デジタル化(SOHOのデジタル化、業界内外データ連携の遅れ)など。市場プレイヤーと言われるのは、商用車の完成車メーカー、荷主、一般貨物自動車運送事業者、特別積み合わせ貨物運送事業者、サードパーティーロジスティクス(個別物流サービスだけではなく、物流全体を一括して請負うことで、調達から生産、販売といった物流全体の最適化・効率化の実現サービスを提供する事業者/ 3PLとも)、物流事業者(流通加工・包装等含む)、テレマティクス・サービス・プロバイダー(運送事業者向けに同サービスやコンテンツを提供する事業者)、アフターマーケットプレイヤー(正規ディーラー以外のアフターパーツ製造・販売事業者、整備等事業者)だ。プレイヤーが一体となり、デジタル技術を活用して「共通の物流MaaS」(共同輸送/混載・ルート最適化)を図る必要がある。物流のMaaS化には欠かすことの出来ない「デジタル化」だが、国内では、ここにも深刻な問題がある。商用車に搭載される商用車メーカー製のテレマティクス機器(車両稼働管理・車両運行管理)、デジタコ(法定3要素である時間、距離、車速などの記録)、後付けテレマティクス機器(保険等)、スマホアプリ(ナビゲーション等)などのデータ連携が進んでいない。一方、欧州ではダイムラーグループやトレイトングループ、ボルボグループなどが標準規格に対応したテレマティクスサービスを構築、サービスの提供が進む。経済産業省ではこれらの課題解決のため、①日本版のFMS(Fleet Management System)標準とコネクタの確立、複数OEMのトラックデータを収集、運用管理(API標準規格化)確立、これに基づく統合運行管理、②見える化、混載による輸配送効率化、③電動商用車活用・エネマネ検証などの仕組みの確立を進めている。③については「支線配送における(幹線物流ではない)」電動商用車活用を見据えた(「物流分野におけるモビリティサービス(物流MaaS)勉強会取りまとめ」_経済産業省_製造産業局自動車課」)とあるが、幹線に当たる高速道路を走行するトラックの方が走行環境に著しい変動が生じる可能性が少なく、こちらから着手(電動化)する方が、必要な電力、充電拠点の配置やバッテリー交換などの計算もしやすいように思えるが、幹線輸送の主力となる大型車より、支線配送で使用する中型・小型車両の方が運用される車両数的に優位性があり、環境への貢献度が高く、荷主にとってはCO2削減による環境対応拡大・ESG投資などを呼び込む契機になると考えられているのだろうか。同勉強会参加者からは、幹線輸送についてはリードタイムが長い、もしくは柔軟に着荷主が対応できる業界をまずターゲットにすると良い(荷主事業者)、同業種の場合、需要波動が重なるため、異業種を検討する必要あり(荷主事業者)、支線配送については、過疎地域などの積載率の低いエリアを対象として実施するべき(荷主事業者)などの声も上がった。元来MaaSは異文化の業界同士が協力し利用者の利便性を向上させる仕組みであるが故、経産省の考える取り組みの順位と、事業者側の考える取り組みの優先順位の軸自体がそれぞれの立場が滲む。それを見越しての「勉強会」だと考えると会の果たす役割は大きいと思う。
全国初!バスの“サブスク”…MaaSに新風を吹き込む新潟県湯沢町の挑戦 他
7月26日 自治体職員(或いは自治体そのもの)は地域の課題解決という場面において、外部から受ける支援を差し引くとしても英知の塊だ。時にそう賞賛したくなる話題が手許に届く。2020年前から国交省や経産省主導のもと、各地で様々な組織で導入の試みが始まったMaaS。ここに来て、勢いがやや減速気味に見えるのはなぜだろう。理由は幾つかありそうだ。MaaSを推進・運営する組織体制が脆弱であり、担い手や専門家の不足や、サービス主体となる自治体や交通事業者などの財政基盤が豊かでない、また、域内に交通結節点の配置不十分(道の駅や廃校を活用する流れもあるようだが限定的)、スマホアプリやシステム導入に比重が置かれ過ぎたきらいがある事などが挙がる。これらの課題について、新潟県湯沢市の取り組みが、参考となる幾つかの答えを生み出している。この湯沢版MaaSは、住民や観光客の移動利便性向上のため、新潟県と湯沢町、湯沢町観光まちづくり機構が連携し、期間限定でバスとタクシーを組み合わせた実証実験となる。湯沢モビリティパス「yuumo」を購入(乗車券のサブスクリプション化)すると、越後湯沢駅と岩原エリア、中里エリア間でシャトルバスが乗り放題となる。タクシーは定額タクシーとして岩原エリアでシャトルバスとの乗り継ぎ(結節点)を可能にしている。また湯沢町内の一部の店舗や施設で「yuumo」提示すると、割引サービス(割引クーポン化)を受けられる。「yuumo」の価格は、バス乗車券が2日券/500円、5日券/1000円、1ヶ月券/3000円となり、シャトルバス(パープルラインとグリーンライン)と、路線バス(旭原線、土樽線)が乗り放題だ。また定額タクシー券は1週間券(岩原エリア)/3000円、1ヶ月券(岩原エリア)/8000円となり、ゆざわ魚沼タクシーとアサヒタクシーが利用出来る。*定額タクシー券の利用回数には上限があり、1週間券は4回、1ヶ月券は12回までとなる。また8/19~23の5日間は利用出来ないので、注意が必要だ。乗車前に「yuumo」の有効期限を運転手に提示して利用する。この湯沢版MaaSでは、MaaSアプリのデジタルアプリの代わりに紙のチケットを販売する。チケットの販売は、町内の広域観光情報センター、越後湯沢駅内NewDays、岩原トランジットセンター、湯沢町観光まちづくり機構事務局、エンゼルグランディア駅前案内所、エンゼルグランディア越後中里などで行われる。また、利用者の募集は特に行わなず、バス乗車券が、ホテル予約時に宿泊料金に「利用者特典」というかたちで宿泊者に購入(配布)されるため、利用者数は自然に宿泊者数に近いものとなる。観光利用以外の地域住民にも、求めやすい価格で提供される他、バス停はスーパーや観光スポットに最寄りの場所におかれるなど、細部にも工夫が行き届く。また、交通結節点については新たに岩原地区に「トランジットセンター」(乗換のための待合所)を設けるようにした。また「トランジットセンター」では、待ち時間を楽しんでもらえるよう、テラスや飲食店が出店され、地元の野菜販売なども行われる。シャトルバスの車両については、ホテルの送迎バス(貸切バス)を乗合化して活用した。この湯沢版MaaSを創出した「仕掛け人」に当たる組織を見てみる。推進主体である湯沢版MaaS推進委員会(湯沢町観光まちづくり機構と湯沢町、そして新潟県)は「MaaSプランナー/外部コンサルタント」から技術支援を受けている。県とこれらのコンサルタントは事業計画立案契約を締結している。またこれらとは別に「MaaSオペレーター」と販売委託契約を結んでいる。また、委員会は実際の運行事業者に当たる路線バス、ホテル送迎事業者、タクシー事業者各社と運行委託契約を、宿泊施設とはMaaS協力協定を結んでいる。特に路線バス会社とは企画乗車券販売委託契約を結び、利用者にサービスを提供している。「MaaSオペレーター」は別途チケット販売代行業者と販売委託契約を締結している。「MaaSプランナー/外部コンサルタント」は県への支援の他、運行事業者に対しても技術支援や運行計画支援を行っている。専門的なIT技術を必要とするMaaSだが、この陣形なら主催者も各事業者もIT技術に関する後ろ盾があるので安心して専門分野に取り組むことが出来る。日本版MaaSの発展には、主催者、関係事業者が専門外であるIT技術分野についての支援を得ること、地元の理解・協力、反対にアナログな仕組みであっても有効な仕組みであれば躊躇なくそれを取り込む裁量、MaaSの導入にあたり、地元で何が問題となるのかを子細に把握する能力が求められる。実証実験の次にすべきことは、問題整理と解決だ。国交省や経産省には、再度各地が生み出す英知の収集・整理・知の普及役を期待したい。
AirbiquityがCyngnと提携し、マテリアルハンドリング企業が車両を自動運転システムに進化させることを支援 他
7月23日 自動運転(自律運転)に関わる技術が自動車業界に関わらず、周辺産業に影響を及ぼすシーンが生まれてきている。また、先週の記事(構造物の点検用のドローンに搭載されたデプスカメラの撮影・解析技術が、地下鉄車両の混雑状況の解析に転用された例)のように、自動運転側から見た関連技術が、MaaSにおける様々な情報サービスに影響を与える例も出て来た。様々な革新的技術の往来が、新しい生活や働き方を形作って行く。コネクティッドサービスのAirBiquityは、7/22に、自動運転車両技術のCyngnとの提携を発表した。両社は、AirBiquityのOTA(Over the Air)ソフトウェアプラットフォームと、Cyngnの「DriveMod」自動運転システムを統合し、マテリアルハンドリング市場向けに展開を図る。産業向けの自動運転車両を抱える業界では、新技術の導入をはかる際、既存の車両群全体の交換に迫られる場合が多い。両社の技術は、そのようなマテリアルハンドリング(製造に用いる材料、部品、半製品などの物品の移動、搬送、取付け、取出し、仕分けなどの作業及びこれに伴う作業、「荷役」のこと)市場に一石を投じることになる。両社の技術を導入することで、同領域で営業する企業は、既存の車両群を自動運転車両システムへと安全に発展させることが出来る。このシステムは導入から時間経過とともに、次第にアップデートされ、車両群の効率的な稼働に貢献する。Airbiquityの「OTAmatic」はOTAのソフトウェア及びデータ管理ソリューションでクラウドから、コネクティッド車両のソフトウェアをアップデートするとともに安全に協調・自動化することが出来る。また、Cyngnの「DriveMod」は、自動運転車両から生成されるデータを分析し、より優れた知見を導き出し、運用の効率化を図る。「DriveMod」はフルスタックの自動運転車両ソリューションで、産業用車両向けにインテリジェント分析、人工知能、先進の安全機能や自動運転能力を提供する。「DriveMod」既存車両の簡単な改良や、OEM車両に、組み立て時に直接組み込むことが出来る。それゆえ、この技術は車両を選ばない。つまり「DriveMod」は車体年齢、車両の種類やメーカーに捉われず全ての種類の産業用車両で機能するように設計されている。日本国内で言えば、ZMPの「IZAC」あたりが近いだろうか?これらの技術の実装が進むことでより、マテリアルハンドリング業界では、プロセスの自動化、省力化、省人化が進み、市場が活性化して行くのは明らかなようだ。Global Market Insights Inc.によると、マテリアルハンドリング市場の規模は、2020年に1,400億米ドルを超えて、2021年から2027年にかけて約6%のCAGRを達成すると予測されている。