7月22日 軽自動車マーケットの2台巨頭、スズキとダイハツがトヨタの商用車連合(Commercial Japan Partnership)に合流する。日野、いすゞ勢と比較すると、一回り小型の軽商用車市場に連合が駒を進めたかたちだ。7/21の会見ではダイハツの奥平社長が会見を開き、「脱炭素」を主眼に置いた合流であることを説明した。会見に同席したトヨタ自動車の豊田社長は、「脱炭素」においての、国内の自動車保有台数の凡そ39.7%を軽自動車が占める量的なインパクトを挙げつつ、軽自動車の重要性と軽商用車市場に同社のCASE技術を共有していく意思を示すとともに、脱炭素の協調領域の役者(「インフラとセット」)と考えられる自治体や、インフラ事業者、運送事業者などとの方向性の調整も進み、概ね合意に至っている現状を示した。またスズキ株式会社の鈴木社長からは、物流経路のラストワンマイルを結ぶ軽商用車との観点から、地域の移動や、農林水産、建設、小売、物流等様々なユーザー領域においてもカーボンニュートラルの実現に向け活動が進む中、「お求めやすい価格」の達成は、一企業では困難であり、社会全体での取り組みが必要との考えが示された。新規参加側となるダイハツの奥平社長からは、商用及び個人がプライベートの足としても軽自動車を利用しているとの観点より、カーボンニュートラル対応やCASEの導入をメーカーの責務と捉えていると、積極的取組への「決意表明」があり、その上で現時点のLCA(ライフ・サイクル・アセスメント:ライフサイクルにおける環境負荷低減)の観点での軽自動車のCO2排出量は、登録コンパクト車と比較して約30%低く、小型のハイブリッド車に匹敵する現状から、更なるCO2低減に向けての、様々な意味における「困難さ(「並大抵のことではない」)」もあるとの認識も示された。利益幅の少ない商用車の価格を維持しながら、カーボンニュートラルやCASEといった革新要素を取り込んで行くには、これまで軽市場をけん引してきたスズキやダイハツならではのノウハウ(「シンプルな工場、簡素な設計素質、スリムな固定費」)の共有が必要となり、この合流により、大動脈から毛細血管までカバーする一気通貫の商用基盤や、先進技術と廉価なモノづくりの融合による軽自動車に相応しい電動化の実現など、大きなシナジーが期待できるとの見解が示された。今回の協業のキーワードは「コネクティッド」「ADAS」「電動化」となりそうだ。最後にスズキと、ダイハツの2社が、Commercial Japan Partnership Technologies株式会社の株式を株式譲渡により、それぞれ10%ずつ取得することが発表された。今回の発表では直接触れられなかったが、ウーブン・アルファ社が開発する自動地図生成プラットフォーム(AMP)の道路情報を収集できるパートナー車両数の増加や、プラットフォーム開発のスピードアップにも繋がる動きではないだろうか。
MaaS・CASE関連の最新ニュース(23 / 65ページ目)
東京メトロ、銀座線・丸ノ内線の号車ごとのリアルタイム混雑状況を配信 他
7月16日 東京地下鉄(東京メトロ)のMaaSアプリ「東京メトロmy!アプリ」が、この7/13にアップデートされた。Googleストアにおけるインストール数は現在500,000+、レビューは3.6だ。新たな機能として列車の走行位置画面で、号車ごとの混雑状況をリアルタイムで表示出来るようになった(*銀座線、丸ノ内線のみ)。また、相互乗り入れする他社線内での到着時刻が表示される。また駅構内図を「アプリ内」で表示できるようになった。また先頃より利用可能となった個室型ワークスペース「CocoDesk」の予約サイトへのリンクが追加された。今回の目玉である号車ごと(列車ごとではなく、車両ごと)の混雑状況表示を可能にしたのは、駅ホームの天井に設置されたデプスカメラ(奥行きの情報を取得する深度センサーを内蔵したカメラ)とAIの組み合わせだ。デプスカメラで撮影した列車側面の画像(社内の混雑状況)は、クラウド上のAIで分析され、列車の発車後数秒で、車内の混雑状況をアプリ上に表示させることが出来る。ちなみに混雑状況は4段階で表示され「座席に座れる程度」「ゆったり立てる程度」「肩が触れ合う程度」「かなり混み合っています」で、混雑度合いが分かる仕組みだ。この列車混雑計測システムを開発したのは、東京メトロと上野グリーンソリューションズだ。上野グループは1869年(明治2年)に上野金次郎が横浜で創業した廻船問屋「丸井屋」に端を発する、石油製品、ケミカル製品の輸送・貯蔵・販売、ソーラー事業、海洋環境を事業領域とする。上野グリーンソリューションズは、石油製品の海上・陸上輸送事業の上野グループの中で太陽光発電事業や総合建築事業、防水・塗装工事、保守管理業務(駅設備等)などを守備範囲とする会社だ。本システムは、上野グループが新たな事業として、設備や検査時の撮影にドローンの活用を検討しており、画像鮮明化や物体認証、赤外線カメラによる画像解析を行うことで高精度化を目指す中、地下鉄の列車の混雑推測にホームから列車を撮影し、これらの解析技術が転用できないか?との話が持ち上がり、開発が始まったそうだ。また、このシステム開発にはエスキューブライフ株式会社、株式会社サイバーコアの両社も協力しているという。「東京メトロmy!アプリ」には、この他「駅構内ナビゲーション」、経路検索時に「混雑を避けるルート提案」、「シェアサイクルで気分転換!ルート提案」、「雨に濡れないルート検索」、「あるく保険」*アプリとのアプリ連携なども追加されており、MaaSアプリとしてサービスの充実度が向上してきている。検索できる路線(首都圏の私鉄や都営交通)やコミュニティバスや空港連絡バス、タクシー(GO/S.RIDE)、シェアサイクルまでもカバーするDBの多さや「ノー密」関係の感染防御度の高さも好評価の一因となっているものと思われる。*「あるく保険」は、東京海上日動あんしん生命保険株式会社が提供する健康増進型保険向けアプリ。「ひと駅歩く検索」でNTTドコモのヘルスケアアプリ「dヘルスケア」と連携している。
AZAPAエンジニアリング、愛知県西尾市と連携 自動運転試験も実施へ 他
7月15日 名古屋駅から、名鉄吉良吉田行きに乗り凡そ1時間、名鉄西尾駅下車。そこからバスで27分、一色さかな広場・佐久島行船乗り場へ。日に7便の佐久島渡船に乗れば、30分で佐久島に到達する。佐久島は愛知県西尾市の沖合、三河湾のほぼ中央部に浮かぶ島だ。三河湾国定公園に含まれ、日間賀島、篠島と合わせ三河湾三島と呼ばれる。島の人口は、平成25年で262人、2010年の調査によると、高齢者比は49.8%である。第7次西尾市総合計画(後期計画 2018▶2022)の公共交通の項目を拝見すると、佐久島への渡船事業は利用者増加に伴う運賃収入の増加で経営は安定している様子だ。しかし市域全体では、日常の生活で移動に不便を感じている市民の割合は39.9%(H25/目標指標策定時の実績値)、約4割の市民が生活の足に不便を感じているという。西尾市の施策(総合交通体系)では、地域の交通資源活用と連携による交通体系全体の活性化、コミュニティバスなどの運行による交通空白地の解消、路線バスの重複区間の見直しや接続利便性の見直しなどが挙がる。また鉄道関係では、鉄道事業者への支援による路線維持・存続・利便性の向上、パークアンドライド、名古屋駅や豊橋駅へのアクセス性の向上などが考えられている。路線バス関係では、路線維持のための財政支援、他の交通機関との乗継拠点整備などが挙がる。佐久島渡船については、生活・観光航路として維持のため、財政支援が行われ、他の交通との連携、増加する乗船者に対応できる輸送力確保、業務の効率化などが挙がっている。一方、同市の観光事業では佐久島は各種メディアに「アートの島 佐久島」として知名度が向上し、観光客の増加に繋がっている。年間佐久島渡船人数は、182,000人((H25/目標指標策定時の実績値)。これを、H22までに260,000人に引き上げる目標を立てている。西尾から佐久島行船乗り場までは、バスが運行されており、隣接する一色さかな市場には無料駐車場も完備されている。船乗り場から西港までは約20分、東港までは約25分と申し分ないようだ。しかし、これまで佐久島島内の交通はバスタクシーと言った交通手段はなく、徒歩や自転車が主な移動手段となっていた。7/14に西尾市とAZAPAエンジニアリング株式会社は、パワースクーター自動運転の実現化を図る連携協定を締結した。実証実験を経て、実現化を目指す。島民の新たな移動手段として、島の魅力向上や活性化、SDGs(持続可能な交通手段が主旨だと思われる)、その他本協定の目的を達成するために必要な事項に関することを協定内容とし、この取り組みが進められる。島内のお年寄りや交通弱者の移動手段として、渡船への乗船下船や観光利用、西尾市側の路線バスとも、バランスの取れた新たな移動体系が生まれることに、欲を言えば雨風を凌ぎつつ移動でき、島嶼部の自治体の懐に沿う、コスト効率の良い移動手段が実用化されることを期待したい。
【MaaS体験記】観光スポットをつなぐシームレスな交通手段とは…横須賀・三浦エリアの観光型MaaS 他
7月14日 話は少し遡るが、5月に発表された東急株式会社の中期3か年計画(2021年度-2023年度)について、の添付資料を見て見たい。理由は東急がJR東日本とともに、伊豆半島を中心に展開してきた「Izuko」のその後が気になるからだ。営業利益は2018年度の819から、2019年度の687、2020年度は最低の▲316を記録した。連結事業となる東急電鉄の輸送人員は、2018年度比で▲32.2%、東急バスは同じく▲29.7%、東急ホテルズの稼働率は▲51.2p、東急百貨店の売上は▲25.3%(既存店/1月決算)であった。他の交通事業者と同様、新型コロナ感染症の甚大な影響を受けた。経営の建て直しには、コロナ禍による移動・交流人口の減少、ワークスタイル・ライフスタイル変容の加速、人口減少と少子高齢化の地域格差、デジタルテクノロジーの急速な進展、グローバルレベルでの脱炭素社会へのシフトなどの外部環境への対応が必要だ。重点戦略として交通インフラ事業の事業構造の強靭化、不動産事業における新しい価値観への対応、新たなライフスタイルに対応した事業・サービスの進化、各事業における構造改革の推進などが挙がる。特に交通事業では、これまでの都市への通勤需要を中心とした事業推進を改め、コロナ収束後も輸送人員はコロナ禍前の水準に戻らないことを前提に、通勤・通学を中心とした収益構造から変革を図り「域内移動需要の創出」を推し進めていく考えだ。「交通インフラ事業における事業構造の強靭化」(戦略)を見ると、稼ぎ頭は東急新横浜線の開通(従来、東横線菊名駅経由で約30分を要した区間を、相鉄新横浜線に乗り入れる新ルートの設定により、渋谷と新横浜間を11分短縮)だ。利便性・速達性は向上するものの、時期的には2022年度下期となっており、どこまで「域内移動需要の創出」に貢献できるかは未知数とも言える。「域内」の言葉は「中期3か年計画」を見る限り、東急株式会社の不動産事業にとっては「新宿再開発プロジェクト(歌舞伎町一丁目地区開発計画)の推進」、「新綱島駅前地区第一種市街地再開発事業」、「ベトナムビンズン新都市」と言ったところか。そして忘れてならないのが城下町である「渋谷」の再開発だ。計画中である道玄坂二丁目(現:東急百貨店本店)、開発中である渋谷スクランブルスクエア第Ⅱ期、渋谷2丁目17地区第一種市街地再開発事業、渋谷駅桜丘口地区第一種市街地再開発事業など、渋谷駅を中心に再開発事業がひしめく。交通事業にとっての「域」は、東急電鉄沿線はもちろんのこと、東急バス路線網・空港運営事業(仙台国際空港・富士山静岡空港・北海道の稚内、旭川、新千歳、函館、女満別、Kushiro、帯広)、そして地方交通事業(伊豆半島・北海道「THE ROYAL EXPRESS」:帯広・十勝、釧路・知床、北見、旭川・美瑛・富良野)だ。「中期3か年計画」を見る限り「MaaS」の概念は含まれるものの、「MaaS・Izuko」のアピール色は薄い。しかしながら「域」の示唆する範囲を、静岡~伊豆半島~北海道と捉えると、これらをシームレスに繋げることが出来る「移動情報のプラットホーム化」、「移動についてのチケット予約・販売や宿泊、観光情報」などの一元化は必須と言える。不幸にして終始コロナウイルスの影響を受けた実証データは、開発段階のデータだ。再度コロナ禍からの「回復需要」を以って、再評価する必要があるのではないだろうか。
なぜ、みずほ銀行がMaaS支援?普及に欠かせない要素は何か 他
7月13日 長野県の千曲市で行われたワーケーション体験を高めるサービス「温泉MaaS」。5/22-5/29に行われた。株式会社ふろしきやが参加者と協働で、観光案内、タクシーの配車、レンタルサイクル、ワークスペース案内などを統合したMaaSだ。この企画を仕掛けた株式会社ふろしきやは、信州千曲観光局、千曲市、長野県と共に「千曲ワーケーション体験会」を開催してきた経緯がある。「温泉MaaS」により、市内に散らばるワークスペースと観光地や宿泊施設などへの移動手段の利便性を高めた。この企画にLINEが参画し、ワーケーションとモビリティサービスの橋渡しをした結果、ワーケーション参加者が、仕事に合った場所に、行きたい時に手間なく移動できる手段として「千曲市ワーケーションウェルカムデイズLINE公式アカウント」が生まれた。2021年5月22日~29日開催バージョンでは、Q&A AIエンジンと問い合わせチャットボット、信州千曲観光局Webサイト、ワークスペース観光スポット案内、タクシー配車Webアプリ、タクシー予約LIFFアプリ、レンタルサイクル管理Webアプリ、レンタルサイクル予約LIFFアプリを連携させた。利用者から見れば、市内の移動を希望するときに、地元タクシー会社2社と地元レンタルサイクル事業、ワークスペース・観光スポットの情報が、一元化され、問い合わせ対応(チャットボット)の利用が出来るようになった。舞台裏では、マイクロソフトやクリエイターズ・ラボ、市内在住のエンジニアとLINEが、システム構築で協働した。この実証実験の知見を集めた「ワーケーション実験ノート」(https://note.com/workation_lab)がある。全国の温泉資産を抱えた自治体関係者には、興味深い資料ではなかろうか。このワーケーション企画には、続きがあるらしい。8/7-8/13まで「CHIKUMA WORKATION WELCOME DAYS 2021」が開かれる。お申し込みと詳細はこちらだ。https://furoshiki-ya.co.jp/chikuma/wwd2108/ かなり、余計な心配かも知れませんが、楽しすぎて仕事にならないような。
栃木県・日光地域の環境配慮型・観光MaaSが環境省のモデル事業に採択 他
7月12日 環境省では、令和2年度(第3次補正予算)二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(脱炭素イノベーションによる地域循環共生圏構築事業)に、福島県大熊町(おおくままち)、福島県大木町(おおきまち)の地域の再エネ自給率向上やレジリエンス強化を図る自立・分散型地域エネルギーシステム構築支援事業【計画策定】と、東武鉄道株式会社・株式会社JTB・栃木県・オリックス自動車株式会社・株式会社JTBコミュニケーションデザイン・株式会社トヨタレンタリース栃木が事業を行う「自動車CASE活用による脱炭素型地域交通モデル構築支援事業【設備等導入】」など、4案件(12団体)を採択した。環境省の同事業は、脱炭素型の先導的モデルの構築を目指すもので、地域の自立・分散型地域エネルギーシステムおよび「脱炭素型交通」をテーマに技術、制度のイノベーションを適宜取り入れ、また民間の資金を活用しながら継続的なモデル構築を実施していく事業を支援するもの。東武鉄道ら6事業者で構成するコンソーシアムは、栃木県の日光地域で国内初の環境配慮型・観光MaaS(仮称:日光MaaS)を2021年度内に開始する見通しだ。同支援事業は、2050年のカーボンニュートラル・脱炭素社会を実現するため、温室効果ガスの排出を実質ゼロとするもの。CASEを活用し、地域の「脱炭素交通モデル」の構築等を通じて、新たなビジネスモデルや技術等のイノベーションを取り入れつつ、新しい時代をリードする民間企業等の先進的な取り組みを支援する事業だ。日光MaaSでは、鉄道とバスをセットにしたお得なデジタルきっぷの他、EV(電気自動車)・PHV(プラグインハイブリッドカー/コンセントから給電、車上のバッテリーに直接充電できる)カーシェアリングやシェアサイクル、EVバス等のモビリティと歴史・文化施設等の拝観・入場チケット、ネイチャーアクティビティ(自然体験)などの観光コンテンツをワンストップで利用できるMaaSシステム構築と運用は、東武鉄道とJTBが行う。同時に、オリックス自動車とトヨタレンタリース栃木がEV・PHVカーシェアリングの車両設置や運用を行い、域内にEV用充電器を増設することで、利用する交通手段の電池切れを心配することなく、安心して利用できる環境を整備する。EV充電器の設置/運用は、栃木県とJTBコミュニケーションデザインが行う。事業の第一段階では、フリーパス、着地型コンテンツのデジタル化、観光客向けのEVカーシェア、EVオンデマンド交通、電動レンタルサイクルの導入、また観光客向けのEV充電インフラの導入が図られる。中長期的には、前述の事業拡大と住民向けEVオンデマンド交通導入、地域内の公共交通(バス・タクシー)のEV化、観光客/住民/観光客向けのオンデマンド交通を活用した貨客混載、前述のモビリティサービスと連動した観光事業者との相互送客など、宇都宮市など、域外でEVカーシェアを展開、地域間での連携も実現させたいとしている。手始めに、MaaSシステムの構築、中長期的には電動モビリティ・再生可能エネルギー融通システムの構築が求められるため、その機能配置や構築方針なども含めた事業計画が検討される予定だ。エネルギー源としては、栃木の再生可能エネルギー電力メニュー(「とちぎふるさと電気」)や、地産の卒FIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度導入後、10年の買取期間が経過し、FIT適用が終了すること、一般的な市場価格より高い、一定価格での余剰電力の買取が終了すると、契約者の太陽光発電などの電気を売ることに拠る収入は激減するとされている)となる太陽光・風力発電などの再生可能エネルギーの活用が想定されている。
「Q-move」でキャンペーン支援機能を実現しました 他
7月9日 地域公共交通網に自動運転バスを取り込む動きが全国に広がる。自治体はこれまで、既存の路線バスへの補助や、コミュニティ・バス、デマンド型タクシーなど、市民の足を支える交通事業の負担を補助してきた。しかしながら交通事業者同様、これまで財源となって来た自治体の台所も疲弊が進むことは否めない。茨城県境町の自動運転バスの導入支援や運行管理システムを提供するBOLDRYの言を借りるなら、運賃だけで地域の交通ビジネスを支えられるのは、都市部に限られる。新たな交通網の維持には、地域ごとに新たな財源確保についての検討も求められると考えられる。バス運行に関わる安全と、運行に携わる人員を効率化するため、遠隔監視などのシステムを使い、人件費を抑える仕組みも並走するが、現段階では、まだコスト削減の決め手とは言い切れない段階だ。ならば、地域交通利用の目的の一つ(「受益者」)となる店舗からサポート料を得る、との論もある。過疎地に済む住民が、地域交通を利用し、街や町までの移動経路にある「道の駅」などで生活必需品を購入するため、受益者となる店舗にも財源のサポートを求めるという発想だ。一理あるが、交通手段の充実によって、過疎地の小売業が得る利益を蓄積する財政基盤がさほど余裕のあるものとは考えにくい。自動運転バスを市域に導入するためには、情報インフラへの投資・運用コストが必要となる。対馬市の自動運転バス導入の際の、情報通信基盤整備の件からも明らかなことだ。自動運転バスが運行される自治体における「受益者」には、通信事業者や関係サービス事業者と言えよう。自治体には小売事業者だけでなく広く遍く財源を確保する「目」が必要だ。QUADRAC株式会社は、決済及び認証におけるSaaS型プラットフォームとして「Q-Move」を交通事業者に提供、クレジットカードやMaaSアプリ(QRコード)による乗車を実現し、既に数社に採用されている。この度同社は、利用者の乗降履歴をベースにした特別運賃計算機能の一つとしてキャンペーン支援機能を開発した。利用者が交通機関を利用する際、乗降時にクレジットカードを改札のリーダなどにかざして決済を行うと同時に、キャンペーン仕様に則った割引運賃の計算とキャンペーン予算を管理できる「キャンペーン支援機能」が南海電鉄に採用され、7/8~と7/29~のそれぞれ1週間の期間でキャンペーン(Visaのタッチ決済キャンペーン)を行う。各方面から補助を受ける側となる交通事業者側の、キャンペーン展開を助ける一つの手立てとなる可能性がある。交通事業者は、自社の営業範囲となる複数の自治体の小売事業者や飲食店・宿泊業者と様々なアイデアを出し合い、収益改善・増収への道を生み出し、全国に横展開したいところだ。
バス、私鉄データ共有 茨城、7社「MaaS」構築へ 共通乗車券や電子看板 相互乗り換え容易に 他
7月8日 茨城県では「県DXイノベーション推進プロジェクト事業」が進む。5GやAIなど、最新のデジタル技術を活かし、企業等のの生産性向上による競争力の強化、医師不足、人口減少・少子高齢化社会における労働力不足やニューノーマルへの対応など、様々な地域課題の解決に取組む。同「研究開発プロジェクト」は、令和3年2月12日から3月18日まで産学官などからの提案を募った結果、110件の応募が寄せられた。県はうち10件(交通に関するテーマは2件)を採択し、新事業・新サービスの創出につなげたい考えだ。茨城交通(代表)は「茨城MaaS共通基盤の構築と公共交通運行データ利活用推進」として、県下の異なる公共交通事業者・業種間のデータ連携基盤(MaaS共通基盤)を構築し、シームレスで利便性の高い利用環境を目指すとの研究開発プロジェクトが採択された。利用者が鉄道やバス、タクシーなど多様な交通サービスを利用した際、生成されるデータを「茨城MaaS共通基盤」に集約、運行データやチケット発券や店舗情報に定量的な分析を加え、利用者や移動シーンに最適な移動手段を提案する仕組みを構築する、としている。集約されたデータはこれ以外にも広く一般利用できるよう環境を整えて行く。これにより、交通機関の利用者は、異なる事業者の運行情報を一元的に表示するデジタルサイネージによる共通案内や、アプリなどを通して購入・利用できるMaaSサービスを享受、交通事業者は運行データを分析し、慢性的に遅れの生じる区間などのダイヤ改善や交通空白地域・時間帯の改善などを、定量的に行い、サービスの改善に繋げることが出来る。今回の連携事業者は、関東鉄道、関鉄グリーンバス、関鉄パープルバス、関鉄観光バス、ひたちなか海浜鉄道、みちのりホールディングスとジョルダンだが、今後は参加事業者の拡大を目指すとしている。県内にはこの他、JR東日本、鹿島臨海鉄道、首都圏新都市鉄道(つくばエクスプレス)、真岡鐡道、筑波観光鉄道(筑波山ケーブルカー、筑波山ロープウェイ)、ジェイアールバス関東、茨城急行自動車、朝日自動車、大利根交通自動車、椎名観光バス、昭和観光自動車、商船三井フェリー、茨城空港、茨城港や鹿島港などの事業者も思い当たる。今後は「つちうらMaaS」(令和3年2~3月に実施)や「日立地域MaaS実証実験」、JR東日本が今年4月~9月末まで実施している「TOHOKU MaaS」などとの広域連携にも期待したい。
自動運転バス、社会受容への道筋(前編) 他
7月7日 自動運転サービスや各方面でのMaaS導入の足かせと言われがちな法律や様々なルールの改正だが、ここに来て各方面で改革の成果が現れ始めている。一つは茨城県境町のケースだ。自治体でいち早く自動運転バスの導入を果たしたこの街では、2021年2月に町内に12カ所のバス停を増設し、市民の足としての利便性を高めた。地元も協力的であり、新設したバス停はいずれも無償で設置されている。このうち病院前に設置されたバス停は、地元の交通事業者である昭和観光自動車の既存のバス停だ。実は道路交通法上、既存のバス停への駐停車は原則禁止だが、2021年1月、この規制が緩和され路線バス事業者と合意した場合は、自動運転バス側が既存のバス停を利用できることになった。また、7/2「glafit」は警察庁より、同社の「ハイブリッドバイクGFR」に「モビリティ・カテゴリー・チェンジャー」(モビチェン)機構を取り付けた場合、電動バイクと自転車の切替えを認める旨の通達を受けたと発表した(警察庁交通局交通企画課長及び警察庁交通局交通指導課長発、警視庁交通部長及び各道府県警察本部長宛て、令和3年6月28日付 警察庁丁交企発第2 7 0 号、警察庁丁交指発第6 0 号「「車両区分を変化させることができるモビリティ」について(通達)」)。これまでは「ペダル付き原動機付き自転車」は原動機を作動させず、ペダル走行させる場合であっても、原動機付自転車の属性は変化せず、原動機付自転車の通行区分や運転方法に従う決まりとなっていた。本改正により、モビチェン機構を取り付けたハイブリッドバイクGFRは、原動機を作動させず、ペダル走行させる場合は、道路交通法上、自転車扱いとなり、自転車の通行区分や運転方法に従うこととなる。*但し、道路運送車両法では原動機付自転車のまま。今のところ、この適用を受けることが出来るのは、同社のペダル付きの原動機付き自転車のみだ。この他、令和2年4月1日施行の道路交通法改正の「自動車の自動運転技術の実用化に対応するための規定の整備」においては、作動状態記録装置による記録等に関する規定の整備が行われており、自動運行装置を備えた自動車について、整備不良車両に該当するか否かを確認したり、交通事故等の原因究明を行ったりするため、作動状態記録装置が不備な状態での運転が禁止され、同装置に記録された記録の保存が義務付けられている。反則金の額に記載されている対象には、大型、普通、二輪、「原付」がある。技術の進化に拠る安全や利便性が損なわれることがない、機動的な法改正が今後も続くことを期待したい。
自動運転で小売りMaaS実現めざす…東広島市でスマートシティ化事業 ソフトバンクと広島大 他
7月6日 自動運転サービスが様々なかたちで、街中にフィットしようとしている。そもそも交通事業とは市民の足として日常生活の中で使われるサービスである以上、あるいは当然の作法といえるのかも知れない。はたして自動運転サービスでは、どのような動きがみられるのか?東広島市では、広島大学やイズミMonet Technorogiesなどと「自動運転・小売MaaS」の実証実験を進めている。同市は自動運転時代を見据えた国際学術研究都市の実現に向け、スーパーマーケット等と連携した「小売MaaS」を自動運転車で実現する「Autono-MaaS」(自動運転車と各種サービスの融合を示す造語)の実用化に向け実証中だ。小売MaaS「BOPIS(ボピス)」では、新たな小売形態であるBOPISとデマンドバスを掛け合わせた小売MaaSを展開。イズミのアプリで注文した商品を予約したデマンドバスに乗車し、「ゆめタウン学園店」の店頭ロッカーで受け取る仕組みだ(2021年2月から実証中)。また貨客混載サービスでは、予約した乗車指定場所から、オンデマンドバスで同店まで「送迎してもらう」か、電話などで注文した商品を利用者が指定した場所と時間に「配送してもらう」ことが出来る(今秋9月~実証予定)。同市では更に、7/2に広島大学や周辺地域とスマートシティーの実現を主な内容とする包括的な連携協定を締結した。これにより、車内ディスプレイに同市及び周辺地域の飲食店や商業施設のクーポンを配信、顧客属性ごとの送客効果を検証、地域経済の活性化に繋げる。また飲食だけでなく、ヘルスケア分野でも生活や医療、介護に関する様々なデータを活用し、予防医療や健康寿命の向上に役立てる。オンライン診療や、防災や行政観光分野でもデータの活用を検討している。また三越伊勢丹と三井物産は、7/5~三越伊勢丹の実店舗を移動ショップ化し、渋谷区にあるリアルゲイト本社ビル前で実証実験を行う。コロナ禍・テレワーク導入・ワークスタイルの変化・育児や介護で店舗に来店する時間的な余裕が持てない層に向け、移動ショップでオフィスやマンションに訪問・販売する新たな購買体験を提案する。フードトラックでランチを買うオフィスワーカーやマンション住民などの姿は、定着してきた感があるが、今回、三越伊勢丹はそこに「サステナブル」の概念を取り入れている。自社展開する「i'm green」(買取・引き取りサービス)と「三越伊勢丹リモートショッピングアプリ」を使ったコーディネート提案サービス「コンシェルジュサービス」の店舗をセットで現地に配車する。今回のコンシェルジュサービスには、SONYの映像技術とヤマハ発動機の自動運転技術を搭載した自動運転車両「Sociable Cart SC-1」も投入される。発展する自動運転周辺サービス。従来の目的あっての人の移動が大半という交通事業だったが、商品やサービス自身が人の身近に移動するというパラダイムシフトが起こっている。新しき移動需要は、フードトラック(移動+調理+店舗)は別だが、普及(移動需要の進展)に至れば、コンテンツホルダーとなる事業者が「移動」を抱えるのはナンセンスと言えよう。交通事業者や駐車場事業者の助けが必要となってくることも考えられる。