5月27日 本記事でも何度か話題にさせて頂いた小田急のMaaSアプリ「EMot」で販売されている飲食と物販のサブスクリプションチケット「EMotパスポート」。5/26に利用可能な店舗尾が追加され、メニューが増えることになった。パスポートは、1回500円相当のサービスがスマホの画面提示だけで利用可能だ。お得な回数券(1回券500円・10回券3,500円)と対象となる飲食サービスが30日間で90回利用できるパスポート券(自動更新・課金)から、利用者のスタイルに合わせて選択できる。①チケット購入後、②対象となる飲食店などで商品を選び、③レジ付近に添付されているQRコードを「EMot」で読み込み、店員に表示されたアニメーション画像を提示し、商品を受け取る仕組みだ。*「箱根そば」(サブスク対象店)では、店頭の専用端末に表示されるQRコードを「EMot」で読み込み、利用者のスマホ上でメニューの選択(発券)すると、専用端末から食券が出てくるので、食券を受付カウンターに渡す。今のところ、このお得なパスポートの新規購入は毎月先着100枚の限定販売となっている。老婆心ながら「箱根そば」と「箱根そば本陣」とでは、利用できるメニューに違いがある。その他に利用可能な飲食店は「おだむすび」「HOKUO」「FORESTY COFFEE/FORESTY cafe」「ベーカリー&デリカテッセン箱根カフェ」「小田急百貨店新宿店ブティック・トロワグロ(地下2階食料品売り場)」「同町田店(地下1階食料品売り場)」「同ふじさわ(地下1階食料品売り場)」「HIBIYA KADAN Hibiya-Kadan Styleルコネル」、そして小田急新宿駅改札内にあり、フライト前のひとときを演出する空港内の有料ラウンジを思い起こさせる「ロマンスカーカフェ」が加わった。店内からは、特急「ロマンスカー」の発着するプラットフォームを見渡すことが出来、一緒に旅行する仲間との待ち合わせなどにもよさそうだ。惜しくも、2021年3月のダイヤ改正を機に「ロマンスカー」のワゴンサービスが終了してしまった。1949年から始まった伝統あるサービスを載せた名門特急は、当時「走る喫茶室」とも呼ばれた。和倉温泉の老舗旅館「加賀屋」は1989年に料理搬送システムを導入し、それまで30人で配膳していたが、導入後は7人での配膳を可能にした。小田禎彦氏(現・相談役)は「客室係採用のために、従業員を重労働から解放、労働環境を整え、能力のある人たちを迎え入れたかった、削減された労力を全てお客様のサービスに振り分ける」との言を残している。海外旅行客にとって、箱根観光のゲートウェーの役割を担い続ける特急「ロマンスカー」のワゴンサービスにも、近い将来AIを搭載したロボットが登場する時代が到来するのかも知れない。
MaaS・CASE関連の最新ニュース(26 / 65ページ目)
日本の「自動運転」普及を阻む道路事情とは? 一歩先を行く米国との差は何か 他
5月26日 少し前の話題となるが、国土交通省に「電動バスガイドライン概要」(平成30年12月)がある。同省は地域交通のグリーン化に向け、電動バス導入費用の一部を補助する「地域交通グリーン化事業」により、同年まで計30台の導入支援を行い、次年度以降も普及加速を狙った。同ガイドラインは、地域交通のグリーン化を促すため、電動バスに関する評価や普及に必要な取組について検討、「地域交通グリーン化事業効果検証・ベストプラクティス委員会」の議論を踏まえ、バス事業者の手引きとなるよう、導入の検討から運用開始までの手順、効果評価等をまとめたものだ。資料は電動バスの性能や特長、計画的に導入を進めるための手順、電動バスのCO2排出削減量の算定方法、導入効果、現状(当時の)課題、導入事例を掲載している。電動バスは、ゼロエミッション(CO2削減)、低騒音・低振動、快適な乗り心地、災害時の電力供給減などの特長を持つ。導入効果の最たるものはCO2削減(ディーゼル比:最大4割程度の削減効果)、その経済性は運行費用(ディーゼル比:最大4割程度の削減効果)、整備費用(ディーゼル比:最大5割程度の削減効果)という。電動バスの導入課題は、車両価格が高価、航続距離が短い、保守体制の構築などがあり、各車両メーカーの特性を把握の上、車両メーカーや充電メーカー等と協議の上、導入とある。ちなみに①電動バスの価格は約6,000万円~1億円程度、②プラグインハイブリッドバスの場合は、約6,500万円程度、③燃料電池バス(トヨタのSORA)は約1億円と言われる。この他、インフラとして①は普通充電、急速充電施設、②は給油所+①、③は水素ステーションが必要となる。導入検討から運行開始までは、およそ1年半。運行路線に見合うスペックの割り出しと、導入後の運用及び保守体制含め、メーカー等(車両販売会社、地方自治体などの車両導入事業者、電力会社・燃料メーカー、蓄電池メーカー、車両メーカー及び車両改造メーカー、充電器メーカーなど)との協議が必要とされる。一方、2021年4月16日に(株)みちのりホールディングスが「みちのりグループの電動化に向けた取り組みについて」をまとめている。同資料の15頁ある「電動バスの本格導入に向けた課題と対応の方向性」によると、電動化はCASEの一角でありバス事業者の持続可能性の視点からも重要な取組との認識が示されつつ(深圳市:市内路線バス:18,000台を転換済、ロンドン市:2035年に市内全ての路線バス8,800台の電動化を目指すなどの事例が併記されている)、投資余力に限りのある「地方部における導入モデルの構築」が必要とされる。2018年度の民間バス事業者の経常収支率(収入/支出)は東北エリアで75.2%、京浜エリアで109.9%である。都市部と地方の投資余力の「格差」などが導入障壁となっている様子も垣間見える。またこれらに加え、運転士の教育や運行オペレーションや車両整備体制の構築等、これまでのディーゼル車中心のものとは異なる組織能力の獲得、運行中の車両のガス欠ならぬ電欠を防ぐ「エネルギー管理」などの必要もあり、運行状況を監視する「エネルギーマネジメントシステム」導入など、新たな投資が必要とされ事業者にとって頭の痛い問題だ。ちなみに東京交通局では、2017年の市場投入以降、水素を燃料とする燃料電池バス(FCバス/路線バス)の運行を開始している。2019年3月からは東急バスなども導入を果たしている。
損保ジャパンら、「自動運転向けデジタルリスクアセスメント」を開発 他
5月25日 国交省の資料に奈良県三郷町の提案した『5Gを軸とした全世代全員活躍のまち「スマートシティSANGO」』がある。地域BWA(ブロードバンド・ワイヤレス・アクセス/2008年より「地域WiMAX」としてデジタル・ディバイドの解消、地域の公共の福祉の増進に寄与することを目的として導入された2.5GHz帯の周波数の電波を用いた電気通信業務の無線システムのこと)とローカル5Gを軸に公共交通の充実と安心安全なまちづくりを進める。同町の高齢化率は奈良県の平均よりも高く、また坂道が多い地形のため高齢者の移動手段の確保の重要性が高まるとともに公共交通の人手不足や将来的な路線維持、あわせて人口減少に伴い、地域の見守り(子供や徘徊老人などの安全確保)が地域的課題とされている。この状況を鑑みて三郷町は、路線バスの自動運転化、AI・ローカル5Gを活用した顔認証・画像認識による見守りや防犯システムを構築している。三郷町のスマートシティ構想(令和2年~6年)を見ると、町は「奈良県三郷町SDGs未来都市計画」により、地域BWAを活用した自営ネットワーク網を町内全域に構築し、ICT・IoT技術を活用し、多様な課題解決を図ることとなっている。課題の中の一角には、住民や、信貴山など著名な観光スポットへの観光客の移動手段の確保、公共交通の利便性向上・運用効率化がある。移動・交通分野における施策は、過去の乗降履歴データを用いた「予約制乗合タクシーの需要予測による運行効率化」や「公共交通への自動運転車両の導入」、更に「三郷町版 MaaSの導入」などが検討されている。5/18に損保ジャパンはアイサンテクノロジー、ティアフォーと共同でインシュアテックソリューション(「Level Ⅳ Discovery」)として「①自動運転向けデジタルリスクアセスメント」を開発し、この5月から提供を開始すると発表した。その初の提供先が奈良県三郷町となる予定だ。同町のこれまでの地域BWAへの取り組みと、3社の技術が相まって、リスク評価の定量化や提供の迅速化、自動運転走行の安全性と効率性を高め、社会実装を急ぐ自治体などへの礎となることを期待したい。ちなみに①の主なメニューは、モービルマッピングシステムによる走行ルート調査、自動運転システムによる自社位置推定の精度調査、通信環境調査、走行シミュレータによる危険回避調査、走行ルートにおける過去の事故データを活用したリスク調査、ガイドライン等の適合確認、報告書等作成支援となっている。3社は、今後もNEDOの支援を受けつつ、名古屋大学や株式会社Human Dataware Lab.と共に、2025年度を目途に公道での自動運転走行を目指し「AI技術を取り込んだ自動運転向けデジタルリスクアセスメント」の研究開発を進めるとしている。
ユーザーの趣味趣向に合わせた観光地を提示できる観光型MaaS「札Navi」を札幌で実証事業 他
5月24日 2/1から札幌型観光MaaS推進官民協議会、TIS株式会社により札幌市内で行われていた「札Navi(サツナビ)」の実証が終了し(実験終了:2/21)、5/20に実証結果が公表された。本実証は国交省の「令和2年度日本版MaaS推進・支援事業」に選定されたもので、札幌市内における公共交通と観光施設をつなぎ、市内の周遊促進を目指したもの。「札Navi」を利用する観光客の趣味・趣向データから潜在ニーズを導き出し、市内の公共交通機関の検索等の情報を連携させ、最適な観光地や旅程を提示することで観光の促進を図るもの。実験では、ユーザーの①札幌市内の観光スポットの観光属性データベースと②利用者が端末から入力する趣味・趣向データ(旅行スタイルや今の気分)を、③AIでマッチング。④オススメ観光地を提示、⑤タクシー配車や施設チケットの購入サイトへ誘導、⑥周遊後のユーザーのログ(履歴など)やアンケートを分析、結果を②にフィードバックし、精度向上を図る仕組みを構築した。「旅ナカ」の潜在ニーズは可視化し、「観光スポット間の移動距離が長く、交通機関の乗継ぎが不便で分かりにくい」との観光客の声に答えることは出来たのだろうか。本実証は、COVID-19の影響により、一般観光客が激減した中で行われたため、学生モニターを募った上で実施されている。関係者のご苦労が伺われる。故に潜在ニーズの掘り起こし(新たな発見・体験があったとの回答数)や最適な移動手段の提供(タクシー配車機能の利用数)などの目標を達成することができなかった。しかしながら、利用者のWebアンケートでは「目的の観光地への移動手段を知ることが出来た」との回答が最も多く、回答者の約7割は「札Naviの利便性が向上すれば、今後も利用して観光をしたい」と回答している。また「今後のさらなる利便性向上を見据え改善した方が良い点、追加した方が良い機能等」についての設問においては、本ツールと観光地などが連携したサービス(クーポン発行等)の提供(64%)、操作性改善(56%)、提案する観光地や移動手段の多様性向上(51%)などの声も上がったようだ。アンケートに基づいた今後の改善点として、多様な移動手段の確保、機能改善(「提案された移動手段よりも適切な移動手段がある」との回答が約7割)、レコメンド(オススメ)・旅程提案機能の改善(滞在時間の設定機能、旅程の編集機能など柔軟性を持たせる機能)、お得なサービス・決済手段の導入などを検討していくとのこと。案外、今回COVID-19の影響で加勢を依頼した地元の「学生モニター」の感性・生活・遊びのノウハウを可視化することが、観光客にとっての「札Navi」を面白くしてゆく宝の山かも知れない。
ゼンリン、MaaSで日立と協業 長崎で観光支援 他
5月21日 長崎市で観光型MaaSの実証が進む。実証は、3/23から株式会社ゼンリンにより行われ(協力:長崎県、長崎市)、長崎の歴史や文化など観光情報と公共交通サービスを、スマホアプリを介して観光客や市民に提供する目論見だ。本実証実験では、市内の観光スポットである「グラバー園」や「出島」、「平和公園」など観光エリア間の移動を喚起するため、ストーリー型コンテンツと公共交通サービス・民間サービスを連携、人の行動を地域の活性化に繋ぐ。ゼンリンは、ストーリー型観光情報を収集・管理し、滞在型観光ルートとして提供することで、地域のMaaS事業を支援、長崎モデルの全国展開を狙う。この実証に5/20から、日立製作所が加わり、両社でサービス基盤の開発に取り組む(ゼンリンの地図情報・日立の「デジタルチケッティング」+「決済機能」を組み合わせたアプリも開発)。観光経済は、地域経済の持続可能性を向上させる重要な施策だ。長崎市にとっては、本実証実験によって観光の課題を可視化し、改善や解決を図ることで、魅力的な地域独自のコンテンツを導き出したいところだ。今後は観光ツアーへの参加状況、観光施設の利用状況、商業施設での購買状況等をデータベースとして蓄え、ゼンリンの地図情報基盤「Mobility based Network」と、日立の「Lumadaソリューション」を組合せ、利用者の動向を可視化し、観光客の移動や購買などの状況に応じたオススメ情報などをデジタルマップ上で提供したり、クレジットカード以外の決済手段にも対応する予定だ。今回の開発が進めば、日立製作所の異なる権利情報をブロックチェーンで統合管理する「権利流通基盤」を活用したデジタルチケッティングにより、共通利用者IDを介した、鉄道やレンタカー、ツアー予約などのサービスが一元的に利用できるようになる。また「IoT決済プラットフォームサービス」を活用することで、決済手段はオープンAPIで公開され、クレジット、デビット、プリペイドなどのキャッシュレス決済にも対応する。長崎市の主な交通機関はJR、長崎電気軌道(路面電車)、長崎空港からのリムジン、長崎県交通局(バス)、長崎自動車(バス)、市内を巡る長崎市コミュニティバス、斜面移送システム、長崎ロープウェイ、乗合タクシー(5社)、それに長崎汽船や九州商船、五島産業汽船、苓北観光汽船、西海沿岸商船など。長崎空港へは日本航空やANA、オリエンタルエアブリッジ、スカイマーク、ソラシドエア、ジェットスター・ジャパン、Peach Aviation、中国東方航空、香港エクスプレス航空、大韓航空、ジンエアー、エアソウルなどが乗り入れる。アプリ完成後は各社アプリやホームページ、今年開港から450周年を迎える長崎港のホームページ(https://nagasakiport450th.jp)からのリンク、そして「傾斜市街地」と言われるほど起伏のある市内を登坂可能なビークル(電動アシスト付きのシェアサイクルや電動キックボード)で移動できるような選択肢も期待したい。
「電動キックボード」普及に向け議論加速 自民党MaaS議連PTが関係省庁に提言 他
5月20日 昨年、近所にシェアサイクルのポートが出来た。あれよあれよという間に増えて行くシェアサイクル。最近では、ポートが空になっている日も珍しくない。住宅の軒先に1台だけ、店先に2台くらいというポートも存在する。自宅近くには大学キャンパスが複数あり、一人住まいの学生も多く、山手線ループの中央に位置するため、JRのターミナル駅に向かうバス路線が交錯する。地下鉄の駅までは駅チカとは言えない距離だ。そこに最近新たな変化が起きた。従来の電動アシスト自転車に加え、電動キックボードが登場したのだ。全国の都市部在住の方で、自宅周辺に同様の変化が現れた方も多くいるのではないだろうか。5/18に自民党有志議員による「MaaS推進議員連盟マイクロモビリティプロジェクトチーム」の会合が都内で開催された模様だ。同チームの議題は電動キックボードの規制緩和だ。電動キックボードは、現行の道交法上では「原動機付自転車」に分類され、利用するには運転免許とヘルメットが必要とされ、公道での走行は車道限定だ。今回は関係省庁に対して「新事業特例制度」を活用した実証結果を踏まえ、最高速度等に応じた新たな車両区分を設け、走行場所、ヘルメット免許など運転者の要件等の交通ルールに係る制度見直しの検討、本年度の早期に関連法案の提出を行うこと(小型低速車の上限は時速20㎞/hの検討)。その他、通行空間の整備に関する検討、保安基準見直し、ナンバーや保険制度の検討、保安基準を満たさない機体の販売に対する措置や法令違反の運転に関しての取り締まり強化などを求める決議を行った。昨年12/4に開催された同会合では、「新事業特例制度」を用いた電動キックボードの公道での実証実験では、普通自転車専用通行帯の走行、機体の保安基準(前照灯の位置や番号灯)の緩和が行われた。席上ではヘルメットの任意着用、低速制御下(10-15km/h)での自転車歩行者道の走行、車道走行での適切な速度設定、免許不要、電動キックボードの実態に即した保安基準の設定、ナンバープレートに代わる機体識別方法、適切な保険負担、税負担の設定などの要望が出されている。その後、4/22にの同会合では「適切なルール作りに向けた要望」が発表されている。主に道交法上の扱いとしては制限速度20km/h、走行は車道の左端、普通自転車通行帯、自転車道、路側帯、ヘルメットと免許は不要(制限速度30km/hの場合は、双方必要)、車道が危険である場合は、制限速度を10km/hとした上で歩道への乗り入れを認めるべきとの内容だ。また量販店やECサイトで販売されており「公道走行可」と表示されていても(制動装置が一つしかないなど)違法な機体の運転者や販売者の取り締まりを警察に申し出、同日、警視庁担当者より取り締まり強化を行うとのコメントを得ている。警察庁で4/15に行われた「多様な交通主体の交通ルール等の在り方に関する有識者検討会」では、中間報告が取りまとめられ「車両区分」については、最高速度に応じ、①歩道通行者(~時速6km程度)、②小型低速車(~時速15km)、③既存の原動機付自転車等(時速15km~)との新たな方向性が示されている。電動キックボードに係る検討課題は、最高速度に応じて前述の3類型に分けるとともに、外部表示を行った上で走行場所について切替えを認める、②への交通安全教育の在り方、ヘルメットの努力義務化。状態が変化するモビリティについては最高速度設定と表示、ペダル付き原動機付き自転車の扱いなど。有識者委員の主な意見には、ヘルメットの着用は必要、子供たちが勝手に乗り回すのは危険、現状でもルールを無視する自転車により高齢者や障害者、子供等が危険に陥っていることから、歩道走行には反対、歩道で20km/hは速すぎる、徐行の場合のみ歩道走行、将来的には走行速度に応じ通行帯を分けるのが理想とある。聞くところでは、自動運転車に用いる車載用のLiDARメーカーは50社近く存在し、日本政府の主導により各自動車メーカーなどと協力しながら標準化を進めた「日の丸高精度三次元地図」の場合、精度は25cmとのこと。自民党や機体メーカーと警察庁がタッグを組めば、短期間のうちに国のCASE関連技術を廉価に利用し、賢い「交通整理」が出来そうだ。
東武鉄道、「添乗員付き自動運転」実現へ検証スタート!目指せGoA3 他
5月19日 東武鉄道株式会社の2020年度決算説明資料が、5/14に発表された。連結損益計算書の2020実績は、営業収益が496,326(単位:百万円)、2019実績の653,874からの増減は▲157,547となる。運輸事業単体では、2020実績は、営業収益が159,122(単位:百万円)、2019実績は215,427だから、増減は▲56,304となる。鉄道業の旅客人員(定期+定期外+特急)の2020実績は、677(単位:百万人)、2019実績が921だから、▲244(約73.5%)。旅客収入は、2020実績が101,744(単位:百万円)、2019実績は146,239だから、▲44,495(約69.5%)となった。コロナ禍による事業環境の変化を踏まえた全社的方向性は「持続可能な事業の推進」だ。事業構造改革の推進、グループ事業における統合と撤退、生活ニーズの多様化に応える事業の推進を三本柱とした。コロナ前の事業環境には戻らない前提で抜本的な構造改革を進める。2020-2021年度は、①鉄道事業の構造改革実現に向けたプロジェクトチームを発足、②非鉄道事業における収益拡大策や効率化の検討、③グループ事業再編の推進に取組んできた。2022年度からは次期中期経営計画(3か年)がスタート。より強靭な経営体質と事業環境の変化に即応できる機動的な組織を目指す。運輸事業における構造改革としては、ワンマン運転区間の拡大、駅遠隔システム導入によるサービス向上、ICT活用によるスマート保守導入などがあり、減収でも利益を確保するため体質改善(これまで以上のコスト削減)を推進する。しかしながら、東上線上りTJライナー増発(着席サービス)や、終電繰り上げ(生活様式の変化と夜間保守業務の負担軽減)など、社会の情勢を踏まえた輸送力の適正化やサービスの拡充も並走させつつ、利益の早期回復を目指す。運輸事業構造の変革に向けては、大師線の自動運転検証開始(2023年度以降、大手私鉄初「運転士が乗務しない自動運転」、西新井駅~大師前駅間)や、奥日光低公害バス(全長20kmのコースで「レベル4」)の実証実験計画、東武バスイーストの柏エリア(2019年11月~部分的自動運転「レベル2」)などで、鉄道やバスにおけるドライバレス化への布石を打つ。この中期経営計画は時節柄「経営環境の変化」の影響を強く受けた計画だが、東武鉄道の「長期経営構想」を見ると同社は決して「眠れる資産(浅草に始まる沿線都市や東武路線網の先にある日光・鬼怒川、栃木や両毛・会津エリア)」を忘れた訳ではなさそうだ。コロナ禍においてインバウンドの収入は僅かとなり、折からの緊急事態宣言やまん延防止等重点措置のにより、人流の抑制が声高に叫ばれるいま、県境を越える移動や観光地への誘導を積極的に図るのはご法度だが「長期経営ビジョン」においては「つなぐ」を「惹きつける力」と「稼ぐ力」へ進化させ、との件(くだり)がある。MaaSやDXを駆使した、沿線の住み替え支援や地域コミュニティー支援、通勤品質の向上と拠点エリアへのアクセス改善、歴史・伝統・文化・自然が豊かな観光資源と観光輸送復活の期待を背負う「東武版MaaS」の本領の発揮はこれからだ。乗車30万人達成を見込む「SL大樹」は、今日も北関東の雄の夢を抱いて美しい日光連山を背に大谷川を渡る。
「日本でも海外でもカーシェアは縮小中」話題のCASEにダマされてはいけない 他
5月18日 CASEの一角を支えるカーシェアリングの利用が落ち込み、取り沙汰されている。落ち込みの理由は、コロナ禍による感染対策の不安、利用希望時間に借りることが出来るとは限らない。また貸出後の車内外のクリーニングが不十分、燃料補給が出来ていないなど。また基本料金が課金されることから利用頻度が低いユーザーには不向き、また地方ではステーションの少なさや、そもそもステーションへのアクセスなどの課題も挙がる。街なかでステーションを目にすることが多くなったカーシェアにとっても、やはり「普及の壁」が存在するようだ。カーシェアリング業界では、これらの対策に手をこまねいているのか?「タイムズカー(旧:タイムズカーシェア)」では、昨年冬より車内に使い捨ての「除菌ウェットティッシュ」を置いたり、ステーションへの定期巡回時に利用者が手を触れる部分を中心に清掃・消毒作業を行うなど、新型コロナウイルスの感染防止対策を実施、また利用時の窓開け、マスク着用、利用後の手洗い、ゴミの持ち帰りなどを推奨している。またウェブサイトやアプリから「空き待ち設定」を利用してもらうことで、ステーションを中心に希望の範囲内にある車や、利用者が指定した車の予約キャンセルや予定より早く返却された車両の情報を受け取ることで、利用希望時間に車を利用できない状況の解消に務めてもいる。給油問題については15分単位で利用の場合、20リットル以上を給油をしたり、或いは水洗い洗車をした場合、30分の料金が割引される(双方を行うと60分の料金割引!)ルールを適用している。また新型リーフなど電気自動車の導入も進む。「NISSAN eシェアモビ」では、車内に「除菌スプレー」が設置し、万が一コロナウイルス陽性者による車両利用が判明した場合は、直ちに該当車両の利用・予約が停止され、消毒・一定期間の該当車両の利用・予約制限が行われる。カーラインアップは「LEAF(100%EV)」「NOTE e-POWER」「SERENA e-POWER」で、利用者にとっての給油負荷は軽減されているが、返却時に充電操作を行わないと運転免許証でドアロックが出来ず、課金状態が継続されるため、次の利用者が充電で不便を感じるケースはあまりないものと思われる。ホンダモビリティソリューションズのレンタカー・カーシェアサービス「Every Go」では、今年3/29から、シェアサイクルサービスと連携。ステーションまでの移動問題についても、シェアサイクルを利用できるよう「Charichari」との連携を開始した。各社「普及の壁」の捉え方と対策は様々だが、サービスの利用環境の整備に注力している模様だ。これまで日本の各地では、トヨタの「my root」や出光興産の飛騨市や高山市での実証実験、福岡県糸島市の「よかまちみらいプロジェクト」、東武鉄道とJTBが栃木県日光市で行った「日光MaaS」、三井不動産のマンション住民向け(MaaS)サービス、阪急阪神ホールディングスと三菱総研が西宮で行った「maruGOTにしのみや」、沖縄県の観光型MaaS、秩父市とゼンリンなどが連携して行った「山間地域におけるスマートモビリティによる生活交通・物流融合事業調査・設計業務委託(秩父モデル)」など、何れもカーシェアリングサービスを織り込んだMaaSが実証されて来ている。教科書通りのカーシェアシステム運営から、地域に貢献できる利便性の高い「サービス」と採算性を打ち出せるなら「普及の壁」を崩すことはさもない筈だ。まだ先の話とはなるが、一般道における自律運転を社会実装できる段階に至れば、電磁誘導されるゴルフカー方式でなくても、全国の免許返納者市場を取り込むなど、市場拡大の余地はあると考えられる。
LINEで身近なMaaS推進。Azure活用4社と共同プロジェクト 他
5月17日 LINEがMaaS市場に参入する。興味は2点ある。一つは、フォロワーとしての同社の目論見(ポジショニング)、二つ目はMaaS普及への貢献だ。イノベーター理論に基づくと消費市場の段階は4段階。革新者(ハイテク好きな「おたく」)、初期採用者(新しもの好き)、追従者(コスト効果や安定性を重視)、遅滞者(保守派)があり、初期採用者と追従者の間に「普及の壁」が挟まる。5/14にLINE株式会社が配信した<LINE、「Microsoft Azure」のパートナーと全国のMaaSの普及拡大を支援するための共同プロジェクトを開始>によると、全国で普及が求められる(MaaSは普及期を迎えるとの立場)MaaSは、交通機関をアプリで検索から利用まで出来るサービスや、観光、小売、働き方改革などの他産業を移動サービスと掛け合わせる取り組みも増えており、とあり今後の普及拡大にあたっては、認知・受容が課題であり、顧客目線で分かりやすく利用しやすい移動サービスが求められ、新しいUX(ユーザーエクスペリエンス)の重要性が高まるという。同社は「MONETコンソーシアム」に参加し、MaaS領域におけるビジネスを検討してきた(どこで強みを発揮できるか検討してきた)経緯があり、これまでも広く提供してきた「LINE API」を駆使して、利用者の移動体験を、LIFT/LINEミニアプリを使うことで旅マエ、旅ナカ、旅アトの3つのシチュエーションにおいて適切な機能を提供する。ここが同社の立ち位置と言えるだろう。旅マエでは、チケット購入や予約、決済、そしてグループ旅行については複数人分のチケットなどの購入をカバーし、仲間へのシェアを可能にした。旅ナカでは、経路検索や混雑情報の提供、予定外の出来事や、予定外の混雑状況により計画通りに移動できなかった利用者も、外部の地図サイトや自社の経路検索サイトと連携し、継続したアクセス情報を提供・フォローする。旅アトでは、一度サービスを利用したユーザーに対して「お得な情報(土産物の購入に繋ぐ)」をLINEメッセージで配信したり、メッセージからユーザーの再利用(割引クーポンなどを配信、再予約・決済)に繋ぐことも出来る(リピートに繋ぐ)。https://lineapiusecase.com/ja/usecase/maas.html でQRコードを読み込むと、UXの一連の流れを疑似体験出来るので、実際にアプリを体験してみた。先行している諸MaaSアプリの礎あってこその成果とも言えるが、これまでのMaaSアプリ基本機能の実装に止まった感が強いアプリと比較し、エンドユーザーにとっても、MaaS運営に加わる交通事業者、宿泊事業者や飲食店、自治体などの「顧客視点」を良く捉えたUXの着想はこれまでも多くのサービスを立ち上げて来たLINEならではで、さきの「普及の壁」にも挑みつつ、自治体と連携したMaaSの普及にも期待出来そうだ。
なぜ、完全自動運転はすぐ実用化できないのか 他
5月14日 自動車部品製造業の巨人、コンチネンタル社。1871年にドイツのハノーファーにおいて四輪馬車や自転車用のソフトラバー製品、ゴム引き素材、ソリッドタイヤなどを生産すべく創業、1892年にはドイツで初めて自転車用の空気入りタイヤの生産を開始した。現在はテレマティクスやブレーキ制御、シャシー制御、インテリアエレクトロニクス、パワートレイン、HV(ハイブリッド)、先進運転支援システムなども手掛け、自動車に関わるシステムを一手に引き受けるメガサプライヤーだ。「コンチネンタル・モビリティ・スタディ2020」によると、新型コロナウイルスの感染拡大により、各国(ドイツ・フランス・米国・日本・中国)では、感染を避けるため自家用車や自転車利用が増えたのに対し、公共交通機関や相乗りを利用する人は大幅に減少した模様だ。これらの国々では、パンデミックによって「個人専用の移動手段」の利用が高まった結果、道路の混雑が増加傾向にあるとも。パンデミック終息後については、この傾向が続くものとの見通しを示唆した。根拠には、パンデミックを考慮して自動車を購入したり、購入を検討している人が6-15%(中国では58%)存在していることや、同じく中国では(国情もあろうが)カーシェアリングや相乗り利用を増やす、或いはレンタカーに頼ると回答した人が比較的多くいたという。米や独、仏では調査回答者の半数以上が①自動車を毎日・ほぼ毎日利用、②約1/3は週に一度は車を運転している。中国では①が43%、②41%であった。日本の場合は、毎日または少なくとも週1回と回答した人は1/3だ。回答者の13%は全く運転をしていない。全体的には欧州よりもアジア地域の人々が、公共交通機関の利用を避け「個人専用の移動手段」(自家用車や自転車など)を求めていることが分かった。同社における研究の重点分野の一つは、EV*だ(調査はドイツ・フランス・米国・日本・中国において実施)。各国で行われたコロナウイルス感染拡大防止策であるロックダウンなどの移動制限の影響で、移動需要は大幅に低減したが、これらの対策の緩和に伴い、移動需要は正常に戻りつつあるも、多くの人の行動は変容を迫られ、本調査においてもその変化を見て取ることが出来る。調査の結果、人々は前述の通り自動車や自転車による移動を選択し、(地域性はあるものの)公共交通機関の使用は大幅に減少している。ドイツでは6%、米国では15%、中国では58%!が車を購入したか、中長期的に購入の検討をしている。また、都市部において「カーシェア」の概念は広がったが、実際の利用はさほど進まず、自家用車を所有する割合の高い農村部においては、今後もその傾向は続くと予測されている。「新たなモビリティ」の概念は、米国の都市部などでモビリティの概念が形成されたが、人々の日常にはまだ至っていない模様だ。中国では10%がこれらのサービスを定期的に利用していると回答しているが、今後、車の購入を検討している人々が多いため、カーシェアリングは伸び辛いとも予測される。EVは民間輸送をより持続可能なものとするが、まだ温室効果ガス排出量を削減できるほどの販売量には至っていない。ドイツではEV購入の意欲が高まりを見せるが、購入に結びつけることは難しいようだ。現実的に購入に至る人が、まだ少ない理由は、充電ステーションの欠如、航続距離、長距離の移動が必要となる場合、事前に「給電設備の把握」や「充電待ち」が必要であるなど、実用性にまだ課題が残るためだ。これについて、各国の政府はコロナで冷え込んだ消費の刺激策の一環として利用者の購入促進を図るため、「購入プレミアム」(ドイツでは保険料の引き上げなど)を提供したり、充電インフラの拡大に注力している。日本でも、政府はメーカーを対象とした「イノベーション・プレミアム」を提供している。今後はこれらの施策と共に消費者向けに環境整備・拡充のアピールが必要になる。EVの航続距離への不安については、通常ユーザーの移動範囲は短く、充電インフラについては自宅や職場、公共スペースでの整備が進んでいる。これら技術的な側面での購入促進策以外にも、EVの普及に伴う環境負荷について、消費者から「環境にやさしいEV」への理解を得、支持を増やして行く必要がある。これらの消費者の購入の障壁となる不安は「構造的な性質」に起因するもので、長期的にはプレミアムで克服できる可能性は低いとされる。EVには、このほか「卵が先か、鶏が先か?」という課題も存在する。インフラについては、EV普及のため、先にこれを拡張する必要があるのか、車両の(普及)数と合わせて拡張するのかという問題。また、メーカーが用意するモデルについても、バイヤーからはモデルの選択肢が少なすぎるとの指摘もあるようだ。これについては、メーカー側もモデル拡充の方向に動いているようだ。これら、さまざまな課題を持つEVの普及のカギを握るのは、自動車の成長市場と言える中国だ。中国では消費者の購買意欲は旺盛であり、意識的なギャップも少ない。また、調査対象者の46%は以前よりも頻度高く車を使っていると回答している。*本文においてはバッテリー駆動の車両と表現。