4月9日 MaaSは街を変えるか?大手不動産会社の三井不動産は、公共交通事業部門を持たない総合不動産会社だが、MaaSによる不動産のイノベーションに取り組む。そもそも同社はMaaS以前に「テクノロジーを活用した不動産業そのものをイノベーション」を掲げる。新型コロナウィルス感染症の拡大(国内では2020年初め~)を機に、人々の生活の有り様は大きく変わった。感染拡大防止の観点であった非接触やソーシャルディスタンスは、技術的革新の波と相まって、いつしか人々の生活をDX(デジタル・トランスフォーメーション)という大きな波に呑み込んできた。人々の暮らしや働き方の変化は、不動産商品であるオフィス、住宅や商業といった境目をなくした。働く場所はオフィスから、街のカフェやシェアオフィス、自宅へと広がりを見せたのも、その一例だろう。同社は従来の箱モノというセグメントから視点を移し、人々の暮らし方(行動)をベースとした顧客ニーズや成長戦略を考える。一見、畑違いともいえるMaaSの可能性を三井不動産がフロントランナーとなり開拓するのは、そのように人々の行動変容の捉え方について、同社が独自の視点を持つところが大きいのではないだろうか。三井不動産は、これまで評価を受けづらかった地域の特徴として、アクセスのし辛さがあるのではないかと考えたようだ。バスや自転車など複数の交通手段がないと辿り着けない場所や、鉄道が通っておらず、高い運賃を必要とするタクシーや行く先や料金が分かりづらく、長い待ち時間を要する路線バスなどが、それである。MaaSはこれらの問題を掌の上で可視化し、移動者の希望に近い移動手段を選択可能で見やすい情報にして提供してくれる。MaaSにより、目的地までの経路検索や、宿泊先などの予約、料金の決済が容易になった結果、人々の行動はどのように変容して行くのか?人々は、住環境や好みにあった交通手段(カーシェア・バス・タクシー・シェアサイクルなどのモビリティ)とルートを選び、好みの移動スタイルで行動・活動範囲を拡大し始めた。三井は不動産ユーザー起点で移動の先に置くべき提供価値(地域個別サービス提供・ライフスタイルの創出・個人にとって最適な移動の実現)を「魅力的な」ものに昇華、あわせて多様な移動手段を提供し「顧客」の満足度を高めて行く。「寛げる場所」や自由で選択可能な「移動」、「魅力的な移動目的」が備わる街づくり、さすがは街をつくる会社、見事に住まう人の心のツボを押さえている。MaaSの導入事業に悩める自治体へのヒントにはならないか。
MaaS・CASE関連の最新ニュース(29 / 65ページ目)
トヨタ系部品4社の自動運転ソフト会社、NTTデータグループと資本提携 他
4月8日 4/5に株式会社J-QuAD DYNAMICSが、次世代自動運転・先進安全支援領域におけるソフトウェア開発を強化するため、車両ソフトウェア開発環境技術を持つ、株式会社NTTデータオートモビリジェンス研究所(以下ARC)に資本参加した。J-QuAD DYNAMICSは、デンソー、アイシン精機、アドヴィックス、ジェイテクトが出資する自動運転・車両運動制御(走る・曲がる・止まる)のための統合制御ソフトウェア開発、エンジニアリングサービスなどの事業を展開する。J-QuAD DYNAMICSは、これまでも4社が持つ自動運転・車両運動制御等の技術知見を結集し、ソフトウェア開発を効率化、開発のスピードアップを図るとともに、完成車メーカーなどのニーズに合わせた開発を行うことで、付加価値の高い車両統合制御ソフトウェアを提供してきた。ARCは自動運転ソフトウェアの安全評価・検証に必要なシナリオ自動生成(交通状況・危険シーンの想定)及び模擬実験環境構築の技術に秀でる。熟練ドライバーのインテリジェンスに着目、完全自動運転の実現に向けたハイブリッドAIの研究開発"GARDENプロジェクト(ARCの自動運転ハイブリッドAI研究開発の総称)"に取り組んできた。自動車関連部品・工作機械メーカーの集合体であるJ-QuAD DYNAMICSが、完成車メーカーのニーズに応じるべく新たな戦略へと舵を切ったとの見方も出来る。J-QuAD DYNAMICSが欲するのは、次世代自動運転・先進安全支援の開発をスピーディーに行うことができるソフトウェア開発環境(管理ツール・開発ツール・仮想シミュレーション・シナリオ生成技術)だけではないと思われる。ソフトウェアの開発環境の整理・統合や効率化だけであれば、ARC以外にも選択肢はあると思われるからだ。ARCのホームページにある「ハイブリットAI」とは、「データ駆動型AI」と「理論知識型AI」のハイブリッドの意味だ。データ駆動型AIとは言うなれば、脊髄反射。「反射」の神経回路を指す。これは第一世代の自動運転が用いてきたデータに基づく統計・確率的なAIだ。ARCは、ここに「大脳」を必要とする次のステージを見ている。反射神経と大脳をつなぐ「ハイブリッドAI」は、産総研人工知能センターなどでも研究されている。「人に寄り添うしなやかな」人工知能とは、大量データ処理に基づく「人間を超える」人工知能と、人間の知能をモデルとする「人間に迫る」人工知能の技術を融合させることにより、人間と協働できる、人間に理解でき、人間が協働出来る人工知能を実現で来ると言われる。人工知能が、渋滞をかわし黄色信号をすり抜け、街の話題に通じ、人懐こく目的地をお客に尋ねながら、巧みにクルマを操るタクシードライバーに代わる日はそう遠くないのかも知れない。
グーグル兄弟会社の自動運転部門Waymo、クラフシックCEOが退任を発表 他
4月7日 SIP(内閣府戦略的イノベーション創造プログラム)が「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)自動運転(システムとサービスの拡張)研究開発計画」(令和2年5月14日)において、自動運転に関する安全性技術評価について言及している。これまでの公道による実車を用いた実証実験を中心とした評価方法を、仮想空間における安全性評価環境のデータプラットフォームを継続的に構築・運用出来るよう2022年度末時点までに事業化する。またインターフェイスの標準化を図りつつ「第3者評価機関での活用に向けた業界内のコンセンサスを確立」する。仮想空間での安全性評価環境の構築には、神奈川工科大学、立命館大学、三菱プレシジョン、SOKEN、日立オートモティブシステムズ、デンソー、パイオニア、日本ユニシス、SOLIZE Engineering、ソニーセミコンダクタソリューションズが参画する。これまでの評価方法では、必要な走行環境条件を恣意的に設定し、自動運転車が必要な安全性を満たしているのかどうかの判断が困難だった。現状の自動運転車の開発において膨大な時間を要する実車による安全性評価を効率化できる。仮想環境における安全性評価環境を構築するため、産学が連携して車載センサーで認識される外界を模した「環境モデル」、評価シナリオに基づきテストデータを生成するツール、車載センサーとして用いられるカメラ、ミリ波レーダー、LiDARの実センサーの検知機能を模した「センサーモデル」、センサーによる検知結果に基づく自動運転車の運動制御を模擬するための自動運転モデルの開発等を実施する。開発したモデル及びツールをモジュール化して拡張的な機能として利活用を可能とするため、各モジュール間のインターフェイスを定義し、インターフェイスの標準化を進め、仮想空間における安全性評価環境を構築する、としている。ちなみに、三菱プレシジョンの研究開発用ドライビングシミュレーションシステム「D3sim」の研究開発用途向けの製品における研究開発テーマは、4つのテーマ(①安全/安心、②快適、③環境/インフラ、④ご要望に合わせて)で開発・評価などが進む。①については、レーンキープアシスト機能、ACC(Adaptive Cruise Control)、AFS(Adaptive Front-Lighting System)、衝突被害軽減ブレーキ、横滑り防止機能、車車間及び路車間通信システム、センサ、レーダ、カメラ等、警報システム、HILS(Hardware in the Loop Simulation)を用いたECUの開発、車両性能・走行安全の評価、ドライバーの運転特性/挙動研究の開発・評価。②については、窓外司会の視認性の評価、インパネ部機器、ステアリング、ミッション、車内IT、シートの乗り心地/疲労の検証・評価、ドライバーズポジションの検証・評価。③では、燃費性能研究/エコドライブ支援システム、交通流改善/渋滞解消の研究、道路設計の評価、④では、低予算対応/廉価版システム、短期間貸し出し/レンタル、移動デモンストレーションや展示に最適なシステム、D3sim複数台導入のメリットが用意されている。(2021年4月7日時点)
自動運転バスが“絵にかいた餅”で終わる理由 他
4月6日 自動運転サービスの導入検討が各自治体で進み、自動運転サービスのビジネスモデルや事業自体の採算性についての議論が取り交わされることと思う。国土交通省に「自動運転サービスの採算性の検討事例」との資料がある。試算の前提は、導入車両は6人乗りゴルフカート+牽引車(貨物積載用)、インフラは電磁誘導線を敷設した場合:6km×上下線、運行条件は一日5往復(所要時間は片道30-40分)、運行体制は、安全監視員(1名)、運行管理センターオペレータ(1名)、沿線人口は600人、430世帯(6km)となっている。初年度の年間支出入の比較は、【支出】一般車両による運行では870万円/年(運転手とオペレータ計=人件費610万円、減価償却費=車両費70万円)、燃料費30万円、運行システム費、諸経費、修繕費・利子)となる。これを自動運転車による運行に置換えた場合(有償ボランティア活用)560万円/年としている。(乗務員とオペレータ計=人件費320万円、減価償却費=車両費80万円)、電気代7万円、運行システム費、諸経費、修繕費・利子、これに減価償却費=(電磁誘導線)190万円)が加わる。*車両購入費は補助を活用する前提。【収入】430万円/年となり、内訳は高齢者等の送迎210万円、商品配送155万円、自動送迎34万円、みかん搬送28万円、これに道の駅等地元企業・団体からの支援、自治体からの支援(既存コミュニティバスの補助の充当、道の駅等における介護活動の実施による運行補助の活用等)が加わる。自動運転車による運行に切り替えた場合、初年度は約130万円の赤字が出る計算だ(この赤字は10年以内に100万円以下/年に抑制される見込みになっている)。計算のモデルとなったA市におけるコミュニティバスの運行状況を見ると、運行の主体は自治体である。車両はマイクロバス2台、大型ワゴン3台、大型ワゴン1台、運行路線は、9路線15系統、運行条件は各路線とも2-5.5往復/日、所要時間は片道30-160分、年間の利用者数は、46,800人/年(H30年度見込)、うち自動運転路線と並行する路線では、14,000人/年だ。収支は支出/収入とも4000万円/年で、トントンだが収入の内訳には自治体負担が2900万円(約300万円/路線)とある。つまり自動運転車両を運行することで、年間130万円の赤字が出るが、単一路線で比較しても、現行のコミュニティバスより、自治体の負担は減少するということらしい。この試算が成り立つには、車両購入費の補助や道の駅等の地元企業・団体からの支援、自治体の支援の割合が重要となる。この発想で終始するなら、SDGsが示す「持続可能な」地域の足は作り得ない。赤字路線廃止の負のスパイラルに逆戻りだ。個社のリストラクチャリングやコスト削減といった努力の範疇は超えている。重要なのは、運行主体側(自治体や協議会、公共交通事業者を含めた参加企業)の経営努力だろう。国はビジネスモデルの情報収集や公開に本腰を入れるべきだし、自治体は自治体クラウド*の導入を思い出し、ベネフィットが一致する周辺自治体や遠隔の都市部自治体との「割り勘」の道を模索してはどうだろうか。自治体間の取引にも可能性がある。極端な例だが、都市部で不足する病床も地方なら場所の確保がしやすいケースもあるだろう。自治体間におけるCO2排出権取引の可能性なども研究されているようだ。地方で産出した太陽光や風力などで生み出した電力を都市部に送るなどの手もあろう。都市にないものが地方にあり、地方にないものは都市にあり。互いにメリットは享受できる筈だ。*自治体クラウド:地方公共団体が情報システムを庁舎内で保有・管理することに変えて、外部のデータセンターで保有・管理し、通信回線を経由して利用できるようにする取組み。複数の地方公共団体の情報システムの集約と共同利用を進める事により、経費の削減及び住民サービスの向上等を図るもの(「経済財政運営と改革の基本方針~脱デフレ・経済再生~」(平成25年6月14日閣議決定)24頁脚注より)。
警察庁、自動運転「レベル4」実現のため必要な法改正を検討 他
4月5日 この3月警察庁より「自動運転の実現に向けた調査研究報告書」が開示されている。道路交通法を所管する警察庁では、交通の安全と円滑を図るため、技術開発の方向に即したSAE(Society of Automotive Engineers International)レベル4の自動運転実現に向け環境の整備等を図ることを目的とし①「SAEレベル4の自動運転に関するルールの在り方」、また②「自動運転システムがカバーできない事態が発生した場合の安全性の担保方策等」について各種の調査・研究を進めている(令和2年度警察庁委託事業としてみずほ情報総研が受託)。本検討委員会は令和3年3月で第5回を迎える。調査研究の全体像としては、③SAEレベル4(運転者の存在を前提としない)の自動運転の実用化を念頭に置いた交通関係法規上の課題に関する調査・検討の実施、④SAEレベル4の実現を目的とし実施されている実証実験の視察、⑤システム開発者、研究者等からのヒアリング(自動車メーカー、大型車メーカー、研究機関等34主体 *実施期間:令和2年9月~12月まで)、⑥諸外国(オーストラリア、ドイツ、英国)における制度に関する資料の収集・分析。*但し警察庁は令和元年までにも、米国、フィンランド、スウェーデン、UAE等において動向を調査している。この時点では、自動運転車と走行環境や人との協調、個別に自動運転を認める(過渡的認可)、運転者が存在しないサービスカーの先行検討、自動運行時の制御者への免許制度、現行免許は前提に出来なくなる、遠隔監視者への資格の必要性、自動運転車が自動停止した後の対応、故障時の対応(主体や方法)や中長期的な(事故の)被害者支援の整備や周知などについて意見が出されたようだ。警察庁では、これまで同レベル4の実用化を目指す公道実証実験について、「自動走行システムに関する公道実証実験のためのガイドライン」や「自動運転の公道実証実験に係る道路使用許可基準」を策定・公表してきた。同許可基準は、遠隔型自動運転システムの公道実証実験及び手動による運転時は通常のハンドル・ブレーキと異なる特別な装置で操作する自動車(以下「特別装置自動車」)の公道実証実験を実施するための道路使用許可の申請に対する取扱い基準であり、令和元年9月に策定・公表されたが、令和2年9月には自動運行装置を備えた実験車両を使用する場合における監視・操作者に係る規定を改訂、特別装置自動車の行動実証実験に係る道路使用許可申請について合理化を行っている。調査委員会がシステムの研究開発、実証実験等に取り組んでいる自動車メーカーや大学の研究者等に対し、令和元年度に実施した開発動向などに関するヒアリングの結果、検討委員会の委員やオブザーバから「限定地域での自動運転移動サービスの実用化が最も求められている、自動運転移動サービスの類型は様々であり、まずは共通事項や一般定な事項について包括的な議論をするのが良い」、「運転者の存在を前提としないレベル4については国際的な議論も踏まえ、整理する必要がある」などの意見が上がったようだ。これらの意見を踏まえ、SAEレベル4の自動運転のうち、早期に実用化される可能性がある自動運転移動サービスを検討の対象として議論がなされた。検討の対象となるSAEレベル4の自動運転はODD(運行設計領域)内では、自動運転システムが運転操作の全てを代替するものであるため、原則として従来運転者に求められていた運転操作に係る対応は自動運転システムが代替するものを想定するが、他方で運転操作に係る対応のうち定型的・一般的なルールについては、多くの回答主体(自動車メーカーや大学の研究者等)が、ODD内で自動運転システムが対応と回答する一方、現場での個別具体的な対応(例:現場における混雑を緩和するため警察官による車両通行禁止等)についてはODD内で自動運転システム以外が対応、またはODD外とする、または未定との回答であった。またサービスが実用化される可能性がある2022年頃には、公道において自動運転車と自動運転システム非搭載の従来型の車両が混在し、かつ自動運転車の割合が少ない過渡期にあたるため、委員会は議論の前提を「自動運転システムは、ODD内において自動運行中は運転者が担うべき運転操作に係る対応のうち、定型的・一般的な交通ルールに関する認知・予測・判断及び操作の能力の全部を代替する。またODD外となるおそれやシステムが正常に動作しないおそれがある場合等にも適法かつ安全な対応をとる。ODD外については、従来の運転者が存在する場合のルールで対応する。自動運転車と非自動運転車が混在することを想定する」ものとしている。更に昨年度の調査研究における国内ヒアリングの結果では、従来の運転者の存在を前提としない自動運転移動サービスについて「未定」と回答した4主体を除くすべての回答主体(18主体)から、従来の運転者や乗客等単なる利用者ではないものの、自動運行にあたり状況把握、連絡等の役割を果たす者が遠隔(うち1主体は車内とどちらか)に存在する必要がある旨の回答があった。検討にあたっては、このような運行に携わる者を「関与者」と呼称し、その位置付けや役割については、以下の通り想定し、関与の内容や程度について検討することとした。それによると「関与者」は遠隔にのみに存在する(車内には存在しない)。遠隔からの運転操作は行わない。一人で複数台の自動運転車両に関与する、としている。加えて、自動運転システムによる操作や人間による関与等の組合せにより、従来と同等以上の安全性を確保する。また国際的な議論や技術開発の進展等にも留意して検討する、としている(以上が同報告書の13ページまでの内容だが、次項以降は次回以降とさせていただきたい)。
交通機関をITで結ぶ「MaaS」 JRが道南で実証実験へ 他
4月2日 JR北海道が4/1~9/30まで半年に及ぶ「道南MaaS」実証実験を開始した。東北新幹線5周年と「東北ディスティネーションキャンペーン」期間に合わせ、道南エリア(函館市、鹿部町、森町、七飯町、北斗市、木古内町、知内町、福島町、松前町、上ノ国町、江差町、厚沢部町、乙部町)*渡島、檜山の2市12町を実施エリアとした。道南MaaSのWebスマホサービス(https://lp.maas-portal.com/donan/)では、スマホ上で購入可能な2種の電子チケット(①「はこだて旅するパスポート(1日券/2日券)」②「江差・松前周遊フリーパス(2日券/3日券)」)を用意した。①の函館旅するパスポート(¥2,690)でも、JR函館本線の函館~森間(渡島砂原経由を含む)の普通列車普通車自由席、函館バス(函館市・北斗市・七飯町・鹿部町・森町・木古内町)全線、函館市電全線、道南いさりび鉄道全線が乗り降り自由となる。Webスマホサービスは「TOHOKU MaaS」と共通だ。メニューの観光ガイド>エリアから探す(現在地周辺から探す、利用シーンから探す、スポット名から探す、おすすめスポット、モデルコースなど、いろいろな探し方ができる)で、地図上の道南を選択。例えば函館戦争中、1868年12月に江差沖で沈没した幕末の軍艦「開陽丸」(実物大で復元!)が係留されている「開陽丸記念館」見学したい場合は、美しい写真と施設の営業時間、行きたいエリアの簡単な紹介文で構成されるメニューから希望するエリアを選択し、エリア・施設情報の詳細ページで住所欄にある「マップ」の文字を選択すると、マップページへリンクする。このページの最下段にある「経路を検索する」ボタンを押すと(本Webスマホサービスを初めて利用する方は、ここで一旦GooglePlayの「JR東日本アプリ全国乗換案内(電車・新幹線・バス)・鉄道の運行情報・駅情報(構内図・時刻表)無料」が示されるので、アプリをスマホにインストールしよう。このアプリを利用し、目的地までのルート検索を行ったり、東日本エリアの運行情報を得たり、駅の情報(構内図・時刻表)、列車の位置や遅れ、到着見込み等の情報をリアルタイムで閲覧できる。また「えきねっと」で特急券の購入も可能だ。JR北海道の20年度の第2四半期連結決算(4-9月)は、新型コロナウイルス感染症の影響で、全事業セグメント(運輸、小売業、不動産賃貸業、ホテル業、その他)において減収。連結営業収益は335億円もの大幅減収となった(過去最大の赤字)。減収を受け自助努力等で費用の削減を図っている、賞与削減、役員報酬の自主返納、列車の減便、減車、広告宣伝費の縮減などの経営努力を続ける。特別損益に国からの支援73億円とグループ会社からの配当金13億円を計上しての結果である。今回の「道南MaaS」のWebスマホサービス一つを見ても、その努力の程が伺える。今こそが頑張り時だ。
JALとJR東日本がMaaS領域で連携、旅行中の移動や観光をシームレスに 他
4月1日 旅の面白さとは何か?ある人にとって旅は、行きたい所へ行き、見たいものを見、食べたいものを食べ、会いたい人に会う。またある人にとっては、旅程そのものが楽しみであり、目的地へ到達する手段を発見する手間や失敗や経験が、またとない醍醐味となる。またある人にとっては、季節や環境、土地の人との交流、その土地で行われる催し物や祭り、伝え聞いた秘境の宿、思い出の土地、ルーツ探し。ある人にとっては、新たな生活の場、将来の事業の材料を掘り出す機会。仕事人にとって旅は交渉の場であり、チャンスを掴む場でもある。気のおけない仲間との旅行や、なかにはお忍び旅行だってあるかも知れません。実証実験の名のもと、各地に雨後の筍の如く現れ、猛スピードで統合されてゆくMaaSサイトやアプリは、旅行者にとって移動の利便性向上や時短や効率化、コストダウンなどのために存在する。AIがサービスのマトリクスの空白を埋め尽くす時代、「知らないこと」を探す手間の面白さや、「非効率」から生み出されるコミュニケーションの価値に経済性は見い出せないものか?3/29に日本航空とJR東日本は、MaaS領域の連携を発表した。大規模なプラットフォーマーのMaaSサイトやアプリであるほど旅の「新しさや多様性」、言うなれば顧客の求める「余白」の提案と「移動ツールとしての利便性」、「普段使い・ビジネス」と「旅行」モードをアプリ上でどう案分するのか?交通事業者でありながらツアーガイドとしてのセンスが求められる。顧客が空と鉄路の老舗に期待するのは「繋がりました!」の先であり、MaaS時代の旅心は複雑だ。JALは航空事業を通じて、地域特産品の発掘などの地域産業支援や、交流人口の創出による観光振興など地域活性化に向け、この4月から「JALふるさとプロジェクト」を展開する。4月は「東北広域特集」の第一弾として宮城・岩手・福島・青森を、5月には第二弾として山形・秋田を特集する。その中の施策で、訪日外国人向け東北周遊ツアーを設定している。同企画はポストコロナのインバウンド需要の回復を見込み、JR東日本とタイアップする。訪日外国人向け鉄道パス「JR EAST PASS」を、JALが海外で展開する訪日ダイナミックパッケージ「JAL Vacations」で販売する。また企画内で東北各県の空港間を運行するチャーター便とJRの観光列車を組み合わせた「東北DC Air & RAIL」を提案する。老舗の仕掛けは「良き旅の道連れ」となり得るか楽しみだ。
いすゞ、日野、トヨタ 3社協業で共同記者会見を開催 他
3月31日 3/24にトヨタ自動車、いすゞ自動車、日野自動車の3社は共同記者会見を実施、商用事業での協業、いすゞとトヨタの資本提携を発表した。なぜトヨタが商用車主体のいすゞや日野と手を組むのか?各社のスタンスを整理してみた。トヨタ自動車は日野との連携について「商用車は日野独自の事業であり、乗用車を基本とするトヨタのクルマづくりとの関連性を見出すことができなかった」としていたが、自社の強みともいえるCASE技術の普及には、商用トラック分野(日野といすゞで市場の8割を占める)の取り込みが必要と判断、3社連携には相互補完関係が成り立つと読んだようだ。また豊田社長は東北訪問を経て「震災を忘れない(資材調達や雇用、納税による地元への貢献)」との感を強めた様子も伺える。日野自動車は、ユーザー目線(物流会社へのCASE導入メリット)や現場中心(就労者の労働環境の改善)の実現を念頭に置く。顧客である国内物流業者6万社の課題は①長距離輸送ドライバーの人手不足(交通事故、長時間労働、荷積み・荷下ろし作業の低減)や、短距離配送ドライバーの負荷の低減(e-コマースの進展、多品種少量・時間指定宅配などに起因)、②「納入時間・場所指定」による、積載効率の低下(50%以下)の改善。③カーボンニュートラルにおける、CO2削減のため、EVトラックを広く普及させ、個社を超えた協調(物流の効率化=商用事業プラットフォーム)が必要と読んでいるようだ。就業環境を改善し、ドライバー・物流の担い手を増やしたい。いすゞ自動車は「社会のためにイノベーションを起こす力、姿勢が必要」としている。CASE対応や(全産業において)グリーン成長戦略対応が重要としている。理由は一つの産業の(戦略への対応の)遅れが全体の調和を乱す構造である為だ。カミンズやVOLVOとの提携もこれらの延長線上にあるようだ。具体的には、日野と培ってきた商用事業基盤にトヨタのCASE技術を組合せ、グリーン水素を活用したFCトラックの普及を図り、国内のCASE対応やカーボンニュートラルへの貢献、日野の技術を小型商用車に適用したいのではないか。国や県は地元産業の復興の象徴ともいえる浪江町の水素製造拠点で製造される「グリーン水素」(水素製造拠点「FH2R」:NEDO、TOSHIBA、東北電力、Iwatani)を商用車へ普及させようと試みる。3社の創造するFCトラックに拠る物流網は「グリーン水素」最大の消費先となる見通しだ。2020年3月7日に開所した世界最大規模の同施設は、地元の企業や雇用を守り、よき納税者ともなる。一方、日産は浪江町に「新しい移動サービス」の研究拠点を同町に開設する。浪江町では人口減少と高齢化の進む自治体での「交通モデル」を研究し、持続可能な公共交通の確立を目指し、新年度からは南相馬市と双葉町に実験範囲を拡大する。トヨタは、2020年12月に新型FC大型トラックのプロトタイプを米国で公開している。このFCトラックには同社の「MIRAI」で培った第二世代のFCシステムを採用している。国内でも日野と共同開発するFC大型トラックを、アサヒHDやヤマト運輸の物流で使用、環境性能や商用車としての実用性を検討してきた。またコンビニ大手3社とFC小型トラックの導入に向けた実証も行う予定だ。またFCバス「SORA」を販売、JR東日本や日立製作所と連携し、燃料電池と蓄電池を電源とするハイブリッド車両「HIBARI」の開発にも参画している。今回の3社の連携は、顧客となる物流事業者の電動化需要に道筋を与え、同時に3社のEV/FCVの開発コストを押し下げ、インフラ整備(国や地元、自社顧客やエネルギー産業など広範囲への貢献)、カーボンニュートラルへの貢献を加速する意味を持ち、物流業界の就業者にとっては労働環境の改善にも寄与する。新会社となるCommercial Japan Partnership Technologies(コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ)の担う期待は大きい。
自動運転実証に挑んだ自治体、本音と展望を語った…SIP地域サミット 他
3月30日 内閣府の「未来を変える自動運転ショーケース SIP第2期自動運転中間成果発表会」(オンライン展示)が終了した(展示期間は2021年4月30日まで、Web上でコンテンツを閲覧可能)。仮想会場の展示領域は「Society5.0と自動運転」「自動運転社会の実現を目指す技術」「自動運転の社会実装」「人と親しむ自動運転」「社会を見据えたSIP自動運転」。E1展示コーナー(社会を見据えたSIP自動運転)には「アカデミア連携による自動運転の開発研究において、多様な分野の知見を集約する取組を推進し、確実な社会実装を支援します」とある。2019年4月に「モビリティ・イノベーション連絡会議」が発足、東京大学モビリティ・イノベーション連携研究機構(UTmobl)が事務局を担当する。全国13大学、4つの国立研究開発法人などから構成されている。また学術論文などから自然言語処理により抽出されたキーワード(*検索キーワードではありません、念のため)も閲覧可能だ。全国の中山間地域の取り組みについても、情報が整理・集約されている。2017年から数え、短期の実証実験が10箇所で実施された。動画も豊富に掲載されており貴重な展示内容となった。展示として面白かったのは、「高精度3次元地図を効率的に更新するため、車両プローブ情報等で道路変化を検出する仕組み」の研究だ。高精度3次元地図の更新は地物ごとに行われるが、いつ、どこで、どのような変化があったかを把握する必要があるが、現状では道路構造の変更を伴わない信号機や道路標識の新設、廃止等の変更情報は十分に整理・把握出来ていないという。3Dマップを構成する情報には、即時性の高い方から動的情報(周辺車両、周辺歩行者、信号機など)、準動的情報(交通事故情報、交通規制情報、渋滞情報、狭域気象情報など)、準静的情報(交通規制、道路工事の予定、広域気象予報情報など)、静的情報(車線数や区画線の情報、道路の情報、建物の位置情報など)、このうち静的情報を細分化すると、区画線、多重区画線、路肩縁、道路標示、道路標識、信号機(本体・補助信号)、信号機(矢印灯)。研究ではこれらのデータを道路変化情報、履歴データ、カメラ画像データに分け収集、変化点の抽出を行う。道路変化点抽出処理には、車両のプローブ情報を活用する抽出技術、ドライブレコーダを活用する抽出技術に分かれ、これらが地図更新箇所の特定の元となる。道路変化情報と道路変化点抽出処理情報は3Dマップに紐づけられ、更新箇所の特定がなされる。最終的にはこれらに計測(MMS)3次元レーザー点群カメラ画像、図化整備点群加工を施し、処理後の3Dマップが更新されることとなる。更新された3Dマップが自動運転車の各機能(例えばアクセルや、ブレーキ、ハンドルの切れ角)に影響を与える要素になるものと思われる。今後は高速道路だけでなく一般道路においても、中山間地域の車両通行量の少ない地点や地震や大雨・大雪直後の道路や周辺状況の変化を、迅速・的確に捉え3Dマップなどに反映させる必要が出てくる。高速道路の総延長は9,400kmに対し、国道(国管理)は約22,362km、都道府県・政令市管理国道は、約31,900km、その末端にある都道府県・市町村道は約1,146,900km(94.8%)あり、交通量の分担割合としては65%ある。日頃世間の耳目を集めにくい部分ではあるが、自動運転社会の実装の為、道路状況取得方法の確立と自動化(3Dマップへの反映)や整備こそが、喫緊の課題と言える段階になって来たのではないか。
長崎市で観光型MaaSの実証実験—ビジネスモデル確立へ ゼンリン 他
3月29日 株式会社ゼンリンは、2021年度より長崎県や長崎市と協力し、観光情報や公共交通のサービスをデジタル化してMaaSアプリとして提供する。実証実験では長崎市内の観光エリア間の移動を喚起するため、「ストーリー型コンテンツ」公共交通サービス、民間サービスを連携させることにより、人の移動による地域活性化を目指す。先ずアプリで「長崎ならではの特別な体験」(観光情報)を探し、予約やチケット購入。旅程では、スマホを片手に地図で目的地までの経路を検索したり、購入したチケットを利用すると、アプリにポイントが蓄積されていく仕組みだ。たくさん観光したら、溜まったポイントをお土産と交換してもらうことができる。実は長崎市には既に「あっ!とながさき」という公式観光サイトがある。観光サイトを覘くと施設情報には、グラバー園や大浦天主堂、長崎ロープウェイ、長崎歴史文化博物館など「超」が付く有名観光地や、世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」や「三菱長崎造船所関連施設」、世界新三大夜景(長崎、モナコ、香港)、出島など、他県が羨む観光資産がひしめく。食としても、数えきれない「ちゃんぽん」や「皿うどん」店や万月堂のカステラ、田中旭榮堂の元祖栗饅頭、海鮮など、観光客の舌と胃袋を満足させる確信犯的(失礼!)コンテンツが盛りだくさんだ。年間のイベントを眺めれば、春は長崎帆船祭り長崎ハタ揚げ大会、夏は長崎ペーロン選手権大会、ながさきみなとまつり、精霊流し、秋には長崎くんち、冬は長崎ランタンフェスティバルなどが催され、観光客を魅了する。かの地で提供される今回の観光型MaaS実証実験。観光客が様々なコンテンツを縦横無尽に愉しみ尽くせるよう、そして限られた滞在時間の中で公共交通を駆使した移動性を高め、コンテンツを結び合わせるとともに、新型コロナウイルスの感染防止対策を念頭に置きながら構築が進む。アプリの完成が待ち遠しい。豊富なコンテンツ群に恵まれている同市でもあるが、地元の観光経済発展のための努力も滲む。「長崎型モデル」は、全国自治体が観光型MaaSを活性化する起爆剤、そして研究対象として捉えられるのではないか。