3月26日 スマートフォンが都市鉱脈と言われて久しい。「2035年までに新車販売で電動車100%を実現する」2021年1月の通常国会においての菅義偉首相の言である。脱炭素社会を目指し、様々な方面で胎動が始まっている。3/24に小田急電鉄とEVカーシェアのREXEV(レクシヴ)の連携について発表があったのも取り組みの一つとして捉えられる。小田急のMaaSアプリ「EMot(エモット)」にREXEVのカーシェア「eemo(イーモ)」が連携する。eemoのEVステーションは小田原、箱根、開成/松田/南足柄、湯河原に約30拠点を有する。同社のビジネスモデルは、①e-モビリティ特化型のカーシェアリング事業(「eemo」/e-モビリティ特化型シェアリングプラットフォーム提供サービス)と、②e-モビリティをネットワーク化し「VPP(仮想発電所)」とし、エネルギーマネジメントを提供するEMS事業(e-モビリティ制御によるVPPサービス/e-モビリティ制御によるV2Xサービス)だ。同社は「蓄電池を搭載するEV」と、天候等に電力供給量が影響されやすい「太陽光発電」を相互に補完することで、災害対策や脱炭素、経済性を狙う。【シェアリング】においては車両最適化(利用状況を分析)、台数適正化(台数削減)、EVシェアリング化(導入したEVをシェアリング化)し、【エネルギーマネジメント】の観点からはスマートチャージ(予約需要に応じ充電残量を確保)、ピーク制御・ピークカット(EVから蓄電施設等に電気を供給)、再生エネルギー充電(太陽光発電会社の余剰電力をEVに充電)、また災害時などの【非常用電源】としての活用も視野に入れている。ゆえに顧客の裾野も広いようだ。電力調整機能を必要とする地元の新電力会社、またカーシェアと災害対策などのニーズからは地元自治体・企業。地元企業では、燃料等販売・カーシェアリング事業者も範疇に入る。2021年4月に経済産業省資源エネルギー庁は、電力取引の新市場「電力需給調整市場」を誕生させる。2005年4月に取引を開始した「日本卸電力取引所(JEPX)」との違いは再生可能エネルギーに的を絞っていることだ。小田急電鉄は、自社の鉄道車両による回生電力を蓄電し、その電力を再利用して来た経緯がある。これまでのアプローチは環境対策としての「再エネ」だったが、今回のREXEVとのビジネス連携を通じ、自社の「再エネ資産(鉱脈)」に、沿線社会への貢献や経済性追求の可能性を見出しているのかも知れない。昨年9月にTISが浜松市や浜松新電力、浜松佐久間MaaS推進協議会、NPO法人がんばらまいか佐久間と行った、EVタクシーと再生可能エネルギーを活用したMaaSプラットフォームの実証実験「浜松佐久間MaaS実証実験」とも領域を接する。交通空白地帯が抱えるコスト問題へのヒントとならないか。
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MaaS関連データを連携するガイドラインを改訂へ 国交省 他
3月25日 熊本市で運行される路線バス事業者5社が、3月19日に国交省の認可を受け、4月から「共同経営」による運行を始める。対象は九州産交バス、産交バス、熊本電気鉄道、熊本バス、熊本都市バス。共同経営準備室のホームページ(https://jmpo.kumamoto-toshibus.co.jp/opendata/)を拝見すると、5社合計の平成27年(2015年)の輸送人員は2,997万人、実車走行キロは3,249万kmだったが、令和1年(2019年)の輸送人員は2,674万人、実車走行キロは2,674万kmとなった。輸送人員は4年間で11%減少、実車走行キロは18%減少した。バス会社の要となる運転士の不足も深刻化しており、平成27年度には5社合計で984人が就業していたが令和1年には873人へと減少している。これに伴い運送収入は63億円から57億円に減少、令和1年の赤字は32億円となった。行政支援の負担が増している(同時期の行政支援額は27.1億円から30.3億円に増加)。2016年4月に震度7を観測した熊本地震の影響(高速や一般道に多大な被害が発生、運休・減便・迂回ルートの発生)から立ち直れない環境下に、今回のコロナ禍が追い討ちをかけた。このような経営状況を鑑み、5社は共同経営準備室を設置、重複路線の最適化(ダイヤ均等化)や利便性の向上を検討・調整を進めている。政府(内閣官房、金融庁、国土交通省)では、令和2年3月に乗合バス事業者及び地域銀行が提供するサービスの維持を図るため、私的独占禁止法の特例を定める「地域における一般乗合旅客自動車運送事業及び銀行業に係る基盤的なサービスの提供の維持を図るための私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の特例に関する法律案」を閣議決定した。この措置により、乗合バス事業者は国道交通大臣の認可を受けた場合、独占禁止法の適用除外を受けることができるようになった。熊本市の路線バス事業者5社は「地域における一般乗合旅客自動車運送事業及び銀行業に係る基盤的なサービスの提供の維持を図るための私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の特例に関する法律」に基づき、本年4/1から実施を予定している「共同経営」の内容について、3/2に申請を行い、3/19に認可を受けた。実施日となる4/1から、重複区間4方面(旧3号線方面、川尻市道方面、産業道路・国体道路方面、旧57号線方面)が最適化され、これに伴い時刻表や運行会社が変わる路線の定期券における過渡期の運用などが変更となる。詳細は各社ホームページか共同経営準備室のホームページにて確認できる。複数の赤字路線を抱える自治体や地域の路線バス事業者には、将来的な路線維持のための有効な支援策となろう。
自動運転と運行管制システムを連携、三菱電機構内でオンデマンド運行管制 アイサン、ティアフォーら共同で実証実験 他
3月24日 三菱電機は3/18にリアルタイムでのオンデマンド運行管制の実証実験を発表した。MaaSの社会実装に向けて、車両運行業務の省力化と利用者の利便性向上の両立を図る。実験には、同社以外にアイサンテクノロジー、ティアフォー、マップフォーが参画する。今回の実験は、同社の神戸製作所(兵庫県神戸市)構内(停留所5ヶ所、全長約1.5km)で3/22~3/29まで行われる。停留所端末で乗車申込みと目的地の設定を行うと「無人の」運行管制システムが指示を受け取り、自動走行車両に運行指示(走行、ルート、配車指示)を与える。車両は自己のステータスと走行位置を把握し、運行管制システムを介し、停留所端末のモニターに配車情報(出発予定時刻、乗車号車)を配信する仕組みだ。実証では①停留所端末からの乗車申込情報に基づいて全停留所巡回、②乗客のいない停留所を通過、③乗降客がいない場合に次の停留所まで最短ルート(迂回・近道)を走行、④乗車申し込みの件数に応じ増便・減便運行など4つのモードを運行管制システムが柔軟に切り替える。運行管制技術は、自動走行車両への運行指示や、停留所端末への配車情報の配信を「全自動化」し、管制・運転要員を必要としない運行を実現するとともに、路線バスのような運行・利用形態を基本とする交通サービスに対し、乗車申込み数や目的地などの状況に応じた運行便数の増減やルート変更をリアルタイムで実施、待ち時間の短縮や移動時間の短縮を図り、利用者の快適性を上げるのに貢献する仕組みだ。秋田県の上小阿仁村では、2019年11月~自動運転のEVカートの有料サービスを開始している。サービス開始当初より利用者は増え(15人/日以上)、この1月には国交省の道路交通局長視察に訪れた。次なる課題は「運営コスト」だ。運行には、車上に保安要員と、乗車申込みの電話受付要員、また走行コースの一部区間に一般車の進入が出来ない区間を設けているため、警備要員の配置されている。またYoutubeにUPされている「日本初!!秋田県上小阿仁村で自動運転サービス本格導入!」(https://youtu.be/mus70syP6yE)を拝見すると、運行管理センターにも運行管理要員が必要となる。コース拡張の際の電磁誘導線の敷設費などと共にこれら人件費の低減が課題となる。前述のリアルタイムでのオンデマンド運行管理の実証実験の適地と言えないか?国は選定プロジェクト以外にこうした民間が主体となって行われる実証実験も把握し、実証内容を必要とする地域とのマッチングや導入までの動線を引くことはできないものだろうか。
あいおいニッセイ同和損保、「MaaS 専用保険」を販売開始 業界初! 他
3月23日 沖縄の自転車事情(シェアサイクル事情)について。先日の記事でもお伝えした通り、3/17より沖縄で観光型MaaSが始まっている。観光MaaS導入以前の沖縄では、「ゆいレール」が唯一の鉄軌道であり、移動の主な手段がマイカーである交通環境や、毎年訪れる海外・県外からの観光客が県内の周遊に利用する主な交通手段としてのレンタカー利用が市内渋滞に拍車をかける格好となっていた。実証にも参画するシェアサイクルの「CYCY(サイサイ)」は、そのような社会課題解決のために立ち上がった企業だ。もともと沖縄は自転車文化は根づき辛かった経緯がある。「平成30年の地域別自転車保有台数の推計」(一般社団法人 自転車産業振興協会)を見ると、1世帯当たりの自転車保有台数が少ない県として全国で三本の指に数えられる。しかし、同社が「ゆいレール」の各駅にステーションを開設したところ、70箇所で200台余りの稼働があるようだ。利用の目的は、観光や駅間の移動、通勤だそうだ。前述の資料によれば、(沖縄に限らず)自転車の使用用途で1位は買い物で、以下は趣味、遊び、通勤、サイクリングなど。人々の沖縄市の中心市街地利用のモチベーションはどこにあるのか?「沖縄市中心市街地活性化基本計画」(令和元年9月3日変更)を見ると、利用目的で一番多いのは買い物であり、次いで市役所の利用、飲食・飲酒の順となる。次いで郵便局や銀行の利用、病院・診療所、ゴザ運動公園、沖縄こどもの国と続く。目的地への交通手段は自家用車、徒歩、バス、タクシー、自転車はその次だ。ちなみに中心市街地循環バスは自転車の次。バイク移動と同じ1.8%だった。バスが振るわない原因の一つに市内の交通渋滞がある。買い物や趣味・遊び、市役所利用者などをマイカーから、自転車移動に遷移させる方策やいかに!?市民にとっては、商圏や自治体関係機関、市内の銀行や郵便局、病院や診療所、娯楽施設や公園等への駐輪場・充電施設の増設が急務であることは言うまでもない。またCYCYの施策の通りだが、観光客にとっては、既存交通機関の交通結節点への配置も重要となる。自転車利用の活性化は、マイカー偏重の交通モード利用状況に一石を投じつつ、中心市街地以外の経済活性化や、中心市街地の渋滞緩和などの効果も期待される。今後は電動アシスト自転車以外のモード、電動キックボードや電動車いすなどの充実も図りたいところだ。警視庁は2/5に電動キックボードの関連法を整備すると発表、レンタル事業者が貸し出す電動キックボードを小型特殊自動車に位置づけるとともに、電動キックボードを押して歩く人は歩行者とし、電動キックボードが自転車道を通行できるように道路交通法施行規則に特例を制定する。近い将来、沖縄における周遊や日常生活での移動風景が変わるかもしれない。
沖縄でMaaS実証実験—全域に拡大して第2弾 ゼンリンなど開始 他
3月22日 昨年12月に開始された沖縄の観光型MaaSの第2フェーズが3/17~始まった。実証実験の主体は沖縄MaaS事業連携体で、民間からは沖縄都市モノレール、ゼンリン、TIS、琉球銀行が参加、自治体としては那覇市、石垣市、浦添市、宮古島市、今帰仁村(なきじんそん)、伊江村(いえそん)、座間味村(ざまみそん)、竹富町が参加し、オブザーバとして沖縄県と内閣府沖縄総合事務局運輸部が参画する。沖縄はバスの輸送人員が全国平均よりも大きく減っており、地域の足としてのバス路線の維持が困難、また県内の観光需要は特定の観光地や施設に偏る傾向がある。また観光産業の発展によりレンタカーによる事故、渋滞、違法駐車などが地域に影響を及ぼしている。沖縄を訪れる観光客(平成30年度:958万人、9万6,500人/日)にとっては2次交通の多くが現金払いである点や、交通機関の行先や系統が分かりづらいといった点が課題となって来た。第2フェーズでは、MaaSサービスの提供を域縄全域に拡大、サービスサイト(https://service.paycierge.com/okinawa-maas/)には、新たに検索サービス、地図サービスなどの機能が加わる。これにより目的地までの検索の利便性が向上(ルート選択時に目的地を検索+地図上から選択出来るようになる)する。また検索結果に応じ、関連するお得なチケットが設定されている場合はチケット購入も可能になった。【今回提供される交通手段】は、本島中南部では沖縄都市モノレール、カリー観光、東京バス、本島北部では、沖縄エアポートシャトル、やんばる急行バス、本島周辺離島では、伊江島観光バス、座間味村営バス、伊江村営フェリー、座間味村営フェリー。宮古島では、中央交通、宮古協栄バス、八千代バス・タクシー、八重山諸島では東運輸、西表島交通、カリー観光、安栄観光、八重山観光フェリー、石垣島タクシーコールセンター、東海交通。【利用可能な観光施設や商業施設】は、本島中南部では、浦添市美術館、首里城公園、ようどれ館、イーアス沖縄豊崎、沖縄アウトレットモールあしびなー、他飲食店等11店。本島北部では、沖縄美ら海水族館、古宇利オーシャンタワー、今帰仁城跡、ナゴパイナップルパーク、他飲食店2店、八重山諸島では、竹富島入島料(*電子チケット提示で、竹富東港「かりゆし館」カウンターにて記念品と交換あり)。今後、沖縄におけるMaaSサービスがお手軽なツアーコンダクター役を果たしていたレンタカーのカーナビを置き換え、掌の上のツアーコンダクターの座を獲得するなら、地元の路線バス(時間の不安)やフェリー(天候や帰り便数の不安)が解消され、自分で見つけた移動の仕方で、ディープな沖縄周遊を楽しむ人も増えるのではないか。*ちなみにサービスサイトからは、CYCY(サイサイ/シェアサイクル)やトヨタの電気自動車Ha:mo(ハーモ)、やまねこレンタカー/やまねこ観光タクシー、伊江島レンタカー、久米島COMS、Timesカーシェア、手荷物当日配送サービスAirporter、モバイルバッテリーレンタルサービス充電GO!などへのリンクもあり、公共交通外の移動サービス情報も充実している。
地方都市ほどMaaSが必要な理由とは? 4つの事例に見る社会実装の意義 他
3月19日 先日執筆した「自動運転による配車サービスの早期商業化」について、貴重な感想や情報をいただいた。記事中では「ベネフィットが重なる各地」で「民間による日本版ビジネスモデル」を立ち上げるため、「各地のミュニティの再編」による活性化と「官の情報基盤公開」を提案させて頂いた。まず「官民ITS構想ロードマップ2020」から。現在はレベル3から4への移行段階にあると捉えられる。自家用車(オーナーカー)で高速道路(自動車専用空間)で「レベル4」が市場化されるのは2025年頃と想定されている。一方、移動サービス(サービスカー)は、2020年度までに限定地域における「無人自動運転移動サービス」が公道実証される。こちらは、2025~2026年度頃には、対象地域・ODD、サービス内容・範囲が拡大されていく見通しだ。この構想主体は国だ。先の記事内で「民間による」としたのは「持続可能な移動サービス」構築のためには、国や自治体の補助金運営を脱し、交通事業者がサービス品質向上を柔軟に追求することにより、移動市場を活性化させて欲しいとの願いからだ。次いで「日本版」に言及したのは、Voyage社の公道テストが実施されたサンノゼやフロリダの退職者居住地域と、国内で移動サービスを必要とする地方とでは、住民所得や自治体の経済に「格差」があると考えられたからだ。「日本版のサービスが必要な地方」は、より厳しい財政状況の上でサービスを運用して行くことが予想される。それでは「ベネフィット」とは何か?ベネフィットとは、今後そのエリアを訪問・移動する全ての人に継続し、安心・快適な移動サービスが適切な価格で提供されることだ。裏を返せば現時点での課題ともいえる。日本総研は1/12~3/26まで、国土交通省「令和2年度日本版MaaS 推進・支援事業」で選定されている「まちなかサービス事業性検証コンソーシアム」を、神戸市北区筑紫が丘地区で実施、地域内限定のラストマイル移動サービスにおける有償化と住民の主体的な参加について、事業性と持続可能性の観点からオンデマンド乗合サービスの検証を行っている。驚くべきことに運行主体となるとなる神鉄タクシーの乗務員には二種免許を取得し、同社の臨時社員となり、実証に参加する「住民2名」が含まれる。そして「まちなか☆モビリティー神戸北」の車両には、3つの広告スペースが設けられている。一つは車体広告、二つ目は車内モニター表示、三つめはNPOホームページ掲載広告だ。本年3月までに有償会員500人の確保を目標とし、月額1500円(1日300円で乗り放題の一日券もあり/電話会員は月額1800円)で運行を維持していく。スマホアプリ利用の住民サポートと電話による予約と支払いのサポート、協賛・広告パートナー募集などはNPOが行う。住民が主体的に移動サービスに関わるモデルが確立されるのは何よりだ。最後に「各地のコミュニティ再編」だ。実証実験に至るまでの段階では国際的な動向や情報収集、様々な専門知識や牽引力が必要とされるため、国や自治体の協力を必要とすることは確かだ。しかし事業化にあたっては、実際にサービスの運営者となる企業や利用する住民の知恵やニーズ、地域経済などの実情が考慮されるべきであり、これらの土壌を踏まえ「早期にサービスを最適化できる」のは「官」ではなく「民」だ。各地で練られたサービスの整理・分類・(集積された知見の無償)提供を得意とするのは「官」だ。サービス構築の段階により、牽引主体は柔軟に入れ替わるべきだ。様々な教えに感謝しつつ、補完させて頂く。
自動運転開発のCruiseが同業Voyageを買収、ロボタクシー商業化へ前進 他
3月18日 今週は米自動車運転開発のVoyageをCruiseが買収した話題で持ちきりだった。ロボタクシーの前で仲良くポーズを取るツートップ(Cruise:カイル・フォークト社長兼CTOとVoyage:オリバー・キャメロンCEO)に悲壮感はない。Cruise社のこれまでの動きを俯瞰すると、2016年にGMに買収されたCruiseは、2017年2月にBolt EV(GMのEV)を用い、サンフランシスコで自動運転テストを皮切りに、2019年5月には対向車の回避と左折に成功、2020年1月にはGMとホンダが共同開発した、配車サービス用の無人運転者「Origin」を発表している。GMは同月にミシガン州で電動・自動運転車両の生産に3270億円を投資、生産体制を強化。また同年2月にはCruise社が、カリフォルニア州で自動運転車による乗客の輸送許可を、10月にはサンフランシスコで自動運転車の公道テストの認可を得ている。2020年の年末にはサンフランシスコで自律走行車の公道テストが開始されている。そして年明けの2021年1月にデルタ航空の元最高執行責任者であったギル・ウエスト氏が自動運転車両を用いたサービスの早期商業化のため、やはり最高執行責任者として就任した。最初のサービス提供地としてはサンフランシスコが予定されている。同月には、マイクロソフトも投資家及びパートナーとしてエクイティラウンドに参加した。GMやホンダなどの機関投資家も追加投資をしている。これらの経緯を経て、今回のVoyage社の買収の運びとなったようだ。2017年創業の同社は、米国内の高齢者居住コミュニティで事業展開してきた経緯がある。そのコミュニティはカリフォルニア州のサンノゼ、そしてフロリダである。サンノゼには4000人、フロリダには12万5000人の暮らす退職者居住地域がある。Cruiseのギル・ウエスト氏は、キャメロン氏とVoyageの移動サービスを好意的に受け入れたサンノゼとフロリダ、そして自社のテストマーケットであったサンフランシスコの顧客基盤に向けた早期商業化に挑む。ビジネスモデル構築の年。米国と勝手が違うのは大前提。事業化段階では民が道筋を付け、投資モチベーションを高める「日本版~」の構築に想いを馳せて頂きたい。ハード供給面の整備、高齢者・移動困難者の割合が多い自治体での実証実験(=顧客基盤の醸成に有効)、同業の整理・統合などに着目し、培ってきた成果をもとに「サービス早期実現」のベネフィットが重なる各地のコミニュティ同士の再編が活性化して良い時期だ。官には「どこに何が」存在するかを明確化・オープン化してもらい、民に協力関係の再構築を促す役割を求めたい。
空港制限区域での無人自動運転、今後の方針を議論 国交省 他
3月17日 国交省で3/17に空港地上支援業務(グランドハンドリング)への無人自動運転の実現に向け、今後の方針を議論するため検討会が行われる。同省は、平成30年6月から「空港制限区域内における自動走行の実現に向けた検討委員会」を設置、官民が連携して自動運転における実証を行ってきた経緯がある。空港内で航空機~荷扱い施設までの荷物の搬送に使われるトーイングトラクターや、航空機から建物内の旅客スペースまで乗客を送り届けるランプバスなどの実証が行われて来た。国交省では自動運転車両の走行環境を類型化しており、その主な類型として閉鎖空間(工場や空港・港湾等の敷地内)、限定空間(廃線跡、BRT専用区間等)、自動車専用空間(高速道路、自動車専用道)、交通環境整備空間(幹線道路等)、混在空間(生活道路等)などとしており、その補完要素として車速や地形、道路、環境、交通状況、時間帯等に分類して把握しているようだ。閉鎖空間とされる空港内の実証実験で今何が行われているのか調べてみた。令和2年12月に同省の航空局が作成した「トーイングトラクターの導入に向けた進捗について」の資料内では、JALが行った「空港制限区域内の自動走行に係る実証実験 レベル3導入に向けた進捗報告」によると、レベル3での実用化は可能と判断しつつ「今後の課題点」も挙げられている。課題には①交差点における他車両の認識精度(ソフトのバージョンアップ、認識範囲の調整)、②交差点再発進時の挙動改善(再発進時の挙動が緩やかなため、他車の減速や一時停止を発生させる)、③スピード安定性の改善(カーブにおける必要以上の減速)、④降雨時の走行安定性の向上(水滴を障害物としてご認識)などが挙がる。また、同局が同じ時期に作成した「ランプバスの導入に向けた進捗について」(ANA、先進モビリティ、BOLDRY)によると、2020年1月の実証結果では、予定していない手動操作が1kmあたり2.3回発生、その6割は自己位置推定技術の精度に起因、当時初めて活用したSLAM(自己位置推定とマッピングの同時実行)の安定性の課題であり、また約4割は車両技術以外、運用ルール上の課題であった模様だ。予定していない手動操作の内訳は、不要な加速(1.6%)、車線逸脱(45.9%)、ACC誤検知(13.1%)、継続的な横位置ずれ(39.3%)であったことが報告されている。これら技術上の課題(主に自己位置推定)については、一つ一つ細かな対応方針が上がり、その後検証が行われた模様だ。検証では、自己位置推定の精度向上のため、高精度3Dマップを制作したルート上で、高精度3Dマップを使用し、前述の技術的な事象が再発しないか、他技術との連携が向上し、安定した自動走行が実施できるかが検証された。
自動車業界を創造的破壊 米巨大ITの次の挑戦 他
3月16日 自動車産業におけるFAMGAの行方は如何に。(FAMGA=GAFA+Microsoft)米国第46代大統領ジョー・バイデン大統領がパリ協定(地球温暖化対策の国際的な枠組み)復帰の文書に署名したのは、この1月のことだ。国内では、菅首相が昨秋2050年にCO2など温室効果ガスの実質排出ゼロを目指す「2050年カーボンニュートラル」の実現を掲げ、続けて1/18からの通常国会の施政方針演説内で「2035年までに新車販売で電動車100%を実現する」と表明している。国内でも自動車産業に異業種からの参入が続いている。佐川急便やヤマト運輸など流通大手における他社とのEV共同開発の動きや、出光などの超小型EVの開発などがこれに当たる動きと言えよう。豊田章男会長も急速なEVシフトによる同産業への影響を懸念する傍ら、カーボンニュートラルは、自動車業界だけで達成するものではなくエネルギーのグリーン化も必須と考えているようだ。車を作るライフサイクル(材料~廃棄まで)において、二酸化炭素の排出量と吸収量がプラスマイナス・ゼロ、という理解が必要と言える。それは、FAMGAの投資分野からも見て取れるのではないだろうか。米国IT5大企業の一角、Amazonはテスラの元CTOが創設したバッテリーリサイクル企業、Redwood Materialsに出資した。同社は、2020年にジェフ・ベゾスとビル・ゲイツが支援する環境特化型のファンドなどから4000万ドルの資金も獲得している。国内でこれに同調した動きを見せる企業は、パナソニックである。同社は前述のRedwood Materialsと、2019年に提携を開始、テスラのギガファクトリーから排出されるバッテリーのリサイクルに着手している。自動車産業界の広義のサプライチェーンに「リサイクルソリューションの供給」が組み込まれて久しいが、この分野に再び脚光が当たる時機が巡って来たと言えるのかも知れない。
自動運転、広島大で定期運行開始 買い物支援へ実証実験 他
3月15日 酒続きの話題で恐縮ですが、西条酒・安芸津の酒を擁する国内屈指の酒処、東広島市にある広島大学の東広島キャンパス内で小売りと自動運転サービスの融合を目指した実証実験が進んでいる。本実証実験には3つのフェーズが設定されており、既に運行していたオンデマンド型の「広島大学循環バス」が、令和2年11月~MONET Technologiesの「手動運転の」オンデマンドバスに変更となっている。今回は第2フェーズとなり、米May Mobility社製の自動運転シャトルが投入される。広島大学では、3/10にお披露目式を開催、越智光夫広島大学長や髙垣広徳市長らが出席した。同シャトルの利用は今のところ、同大学の学生と教職員が対象だ。第3フェーズでは、本年9月からこのシャトルを使用した送迎及び商品配送が広島大学と「ゆめタウン学園店」などの間で行われる予定だったが、このフェーズは、2/1~2/28に実施された模様だ。この「東広島市買い物支援プロジェクト実証実験」は中国経済産業局が支援するもので、東広島市Autono-MaaS推進コンソーシアムの取り組みの一環としてMONET Technologiesに委託され、(株)イズミ「ゆめタウン学園店」の協力もとに実施された。モニターを募り①電話注文した商品の店頭受け取り(店舗送迎あり)、②電話注文した商品をシャトルで指定場所まで配送するなど実際の利用に即したサービス設定が用意された。取扱対象品は食品、飲料、惣菜を含む生鮮、日用品、衣料品。今回は冷凍食品とアイス類は除外されている。同市の人口は令和2年から数年でピークを越え減少に転じる見込みで、令和12年には193,000人になると見込まれている(65歳以上の人口は25%以上)。マイカーへの依存度も高い(自動車分担率:7割)。ゆえに市内中心部や国道2号、国道375号、主要地方道東広島本郷忠海線における渋滞も問題となっている。これらをクリアしていくためには、点在する市内の各種施設を結んだり、中心市街地への来訪を確保したり、広島空港や東広島駅など広域交通拠点へ乗り換えなしで到達できる移動手段が求められる。公共交通の利用減少は、即ち行政負担(バス補助)の増加につながる。また移動手段の整備と共に環境への配慮、渋滞緩和などの措置が求められる。オンデマンドバスや買い物(移動)需要の創出、或いは食料品や日用雑貨の配送は、公共交通の利用頻度の確保(=持続可能性を高める)や移動需要の確保をしながら、一方で重複する移動を整理することにも貢献できる。酒蔵通りで贔屓の一本を手に入れ、鍋の具材とともにオンデマンドバスに揺られる日が来るのが待ち遠しい。