9月25日 未来の救急車というとさまざまな想像を掻き立てるが、消防庁では実際に「次世代救急車」の開発が進んでいる。開発は、①オリンピック・パラリンピックの外国人来訪者対応や、②ビッグデータ、G空間情報(Geospatial Technologyを用いた「地理空間情報」のこと)等を救急車や指令運用システムに活かし、現場到着時間・病院収容時間の延伸防止や救急車の事故防止などを念頭に置いたものだ。①については、情報通信研究機構との共同研究により「救急ボイストラ」(救急隊用多言語音声翻訳アプリ)を平成29年4月から実用化している。②については、救急車の受容分析(通常時・災害時)、最適ルート分析、傷病者情報分析による最適化ソフトが開発されている。ITS(高度道路交通システム)の技術を用い、走行時間の短縮、救急車自身の事故防止のため、車車間通信等を用いた事故防止技術、衝突時の安全防護に必要な構造・強度の安全仕様の作成も進む。トヨタでは6月に発売を開始した「トヨタ救急車」に路車間・車車間通信を活用し、対向車や歩行者に注意喚起するほか、サイレン鳴動中に緊急車両の存在を周囲の車両に通知する運転支援システム「ITSコネクト」をオプション設定している。ちなみに東京消防庁はこの3月末に「EV(電気自動車)救急車」を導入した。公用車にも「ゼロエミッション」や様々な先進技術が波及している。
MaaS・CASE関連の最新ニュース(41 / 65ページ目)
公道で自動運転配送ロボットの実証実験を実施へ 東京都内 他
9月24日 株式会社ZMPが、日本郵便株式会社と物流に向けた配送ロボットの公道(歩道)実験を始める。同社は2017年より日本郵便主催の自動配送ロボット実証実験に参画し、オフィスビル、商業施設、大学キャンパスマンション群からなる私有地などで自動運転技術を応用した宅配などの実験をしてきた経緯がある。ZMPの「デリロ」は複数のカメラやセンサーを使い、通行人や障害物を回避・緊急停止したりすることが出来る。更に周囲の人に音声で通行を知らせたり、道を譲ってもらえるようお願いしたりする「コミュニケーション」も可能だ。最大時速6kmで走行、50kgまでの荷物の積載が可能、駆動時間は最大4時間充電で12時間(*走行環境により変化)だ。日本郵便は自動配送ロボットの導入により、現場の省人化やキャッシュレス化、非接触集配を目指す。本実験は7月に行われた「成長戦略実行計画」の低速・小型の自動配送ロボットの社会実装の項目で、「遠隔監視・操作」型の公道走行実証を年内に可能な限り早期に実現、結果を踏まえ低速・小型の自動配送ロボットの社会実装に向けて早期に制度設計の基本方針を決定、との閣議決定に基づいて行われたものと思われる。
多彩な交通を楽しむアプリ「my route」 車から「移動サービス」にかじを切る 他
9月23日 既報の通り、横浜市では「my route」の利用が始まっている。都市整備局企画課が平成29年10月に「まちを楽しむ多彩な交通の充実」に向けた幅広い提案の募集を始めてから足掛け4年。計画はオリンピック・パラリンピックに向け、「ヨコハマ」の発信と「まちの賑わいに寄与する交通モード」の導入、「新たな技術に基づく事業展開」、「既存交通モードの拡充」、「更なる魅力化の取組」への提案を期待した。アプリ中の交通モードには船・水上バス、サイクルシェア(「ベイバイク」)、パーク&ライド(駐車場予約サービス「akippa」)、そしてレンタカー(「日産レンタカー」)や「自動車(自家用車)」までも含まれる。また横浜市交通局の「みなとぶらりチケット」がデジタル化されたことで、チケット提示により、提携店の様々なサービスを利用できる。Google Play「my route」の評価とレビューを見ると早くも利用者の改善希望が山積しているようだ。期待度の高さが伺える。「my route」は「港ヨコハマ」に新たな賑わいをもたらし、市民経済にとっての「虎の子ソフト」としても成長し、その成功事例を築いて欲しい。
自動運転シャトルの国内市場、2035年には460台まで拡大 富士経済予測 他
9月18日 富士経済が自動運転シャトル(自動運転レベル4以上の小型バス)の国内市場を調査した。9/14発表のプレスリリースによると、導入台数や金額は、2021年に20台(24億円)の予測から、2035年には導入規模は460台(332億円)とされている。資料中、自動運転シャトルの国内市場というグラフによると、2025年からの伸びが予想されているが、これは国の「自動走行ビジネス検討会」が2025年度を目途に高速道路や一般道路などの40カ所以上で、レベル4の自動運転サービスを普及させる計画を考慮しての数字と思われる。国はサービスカー普及のシナリオとして、2017年に公道実験を開始(まずは一人の遠隔ドライバーによる一車両の監視と制御)、2018年~2019年には公道実証(一人の遠隔ドライバーによる複数車両の監視、制御。リスク最小化移行技術の確立が前提。)、2020年まで、無人自動運転移動サービスの実現(遠隔オペレーターによるシステムを通じた多数の車両の監視。リスク最小化移行技術の確立が前提。*ジュネーブ条約との整合性を前提に、交通関連法規の大幅見直しが必要。2025年には、技術・内容の拡充、サービス(L4)の全国展開を目論む。自動運転シャトルの用途は、コミュニティバス(交通空白地帯、スーパーシティ特区における路線バス、民間企業や教育機関、ホテル、スポーツクラブ、冠婚葬祭などの送迎バス、ライドシェア用、相乗りサービス用)と敷地内(空港内リムジンバスやランプバス、工場や倉庫、港湾エリアなどの人輸送)などが多いと見込まれている。
MaaSって何? 東急社員による現在進行形の挑戦劇! 「訳がわからないこと」を理解してもらう難しさ 他
9月17日 7月21日に発売された『MaaS戦記 伊豆に未来の街を創る』作者の森田 創氏はどんな人だろう。1974年生まれ。東京大学教養学部人文地理学科卒業後、東京急行電鉄に入社。渋谷ヒカリエの劇場「東急シアターオーブ」を立ち上げ、広報課長を経て交通インフラ事業部MaaS担当課長。対する静岡県民の気質は旧伊豆国と旧遠州国(西部)では大きく異なると言われ、その中で伊豆人の気質はのんびり型とも。伊豆は東京との結びつきも強く、古から首都の行楽地として親しまれている。男性はおっとり型、女性は気さくでしっかり者と言われる伊豆人たちを相手に交通事業の門外漢ともいえる森田氏はどのように立ち回ったのか。当初は下田で開催された市民向けのMaaS説明会はガラガラ、同僚たちも一向に士気が上がらず、地元の交通事業者との交渉も捗らなかった様子だ。しかし、関係者とさまざまな試行錯誤を重ねる中で「MaaSが伊豆にもたらす未来」が理解されると、森田氏を見る人々の視線は徐々に変化してゆく。MaaSを通じた地方創生を試み、事業性を育む仕事人と伊豆人が作る、今後の伊豆半島が旅の愉しみと活気に満ちることを願いたい。
万博記念公園、自動運転EVバスの実証開始へ 対話型アバター搭載で新たな移動体験を提供 他
9月16日 10/23(金)から11/16(月)まで、万博記念公園にて自動運転バス車内のコミュニケーションツールの実験「(仮)EXPOオートライド&ガイド」が行われる。共同実施企業は三井物産、パナソニック、凸版印刷、博報堂、西日本旅客鉄道、万博公園マネジメント・パートナーズ。自動走行バス「NAVYA ARMA」はパナソニックが開発中の「透明ディスプレイ」を搭載、走行中は透過状態となったディスプレイから園内のパビリオン跡地や日本庭園などの車窓を楽しみつつ、対話型、多言語対応型アバターからガイダンスを聞きながら「NAVYA ARMA」車内における新たなエデュケーション&エンターテイメントを体験できる。交通カードのチャージの仕方や行く先を運転手に尋ねるお年寄りも多い。将来的に自動運転が実運用段階に至れば、ビークルは文字通り無人となるが故、運行オペレーターと乗客や車両外部のバス待ち客などとのコミュニケーションサービスとツールの発達は運行上やサービス改善・車両整備などの状況で重要な要素となり得る。Boschの自動車整備事業所向けのトータルソリューションや「Tokyo Metro ACCELERATOR 2018」の最終選考に残った観光ツアーアプリ「SpotTour」などと組み合わせてみても面白そうだ。
実証実験自体が目的化しかねない? 日本版MaaSはなぜ難しいのか 他
9月15日 グリーンスローモビリティー(主にゴルフカーを流用)を使用した実証実験が各地で行われている。福島県いわき市(都市中心部)、三重県東員市(都市郊外部)、岡山県備前市(中山間地)、広島県福山市(沿岸域・離島)、熊本県天草市(沿岸域)など。目的は観光・生活支援が主だ。実験の6割は路線定期運行、残りは路線を固定せずダイヤのみ固定とした。延べ利用者数÷(便数×車両定員)で実験期間の乗車率を見ると、91.8%~13.1%までと幅広い。観光地での周遊、地域での買い物、行事、通院目的はおおむね達成されたようだが、観光地では地域住民の利用が少なかったなどの声も上がった。現段階ではビークル自体がイベント利用をイメージさせるのかも知れない。有償化の可否をはじめ、既存交通機関との差別化や接続調整、雨天や路面状況、走行環境への対応・配慮、サービス内容(ルート・頻度・停留所・運行台数)・ダイヤなど具体的な検討事項が得られたことは大きな成果となった。利用者の声の中で事前予約制の改善や荷物スペースの拡大、防寒対策、シートベルト設置、定時からオンデマンドへの移行などの声も見逃せない。なお有料化についてもおおむね肯定的だが、運賃としては 100-200円程度が念頭にあるようだ。一方、約3割が無償を期待する地域も。地域利用者の平均所得、維持管理費なども併せて考慮していく必要がある。またビークルの特性上(Small/Slaw/Open)幹線道路での利用には適さない点や、海岸部等での突風や、波しぶき等の影響も考慮、安全に配慮したルート設定が求められる点にも一層の配慮が必要だ。
ダイハツ、「副業・兼業人材」を公募 外部の知見を生かして新規事業拡大へ 他
9月14日 ダイハツが9月10日にMaaSを中心とした新規事業分野で「副業・兼業人材」の公募を始めた。2017年3月16日に同社が発表した中長期経営シナリオ「D-challenge 2025」の中で、同社は先進技術(電動化、自動運転、コネクティッド)については、トヨタ自動車との連携を推進、ダイハツ独自システムとして手の内化を謳った。以降の動きを復習してみたい。2018年10月には通所介護事業施設向け送迎支援システム「らくぴた送迎」(国際オートアフターマーケットEXPO実行委員会主催の『MaaS & Innovative Business Model Award(MaaSアワード)』にて大賞を受賞)の販売を開始、スマホを活用した簡易テレマティクス保険、送迎計画のシステム化と同時に、車上に置く専用スマホに送迎計画などを送信、運行記録やキャンセル通知の相互連絡を軽減させた。また運行記録を元に送迎ルート見直しや、車両数の適正化を図った。同年12月には日本総研が設立した「まちなか自動移動サービス事業構想コンソーシアム」に参画を決めている(*但し12月の発表においては、環境に見合った車両提供と地域の受容性、乗降性、快適性などの検証を行い、実際の運転は手動で行われている)。コンソーシアムの実証の狙いの一つ「ローカルMaaS(地域主体の移動サービスのエコシステムづくり)」や、ダイハツのスローガン「Light you up(軽を基点とし、軽で培った極限まで無駄を省き、制限、枠があるからこそ、枠に縛られない"ライト"な発想、商品づくり)*一部抜粋」、そして今回の人材募集「地方におけるMaaS市場の開拓」の関連事業あたりに今後のダイハツが目指すMaaSがあるのかも知れない。
自動運転バス 実証実験中に接触事故 けが人なし 滋賀 大津 他
9月11日 大津市で8月に自動運転バスが実証実験中に接触事故を起こした。事業を受託した産業技術総合研究所は「最終的には車幅感覚の判断ミスが原因で接触した」と発表した。ティアフォーが8月に発表した「Tier IV Safety Report 2020」を参考に申せば、一般的に自動運転システムは、LiDARやカメラ、GNSS、IMU等のセンサー情報を元に、認知(自己位置の推定・環境認識)・予測、判断(経路計画・経路追従)、操作(ステアリング・アクセル・ブレーキ)を「人間のドライバーに代わって」行う。9月11日に同研究所が発表した「中型自動運転バスによる実証実験(大津市:京阪バス)における歩道柵の支柱との接触事案の原因調査結果と対策について」を見ると「極低速の自動運転での転回中、転回の完了前に歩道柵との間隔が狭くなるとドライバーが判断し」とある。システムからドライバーが運転を引継いだ後の事故であるため、接触の「起因」はドライバーの車幅感覚ミスと表現されている。本試験は「自動運転バス」の試験ゆえに「原因」はドライバーが違和感を覚え、介入を行う以前の段階(認知・予測、判断の段階)や車両機器の仕様にあったと記述するのが自然ではないか。要因分析の項目には、操舵の手動介入代(しろ)についての記述があるが「自動運転制御上の操舵量の限界値は、車両の操舵量の限界値より若干小さくした」点や、バスに搭載されていたセンサーの「走路上の車や人は検出・制動するものの、走路外の歩道柵や縁石といった構造物を検出して制動させる機能は搭載していない。また、手動介入中は障害物の検出・制動が機能しない仕様」にも新たな対策が必要だ。けが人なしは幸いだった。関係者が大変なご苦労の上に、貴重な実験結果を得たことは間違いない。安全が絡む問題であるが故、この経験をできるだけ多くの関係者に分かりやすい表現で伝える必要があると思う。
TIS、浜松市佐久間町で官民連携のMaaS実証実験 EVタクシーをオンデマンド配車 他
9月10日 TIS株式会社が浜松市天竜区佐久間町で運営されている公共交通空白地有償運送事業の運営者「NPO法人がんばらまいか佐久間」と協業、EVタクシーと「再生可能エネルギー」を活用したMaaSプラットフォームを提供する実証実験を開始する。浜松市は全国でも年間日照時間が長いことでも知られ、地理条件を活かして市の投資する浜松新電力が再生可能エネルギーの地産地消も試みる。今回の実験では、公共交通空白地有償運送事業の利用者減による採算性の悪化や人材不足に歯止めをかけるため、TIS社のプラットフォームを導入し、従来の有人オペレーター方式の無人化・コスト削減も狙う。浜松市は昭和20年代から周辺の町村との合併で拡大を続け、平成15年には天竜川・浜名湖地域合併協議会が設置され、平成17年7月に12市町村が合併、新浜松市の誕生となった経緯から、2020年9月現在、人口は80万人を超える。しかしながら人口分布の少ない中山間地域においてこそ利用が求められるNPOタクシーの利用運賃は、地区ごとに定額制(500円~4,700円)迎車料金100円だ。市内の他のNPO法人においても、地区ごとに定額制(500円~3,100円)となっており、運営者、利用者ともコストパフォーマンスが優れているとはまだ言えない。今回の実験においてはMaaS実証実験と併せて、自治体の再生エネルギー政策が交通機関にもたらす経済的効果も実証されることとなりそうだ。