7月22日 国土交通省は「先進安全自動車(ASV)推進検討会」が策定した「ラストマイル自動運転車両システム」のガイドラインを発表した。今回のガイドラインは「近い将来実現が見込まれる」移動サービスを念頭に運行時の走行環境(場所、速度、天候)をまとめ、自動運転車の安全基準の適合性確保にあたり「設計時」に留意すべきポイントを規定したものだ。道路条件・地理条件の項目を見ると、対象道路は自動車専用道を除き、広く公道が対象とされ、事前に検討を経て設定された経路のみとされている。また環境条件の中には時間的制約(センサの特性上)や天候による制約が存在する(雨量、積雪、風速等)。また技術要件の中には自動運行装置に備える作動状態記録装置に関わる技術要件に適合すること、との項目が設けられており、ドライブレコーダーの活用の他、データの保存方法については「保存期間中、運行管理をする者が、改変できないデータ保存装置で保管することで車載装置に保存しないことも考えられる」とある。クラウド上やブロックチェーンをも調査領域とする時代が幕を開けるのかも知れない。
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自動運転車開発は新型コロナの逆境をどう乗り越えるのか? 他
7月21日 コロナウイルスの第二波の感染拡大により、ライドシェアに逆風が吹いている。果たして突破口はあるのか?Uber Advanced Technoligies Groupは、3,500人のリストラを行い、GMのカーシェアリングサービスMavenは閉鎖を決定する中、2018年に提携を発表したトヨタとソフトバンクの共同出資により設立されたMONET Technologies は、独自路線を歩んでおりコロナ感染防止対策を取った車両の開発を進めており、運転席と後部席を仕切るだけではなく、換気システムの追加設置を考えているようだ。岡山の両備ホールディングスでは、紫外線照射ロボットを開発(UV-C Robot Sterilizer)、岡山電気鉄道で使用を始めた(Anti B&V Techno service)。深紫外線で細菌やウイルスを不活性化させる。今後はタクシー用の小型装置が配備・外販される予定。*併せて水分や酸素と反応してウイルスを分解する抗菌触媒の噴霧を行うにあたり抗菌剤を採用している。各社のコロナ対策の積み重ねがライドシェアの発展に寄与することを願いたい。
バリアフリーの観点からMaaSの利便性向上を検討へ 国交省 他
7月20日 国交省は7月22日に「ユニバーサル社会におけるMaaSの活用方策についての研究会」を開く。日本版MaaSにおける発展段階のうち、2019年は実証実験、2020年は事業化の年である。これから議論が深まると思われるのは、サービスを持続させるためのプレイヤー自身におけるビジネス化やマネタイズ。そしてバリアフリーや、MaaS周辺業界(小売店舗、宿泊施設、医療福祉、観光、不動産など)の関わり方などの分野か?言うなれば、技術(安全性)や仕組みづくり(快適性)の上で、MaaS本来の利便性や付加価値をどう高めてゆくかという部分だ。赤字化廃線化した地方鉄道やバス路線の轍を踏まないためには、領域のパズルの一つ一つの部品を担う個別ポジションから見たとき「儲からないから、持続できない」の悪循環を断つことだ。儲からないけれども必要なサービスが生み出す付加価値が、広い視点での価値を生む。近視眼的にはMaaSの「移動メリット」を享受するのは市民というのは事実だ。ローカル経済からサービサーが享受できる収益には限界がある。プレイヤーと一体化する場合もあろうが、MaaS社会構築後の世界から「経済的メリット」を享受する領域から、MaaS開拓や交通事業者層が持続的に経済的な還元を受ける仕組みづくりについても議論が深まってよい。
Suica連携のMaaS保険へ。JR東日本と東京海上日動が提携 他
7月17日 JR東日本と東京海上日動火災保険は「JR東日本と東京海上日動 安全・安心・快適なMaaS社会実装推進と新たな保険サービスの共同開発に向けた業務提携」を発表した。MaaS社会の到来に備えMaaSの社会実装と保険サービスの共同開発に向け業務提携を進める。これまで航空機やレンタカーなど特定の移動手段については保険が用意されていたが、MaaSでモビリティーの選択肢が増え、日常の移動(JR東日本が運営・モビリティー・リンケージ・プラットフォームで連携する新幹線及び在来線やタクシー、シェアカー、BRT、バス等)のどの辺りまでが適用範囲となるのか興味深い。今回のリリースでは、協業の第一弾として「Suica」や「Ringo Pass(JR東日本のMaaSサービス)」と東京海上日動のノウハウや事故対応ネットワークを組み合わせ、新たな保険サービスの開発を試みる。利用者にとって安全・安心・快適なサービスの開発・展開を期待したい。
より大きな自動運転バスで実証実験、国内5地域で7月から 他
7月15日 産総研が2019年度の公募により選定した5つの地域で、中型自動運転バスによる実証実験を開始すると発表した(7月10日)。従来は実証実験に小型バス(福岡県北九州市・苅田町地域)を使用して来たが、今回はバスモデルの事業性の向上させるため、昨年度より開発してきた中型バスを用いる。この実験を実施するバス運行事業者は、京阪バス株式会社(滋賀県大津市)、神姫バス株式会社(兵庫県三田市)、西日本鉄道株式会社(福岡県北九州市、苅田町)、茨城交通株式会社(茨城県日立市)、神奈川中央交通株式会社(神奈川県横浜市)の5社となる。本実証実験は実際に乗客を乗せて(安全のため、着座のみ)行われる。また実証実験に伴い、各社では出発式を開催する。このうち京阪バスでは出発式を7月11日(土)にJR大津駅北口(びわこ口)駅前広場にて10:00~開催予定、神姫バスは7月19日(日)にウッディタウン市民センター芝生広場にて10:00~開催予定だ(*コロナウイルス感染拡大の影響などにより変更となる場合があります)。
「MaaSのデータ連携」方向性の周知図る 有識者がフォーラム開催 他
7月14日 MaaSの実現に不可欠となるデータ連携が円滑に行われるため、国交省はこの3月にデータ連携の為のガイドラインである「MaaS関連データの連携に関するガイドラインVer.1.0」を発表している。ガイドラインの作成に参画したみずほ総研がこの6月にオンライン上で「Mobility in a New Era:変革期を迎える移動 MaaSによる新たな社会」を開催した。MaaSのデータ連携は、簡単にはMaaSプラットフォーマーの有するMaaSプラットフォームをAPI等により連携させるイメージだ。ガイドラインは、各ポジションから連携を行う際の留意点を整理しているが義務付けはない。留意点として今回は災害時や非常時の運用は想定されていない。昨今の種々の災害などの状況を鑑みても早急な整備が求められる分野だ。また構築したプラットフォームを軸に、医療や福祉、警察・消防、農業、商業、運送業、飲食業など、さまざまな近接分野の移動やサービスとの連携が期待される。連携するデータの範囲の広さから、改めてMaaSの経済・社会への影響の大きさを感じる機会となった。
車載ディスプレイ部材世界市場、コロナ禍で減速も2021年には回復 矢野経済予測 他
7月13日 久々にタクシーに乗車した。車内の搭載機器の数や変化に目を見張るものがある。一昔前にはカーナビが装備されていれば目新しさを感じたものだ。取り分けディスプレイの多さには目を見張るものがある。2020年の世界の自動車生産台数は凡そ8900万台といわれるが、2020年はコロナウイルスの影響により大幅な縮小が見込まれる。これに紐づいて車載ディスプレイ市場も減産を余儀なくされるが、一方で今後CASE対応する車両は増えることから、統合コックピットやヘッドアップディスプレイやミラーなどの新たな分野へのディスプレイの活用も見込まれるため、早期の生産量の回復も期待されている。今後、コロナ禍の影響は復調するディスプレイの機能や市場戦略にも微妙な影響を与えそうだ。従来車載ディスプレイはタッチパネルが主流だったが、今後は可視化したい広告情報などは非接触方式のディスプレイ、副次的に可視化すればよい良い情報は、個人が所有するスマホのディスプレイに委ねるなど、その用途は分かれる可能性がある。その意味ではディスプレイ市場とNFC市場、ジェスチャー入力などとの技術的な融合や協業が進んでゆくのかも知れない。
KDDI、3密を避けた「相乗り通勤タクシー」。新たな通勤スタイル実証実験 他
7月10日 KDDIと国際自動車(km)未来シェアの3社はオンデマンド相乗り通勤タクシーサービスの実証実験を実施する。実験では、通勤の混雑緩和、移動時の感染防止、渋滞の回避、ユーザー受容性の把握などを検証する。使用される車両では、3密対策として、相乗りながら少人数での移動、ソーシャルディスタンスを考慮した座席設定、常時換気、送迎後の車内アルコール消毒、ドライバーおよび乗客の事前検温、マスク着用、飛沫防止カーテンなどの対策が行われる。実験に参加する株式会社未来シェアは函館市の公共交通の課題を解決するために「SAVS」(スマートデバイスとアプリの通信を利用、タクシーや路線バスの走行ルートをAIがリアルタイムに決定する)と呼ばれるサービスを、公立はこだて未来大学、名古屋大学、産業技術総合研究所と共に開発、全国各地で実証実験の実績を積み重ねている。サービスとしては2017年に名古屋のつばめタクシーの運行するエアポートリムジンの配車システムとして採用された。
WILLER、モービルアイ:日本・台湾・ASEANにおける自動運転ソリューションの提供に向け協業 他
7月9日 WILLERとモービルアイ(Mobileye)が協業を決めた(日本・台湾・及びASEANにおける自動運転ソリューションの提供)。両社は2021年に日本の公道でロボタクシーのテストを開始することを目指し、2023年には完全自動運転によるライドヘイル(配車サービス)及びライドシェアリングサービスを開始したい計画だ。WILLERはHDと傘下に子会社としてバス・鉄道会社を持ち、これまでもASEAN地域(シンガポール、台湾、ベトナム)において、各地域の交通課題を新たなモビリティーサービスによるソリューションを提供し、その解決を試みて来た。WILLERの村瀬氏は、国内で課題とされる乗合いバスや地方鉄道会社の利用者減少や赤字に対して、国内とASEANで培ったノウハウを相互に供給し合い、国内の安心・効率・快適を地方交通に反映したいと考えている。自動運転については技術開発ではなく、運行管理や高い付加価値を持つサービスの創出を立脚点とするようだ。ある大手のタクシー会社は広告を生業に、WILLERはITを使ったマーケティングを取り込んでいる。交通事業者のMaaSビジネスへの関わり方の共通点として、本業を持続させるための、近接領域の取り込みというアプローチの仕方が垣間見える。
国内MaaSにおける協調領域の創出を。JCoMaaS総会・シンポ開催 他
7月8日 この6月にJCoMaaSの総会がオンライン上で開催された。同団体は2018年からデジタル技術と交通サービスの融合によるイノベーションを実現するため、地域社会や交通業界、産業界と連携しつつ、多岐に亘る研究活動や成果の公開(講演・研究会活動等)や発信(通信教育の開発・出版物発行・調査研究・政策提言・助成・内外の公的機関、諸団体との連携)を通じ、MaaS推進・社会貢献を行っている。実証実験に明け暮れた2019年を経て、日本は技術成果や運用の為の知見の整理・統合ステージにいる。本年度の総会には計53団体(6/22時点)が参加していることからも、本活動への関心の高さを伺い知ることが出来る。コロナウイルスの影響により、MaaSに関わる全ての領域に想定外の対応が求められる事態となり状況は複雑化した。MaaSの本質的需要とコロナ社会が求める過渡的ニーズを上手に区分・包括しながら、日本版MaaSの目利きとして一翼を担っていただきたい。