5月18日 JR九州日豊線にある下曽根駅。一日の乗降客は6,699人(*2018年度)、普通電車と特急を合わせ127本の列車が運行される。この2月からJR九州と西鉄バスによるMaaS連携(「下曽根モデル」と呼ばれる)で、列車とバスの乗り継ぎの利便性が向上した。人口の減少やドライバー不足の難題を抱えるかつてのライバル2社が協調路線を選択した。JR九州は2019年11月28日に先行スタートしたトヨタの「my route」(西鉄も参画済み)に参画した経緯もある。本取組においては、バス路線の新設、増便、列車ダイヤに合わせたバスダイヤの調整、情報面ではバス車内モニターでの列車時刻案内、駅構内におけるバス時刻表・接近情報のモニター表示、また施設面では、案内サインや待合用ベンチの増設などが行われ、駅前広場整備の一環として駅前広場附近へのバス停の集約なども検討されている。JR九州と西鉄では「下曽根モデル」での連携をモデルケース化し、その他の駅においても連携を検討・展開していくとしている。MaaS導入により交通事業者同士の連携を実現し、地方都市~郊外駅~ベッドタウン間の乗り継ぎにおいて利用者の利便性向上が図られたという成功モデルを構築していただきたい。
MaaS・CASE関連の最新ニュース(48 / 65ページ目)
「東京メトロMaaS」始動へ あえて一駅前で降りて健康増進 他
5月14日 この3月に東京メトロが発表した「my! 東京MaaS」。7月に既存の東京メトロアプリをリニューアルする予定だ。沿線住民の移動の利便性向上に期待がかかる。MaaSアプリの持続の原動力となる収益源に対する見方は進化するのか?当初のMaaSアプリの想定には、アプリ内のチケット購入やクーポン発行で、沿線の店舗やサービス利用を促し、出稿した店舗などから広告料を得るモデルが多いように思える。出稿者側から見た「オンラインクーポン」には「会計処理が面倒」「ブランドを守るため」「リピートされづらい」などの評価もあるようだ。店舗が利用客に提供するお得情報サービスのうち、最も利用されるのは「会員登録後の会員向けサービス(オンラインショップ以外)」、次いで店舗が発行するメルマガ、3番目に店舗のオンラインショップの会員に登録、会員向けのサービス利用が顔を出す。近年では店舗のLINE、Twitter、Facebookなどの利用が10-30代の女性から中高年層に拡がる傾向にある。オンラインショップで利用される情報には、ファーストフードクーポン、アウトレットなどで配布された先着順でもらえる商品券、飲食店の来店予約、ドラッグストアの全品10%OFF、チラシ比較、コンビニ・カフェの新商品情報。ガソリンの特売情報、ディスカウントストアのクーポン等。MaaSアプリ運営者にはアプリ内のクーポンページをポータル化させるだけでなく、人口や観光資源が少ない過疎地のMaaS運営者や個人事業主に対するアイデア提供や、表示順位の工夫などをお願いしたい。
自動走行ビジネス検討会報告書「自動走行の実現に向けた取組報告と方針」Version4.0を取りまとめました 他
5月13日 自動走行ビジネス検討会から、5月12日に発表された、自動走行ビジネス検討会「自動走行の実現に向けた取組報告と方針」報告書概要 Version4.0。その中の協調領域等の取組にある「セーフティ(機能安全等)」が興味深い。この取り組みは、自動走行システムの正常作動時、異常作動時のリスク発生状況などを「運転モードの視点」から区分、それぞれの区分に適した安全設計に対する開発と評価手法の確立を目指したもの。資料中では「運転モード区分」として、システムを使用した運転、運転操作引継ぎ、システムを使用しない運転との区分あり、その配下に「リスク発生の状況」として、システムを阻害する外部要因が発生、システム仕様を超える状況が発生、ドライバの運転態勢不十分、ドライバの環境把握不十分があげられ、各状況がミスユースや、性能限界などの評価に分けられており、セーフティ(機能安全)の見地から「運転の引継ぎ」がどのように位置付けられているかを知ることができる。先日、自動運転技術「レベル3」搭載車両が解禁された。2019年12月から施行された道路交通法改正においても、運転引継ぎ前後の義務(前方注意義務、安全運転義務)については慎重に議論が重ねられてきたと思われる。世界各地では「レベル4」の実証実験も盛んに行われている。産業界と法曹界、法の執行機関などの技術と法の知見を一体化・深化させ、自動運転社会にとって有用なルール作りを推し進めていただきたい。
アフターコロナ、自動車業界の未来 他
5月12日 コロナショックの打撃の凄まじさを思い知る。トヨタが発表した2021年3月期の業績予想は売上高24兆円(前期比で19.8%減)、営業利益は5000億円(前期比で79.5%減)だ。今後業界の回復・成長をけん引するCASE向けの車両も従前にない機能が必要となるかも知れない。公共交通に追加が予測されるのは、運転席と客室の分化、緊急搬送、客貨混載対応設備、利用者の健康状態の測定機能がついた情報機器や衛生機器など。緊急搬送には救急車と病院のマッチング機能。オーナーカーでは、MAPに警戒区域侵入警告など緊急時(地震や津波、気象状況、或いは軍事的、医療的な理由など事情や状況に応じ、安全な移動を補助)の車両走行に必要とされる情報の追加が求められる。両者に必要と予測されるのは、サービス面ではクリーニング。設備面では、空気の清浄度を上げるエアコン、乗員の身体・健康状態の測定機器、荷預かり・受け渡しが可能なスマートキー、簡易デスク、キーワードは非接触、バイタルチェックなどだろうか。ビークル類への電力供給インフラの普及加速が予測される。
AIオンデマンドバス交通を導入へ—6事業者に交付金の支給を決定 他
5月11日 国土交通省がオンデマンドバスを導入する全国6事業者に交付金の支給を決定した。オンデマンドバスとは、利用者予約に対しAI活用により、リアルタイムに最適配車(配車予約と車両位置から最適なルードを導き出し、概ね希望通りの移動を実現)を行う移動サービスだ。利用者にとっては、電話やアプリ予約により、乗りたいときに目的地近辺までの移動が可能になる。事業者にとっても運行の効率化が図れる運行形態だ。今回、支給対象となった西日本鉄道は、三菱商事と共同でアイランドシティー地区(福岡市東区)においてAI活用型オンデマンドバス「のるーと」の運行を2019年4月から開始しており、オンデマンドバスの運行について一日の長があるようだ。同サービスのWebサイトの「よくあるご質問」ページを見ると、同社が運行開始後も課題に真摯に取り組んできた様子が分かる。運行区域内に予め46のミーティングポイント(乗降場所)を用意したが、その後61ポイントまで増やした。アプリのダウンロードは7000を超え、地域住民の足として定着しそうだ。
ボルボ、自動運転用LiDAR搭載車を2022年より販売へ。「安全な自動運転のため」 他
5月8日 ボルボは10万台を超える売り上げを誇るXC90(ボルボのプラグインハイブリッドSUVのフラグシップ・モデル)に、米Luminar製のLiDER搭載を決定した。近年、LiDERの特許出願件数は増加の一途を辿る。LiDERは、1990年代にこの分野における日本の出願は世界最多だったが、近年は減少傾向にあり、2010年代からは米国がトップに。出願企業も2013年以降は米国企業が増えている。2010年以降、3D LiDERについての出願人トップ3は、Google、フォード、Waymo(Googleから分社化)、Boschは光走査技術、ヴァレオはMEMS+レンズ系による光走査を研究、出願している。研究分野を見るとその企業がLiDERを、自動走行関連技術と位置付けるのか、装置そのものの技術進化を狙うのかなどが見える。2012年に立ち上がったLuminar Technoroliesの技術は、TRI(トヨタ、デンソー、アイシン精機が出資)が自動走行の開発向けに採用している。車両向けLiDER分野は、メガサプライヤーの社内開発とM&A、他社との連携強化などにより加速を続ける。特許情報からもその一端を伺うことができる。
「究極の貨客混載」は自動運転タクシーで実現する 他
5月7日 国土交通省は特例措置として5/13まで認めていたタクシーによる有償貨物輸送の期限を9/30まで延期した。コロナの影響による外出自粛の為、フードデリバリーサービスなどの需要増を見込む。貨客混載が解禁されれば、タクシー、バス事業者は回送状態を削減、運送会社も人手不足により、限界に近づく配達需要をカバーできる。両者の利益分配やユーザーの料金相場が落ち着き、施策が軌道に乗れば両事業にとってのメリットは大きい。但し、タクシー事業者が一般貨物自動車運送事業を営む場合、同省は許可に付す条件として、運送区域(発地または着地が過疎地であること等)や積載できる貨物重量、旅客運送との関係など幾つかの条件を満たす必要がある。また、許可の期限としては、許可の日から起算して2年を経過する日が定められている。1872年6月に開始した郵便物の鉄道輸送システムは、自動車化により1986年10月に歴史に幕を閉じた。約34年後の今、再び公共交通機関に貨物が積み込まれ、高度化したモビリティのマルチタスク化が進む。
新型コロナウイルスがもたらすMaaSビジネスの変化 他
5月1日 コロナ後の世界におけるビジネスや生活の「変化」について、連日報道で取り沙汰されている。コロナの打撃の大きかった運輸業界も、サービス再建において今後の利用者ニーズの変化は気になるところ。今後、利用客の「安心」需要を満たすキーワードの一つに「クリーニング」が挙がる。旅客機からシェアバイクに至るまで、従来の食品提供や清掃といった衛生管理の上に「感染防止」のニーズが高まる。車内の換気や設備の消毒、施設内外・周辺環境への新たな配慮や取り組みがブランド(ホテルなどが清潔さを一つの価値として兼ね備えるのと同じく)の安心して利用できるモビリティサービスの指標の一つになっていく。ベルリンで2021年4月27日~30日に開催される「InnoTrans 2021」(世界最大の国際鉄道技術見本市)では、鉄道技術、鉄道インフラ、公共交通機関、インテリア、トンネル建設の5つのセグメントを設けられており、広大な敷地に広がる41のホールの中に「メンテナンスとクリーニング」セグメントが存在する。クリーニングアクセサリー、クリーニングシステム、昇降装置、洗浄システム、ワークショップ設備、作業プラットフォーム・ステップ、ワイパーなどが展示される予定だが、来年はこの分野の注目度が高まるのではないだろうか。
MONET、MaaS構築を支援する「MONETプラットフォーム」の機能を拡充して本格的な運用を開始 他
4月30日 MONETが、MaaS構築を支援する「MONETプラットフォーム」の機能を拡充、本格的な運用を開始した。機能拡充に伴い「MONETマーケットプレイス」提供されるAPIに「るるぶDATA API」がある。旅行情報誌として親しまれて来た「るるぶ」には観光情報をはじめ、宿泊、温泉地(近距離、遠距離)、観光エリア、イベントなどのDBや季節特集など魅力的コンテンツ、すなわち利用ニーズを喚起、各社の移動サービスを促す十分な情報が蓄積されている。今後予想されるプラットフォーム競合時代、どのプラットフォームに参画するのかは、自治体や交通事業者やMaaS関連ビジネスを企図する各者にとっては収支を左右する重要な選択になる。その為「コンテンツ」はプラットフォーム運営者にとって選ばれるための重要な資源と言える。利用者にとって、MaaS関連事業者が長年蓄積した気象・飲食・買物・医療・災害系情報などが追加されてゆけば、さらに魅力的な「コンテンツ」が育つ。利用者がどのような情報に注目(検索・比較)して興味(移動の利便性や必要性)を感じ、実際の移動に繋がるのかについて研究を深めたい。
MONETがMaaSプラットフォームの本格運用へ APIマーケットプレイスも開設 他
4月28日 MONET Technologies株式会社は、4/27に企業や自治体のMaaS実現を支援する「MONETプラットフォーム」の本格運用を開始した。データ基盤やAPIなどを備えた「MONETプラットフォーム」の機能を拡充し、これに伴いオンデマンドバスの配車システム、天気、観光、地図情報などのデータやシステムのAPIを提供する「MONETマーケットプレイス」を「MONETコンソーシアム」の加盟企業のうちシステム開発などを行う企業向けにプレオープンさせた。また、今夏をめどに「MONETマーケットプレイス」を一般企業にもオープンする。年間に全世界9,800隻以上の船舶を気象情報で支援している株式会社ウェザーニューズ(WNI)は、MaaS開発に活用可能な「天気予報API」を「MONETマーケットプレイス」に提供し始めた。1kmメッシュ/1時間ごとのピンポイント天気予報と過去の観測値データがAPIで取得可能になる。国内のMaaSサービスは持続可能な運営モデルの構築に注力すべき段階に入っている。「MONETマーケットプレイス」が活性化することで、交通事業収入に他業種からの連携収入の道が開かれ、屋台骨の強化が期待される。