4月14日 去る2月28日(月)~3月18日(金)まで、富山県では日頃、マイカー・バイク等で県内の事業所・学校に勤務や通学する方を対象に、マイカーに依存した生活を見直し、エコや健康づくりにもつながる公共交通等の利用を一層促進するため「とやまノーマイカーウィーク」が実施されている。*土日、祝祭日を除く。期間中はトヨタのスマホアプリ「my route」でデジタル乗車券「とやまノーマイカーウィーク限定きっぷ」が販売され、県内の一部を除く公共交通機関)が90分間乗り継ぎ・乗り降り自由となっていた。この取り組みにより、マイカー利用者が、期間中に1日以上、公共交通、徒歩、自転車等により通勤・通学することを取組みの内容としている。「とやまノーマイカーウィーク」に参加するには、事業所や学校単位で県のホームページから申込用紙をダウンロードしてもらい、参加申し込みを行い、スマホアプリ「my route」をダウンロードして、会員登録を行うものとし、参加当日にデジタル乗車券を「my route」で購入、乗車前に「利用開始」をタップする流れとした。鉄道では乗降時に乗務員や改札口の駅係員にアプリ画面を提示、バスの場合は乗車時に乗務員にアプリ画面を提示することとした。この取組みに参加するために必要となる「とやまノーマイカー限定きっぷ」は、期間中、公共交通機関を利用する際に、富山地方鉄道㈱が販売事業者となるスマホアプリ「my route」から、クレジット決済により購入する方式とした。販売価格は破格と言える150円として、利用当日に購入してもらい、購入当日のみ利用可能、払い戻し不可としている。但し、利用時間は90分間となるため、移動できる距離は限られたものとなった。*降車する(または改札を出る)とき、90分の有効時間が切れていた場合は、乗車した駅・バス停からの運賃を払う必要ありとのルールだったため、バスを降車したり、電車から降りたりするときに、利用者はちょっとドキドキしたかもしれないことを想像すると微笑ましい。富山県を移動するいくつかのルートを鉄道で移動する前提で、この90分を考えると時間帯にもよるが、あいの風とやま鉄道の越中宮崎駅~富山駅は1時間20分程度、富山駅~石動(いするぎ)駅は35分程度、今回、JRは協力交通機関ではないが、JR城端線の高岡駅~城端駅は55分程度、JR高山本線の富山駅~猪谷駅は56分程度、富山地方鉄道立山線の富山駅~立山駅は1時間14分程度と検索できる。*検索はGoogle。この移動時間から考えると、90分という時間制限を考えれば、通勤や通学でこの範囲を乗り通す人は限定されると思えるので、十分な時間設定と考えられる。この取り組みに協力した公共交通機関は、あいの風とやま鉄道、富山地方鉄道(電車・バス)、加越能バス、万葉線、高岡市公営バス、射水市コミュニティバス、魚津市民バス、黒部市内路線バス、南砺市営バス、上市町営バス、立山町営バス、入善町バス、あさひまちバス(*高速バス、定期観光バス、富山地方鉄道特急電車、特急バス、コミュニティバスの一部路線は除く)。ちなみに利用区間は、乗降駅・バス停がともに富山県内である場合とされ、県外の駅、バス停への乗り越しは出来ないものとされた。ちなみに富山県公共交通利用促進協議会の作成した「とやまノーマイカーウィーク」のチラシを拝見すると、ノーマイカーの取組みがエコや健康づくりに一役買うことが出来るとして、二酸化炭素排出両比較グラフや、移動に伴う消費カロリーグラフ、経済性についての記載がある。この資料によると、2019年度の「二酸化炭素排出両比較」(単位:g-CO2/人キロ)は、鉄道が17、バスは57、航空(機)は96、マイカーは150となっており、鉄道やバスを利用することが環境に優しく、「移動に伴う消費カロリー」(出典:第6次改訂日本人の栄養所要量)を見ると、クルマでの移動は102(kcal)に対して、公共交通での移動は220(kcal)とされており、2倍以上のカロリー消費が期待できるため、健康にもいいとされ、さらに「公共交通は経済的」では、マイカー(1,000cc程度の車の場合)1日当たりの維持費は1,500円~2,000円程度、年に換算すると55~75万円程度の維持費がかかるため、電車・バスの方が経済的!と推奨されている。「とやまノーマイカーウィーク」を見れば、日本の地方自治体の環境対策や県民の健康増進の施策とも取れるが、これらの施策は世界でも進んでいる。日経トレンドの「世界で進む公共交通「運賃ゼロ革命」 環境配慮と移動喚起を両立」(2022年3月15日)でも紹介されているが、新型コロナウイルス感染症拡大の出口戦略として欧米で脚光を浴びる「グリーンリカバリー」と呼ばれる政策がある。公共交通の「運賃ゼロ」を実現することで、環境に配慮しながら、移動需要を喚起し、経済の活性化を狙う例も出てきているとのこと。オーストラリアでは、2021年より「気候チケット(KlimaTicket)」の販売が始まり、好評のようだ。実際にオーストラリアの(https://www.klimaticket.at/en/)を見てみると、チケットは「KlimaTicketÖ」と呼ばれ、オーストラリアの公共交通機関は、1枚のチケットでシンプルで安価。しかも、私たちの惑星の機構への貴重な貢献ができると謳われている。「KlimaTicket」は、「KlimaTicketÖ」を使うと、特定の地域(地域、地域間、全国)で予定されているすべてのサービス(公共及び民間の鉄道、都市および公共交通機関)を1年間使用できるとされている。但し、Waldviertelbahn、Wachaubahn、Schneeberbahn、Schafbergbahnなどの観光オファーには使用できない。同チケットはこれまでの全てのチケットに勝り、同時にこのチケットはパリの気候目標を一緒に達成することを目指す手立てであるとされ、公共交通機関はモーターを備えた個別の交通機関に変わる優しい交通機関だとされている。参加すればするほど、気候(変動の改善)に資することが出来るため「KlimaTicketÖ」はシンプルで手ごろな価格であると説明されている。「KlimaTicketÖ」に加えて、同国の公共交通機関は、気候にやさしい公共交通機関を確保するため、近代化と継続的な拡大を続けているとされる。連邦政府(の政策として)は地方、地域、および長距離輸送で提供される、益々高密度で快適な公共交通サービスに投資し、駅のモビリティ・ハブ(交通結節点)化、輸送ルートの更なる拡大に加え、都市部における地方(日本で言うところの都市近郊・郊外のことか?)及び地域輸送の発展のため、十数億円の資金を割り当てているとし、安価な「KlimaTicketÖ」(初回キャンペーン価格は年間約949ユーロ=約12万円、通常価格は1095ユーロ程度)を使用すれば、気候に優しい未来への投資となり、オーストラリアを通勤や旅行するすべての人が利益を受けられると結んでいる。この取組みは、気候変動(危機)への対策として「移動による温暖化ガス削減」と国民の移動コストの負担軽減、移動による「経済活性化」をかなえる政策として世界から注目されている。公共交通事業者の視点からは、新型コロナウイルス感染症拡大の切り札になるのでは、との期待感が伝わってくる。オーストラリアの人口当たりの自動車保有台数は世界第二位。一人当たりの道路延長は欧州の3~4倍、アジアの7~9倍、世界で3番目に一人当たりの燃料消費量が多いと言われる。この自動車大国(と言って差し支えないだろう)の鉄道システムは、市内公共交通機関(トラム等)、都市間鉄道、州間鉄道、州内・都市鉄道、鉱山鉄道、産業鉄道などで構成される。同じく自動車大国の日本では、11日にJR西日本が利用者が減少している地方路線の線区ごとの収支状況を初めて公表した。十分に現状把握が出来たら、次はその相方となる「打開策」が必要だ。但し、持ち時間は限られている。世界の潮流を取り込むとともに、官民一体となり「環境配慮型の経済活性化戦略」を考えを深めて見てはいかがか。
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長野県小諸市にて、LINEと連携したMaaSサービスをリリース 他
4月13日 長野県小諸市で4月16日(土)から、日本初のDXによる情報発信とMaaSによる新交通とを組み合わせた社会実験「縁JOY!小諸」が始まる。小諸市は「多極ネットワーク型コンパクトシティ」の理念に基づき、小諸駅を核として都市機能の集約(コンパクトシティ化)を図り、中心拠点に生まれる新たな魅力の発信と、市民や観光客の回遊の促進を目指している。「多極ネットワーク型コンパクトシティ」とは、医療や福祉施設、商業施設や住居等がまとまって立地するエリアを中心拠点として形成し、周辺部の居住エリアである「生活拠点」との拠点間を結ぶ交通サービスの充実を図るもので、高齢者を始めとする様々な住民に対して、自家用車に過度に頼ることなく、公共交通による医療・福祉施設や商業施設等へのアクセスを容易なものとし、日常生活に必要なサービスや行政サービスが住まいなどの身近に存在する都市を目指す都市再生計画だ。この計画に参画するのは、全国で都市再生の支援に取り組む、「UR都市機構」と「㈱URリンケージ」だ。3者は、平成29年12月18日に「多極ネットワーク型コンパクトシティによる都市再生に関する基本協定」を締結、令和3年3月31日までを期間(*必要に応じて更新に関する協議を行う)と定め、この取り組みを行っている。中心となる小諸市複合型中心拠点誘導施設「こもテラス」は、同市相生町2丁目のスーパーツルヤ小諸店の敷地を中心としたエリア一体で、2021年8月に開館、交流施設、福祉施設、交通施設、商業施設を集約した施設で、地域の出会いや、語らい、ふれあいの場として機能する。このような流れの中で行われる今回の「縁JOY!小諸」は、まちなかの魅力的なスポットをDXで繋ぐことで、まちなかでの滞留と回遊の促進を目的とした社会実験だ。実施には「こもろまちタネプロジェクト」(小諸市、小諸商工会議所、こもろ観光局、しなの鉄道、JRバス関東、まちづくり小諸、㈱カクイチ他)で構想し、UR都市機構の支援で行われる。小諸市では、時期の重なる令和4年4月16日~11月末まで、「まちなかポップアップ&ゴーDX社会実験」も進める。この社会実験では、小諸市内外において、まちなかにおける"コト(取組)"と"モノ(施設や建物)"の情報認知の拡大を図るため、小諸駅や懐古園、こもテラスでの屋外デジタルサイネージによる情報提供(ポップアップ)を行い、デジタルサイネージと連動したポータルサイトによる詳細情報の提供、ポータルサイトからの経路検索としなの鉄道・市内巡回バスの周遊チケット電子版の発券・決済、情報通信技術を活用した人流の分析をDX型の社会実験として取組み、効果の検証と運営方法の検討などを行う。本社会実験では、小諸駅から市内の各方面を「新交通」(スマートカート「egg」、EVバス「こもこむ号」、しなの鉄道)に乗って周遊できる「北国街道巡回!カート周遊チケット」(無料)、「北国街道、布引観音方面巡回!」、「お得な1日フリー電子切符発売!『信州こもろパス』」の3つのチケット・パスが利用できる(令和4年4月16日(土)から毎週土曜日、ゴールデンウィーク中は4月29日、5月3日、5月4日も運行)。小諸市の主な交通結節点となる小諸駅は、しなの鉄道とJR東日本小海線の乗換駅でもある。長野~上田~小諸~軽井沢、小諸~小渕沢方面への移動が可能で、それぞれの路線は北陸新幹線とも接続しているので、首都圏からの玄関口になる。しなの鉄道の利用は、「お得な1日フリー電子切符発売!『信州こもろパス』」がおススメだ。市内の中心部を巡回する「北国街道・まち巡り便」、小諸駅と千曲川の西岸を結ぶ「布引観音・台地巡り便」は、EV(電気自動車)バス「こもこむ号」(一部、愛のりくん車両)が便利だ。利用料金は大人が500円、小人が250円となる。利用日は、2022年4月16日~11月26日の土曜日、4月29日、5月3日、5月4日も運行する。*2022年5月7日までは無料キャンペーン!(https://enjoy-komoro.jp/introduce/evbus/)があるので、ぜひ試乗してみたい。*「こもろ周遊チケット」ご利用の方は、ご利用できる日にちに制限があり。もう一つ。市内を散策する際、忘れてはならないのがEV三輪カート「egg」だ。「egg」は、小諸市中心部の運行ルートを時計回りに約10分間隔で巡回、運行ルート上なら、どこでも乗り降り自由だ。「egg」のおかげで食べ歩きの自由度が(笑)格段に上がる。「egg」の利用は、LINEアカウント「こま~す」の「チケット購入」ページより、デジタルチケットを購入(※無料!)、カートの運転手に提示すればO.K.だ。利用日は2022年4月16日~5月28日の土曜日、4月29日、5月3日、5月4日となる。*「こもろ周遊チケット」ご利用の方は、ご利用できる日にちに制限があり。「新交通」で市内を移動するため LINE公式アカウント「信州こもろ・こま~す」で、お得なチケット「バス・カート周遊チケット」や電子切符「信州こもろパス」を購入しておくと、まちなかの店舗や施設で行われるイベントやスタンプラリーに参加できる。ちなみに4月16日(土)~5月29日(日)まで開催される「スタンプラリーキャンペーン」で、市内の施設や店舗をめぐって、各所でQRコードをアプリの「スタンプラリー」で読み込むとスタンプが貯まる。5個貯めると、市立小諸図書館に設置された素敵な景品の当たるガチャ(カプセルトイと呼ばれる抽選式の玩具購入方式)を1回利用できる。レトロ感を醸し出す遊び心が嬉しい。スマホアプリ「LINE」を使った「信州こもろ・こま~す」は、地図で市内の観光スポットの情報提供を行ったり、徒歩での経路検索や電車・バス・カートなどのモビリティの複合経路検索をしたり、地図上でバス・カートの現在地の確認、カートに乗車する場合は、カートの乗車人数確認をすることが出来る。また、しなの鉄道(軽井沢~上田間)、EVバス「こもこむ」で使える電子ケットの販売を行うとともに、各スポットに設置されたQRコードを使ったスタンプラリーなども楽しめる。複合的な小諸市の社会実験が並走する同市にとっては重要な時期だが、観光客の目線からはこの社会実験は「楽しいゴールデンウィークの小諸観光」となる筈だ。詩情あふれる高原の城下町、信州小諸の観光を愉しみつつ、実験の成功を祈りたい。
4種同時実証!大阪、自動運転車や配送ロボをミックス 万博に向け 他
4月12日 NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は4/11に「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期/自動運転(システムとサービスの拡張)/協調型自動運転のユースケースを実現する5.9GHz帯V2Xシステムの通信プロトコルの検討」に係る実施体制の決定について、を発表した。自動運転社会の実現には、分合流地点における自動車間での調停など自律センサでは認知できない周辺環境の把握が必須、これを可能にするV2Xシステムについては、5.9GHz帯の電波を用いる流れが国際的な動向として主流になりつつある。本事業では、協調型自動運転の実現に向け、5.9GHz帯の電波を用いるV2Xシステムの導入に係る課題解決及び検討を加速するため、その導入に必要となる通信プロトコルを含めた無線機の仕様の案出(実施予定先は沖電気工業、日本電気)を目的としている。採択委員側は内閣府をはじめ、総務省総合通信基盤局、電気通信大学、慶應義塾大学だ。内閣府の「SIP第2期自動運転(システムとサービスの拡張)中間成果報告書」(第2章 交通環境情報の構築と活用)によれば、交通環境情報とは、その中で大きく交通環境情報の生成に係る技術と、同配信にかかる技術に大別されている。各研究課題(タイトル)と参画企業は次のようになる。①交通環境情報の生成に係る技術については、「交通環境情報の活用とロードマップ(トヨタ自動車㈱)」「インフラ協調型自動運転のための信号情報提供技術(V2I)の開発(住友電気工業㈱、日本信号㈱、パナソニックシステムソリューションズジャパン㈱、オムロンソーシアルソリューションズ㈱、一財)UTMS協会)」「車両プローブによる車線別道路交通情報に係る技術開発(パシフィックコンサルタンツ㈱、㈱三菱総合研究所)」「車両プローブ情報を活用した高精度3次元地図更新の開発(ダイナミックマップ基盤㈱)」②交通環境情報の配信に係る技術については、「協調型自動運転のための通信方式の検討(概要)(マツダ㈱)」「狭域・中域情報の収集・統合・配信に係る研究開発(㈱NTTドコモ、パナソニック㈱、住友電気工業㈱、沖電気㈱)」となる。これらの研究課題の中で、5.9GHz帯に言及があるのは、マツダ㈱の「協調型自動運転のための通信方式の検討(概要)(マツダ㈱)」だ。それによると、協調型自動運転のコンセプトは以前より様々な企業、研究機関等により検討されて来た。この機能を実現するための通信方式についても、各地域で実証実験や標準化活動を通じて検討が行われている旨が書かれている。日本においては、既に実用化され安全運転支援に活用されているITS無線(ITS:高度道路交通システムは、情報通信技術を用いて人、道路、車両に関する情報を結び、それらを一体として構築したシステムを指す。安全や環境、快適・利便の目的に資する。VICSやETCのように渋滞解消や交通円滑化等に資するサービスが実用化されている。)を自動運転に拡張することが考えられるとしているが、その適用可否または「将来のあるべき通信方式」についての議論は個別には行われていると思われるが、日本としてまとまった議論となっていなかった、とある。SIPでは産学官が一堂に会し、自動運転の実現に取り組む体制が出来ていることから、この枠組み(SIP)を活用して議論することととした、とのことだ。2019年度に協調型自動運転通信方式検討TFを立ち上げ、3年計画で将来の通信方式の検討をスタートさせている。TFで、検討のベースとなる「通信を用いるユースケース」を定義し、その上で「通信要件の明確化と要件を満足する通信方式の検討」が行われている。ゴールとしては、「協調型自動運転に必要な通信方式の提案」と「それが必要になる時期」を明記したロードマップの策定を目標とする、としていた。背景として、自律型自動運転+インフラ協調型システムの組合せによる自動運転が構想・実現が期待されている中で、必要な通信に関しては様々な課題が挙がっており、日本では安全運転支援システム用のITS通信は実用化されているものの、協調型自動運転時代には、この周波数や帯域幅では不足であり、新しい周波数が必要となる。必要となる帯域幅や、欧米では、5.9GHzの電波がITS通信用に割り当てられているが、日本では760MHz帯、5.8GHz帯の電波を使用している。このため世界標準との乖離が懸念されるなどの議論はあるが結論が見えないとの状況があった。このため、SIPシステム実用化WGでは、2019年度より協調型自動運転通信方式TFを立ち上げ、3年計画で通信方式の検討を始めていた。TFの目標と達成計画としては、目標を「協調型自動運転のあるべき姿、実現までのロードマップを描き、国際標準も考慮しつつ、ALL JAPANとして最適な通信方式の方針を固める」とし、ゴールとしては協調型自動運転に最適な通信方式を提案すること、通信方式の変化点のロードマップを描くこととしていた。通信方式の検討の手順は、①そのような機能、性能を持つ協調型自動運転の想定、②協調型自動運転の具体的なユースケースの決定、③ユースケースに基づく通信要件のまとめ、④通信要件を満足する通信方式を考える、とした。検討手順に基づいて、TFの活動は、フェーズ1として、協調型自動運転の定義と対象の明確化、ユースケース選定、フェーズ2では、前述のユースケースを実現するための技術要件、通信要件の調査・検討、現状のITS通信に適用した場合の課題抽出、フェーズ3では、課題解決のための通信方式の検討、妥当性の評価を行い、最適な通信方式を提案するとともに、通信方式のロードマップを策定するとして取り組むものとした。これらを達成するため、自工会や有識者、関係省庁、ITS情報通信システム推進会議、一社)電気情報技術産業協会、一社)UTMS協会、国土技術政策総合研究所、公社)自動車技術会などの体制も整えられている。ユースケースの策定については、選定の結果として25件が挙がり、合流・車線変更支援/信号情報/先読み情報(衝突回避)/先読み情報(走行計画変更)/先読み情報(緊急車両回避)/インフラによる情報収集・配信/隊列・追従走行/遠隔操作など分類を行っている。これらを協調型自動運転定義ごとに整理し直すと、①車載センサー検知外情報の入手が必要なケース(合流・車線変更支援/信号情報/先読み情報の衝突回避、走行計画変更、緊急車両回避)、②自車が保有する情報の提供が必要なユースケース(インフラによる情報収集・配信)、③車車間及び路車間の意思疎通が必要なユースケース(合流・車線変更支援/隊列・追従走行/遠隔操作)に整理される。通信要件は、ITS情報通信システム推進会議(ITS Forum)の協力を得て進められており、同フォーラムではユースケースを通信の切り口で再整理、5つのカテゴリーに分類している。カテゴリーは「合流車線変更支援」「先読み情報・衝突回避支援」「信号情報/隊列・追従走行」「先読み情報:走行計画変更」「インフラによる情報収集・配信」とされた。前提条件としては、SIP協調型自動運転ユースケース(2)で示された情報だけでは不十分年、更に詳細なユースケースシナリオの検討を行う必要があるとして、検討の前提条件として高精度3次元地図情報の保有や通信遅延、通信品質の定義を明確にし検討を開始している。シナリオ検討については、ユースケースに類似した技術検討や実証実験等を実施している研究団体より、情報収集した上で、検討対象となる道路の最大車線数、想定車間距離、速度条件、最大加減速条件など、道路や自動車の基本的な条件設定を行っている。個々のユースケースに求められる通信エリア、通信対象台数を想定した上で実際の自動車の動きや必要な情報項目(メッセージ)を決めている。また送信元と送信先とのメッセージのやり取りを一連の送受信シーケンス(要求車、路側インフラ、受入/応答車間のメッセージの流れを表す図)にまとめている。メッセージについては、通信要件のうち大きな要素を持つものとして通信量がある。前述の送受信シーケンスでやり取りするメッセージとデータ量を定義している。取り扱われる情報要素としては、共通情報として、メッセージID、インクリメントIDまたは情報更新時刻、路側管制情報、路側機ID、合流起点情報、道路番号、走行車両数となっている。また位置情報(走行車両数で変動)として、車両ID、車両位置(緯度、経度、高度)、走行車線、走行速度、車両長さ、合流起点到達予定時刻、センサ情報取得時刻、情報信頼度などが挙がる。通信要件としては、ユースケースごとのシナリオ、メッセージデータ量、要求遅延時間、要求通信品質などの諸要件から通信要件をまとめ、今後これをベースに通信方式の検討を行うとしていた。今後の検討については、各ユースケースに対する通信要件がまとまった後、すでに実用化されているITS無線(狭域通信)やモバイル通信(広域通信)への的要件等を通し、課題抽出を行うとしている。さらに上記のフェーズ3では、課題解決のための通信方式の提案と、それが必要とされる次期を明らかにしたロードマップを策定し、これにより将来を見通し協調型自動運転に必要な電波リソース確保の準備を行うことが出来るとしている。日本では、総務省が令和3年11月15日に「周波数再編アクションプラン(令和3年度版)の公表」により、令和3年9月14日~10月13日までの間、周波数再編アクションプランの意見募集を行った結果、107件の意見が提出されている。これらに対し、総務省は「考え方」を併せて公表している。総務省が発表した具体的な取組の中で、同省は、V2X [5.9GHz]については、自動運転システム(安全運転支援を含む)の進展・重要性を踏まえ、既存のITS用周波数帯(760MHz)に加えて、国際的に検討が進められている周波数帯(5.9GHz帯)において、同周波数帯の既存無線システムに配慮しながら、V2X用通信を導入する場合に必要となる既存無線システムとの周波数共用等の技術的条件について、令和3年度末までに検討を行うとしており、またその検討結果を踏まえ、同周波数帯へV2X用通信を導入することとなる場合には、既存無線システムの移行等により必要な周波数帯域幅を確保した上で、令和5年度中を目処にV2X用通信への周波数割当てを行うとしている。
自動運転中の責任はメルセデスに! テスラのオートパイロットを凌駕する「自動運転レベル3」を搭載した「Sクラス/EQS」がまもなく本格始動 他
4月11日 経産省は4月5日に発表した「令和3年度「スマートモビリティチャレンジ」事業の成果と今後の取組の方向性について」の参考資料として「新たなモビリティサービスの社会実装に向けた知見集」を作成している。本欄では、昨日より資料中において紹介されている課題とユースケースなどをダイジェストでご紹介している。本日はその続編となる。資料では、サービス提供に携わる主体が参画して、教育や育成も含めて事業の継続性を維持したり高める仕組みとして、全国的な知見を有する主体も参画し、新しい取組の構想・実証が推進されていると伝えられ、今後は教育・育成も含め、地域の自走に向けた体制・仕組みの構築が課題であるとしている。これらの活動には、関連事業者(交通事業者、商業施設等の地域事業者)の巻き込み*や、交通行政に福祉部署を巻き込み(社会保障費削減分を充当するビジネスモデル)、産学官連携(公共交通事業者等参画企業以外に、地域の核となる自治体や大学に実証主体として参画してもらう)などの取り組みも紹介されている。*但し、旗振りは行政が行い、具体的なデータ利活用方法が想定できない地域事業者が多いため、実際のデータや分析結果を"見せる"ことで事業者の協力を促す必要があるようだ。利用者と事業者の密な協働関係を通じた行動様式・実態への理解については、実証前の段階で、インタビューを通じて利用者像を洞察して、事業者のサービス構想と整合性を確認、実証後に当初の狙いが達成出来ていたかを振り返ることが重要であるとされている。これは、地域の交通事業者でも利用者ニーズを熟知しているとは限らないことが挙げられている。利用者の移動範囲や頻度がサービス提供者の想定とは異なるケースや、住民同士の関係性に対する意識が、サービス提供者と住民で異なっていたなどの事例が発生したことから、留意が必要と言える。データにおける把握がし辛い部分だが、サービス構築に際しては、サービス提供者と利用者の「心理的作用の理解」は必須だ。このため、資料では初めから長期の実験を実施するのではなく、実証実験を複数フェーズに分割し、PDCAサイクルを設けることで、住民の移動実態や地域の社会特性を実験計画に反映できるとしている。新たな試みを多くの利用者が認知し(関心を持ち始め)、体験に進む(実証サービスを利用しようと思っている)環境の醸成については、住民同士の声掛け、住民によるサービス設計への関与が実証実験への参加を促進しており、今後はその経験が継続的な利用(実証サービスの利用/利用の維持)に貢献するかどうか、住民参加型のデザインがモビリティサービスの社会受容性向上にも有効であるかなど、更なる検証が求められる。需要創造や費用圧縮等の検証したい条件を再現する実験計画については、複雑な介入による行動変容等の効果を検証する実験は、難易度が高いものの、適宜外部専門家との連携を行うことで、限られた準備期間でも効果的な検証が可能になるとしている。(沖縄県北谷町の「北谷観光MaaS」:那覇空港周辺の混雑度等を情報提供することによって、空港周辺でのレンタカー利用からその他の交通手段の利用へ観光客の行動が変容するか検証した)この実験の検証命題は、待ち時間等の混雑情報を可視化したものをダイナミックに提供し、レンタカーから公共交通への移動手段の転換を図ることであったが、有識者による視察・意見交換を通じた地域への「アドバイス」が実施されている。当初は待ち時間に関する混雑情報を提示する介入を計画していたが、待ち時間の発生が見込みにくいため、介入方法を道路混雑等の混雑情報を提示する形に変更、さらに道路混雑情報をWebサイトに掲載する方法に修正、Webは受動的で閲覧実績が把握できないため、確実に事前告知が可能な情報提供手法を整理したところ、地域側のチーム内で調整・検討した結果、業務上リアルタイムで更新される情報を告知することが難しいという結論に至り、リアルタイムではなく、混雑情報の過去トレンドを予測値として提示する形になった。これらの議論を経て、最終的に実験では2019年度の日・時間帯別の混雑情報を記載した資料を配布し、目的地周辺店舗でレンタカーを借りた人が空港周辺店舗で返却する割合を検証する方法を選択することで、実験費用や時間を節約し効果的な検証を実現している。資料では、地域内外のリソースを活用して実情に適したサービス像を模索する協働関係の仕組みについても言及している。多くの自治体や事業者が「地域課題」と「解決策の模索・提案」に悩みを持っており、解決に向けては課題相談や関係者間の交流・マッチングを促す場の創出が求められることも明らかにされた。これらについては経済産業省と国土交通省による合同プロジェクトである本プロジェクトの推進母体である「スマートモビリティ推進協議会」におけるシンポジウムやイベントを通じ、地域・事業者の交流やマッチングを行っていることなどがアピールされており(2022年3月末時点で加盟数は329団体)、また民間側では、MONET Technorogiesの「MONET LABO」(自動運転社会に向け、モビリティを通じた社会課題の解決と新たな価値創造を目指すMONET Technorogiesでは、700社近い企業で構成されたMONETコンソーシアムの運営と100を超える自治体とMaaSの実現に向けて協議が進められており、その一環として「MONET LABO」という事業共創プログラムを実施している)。資料の最後となる、地域の交通課題の継続的な解決に向けた組織的な体制では、(現在の)自治体目線では、交通課題とデジタル技術の可能性への理解・浸透は十分でなく、関心を高める必要があるとしている。一手法として、来期は意欲ある都道府県との協業も視野に入れるとのメッセージが印象的だ。国としては、全国各地で起こる少子高齢化や公共交通事業者の経営環境の悪化、交通の担い手の人手不足、免許返納による移動弱者への対応などへの対応に迫られ、自治体との足並みを揃えたいところだ。反面、自治体によっては生活課の職員1名が地域の交通を管轄せざるを得ない状況で、実証実験のための十分な組織体制が整えられない地域や、マッチングを行っても「進め方が分からない」「財源がない」などの理由で事業が進まないといった地域の事情があることも十分認識している。だからこそ、本資料で「スマートモビリティ推進協議会」や「MONET LABO」という共創の場を示し「まず、相談して欲しい」との呼びかけをしていると感じる。本資料には、その懐も厳しく人的余裕もない地方自治体でも、地域の交通事情の改善に取り組むことが出来る珠玉の「知見」がたくさん詰まっている。ぜひ目を通していただきたい資料だ。
Newモビリティーの自動運転、挑む採算性の壁 他
4月8日 経済産業省は、4月5日に「令和3年度「スマートモビリティチャレンジ」事業の成果と今後の取組の方向性について」を発表、令和3年度に各地で行われたMaaS普及のための実証実験やスマートモビリティチャレンジ推進協議会での取組などから得られた成果や課題を取りまとめ、地方自治体や事業者などへの取組の参考として「新たなモビリティサービスの社会実装に向けた知見集」を作成した。まとめられた資料は資料1~3(*1には参考資料1~3、資料2は-1と-2に分かれる)となり、内容も非常に豊富だ。取り纏めに携った関係者のご苦労を思う。コンソーシアムの面々は、野村総合研究所、産業技術総合研究所、日本工営㈱となる。経産省の肝煎り事業「スマートモビリティチャレンジ」は、先進パイロット地域やデータ利活用事業を通じて、有望なアイデアを開拓したり、地域への伴走支援を通じ地域の経験不足を補いつつ、各所の悩みや足踏みの原因を探って来た。各地域の新モビリティサービスに対する経験値の高まりに伴い、本事業では様々な支援を講じて来た。初期にはMaaSに関心を持ち取り組もうとする地域などへの声掛け、構想と実証の段階では地域に対し適した実証取組を設計できるよう、先行的な知見を可視化したり、単発の取組みに終始せず、将来の実装を意識した検証命題や実験計画を促すなどし、実装の段階においては、住民や事業者の支持が得られつつ、継続的にサービス提供が可能な事業モデルの構築、各地と協働して、サービスの実装に向けた環境構築や関係者間の理解の醸成を推進する等、様々な取組みを形にして来た。3年目に突入する本事業は、広域連携や複数主体・サービスの統合、車両改良等の地域の変革は着実に後押ししながらも、関係者間で事業リスクを共有する仕組みのあり方は今後の課題としている。これに対し資料中では、利用者の料金負担や当該サービスの利便性が釣り合った事業とするため、収支バランスが取れ、利便性向上に寄与することが期待される(今期の採択地域で創出された)ユースケースを(成果として)紹介している。①その一つは三重県6町連携による「移動診療」(詳細については別資料「地域新MaaS創出推進事業での取組」参照)だ。*「三重県広域連携スーパーシティ構想」。②また他の手法としては、企業シャトルバスに加え、スクールバスも行政サービスに集約した形での交通サービスの受容性・事業性を検証した「共同輸送」(佐賀県基山町)や、③旅客バスを改造し、マルシェ機能の付加による収益多角化・向上効果の検証をした「移動販売」(北海道帯広市)などの事例も挙がる。同省は新しい取組を進める上では、官民が住民・自治体・事業者間に存在する、公共交通の費用感、維持負担に関する認識の乖離を理解した上で、サービス設計を行うことが重要だとしている。資料は、関係者に新しい公共交通が提供し得る「価値」と「限界」を体験・認知してもらうことが、現状低水準・安価なサービスを志向している自治体・地域住民のイメージを変化させ、認識の乖離を狭める、地域においては公共サービスとしての交通を受益者(交通機関利用者や商店等)負担以外の手法(自治体の補助金等)で支えるという共通認識は存在するとしており、一方自治体の負担割合に関しては意向に違いがあり、乖離を埋めるには税金以外の収益源創出が(課題解決の一つの)手法として考えられるとしている。資料は、新モビリティサービスが持続するためには、自治体と地域住民などが一丸となり「収益源の創出」を検討して行かなければならないことを示唆しているものとも思われる。実交通に留まらず、他分野(異業種やデータ基盤)との連携を図る事業モデルにおいては、物流・福祉分野との連携では全体の車両稼働率向上が検証できたため、展開地域の拡大が今後の課題となり、加えて広い分野でのユースケースの創出が求められる。「旅客×福祉」連携では、高齢者・障碍者の移動・外出時において、福祉・交通双方の両面からアプローチした実証(福祉事業者の車両共同利用による送迎の共同化・オンデマンド相乗り)を実施、コスト削減効果・外出機会の創出を目的とした検証を行い、18.2%車両の稼働率が向上、2台/1日の車両台数の削減、外出意向が6割との結果を得たが、今後の社会実装に向けては業界や管轄を超えた関係者間の協力や社会課題解決に向けた意識統一が必要との課題もある。「旅客×物流」連携では、物流事業者が抱える非効率配送地域の配送を地場のタクシー事業者等にアウトソースする受給マッチングを提供するサービスをユースケースとして、サービスプロトタイプを構築、物流と交通の既存データの組合せによる移動・物流の両需要を賄う走行経路を算定できるモデルを構築するとともに、人口規模(3万2千人)で約6,400人分以上の貨客混載需要を担保できれば、事業採算性が確保できる可能性が高いことを確認したとしている。今後の社会実装に向けては、収益モデルに合致する具体的な地域の探索・具体事業者との協働が出来れば、社会実装に近づくとされる。*(詳細については別資料「地域新MaaS創出推進事業での取組」参照)。*三豊市のケースは、物流事業者が抱える非効率配送地域の配送を地場の交通事業者にアウトソースする受給マッチングが構築されたが収支バランスが取れない、上記で言う「限界」を示した事例と言えるのかも知れない。しかし、本取組から得られた貨客混載需要と事業採算性のバランス値は、まさに体験から得られた「知見」と言え、様々な努力の末、これらを創出した関係者を高く評価したい。三豊市においても、同省の更なる伴走をお願いしたい。異業種連携のもう一角、データ基盤との連携においては、データ取得の容易さや一部の分野におけるデータ基盤の活用可能性を机上で確認できたため、今後は現場の実情や制約を考慮した活用策の具体化が課題となる。「スマートモビリティチャレンジ」では、令和3年度の採択地域やデータ利活用事業の取組みも紹介している。うち一つは「データ基盤の活用可能性机上検討」とされ、過年度までの活動で有望視された物流・エネルギーに着手、データ基盤が創出する価値の検証を行っており、令和3年度は過去の受発注実績をもとにデータ基盤を活用した最適解を算出し、実績との乖離(=効果)を確認した。サービスのプロトタイプイメージでは「自家用車で個別に走行した場合、126.5kg-CO2の排出となる150トリップに関して、本サービスではデマンド交通による輸送の最適化計画を行い、合計走行距離を算出し、稼働台数6台、通常車両運行の場合は、計86.9kg-CO2の排出(▲31.7%)、EV車両運行の場合は計56.0kg-CO2(▲55.7%)となることを確認」などの記載がある。今後の課題としては、多くの場合マーケット情報はダイナミックに変化するため、現場で実際に活用できるようなデータ基盤のあり方を深堀するする必要がある、物流やエネルギー分野への適応可能性は引き続き検討が必要としている。また、もう一つは「データ取得拡大に向けた受容性検証」として、パーソナルデータ(個人属性、移動履歴、クーポン閲覧、利用実績)の取得拡大に向けた受容性を検証している。データ提供の見返りとして利用者が好む還元策を、インセンティブの有無、大証、活用方法を変更したいくつかのユースケースに対する意向を調査することで(受容性を)検討している。今後の課題としては、今期はMaaSアプリから取得可能なデータに限定されたため、今後は幅広い購買行動や、他事業者が保有しているデータ(金融・ユーティリティ等)の入手方法の継続的な検討が必要などとしている。(続く)
令和3年度「スマートモビリティチャレンジ」事業の成果と今後の取組の方向性について 他
4月7日 昨日ご紹介した通り、富山県朝日町で自治体DX・カーボンニュートラル推進部署「みんなで未来!課」が設置された。本日はそのパートナーとして協働した老舗の広告会社が地方自治体において、MaaSの社会実装のため行った「取組み」について、もう少しご紹介させていただきたい。博報堂は「生活者発想型MaaS」を提案、欧州型や海外参考のMaaSというより、日本にあった(地域にあった)MaaSの導入を進めて来た。その理由は、今後MaaSに取り組もうとする地方自治体において、公共交通について情報や決済などのデータの統合は一切行われていない「レベル0」のケースが大半であり、データの統合以前に交通空白地帯やコミュニティバスの赤字、路線バスやタクシー事業者の撤退などに悩む地域が殆どだからだという。だからこそマニュアル通りのMaaS導入ではなく「生活者発想」による解決が必要と言える。朝日町は人口1.1万、高齢者化率は43%超えで、鉄道の駅やコミュニティバス、タクシーが存在するものの、同町ならではの課題も存在していた。「ノッカルあさひまち」は、既存の交通体系の中に新たな有償交通を加える形となる「ノッカル」を助け合い交通とした理由の一つに、路線バスの撤退により、全国各地で自治体自身が運営する「採算の取れないコミュニティバス」が走っている現状がある。これらの人件費や車両費が自治体の台所を圧迫してしまうケースが散見されるため、この課題に対しては、かような不採算路線を「住民同士の助け合い」という形を取ることで、人件費・車両費を抑制した移動サービスに置き換えると発想し、新たな移動サービスは一般のドライバーの自家用車を活用、自治体が運営する公共交通との形を取り、既にある地元の公共交通事業者と協働しない「交通事業者協力型」とした。ドライバーには自身の用事のついでに人を乗せてもらうので、時給ではなく、ガソリン代+謝礼を支払う。よって募集についても「ドライバー募集」ではなく「ノッカルサポーター募集」という形にした。また「ノッカル」は、一般的なカーシェアやMaaSのようなAIによるマッチングではなく、ドライバーに事前に移動の予定を登録してもらい、乗車希望者にその中から時間を選んでもらう方式を採用した。理由は、利用者の大半が高齢者でスマホを持たない方が多く、予約の大半は電話となる実情がある。一方のドライバーは、やや年齢層が下がるため、運行予定をパソコンやスマホからWeb経由で登録してもらうことが出来る。電話対応を含めたオペレーションは、タクシー会社の黒東自動車商会に協力を仰ぎ、利用者からの電話予約をシステムに登録して貰い、予約情報などはドライバーに自動的に通知される仕組みを採用している。ユーザーインターフェースは「本当にデジタルであるべきか?」との発想からだ。募集する「ノッカルサポーター」の募集にも工夫が凝らされている。事前登録形式を採用したとはいえ、バスのように「毎週この時間であれば確実に移動できる」との運行方式にした方が、より利用しやすい。そこで地域の集まりや、自治会、民生委員、体操教室などに声をかけ、毎週決まった時間に移動している方に「ノッカルサポーター」を依頼することにした。他にも「この曜日は必ずパートに行く」といった方にも登録して貰い、定期便のような形の運行を可能な限り確保している。また利用者には、紙の時刻表を毎月郵送している。時刻表にはバスの運行時間も併記している。「行きはバスで、帰りはノッカルで」といった使いわけが出来ると利便性が増すためだ。リアルタイムやオンデマンドが必要とされる「AIマッチング」を選択しなかったのは、バックヤードでドライバーを待機させる必要が有りコストがかかること、そしてタクシー会社と業務形態が重なってしまうのを避けるためだ。これらを考慮し「ダイヤによる運行」を選択している。目標は地域の交通体系を維持することにあり、ノッカルありきではなく「地元の既存交通との共存できるサービス設計」を心掛けている。都市部でオンデマンドが必要とされるのは「すぐに移動したい」ユーザーの利便性に応えるためだが、同町の利用者(高齢者)においては、予定は逼迫しておらず、「週に1~2回スーパーに行ければよい」といったニーズが主だ。このような利用目的であれば、午前に1往復、午後に1往復確保出来れば十分だ。ルート設計と乗合時間の最適化も検討されたが、同町の構造上各地域と中心部は基本的に一本道である為、採用を見送った経緯もある。ダイヤ設計もドライバー側には「9時~10時半」のように幅を持たせて登録してもらい、利用者には「9時~9時半」「9時半~10時」「10時~10時半」といった時間帯を選択して貰い、予約が入り次第締め切る。こうすることで一人のドライバーの方に複数の時間帯を担当してもらうことができる。プロジェクトを進めるうち「ドライバーも出かける時間をそんなにシビアに考えているわけではない」ことが分かったからこそ、このような設計が可能となったという。「ノッカル」のダイヤをバスのものと統合して一つにしたのも、ポイントの一つと言える。当初はスマホでダイヤを発信したり、Webでリアルタイムで更新することが想定されていたという。前述の通りスマホの利用が少ない高齢者が多い同町では、コミュニティバスの利用者も多いため、ノッカルのダイヤを併せて表示することで、新たな移動手段を利用者が自然に利用できるよう配慮している。高齢者に「ノッカル」の情報をどのように認知してもらうかとの課題には、同町のケーブルテレビ(「みらーれTV」黒部市/入善町/朝日町のケーブルテレビ)を活用している。ケーブルテレビによるアピールについても、サービスの実装を試みる中で、同町の高齢者の方々の多くはケーブルテレビ経由で情報を得ていることが分かり、なじみ深いメディアを通してストレスのないアピール方法を確立することが出来た。スタッフが現地に足を運びつつ得た貴重な発見だったと言える。朝日町内では、従前地域の中で個人的な送迎を行っている方はいたとのことだが、慣習的に乗せてもらったお礼に何かをお返しするなどの慣行もあり、利用をためらう方もいたという。しかし「ノッカル」がサービス化され、対価を払うことでむしろ気軽に利用できるようになったとの声も聞く。またサービス提供側となるドライバー側からは、地域に貢献したいとの思いはあったものの、なかなかピンとくる仕組みがなかったが「ノッカル」の仕組みはノリやすいとの声もあるそうだ。高度だが、サービスを創出する中で丹念に様々な方面の声に耳を傾け、サービス提供者と利用者の心理的作用も巧みに捉えた、博報堂の「生活者発想」「パートナー主義」や朝日町の移動サービスへの熱量が功を奏したと言える。「広報あさひ」には、現在「免許返納で特典!?公共交通割引制度について」の記事が掲載されており、小見出しには「免許返納しても移動に不便なし!」と頼もしい言葉が目に入る。お隣の欄(「新生活には町内の公共交通を!」)にも、「朝日町内の公共交通は充実していますので、新しい生活にあった移動手段をぜひご利用ください!」と記載されている。「ノッカルあさひまち」が、町内の移動を支える公共交通の一角にしっかりとが根を降ろしている様子が伺える。「ノッカルあさひまち」が社会実装されるまでの長い道のりを歩んだ面々やそのノウハウは「みんなで未来!課」に集約され、MaaS導入を起点に、再生可能エネルギー、SDGs(持続可能な開発目標)、デジタル・トランスフォーメーションなど、新たな課題に取り組もうとしているものと思われる。
令和4年度「無人自動運転等のCASE対応に向けた実証・支援事業(地域新MaaS創出推進事業)」に係る委託先の公募(企画競争)について 他
4月6日 あの富山県朝日町で自治体DX・カーボンニュートラル推進部署「みんなで未来!課」が設置された。コミュニケーション情報誌「広報あさひ」2022年4月号によれば、これまで企画財政課内の「再生可能エネルギー推進室」が「みんなで未来!課」として独立を果たしたとのこと。同課の主な任務は、再生可能エネルギー、SDGs(持続可能な開発目標)、デジタル・トランスフォーメーション等幅広い。また総務政策課から広報業務が移管されており同町の情報発信の強化を図るとしている。昨年10月に締結されたデジタルトランスフォーメーション(DX)連携協定を拡張させ、DX・カーボンニュートラル・情報発信/推進に特化した「みんなで未来!課」は官民連携で推進することが決まっており、そのパートナーとして博報堂が参画することになった。同町と博報堂は、朝日町の自治体サービスの住民利便性向上を目的とし、DXに関する課題について相互に連携・協力する連携協定を締結し、マイカー相乗り公共交通サービス「ノッカルあさひまち」や、地域ポイントとLINEを活用した地域住民向けMaaS実証実験「ポHUNT(ポハント)」などの取り組みを開始、生活や地域コミュニティの活性化に寄与するサービス構築を推進して来た間柄だ。*「ポHUNT」は、「ポイントをハントする」という意味。期間中(同町が設定するイベント期間/2022年1月14日~2月20日)に参加者が外出先や、自宅でポイントを獲得し、貯めたポイントで総額100万円分の豪華景品に応募できるなどのキャンペーンが行われている。同町内のお店や施設(「ポHUNT」スポット)に設置されたポスターやのぼりにあるQRコードをスマホのカメラで読み込むとポイントが獲得できる。スマホがなければスタンプカードにスタンプを押す。自宅ではクイズやアンケート、動画を閲覧してもポイントが獲得できる。貯めたポイントで抽選会に応募し、欲しい景品を入手する手順。朝日町を10地区に分け、地区ごとの参加住民の合計ポイントで競う「地区対抗戦」も実施された。また2022年1月30日にサンリーナで行われたスペシャルイベント①、ビーチバレー大会「ポHUNTカップ」の会場に足を運ぶと来場特典として50ポイント、参加チームには抽選で最大50ポイント、最大100ポイントが贈られた。またスペシャルイベント②、謎解きイベント朝日町ぐるぐる謎巡り「隠された埋蔵金を探せ!」(1月22日~2月11日inアスカ/2月12日~13日inサンリーナ)に参加し、謎を解くことが出来れば、総額100万円分の豪華賞品に応募できるポイントがプレゼントされた。広報誌を使った告知によるイベント参加を、移動機会の創出に繋げている模様だ。「みんなで未来!課」で推進するDXは4つ。①公共交通のDX-共助型マイカー交通「ノッカルあさひまち」×地域交通プラットフォームとして推進。②行政サービスのDX-「ポHUNT」を行政×住民の共創プラットフォームとして推進。③グリーン戦略のDX-行政だけでなくみんなで取り組むグリーントランスフォーメーション(GX)プラットフォームの推進。④子育て環境のDX-学校や家庭だけでない地域での子育てプラットフォームの推進だ。この取り組みには総務省の「地域活性化起業人制度」が活用され、かの「ノッカルあさひまち」のサービス開発を担ったDX推進の専門人材が参画している。「地域活性化起業人」とは6月以上3年以内の期間、継続して3大都市圏に所在する企業から受け入れ自治体に派遣され、地方圏への人の流れを創出することを目指して、地域独自の魅力や価値の向上、地域経済の活性化、安心・安全につながる業務に従事する社員のこと。「地域活性化起業人制度」とは、令和2年度までは「地域おこし企業人制度」として運用されていた。この制度は、3大都市圏にある民間企業が地方自治体の要望に応じて、社員を一定期間派遣し、そのノウハウや知見を活かして、派遣された地方自治体で、その地域独自の魅力や価値の向上、地域経済の活性化、安心・安全につながる業務に従事するもので、地方自治体と企業が協力して、地方圏へのひとの流れを創出できるようにしたもの。ちなみに3大都市圏とは、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、岐阜県、愛知県、三重県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県の区域の全部を指す。派遣する民間企業にとっては、社会的貢献に加え、人材の育成、キャリアアップ、事業拡大の可能性などのメリットがあり、地方自治体にとっては、ノウハウ移転やスピード感のある事業展開等が行え、双方にとってメリットが大きい制度と言える。マイカー相乗り公共交通サービスとも、共助型マイカー交通とも呼ばれる「ノッカルあさひまち」。近年自治体に導入される確率も上がって来た公共交通事業者などが運営する「オンデマンド交通」とどこが違うのだろうか?「ノッカルあさひまち」はご近所さんの自家用車でのお出かけに、ついでに「乗っかる」ことが出来る、助け合いの気持ちを形にしたサービスで、各地区と中心街を行き来する住民ドライバーの車に、移動したい乗客が「乗っかる」仕組みとなっており、ドライバーは助け合い精神のもと、自分の予定に合わせて、近所の利用者を自分の車に乗せて、目的地まで送迎する。利用者は、ドライバーの予定を見て、事前に予約し、ドライバーの車で目的地まで移動する仕組みだ。利用料は一人で利用の場合は回数券3枚(600円)、二人で利用(乗り合い含む)の場合は、回数券2枚(400円)。*実証実験開始は、国交省の「自家用有償旅客運送」制度に即し、2020年8月3日~開始。2021年1月4日~利用料有償サービス化している。2021年10月1日~本格運行を開始している。実証実験には、朝日町(運行主体、ドライバー/利用者募集および管理)、博報堂(サービス設計など)、博報堂DYグループ(MaaSシステム開発・設計)、スズキ(自動車メーカー)、黒東自動車商会(運行管理:予約受付/配車)が参加した。「ノッカルあさひまち」の実証開始直後は、スズキが提供した軽自動車を町の職員が運転し、地域の住民を送迎していた。その後、住民の自家用車を利用する形に移行させている。縁の下の力持ちとなったスズキは、同サービスで自家用車を運転される方向けの保険など、車周りのことを中心に、サービス開発から実装までパートナーとして協働している。(続く)*画像提供:©(一社)朝日町観光協会
「未来の車」に成長かけるNTT ライバルはグーグルやアップル 他
4月5日 昨年9月末にNTTデータ、オリックス自動車、JTBコミュニケーションデザインの3社は「レンタカー旅行向けコンシェルジュサービス、実証実験で有用性を確認」を発表している。昨年発表されたレンタカー向けコンシェルジュサービスとは、車の室内に複数設置する専用タブレット端末上で、マスコットキャラクターが案内人を務め、様々な観光スポットやルートを提案するサービスで、観光地等に向かう車中で同乗者がそれぞれのタブレットに表示される情報を見ながら、目的地を選ぶ楽しみを提供するものだ。端末上におススメ(レコメンド)される観光スポットは、レンタカーの位置情報と利用者の属性を組み合わせて、利用者の嗜好に合わせた観光スポットとなる。これらの情報は、同乗者がタブレット上で作成できる「プラン」と連携し、目的地までのナビゲーション(経路案内)にも活かされるという。NTTデータは、今後モビリティ事業者(オリックスなどのレンタカー事業者やカーシェアリング事業者をはじめ、或いは観光タクシー、訪問者でも利用可能なオンデマンド交通などとも?)、機能追加やビジネスモデルの検討を行い、2022年度中に観光地での提供を開始するとしていた。2021年2月には、本サービスの実用化に向け(*新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から)3社の社員などが集い、利用者のニーズを満たす機能性や体験、事業者としてのサービスの実現可能性などを検証するための実証実験を行っている。実験では、車内の助手席、後部座席に専用のタブレット端末を設置、同じ情報を表示させ、どの端末でも画面操作を可能とする仕様としている。この際マスコットキャラクターが登場し、初めてサービスを利用する利用者にサービス機能の説明をしたり、各種案内を提供することで、お年寄りや子供たちにも、分かりやすいユーザーインターフェイスの実現を目指すとともに、利用者が不案内な旅先でも、登録された個人の年代や、性別や居住地などの属性情報を組み合わせ、利用者の嗜好にあわせた周辺のおすすめスポットを案内(レコメンド機能)することで、個人にとって「新たな発見」や「選ぶ楽しさ」の提供を試みた。また、目的地の飲食店や商業施設の営業時間、おすすめ商品などの情報も提示するガイドブック機能や、気になった場所や行きたい場所を保存しつつ(行きたい場所リスト保存機能)、目的地の変更や目的地までのルートを自由に入れ替えるルート作成機能など、今後さらなるデータベースの拡張が期待されるものの、利用者の使い勝手も想定された機能も備えられている。旅行者の行動傾向や、観光地の人流情報などのノウハウの提供と事業プロデュース、自動車(移動)空間における観光コンテンツなど、コミュニケーション手法は、この道の老舗となるJTBコミュニケーションデザインが提供するとしているので、各観光地や観光スポットの情報の質や量についても期待していいだろう。利用者が目的地を登録すると、目的地までのルートが車内タブレット端末とドライバーのスマートフォンに自動連携し、ナビゲーションが開始される。これらの実証実験により、サービスの利用意向や、課金意向、実用化に向けた機能等の改善点などが抽出された結果も明らかになっている。利用者の利用意向について「レンタカーのオプションとして本サービスがあった場合」については、59%が利用したい、35%がやや利用したいと回答している。また、レンタカーを借りる際に他の条件が同じと仮定した場合「本サービスがあるレンタカー業者を選ぶ」と回答した割合は94%と、非常に肯定的な結果だった。また、気になる課金の意向については、レンタカーのオプション料金として本サービスを利用すると仮定した場合、参加者の94%が、300円~1,500円の範囲であれば利用したいとの結果を得ている。機能等の改善点としては、参加者には車内で新しい移動体験やサービスとして受け入れられ、例えば車内のタブレットから周辺の観光情報などが、自動的に提供されることで、受動的に情報を受け取ることが出来、同乗者間で同じ内容や体験を共有できる点が評価された一方、レコメンド機能やコンテンツの充実、デザインにより一層の工夫が求められた。また行先の混雑状況や見どころスポットや、名産品などを知りたい、行先の予約やクーポンなども提供してくれると嬉しいなどの声も上がったようだ。同時期に全国20~40歳代から年1回以上の頻度で旅行へ行く方(約1,250名)を対象にサービスの利用意向や、その理由などのアンケートと、一部の方にはインタビューなども行われている。この結果からも、総じてサービスコンセプトの受容性が高く、約7割の回答者は本サービス利用のためにレンタカーのオプション料金を支払っても良いという結果を得ている。特にレコメンド機能やナビゲーション自動連携機能などへのニーズは大きく、さまざまな周辺サービスと連携を求める声も多かったという。さらにアンケートの対象者のうち10名に対して、実際の自動車に本サービスを取り付けて、実際の体験して貰ったところ、10名全員がアンケート時点では利用意向のなかった人も含めて、レンタカーで本サービスがあった場合には利用したいとの回答を得た。これらの結果から、実際にサービスを体験してもらうと利用意向が高まるという傾向を確認することが出来たとしている。デスクワークに励みつつ「今年のゴールデンウィークこそは・・・」との考えが頭をよぎる今日この頃。レンタカーを利用して普段行くことが出来ない遠隔地への旅行もいいだろう。JTBが2022年3月18日~25日までに実施した旅行動向アンケートによると、新型コロナの世界的流行から、はや3年目を迎える今年、ワクチン接種に加え治療薬の開発など対応策の進化もみられるが、今年のトレンドとしては、近隣を中心としたエリアツーリズムから(国内における)遠方への旅行が増加し、日数や費用も増との傾向。感染防止を意識しつつ、旅行の同行者は身内中心から、友人や知人などに拡大の傾向があると聞く。遠方への旅行(希望)が増加した結果、利用する予定の交通機関は、乗用車・レンタカーがトップで62.0%、次いで鉄道全体38.8%、航空機は20.5%、宿泊先はホテルが43.8%、実家や家族の家(22.3%)、旅館(21.5%)など。これまで感染対策として増加傾向にあったキャンプ場・グランピング・キャンピングカー・車中泊などアウトドアに関する宿泊(4.5%)、民泊・貸別荘(1.1%)などは、いずれも減少に転じている模様だ。ゴールデンウィークにおける、利用交通機関のトップに含まれるレンタカー業界には「レンタカー旅行向けコンシェルジュサービス」の絶好のアピールの場が間近に到来していると言える。3社からのサービス開始の便りが待ち遠しい限りだ。
国土交通省、MaaS基盤整備支援で5事業に追加交付、キャッシュレス決済やシェアサイクルなど 他
4月4日 先週末には、2025年に大阪・関西万博を控える大阪高速電気軌道(大阪メトロ)の最近の動きを簡単にまとめさせていただいた。本日もその続編です。今後のOsaka Metro Groupのキーワードとも言える「デジタルマーケティング」や「都市型MaaS」について探求してみたい。Osaka Metro Groupは、事業群をマーケティング、都市交通、都市開発の3つに分け、事業群ごとに成長戦略と日常業務を組み合わせて考えており、その上でグループ全体の経営管理と運営体制を合理的・戦略的なものに変革して行くことを目指し、2025年度にかけてDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、2025年大阪における都市生活プラットフォーマーを目指すとしている。しかしながら、事業構造改革(新たな成長戦略)においては事業分野を、都市交通、マーケティング、「デジタルマーケティング」、都市開発の4事業と捉えている。目指すビジネスモデルとしては、次世代交通インフラMaaS(鉄道やバス)を中心とし「デジタルマーケティング事業に包含していく既存の流通・広告事業」、都市開発事業、社外の事業をつなぎ、それぞれの相乗効果を発揮し、「交通を核にした生活まちづくり企業」を具現化し、事業全体の発展を目指すとしている。MaaSを運営、そこから得られた利用者の移動や行動データを元に「デジタルマーケティング事業」から、交通との逆相関事業(新規事業)を創出したい意向だ。同時に新規事業の取組みから得られる情報や成果を既存事業にフィードバックすることで相乗効果を最大限発揮できるよう考えている。同社としては、今後の成長株としてマーケティング(デジタルマーケティング+流通+広告を統合)と都市開発、そして屋台骨であるMaaS(鉄道・バス等)を挙げ、ここにリソースを集中したい考えだ。同社は民営化以降、鉄道を核にしたバリューチェーン型で各事業の発展を目指して来たが、今後は、現在推進中のバリューチェーンに加え、フィジカルとサイバー空間をつなぐ新たなバリューチェーンを創出して行くとしている。Osaka Metro Groupは、大阪・関西万博に向け「都市型MaaS構想」を成長戦略の一つの柱としている。大阪交通局時代の運行特化型の事業モデルから、「都市型MaaS」への転換の背景には、現在の鉄道やバス事業を取り巻く厳しい経営環境に対する危機感がある。沿線住民の減少やコロナ禍によるテレワークの普及による利用者の減少の中で移動人口を増やす取組み、即ち「移動ニーズの掘り起こし」が必要との戦略を打ち出している。今後は事業を①最新技術を用いた既存交通の徹底的な進化、②既存の交通網と新たなモビリティの統合によるシームレスな移動の実現、③フィジカル空間での生活・都市機能の整備、④サイバー空間上でのサービス提供の4階層に分け取り組んで行く。①では、可動式ホーム柵やバリアフリー対策、AR案内、顔認証改札機、混雑緩和などの導入、②では、MaaSアプリを中心に既存交通(鉄道+路線バス)と新たなモビリティ(「オンデマンドバス」やシェアリング・ビークル等)をシームレスに繋ぎ、移動需要を最大限引き出すことを狙う。③では、交通とつながる生活・都市機能の整備(流通、都市開発、乗換ハブ、各所への移動経路などが整備対象となるようだ)。④ではサイバー空間でのサービス提供を通し「社会生活インフラ×活力インフラ」への事業変革を成し遂げていくとする。特に既存の取組み+αの部分となる③④の取組みを通して「都市型MaaS」という交通変革を興そうと図る。大阪高速電気軌道㈱の河井社長のものと思われる印象的なコメントがある。「大勢のお客様が来て下さる前提で、決まった時刻に決まった場所を走らせるという事業モデルでは、もう持ちません。そこで2021年3月からスマートフォン用アプリ「Osaka MaaS 社会実験版」を使い、生野区や平野区でオンデマンドバスの実証実験を始めました。時間や場所を指定すれば、お一人の利用から小型バスを呼び出すことが出来、アプリ上では経路検索に加え、予約・決済までがシームレスに出来ます。真にお客様に寄り添う交通を目指した逆転の発想により、従来の「利用される交通」から「迎えに行く交通」への変革を実現したいと考えています」。これは中山間や郊外地域で事業を展開する交通事業者ではなく、国内第二の都市圏・大阪の移動を担う大手交通事業者の代表者の言葉だ。「迎えに行く交通」こそは、MaaS時代の交通事業の経営のあり方を根本から再考させる一言と言えるのではないだろうか。そして、もう一つ気になるのは、今後虎の子となるかも知れない可能性を秘めた「デジタルマーケティング事業」の行方だ。「2018-2025年度 中期経営計画」では、概念的な説明はなされているものの、まだ交通との逆相関事業(新規事業)のアイデアが具体化されているとは言い難い。現段階では、鉄道・バス・タクシーやシェアサイクルなどの利用者(≒MaaSアプリ利用者)に、MaaSアプリ上でポイント(Osaka Point)を付与、提携する外部提携店において会員システムをシェアし、2025年度時点では250万人の会員獲得を目指すこと(提携店舗・サービスの拡大)、また「Osaka Point」を仲立ちとしながら外部事業者とのアライアンスの強化、自社販売事業の展開、CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)を推進(新たなサービスを展開)、デジタルマーケティングプラットフォームを強化、(大阪府民、来訪者などにおける)情報ネットワークとしての機能を高めて行く(サイバー領域での事業拡大)など目指す方向性が示された段階だ。このような状況は、DXやデータの蓄積が漸く始まった現段階において、むしろ自然なことと言えるのかも知れない。Osaka Metro GroupがDXを果たし、アプリにより、今後蓄積される膨大な利用者情報がその行方に大きな影響を与えることだけは確実なようだ。
Osaka Metro 大阪ならではの都市型MaaSを構築 他
4月1日 2025年に大阪・関西万博を控える大阪高速電気軌道(大阪メトロ)の最近の動きをまとめてみた。直近では4月7日に大阪市内の舞洲において、運転手のいない自動運転車両を走行させる実証実験を行っている。実験会場では自動運転の小型バス、配送用の小型車両など19台の車両が用意され、実際の道路と同じように信号機や横断歩道が設置されたコースを「レベル4」で走行させる。同時に会場を走行する複数の車両の位置や車内の情報は、遠隔に置いた監視室から確認することや車両からエラー信号が発せられた際の対応手順などの確認も行っている。また、2022年4月11日には御堂筋線の梅田駅北改札前の案内カウンターの跡地に「Metro Opus 梅田店」をオープンさせる。店舗では、スイーツ等の食品全般とグッズなど、Osaka Metroがセレクトした様々な商品を日替わりで販売する。店舗の隣には冷蔵自販機を併設し、店舗で販売する一部の商品については、店舗の営業時間終了後もキャッシュレスで購入できるようにする。この自販機は、自動で購入者の年齢や性別などの推定属性と購買情報を取得するものだ(個人を特定する情報が記録されたり、属性情報推定後に画像が残ることはない)。同店舗では「マスク対応顔認証決済」(NECの顔認証技術を採用)の実証実験を行う。同店舗は、御堂筋線のなんば駅にも今夏に2号店を開業させる予定だ。2022年3月29日には、既にリリースしているスマートフォン用アプリ「Osaka MaaS 社会実験版」をバージョンアップし、ホーム画面に地下鉄運行情報を表示し、タップすると地下鉄各路線の運行情報、混雑情報、遅延証明書の閲覧が出来るようになった。2022年3月25日からは、Osaka Metro Group内の大阪シティバス㈱にて、大阪府内で初めて路線バスとして燃料電池バスの運行を開始した。大阪市南部エリアを担当する住之江営業所を起点とする系統で運行を行うこととした。2021年3月30日から、大阪高速電気軌道㈱と大阪シティバス㈱は、ファーストワンマイル・ラストワンマイル等の交通課題の解消や、交通の更なる利便性向上を目指し、「オンデマンドバス」の社会実験を大阪市生野区と平野区で開始している。本社会実験は大阪市が募集した「AIオンデマンド交通の社会実験に関する民間事業提案」に対し、Osaka Metro Groupが提案して行ったものだ。一昨年、2020年3月16日には、Osaka Metro Groupが運行する鉄道・BRT・バスで利用できるスマホ用アプリ「Osaka Metro Group 案内アプリ」の配信を開始し、AR(拡張現実)ナビゲーションによる駅出入口への案内や、臨時運行ダイヤにも対応した時刻表ウィジェットの他、多言語(英語、中国語、韓国語に対応)による乗換案内など便利な機能で目的地までの案内をサポートする取り組みを始めた。アプリは無料で利用できるとした。アプリは、その他プッシュ通知に対応した運行情報、経路案内、路線図、天気予報などにも対応させている(同アプリは2022年4月30日を以ってサービス終了となり、一部の機能を「Osaka MaaS 社会実験版」に引き継いでいる)。2019年12月10日~2022年3月31日には、一部の駅(8駅)を対象にOsaka Metro社員を対象とした顔認証によるチケットレス改札の2024年度からの全駅導入を目指し、実証実験を始めている。実験では、改札機に備え付けカメラを設置、事前に登録した顔写真データと照合・承認により改札ゲートの開閉を行うとともに、改札機に備え付けたQRコードリーダーでQRコードを読み取り、事前登録した社員データと照合・承認により改札ゲートを開閉する運用を試している。実験では機能性、利便性やデザインの異なるオムロンソーシアルソリューションズ㈱、㈱高見沢サイバネティックスの試験機についても比較検証している。Osaka Metro Groupの「2018-2025年度 中期経営計画(2020年12月改訂版)」の中期経営計画全体の改訂の骨子を拝見した。今後の経営環境の総括・経営戦略の前提では、すでに織り込んでいる従来からの(経営)環境変化が加速するだけでなく、今回の感染症の影響は人の動きを大きく変え、社会のパラダイムシフトが起きる。事業持続性および成長領域創出の観点から、当社グループの事業活動全体に大きな変革を促すとしている。また中期経営戦略の再構築(取り組みのコンセプト)には、新たな経営環境に適応しながら、20215年度のあるべき姿(目指す姿)を確実に達成するため、経営体質の強化として「やるべきことを徹底して断行」、ならびに、成長戦略見直しのための事業構造改革として「事業多角化の本格的な推進」に徹底的に取り組む。2022年度までに経営全体の本質的な改革を完遂し、経営や事業運営の質の変革を成し遂げるとしている。鉄道事業においては、運営コストの削減や収益向上策(各種イベントの強化、「大阪から元気を創り続けるための」施策と乗車人員の回復策を結び付け、「大阪をもっと元気に(仮称)プロジェクト」などを推進、抜本的な収益向上の実現)を図るとしている。この収益向上策には、沿線地域の魅力の掘り起こし、国内誘客、情報発信から始まり、インバウンド向け情報発信、海外セールス、万博向けMaaSアプリの活用本格化などが計画されている。バス事業に関しては、同じく運営コストの削減と組織改革(管理業務はOsaka Metroに集約、大阪シティバスは運行専門会社に徹すること等)が書かれている。バスの収益向上策としては、沿線の魅力の掘り起こし、貸切バスなど路線バス事業以外の強化、加えてMaaSアプリの本格活用などと共に「オンデマンドバス」の実証実験や、エリア拡充、市内全域への拡充などが挙がっている。(続く)