4月7日 MaaSサービスの発祥フィンランドの雄「Whim」。日本版MaaSの社会実装段階に来て一つの心配がある。Whimの前提はヘルシンキの移動問題、都市型MaaSと言える。他方、日本の地方自治体がMaaSを導入する場合は、地方・過疎地型に分類される場合が多数だ。「過疎地」での収益確保、持続可能な事例をどのように構築するかが課題だ。個々の移動手段の収益が成り立たずとも、単に地域の移動ニーズの網羅と広告収入で黒字化するのか?「過疎地型MaaS」の収益源情報、運営事例の共有が重要になる。自治体は利用頻度の高い施設や機能の集約・再配置も考え併せたい。中長期的に見れば、収益はめぐり巡って移動サービス以外からも得られる。モビリティ運営者は、利用者獲得、利用者の支払い単価向上、商業等に利用可能なデータの「競争的データ*化」、モビリティは運輸用途以外に搬送や配送(回収)、冷蔵、販売、広告、軽食・休息、学習、警備、録画、障害を持つ方の支援、計測(現地の状況・天候やインフラ等の情報収集)、牽引など様々な利用も可能だ。中長期的な視座を持ち、移動改善による増収(運営側には環境改善と共に新規に発生するニーズをマネタイズできる資源が必要)、協力者へのバランス良いコストと収益分配。大局から地域全体を豊かにしようと願う視野が、過疎地域に持続するMaaSを生み出す。*国土交通省『MaaS関連データの連携に関するガイドラインver.1.0(素案)概要』参照
MaaS・CASE関連の最新ニュース(50 / 65ページ目)
JR西日本、旧三江線の沿線自治体と「地方版MaaS」構築へ協定を締結 他
4月6日 2018年4月1日に廃線となったJR三江線の沿線にある島根県邑南町にMaaS(デマンドタクシー)の実証実験がスタートする(2020年4月1日~2023年3月31日まで)。根幹である住民の移動手段の充足をはじめ、通勤・通学、物資輸送、医療・買い物等生活サービス連携、「大元神楽」「阿須那(あすな)系岩見神楽」「高宮(たかみや)系神楽」「備後系神楽」などの神楽や江の川、三瓶山、旧宇都井駅などへの観光を合わせ、鉄道が担い切れなかった江の川の両岸への細かな移動需要に応えるサービスの提供主体となり、関係市町村12.6万人(H27国勢調査)の移動需要も縫い合わせ、持続可能な移動サービスを新たに構築していただきたい。
自動運転の進化や交通事故減少にも繋がる! 5G解禁で変わる自動車社会とは 他
4月3日 自動運転におけるODD(運行設計領域)を拡大させる、縁の下の力持ち「V2X(C-V2X)」(車車間、路車間、歩車間などの通信技術)。特に安全面での活用が期待される。その動向(どこで、何が行われ、どこまで進んでいるのか?)を俯瞰すると、衝突回避、クルーズコントロール、安全運転、交通情報提供、気象・災害情報、信号機情報提供、緊急通報、その他にも、リモート操作、エンタメ、シェアリング、駐車場などの施設情報提供、テレマティクス保険、盗難防止、「地図更新」などに活用される。国内では内閣府やNEDO、警察庁をはじめとする諸官庁や、民間においては、ダイナミックマップ大規模実証実験コンソーシアム、カーナビメーカー、UTMS協会、通信キャリア、SBドライブ(BOLDLY)、先進モビリティ㈱、東大、自動車メーカー、大手電機、地図会社などの団体がプロジェクトに取り組む。C-V2Xを含む通信技術群(DSRC、60GHz、4G、「5G」)は、今後もますます特許の出願、利用契約が進むものと思われる。DSRC、700MHz(ITS)、60GHz(無線)、5GのITS(高度道路交通システム)活用や自動運転活用の検証が急がれるし、C-V2XもITS活用の検証が急がれている。出願や契約などの手続きは特許検索や電子契約などをフル活用しスマートに加速したい。
NTTとゼンリン、地図高度化でタッグ 自動運転やMaaS分野でビジネス拡大へ 他
4月2日 高精度地図(HDマップ)における四方山話。NTTなどが出資に意欲を見せる高精度地図。Mobileye(以)では既に同社システムを搭載する車両が走行する際のGPS情報、カメラの録画データなどからHDマップを生成、既に日産スカイラインで名を馳せたプロパイロット2.0にも搭載されているという。国内ではTRI-ID(本社:中央区日本橋室町)が「衛星」と車両から得られる画像データを利用する地図生成の実証実験に成功している。NEDOでは「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期/自動運転(システムとサービスの拡張)/高精度3次元地図における位置参照点(CRP)のあり方に関する調査検討」事業で地図表現の汎用化や、道路管理者の位置表現方法との整合性などの検討が進められている。ゼンリンの産学官連携の研究開発事業が「HDマップ」のリアルタイム整備・更新の自動化や省力化に新たな息吹をもたらしてくれることを期待したい。
地方誘客のカギとなるMaaS構築の新手法、訪日レンタカー利用者の心理もわかるドライブレコーダー活用の動態調査と分析を聞いてきた 他
4月1日 NTTアドがドライブレコーダーを使った訪日外国人観光客の動態調査を実施した。一般的なドライブレコーダーの役割は車両の運行・操作記録や事故処理の迅速化だ。これらを運転改善に役立てるためには利用者と一定期間の契約が必要とされた。「docoですcar」で興味深いのは、ドライブレコーダーのGPS情報を訪日外国人観光客(レンタカー利用者)の動向調査に活用する発想だ。危険運転などの記録にも有効だ。数値だけでなく映像記録付きのドライブレコーダーはこれまでより精度の高いデータを大量に生成する。これらはレンタカー会社にとっては安全運転の啓蒙のための貴重な資料となり、地元自治体を始め小売、飲食、旅行、宿泊業などでもマナー向上や新たな光資源の発掘にも役に立つ。レンタカーの走行ルートや車内外の録画には、プライベートな情報が含まれる可能性があり、利用各社は予め多数の訪日ドライバーと個人情報の扱いを取り決めるため短期契約が不可欠か。楽しい旅行の為にスマートな契約プロセスを用意したい。
東京メトロ、東京で大都市型MaaSを開始、アプリにシェアサイクルやタクシーなどの経路検索を可能に 他
3月31日 東京メトロがこの7月からアプリをリニューアルする。アプリ名は「my!東京MaaS」。都営交通、Japan Taxi、docomo bike share、ANAなどと連携する。鉄道に加え、シェアサイクル、タクシー、コミュニティバスなどラストワンマイルへの足と連携する。コミュニティバスと大手交通事業者を一括検索できるアプリとしては「バスNAVI TIME」などが浮かぶ。現在、後者アプリでルート検索すると、利用者は、検索結果画面に時間が早いルート、運賃が安いルート、乗換が少ないルートの3つのタブから、目的とする乗換え情報が得られる。せっかくの新アプリ、2021年の7月23日に延期されたオリンピックに訪れる外国人観光客がアプリを利用する段には「寄り道」情報の充実に期待したい。周辺情報にあたる項目は、体験情報(東京メトロの季刊『Metro Walker』、都営交通なら『さくらたび。』など)に置き換えられる。各社じまんの都市情報誌・フリーペーパーが蓄積したDBを付加いただきたい。いまだからこそ、である。
NEDO 首都高を使った自動運転の実証実験を開始
3月30日 先日当欄に記載した国土交通省のレベル3における啓発ビデオの中では、クルーズコントロールや車線維持、衝突被害軽減ブレーキなどの課題が扱われていた。昨今、レベル3の課題の一つとして「高速道路」本線への「合流」時のコントロールが話題に上がる。この課題に対して一筋の光が見えて来た。NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が、3月16日から、首都高(羽田空港~臨海副都心間)で合流支援情報(インフラ側の情報)を活用した自動運転の実証実験を開始した。実験では、車両を一般道からETCを通過し、安全に本線に合流させる。関連分野の研究は、国土技術政策総合研究所や自動車メーカー(トヨタ、日産など4社)、電機メーカー、地図会社、高速道路6社、日本道路交通情報センターなどが共同で取り組んでいる。レベル3車両の販売開始以降は、首都高の中央環状線など複雑な構造を持つ道路内での走行が想定される。双方の成果を協調させ、より安全性の高いシステムが早期に実用化することを期待したい。
政府、2020年度もスマートシティ関連事業を支援…自動運転モビリティサービスなど 他
3月26日 令和2年の各省庁のスマートシティー関連支援事業が明らかになった。内閣府の支援対象は社会実装に向けたハンズオン支援(各種補助金、制度的・技術的課題等に対する助言等)、総務省はデータ連携PF構築など、実装に係る経費全般、国交省(都市局)は実証実験に、経産省は実証実験事業に係る経費全般、将来構想、事業計画策定、事業性分析支援等のソフト面での支援、国交省(総合政策局)は実証実験に係る経費全般、AIオンデマンド交通やキャッシュレス決済の導入に予算を割り当てた。本事業に於いて内閣府は地方創生の観点から優れた自治体の未来技術の抽出と各自治体への展開(地域実装協議会の構築)、総務省は分野に関わる様々なデータ収集・分析を行う基盤、推進体制づくり、国交省(都市局)はスマートシティ分野での先駆的な取り組みの募集と支援、経産省はサービスの事業化を見据え、異業種連携による収益の活用・付加価値創出、その他の移動との重ね掛けによる効率化、サービスのモビリティ化、需要側の変容を促す仕掛け、モビリティ関連のデータ取得、交通・都市政策との連携、国交省(総合政策局)はMaaSの普及、より本質的な移動手段の確保や充実、交通機関の維持・活性化を狙い実証実験や基盤づくりへの支援を行う。成果を期待したい。
国交省「運転支援システムを過信・誤解しないで!」とビデオ作成 自動運転機能の前段階 他
3月25日 国交省は運転支援システムをドライバーが過信・誤解しないよう啓発に乗り出した。同省は「実験の様子」に俯瞰図等をあわせ、クルーズコントロール、車線維持、衝突被害軽減ブレーキなどを例に挙げ、支援システムには限界があり、レベル3の場合、事故発生時の責任の所在はドライバーにあると警告している。一方、情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII)と科学技術振興機構(JST)は、マツダの研究用モデルを元に自動車における自動運転の経路計画プログラムから危険動作を自動検出する手法を開発した(現時点では事故が自車責任か否かを判断するためだけに作成、今後検出した複数の事故すべてに対し動作を改善する修正案の検出など、知見の自動獲得を目指す)。同プログラムは自車の動作修正で衝突の回避が可能なシナリオだけを自動検出できる。開発者は現実的な想定の細部を書き出す必要がなくなり、大まかなシナリオ状況の指定だけで問題点を検出できるようになる。MaaSも自動運転領域も、問題に対する答えやヒントが広域に分散し、知見同士のマッチングや解決まで時間を要するのが現状と思われる。昨年12月、IT戦略本部で行われた「第3回自動運転に係る制度整備大綱サブワーキンググループ合同会議」では、自動運転システム等の定義の見直しや用語や呼称の統一、関係者が連携する基盤としてモビリティに関連する要素技術を俯瞰するような、リファレンスアーキテクチャを構築する提案が出されている模様。国を含め、関係各所にとってデータ基盤のオープン化やビッグデータ同士をマッチング、活用し易い状態に整理、必要なソースへのアクセスの効率化が求められている。
農業にこそ自動運転を!未来を切り拓く、クボタの試み 他
3月24日 農業分野において自動運転化が進む。農業と言えば、食を担う重要分野。スマート農業という言葉をご存じだろうか。ロボット技術やICTを活用して超省力・高品質生産を実現する新たな農業形態を言う。業界は凡そ自動車(国内)の半分程の規模と言える。専業農家は、大規模化を意図して法人による農業経営化の流れがある。但しその担い手は減少・高齢化により労働力不足が課題だ。農水省は農業技術×先端技術により課題解決を図る。自動運転技術は、ロボタクシーならぬロボトラクタ、アシストスーツやドローンとして活かされる。これまで自動化が難しかった分野でもあり今後の成長が期待される。これら農機の導入コストについても、農水省の交付金や事業予算に加え、RaaSによる農業支援サービスが立ち上がり、機器を販売せず収穫量に応じ課金する仕組みなども増えている。農業分野にも「移動手段の自動運転化」に匹敵する変化が起こることは確実だ。