3月2日 本日、株式会社KADOKAWAは、位置情報で読み解く交通・観光DX成果発表会~国土交通省「ビッグデータ活用による旅客流動分析 実証実験事業」~(主催:国土交通省)をオンライン配信(Zoomウェビナー方式)で一般公開すると発表した。携帯電話の位置情報データを活用した旅客流動分析により、地域の課題解決や、従来の交通調査では得られなかった知見の取得を目指す事業についての成果報告会を3/22(火)に開催するとしている(*角川アスキー総合研究所は、この事業の運営事務局を務めている)。なお、本成果発表会はオンライン配信(無料)となる。近年、観光客や生活者の動き(旅客流動)に関する様々なビッグデータが蓄積されるようになっており、中でも携帯電話など端末から収集される位置情報により、観光客や生活者の移動実態が詳細に把握できるため、地域課題の解決や、政策立案への利活用が考えられているとの流れを受けて行われる本発表会は、公募で採択されえた9つの事業主体から各々10分間のプレゼンテーションが行われ、内容に対し有識者からの講評を交えるかたちで行われる。本事業に採択され、今回発表を行うのは日野町、岡崎スマートコミュニティ推進協議会、ふじさんゼロアクション、一社)おしかの学校、茨城県境町、エリアポータル㈱、パシフィックコンサルタンツ㈱四国支社、須賀川南部地区エリアプラットフォーム、おおいたノースエリア観光推進協議会の9団体だ。日野町は「公共交通活性化に向けたマイカー通勤渋滞実態及び要因のビッグデータ活用分析・手法検証事業」、岡崎~は「ビッグデータで実現するEBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング/証拠に基づく政策立案)観光まちづくり」、ふじさん~は「富士山周辺によるビッグデータを活用したゼロゴミアクション」、おしか~は「牡鹿半島における観光ビッグデータ活用の実証実験」、境町は「ビッグデータ・自動運転バスを用いた地域経済活性化」、エリアポータル㈱は「山梨の観光地における群流解析実証実験」、パシフィック~四国支社は「携帯基地局データをベースとした新たな移動データの構築と、都市OSへの安定的なデータ供給および汎用性の高いシステム構築に向けた検討」、須賀川~は「ウォーカブルな中心市街地を形成するための人流分析および購買・消費分析」、おおいた~は「大分県北部地域の連携によるデータドリブン滞在型観光の実証分析」をそれぞれ発表する。どの団体も興味深いアプローチだが、各所のアプローチを掻い摘んでみると、愛知県岡崎市は岡崎スマートコミュニティ推進協議会が、対災害性の向上と岡崎市の魅力度アップ、更なる地域振興を目指し設立されている。協議会が目指す「スマートコミュニティ」は、電気の有効利用、熱や未利用エネルギーも含めたエネルギーの面的利用、地域の交通システム、市民のライフスタイルの変革などを組み合わせたまちづくりを目指すものだ。2023年にNHKの大河ドラマ「どうする家康」の放映を控える同市は、今回そのうちの旅客流動に関する岡崎市の魅力度アップや地域振興、地域の交通システムなどの観点からの取組を発表するものと予想される。「富士山周辺によるビッグデータを活用したゼロゴミアクション」は、富士山のゴミ(不法投棄、ポイ捨て等)問題を解決するために、富士山ガイドや地元アウトドア関係者を中心に発足した環境保護団体が、富士山麓から山頂までの調査活動や清掃活動、啓発活動を行っている。同団体のFacebookを拝見すると、今回は携帯電話の位置情報データを活用し、人の流れとゴミの増減を分析しようという試みを行っている。分析結果によって、効果的な啓発活動に繋げる目的での取組みとなる。本活動は河口湖町が協力しており、国土交通省の助成事業(「ビッグデータを活用した実証実験事業」)ともなっている。パシフィックコンサルタンツはソフトバンクとの共創により、「全国うごき統計」という人流統計データサービスを行っている。同社が保有する都市計画や交通計画などの社会インフラに関する知見やノウハウと、ソフトバンクの携帯基地局から得られる数千万台の(匿名化した)携帯端末の位置データを融合、位置情報から推定される各種交通手段の利用状況と、人口などの統計データを掛け合わせることで、全国1.2億人の人口に拡大推計した移動に関するデータを高い精度で提供する。人の移動の可視化により、都市計画・開発などのまちづくりや災害対策、飲食店などの出店計画、観光地の活性化、自動運転バスなどの新たなモビリティサービス導入の支援などを通し、社会課題の解決や産業の活性化に貢献するとしている。現在、全国ではデータ取集する環境整備が進みビッグデータを収集する取り組みがなされており、MaaSアプリなどの端末、車の自動運転車両、街灯のスマートポールや監視カメラ等より、日々膨大なデータが収集・蓄積されている。収集したデータの「上手な使い方」については、ビッグデータによる地域振興を図る各自治体がまさに試行錯誤している状況だ。その中で国土交通省によりパイロット事業として採択された各自治体の取組み結果だからこそ、「交通・観光DX成果発表会」となるのかも知れない。地域振興・経済に直接結び付き、防災や環境問題解決の糸口としても利用可能な情報(ビッグデータ)の活用事例だけに、自治体と協業する各方面からも注目度の高い発表会となるのではないか。*写真提供:岡崎市
MaaS・CASE関連の最新ニュース(8 / 65ページ目)
ウェイモや自動車メーカーはレベル5に達しない?…独自アプローチで自動運転をめざすチューリング 他
3月1日 いすゞ自動車、日野自動車、トヨタ自動車は、2050年のカーボンニュートラルに向け、路線バスの電動化を加速させる。CASE技術をトヨタが提供し、CASE技術の社会実装やサービスの企画を事業内容とする「Commercial Japan Partnership Technologies株式会社」と連携し、ラインナップの拡充により顧客の選択肢を広げ、車両コストの低減を図るとともに実用的かつ持続的な電動車の普及に取り組む。商用事業プロジェクト「Commercial Japan Partnership」は、前述の3社で2021年4月に立ち上げたプロジェクトで、その後スズキとダイハツの軽自動車メーカーが2021年7月に加わっている。いすゞと日野は、BEV(バッテリー式電気自動車)フルフラット路線バスを両社の合弁会社であるジェイ・バス㈱にて2024年度から生産開始する。両社は2002年よりバス事業で協業してきたが、昨今のカーボンニュートラルへの対応や、路線バスのゼロエミッション化への顧客ニーズに伴うアクションとなる。BEVフルフラット路線バスは、いすゞが開発を担当することとなる。また、いすゞ、日野、トヨタの3社は、次世代FCEV(燃料電池自動車)路線バスの企画・開発に向けた検討を開始する。2024年度中に投入予定のBEVフルフラット路線バスをベースとした、次世代のFCEVの企画・開発を並行して進める。ちなみにトヨタ自動車のFC(燃料電池バス)の現行バスとなる「SORA」は2018年3月7日より販売開始となっており、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、東京を中心に100台以上導入され、その後も各地で普及が進む。災害時には、電源として利用できる「トヨタフューエルセルシステム」を搭載している。同じく次世代FCEVバスの技術ベースとなる「MIRAI」は、FCEV(燃料電池自動車)として、初代が2014年に販売され、現行は2020年モデルと言える。トヨタの燃料電池技術とハイブリッド技術を融合させた高級セダン型燃料電池自動車だ。「SORA」同様、フューエルセルシステムを搭載。次世代FCEV(燃料電池自動車)路線バスは、BEVとFCEVの部品共通化による大幅なコスト削減を図るとともに、新世代のFCスタックを採用、トヨタ・日野で培われたFCEVバスの開発ノウハウなども活用、より長寿命で付加価値の高い電動車の提供を目指すとしている。これまでも、いすゞは2050年に向け「いすゞ環境長期ビジョン」、日野は「日野環境2030マイルストーン」、トヨタは「トヨタ環境チャレンジ2050」をそれぞれ策定してきており、SDGs、脱炭素化への貢献を具体化している。今回の「路線バスの電動化」を通して、国内のバス事業者や自治体の環境ニーズにも応えて行くものとみられる。日本の水素ステーションは、2021年11月現在、全国で156ヵ所であった。経産省は、水素ステーションを設置するための規制緩和方針を打ち出しており、水素タンクをより安価なクロムモリブデンで建設することを認めるとともに、水素タンクの設置場所を「公道から8m以上離れた位置」から、「公道から4m以上離れた位置」に緩和するなどして、建設費用を2014年の5億円から、昨年までに2.5億円に半減させるとしている。JXTGエネルギーは、2020年までに国内10拠点で水素を生産、販売面では主要な約2,000店舗を対象に順次、水素スタンドを導入すると2014年に発表している。近年では、2018年2月にトヨタ、ホンダ、日産など11社が「日本水素ステーションネットワーク合同会社(JHyM)」が設立されている。経済産業省「水素・燃料電池戦略ロードマップ」(2016年6月)のFCVと水素ステーションの普及目標に拠れば、2030年のFCV累計販売台数は、800,000台とされ、水素ステーションは900ヵ所が整備される見通しだ。ゆえにJHyMは、水素ステーションの効率的な運営に貢献し、FCVユーザーの利便性向上、水素ステーションのコストダウンや規制見直しへの対応などをそのミッションとしている。参画企業は、トヨタ、日産、ホンダ、ENEOS、出光、イワタニ、東京ガス、東邦ガス、AirLiquide、根本通商、SEIRYU、TOYAMA HYDROGEN、福岡酸素、丸伊運輸、多摩興運、南国殖産、光南工業、東亜合成、佐藤燃料、DT、豊田通商、日本政策投資銀行、JA三井リース、損保ジャパン、三井住友ファイナンス&リース、NECキャピタルソリューション、スパークス・グループ等だ。バスメーカーにおける、BEVとFCEVの選択は、背後にあるエネルギー産業の今後にも、大きな影響を与えることになるのかも知れない。
自動運転車、米での公道試験の距離が倍増…25社の車が1年で「地球160周分」走る 他
2月28日 先日述べた「鉄道に並走する高速や専用自動車道が排出する年間の規制物資の測定」について少し掘り下げてみた。規制物質の測定は、①複数の定点観測で(環境的な視点から)大気の測定を行う方法、②通行した車種と通行車両数を計測、車に搭載される排気系の排出値*車両数から測定する方法等があると考えられる。②は自動車走行データ(*参考1:国土技術政策総合研究所)や、排気系装置のメーカー(*出典1:マークラインズ)に協力を仰ぎ、車両や年式、車両に搭載される排気系等のデータベースが必要となるかも知れない。非コネクティッド化車両における車両計測は、料金所などで画像解析の活用が想定される。首都高速道路㈱には、羽田(*高速大師橋更新工事のため、測定休止)、護国寺、錦糸町など全部で18局の環境監視局がある。また首都高速道路沿道には、自治体が管理する環境監視局(17局)も存在する。これらが相俟って首都高の測定ネットワークを構築している。NO2、SPM(浮遊粒子状物質)、PM2.5(微小粒子状物質)や経年変化などの測定結果も公表されている(*参考2:首都高速道路株式会社)。別な話題だが、ジオテクノロジーズ(デジタル地図)とHERE Japan(位置情報基盤)は、2017年から戦略的パートナーとして提携、「OneMap Alliance」を結成している。プラットフォーム的性質の地図情報と、プラットフォームに付加価値的な情報を与える位置情報(ロケーション・サービス)の親和性の高さは、比較的以前から自動車業界、通信業界、飲食や小売、IT業界等、さまざまな産業に周知・注目されて来た。両社の情報・サービスは主に自動車産業、とりわけナビゲーションシステムに焦点を当て、開発されて来た。今後は、両社は培ってきたデータやサービスを、自動車業界の世界標準化に向け整備、グローバル向けに用意したサービスを、日本(ローカル)に落とし込んで行くとする。同時にこれまで集積してきたデータなどを、自動車製造以外の産業にも反映させていく意向だ。その中には、車両や運行管理に当たるフリートマネジメントや流通の最適化などが挙がる。また、その視野には「メタバース」も含まれる。両社のプラットフォーム役割は、メタバース(現実世界とは異なる3次元の仮想空間やそのサービス)における、縁の下の力持ち的存在になるという。メタバースの領域内で、地図・位置情報がどのように利用されるのか?仮想世界で行われるショッピングやビジネスユースにより、現実の移動が削減されれば、CO2削減にもつながる可能性があるという。また別な方面からのアプローチとなるが、地図情報をCO2が多く排出される地域や、反対に酸素が産出される地域をプロット(観測値を把握、グラフ化)出来れば、「排出権やオフセット分の売買」を実現出来ると考えている。環境省の「温室効果ガス排出の現状等」では、我が国の温室効果ガス排出量(2019年度速報値)は、総排出量:12億1,300万トン、前年度比:-2.7%、2013年度比:-14.0%、2005年度比:-12.2%であり、温室効果ガスの総排出量は、2014年度以降6年連続で減少し、排出量の算定が始まった1990年度以降、前年度に続き最少を更新している。排出量減少の要因としては、エネルギー消費量の減少(省エネ等)や、電力の低炭素化(再エネ拡大、原発再稼働)等により、エネルギー期限のCO2排出量が減少したことなどが挙げられる(一方で、冷媒におけるオゾン層破壊物質からの代替に伴う、ハイドロフルオロカーボン類(HFCs)の排出量は年々増加している)。ちなみに、エネルギー起源CO2排出量(10億2,900万トン*2019年度速報値)の部門別内訳は、電気・熱配分前排出量では、エネルギー転換部門(42%)が最も多く、次いで産業部門(27%)、運輸部門(20%)と続く。電気・熱配分後排出量では、産業部門(38%)、運輸部門(20%)、業務その他部門(19%)の順となる。産業部門別のエネルギー起源CO2排出量3億8,600万トン(*2019年度速報値)の排出量トップは、鉄鋼業(40%)。次いで化学工業(14%、含石炭石油製品)、機械製造業(11%、輸送用機械器具製造業4%、電子部品デバイス電子回路製造業3%、その他4%)、窯業・土石製品製造業(8%)、パルプ・紙・紙加工製造業(5%)、食品飲料製造業(5%)、プラスチック・ゴム・皮革製品製造業(3%)、繊維工業(2%)、他製造業(6%)、非製造業(6%)の順だ。業務その他部門からのエネルギー起源CO2排出量の内訳は、業種別排出量では卸売業・小売業(21%)、宿泊業・飲食サービス業(13%)、医療福祉(11%)、生活関連サービス業・娯楽業(9%)、教育・学習支援業(8%)、廃棄物処理業(7%)、電気ガス熱供給水道業(5%)、運輸業・郵便業(4%)、その他(14%)、分類不能・内訳推計誤差(8%)となる。環境省の定義によると「カーボン・オフセット」とは、日常生活や経済活動において避けることのできないCO2等の温室効果ガスの排出について、先ずできるだけ排出量が減るよう削減努力を行い、どうしても排出される温室効果ガスについて、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資すること等により、排出される温室効果ガスを埋め合わせるという考え方を言う。紆余曲折があったが、現在日本では「J-クレジット制度」(*参考3:J-クレジット制度)という仕組みが作られ、省エネルギー機器の導入や森林経営などの取組による、CO2などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証するという制度がある。同サイトでは、省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの活用により、ランニングコストの低減や、クレジットの売却益、温暖化対策のPR効果をアピールしつつ、排出削減・吸収に資する技術ごとに、適用範囲、排出削減・吸収量の算定方法及びモニタリング方法等を規定(該当する方法論がない事業については、新たに登録することが可能な場合もある)、同時にクレジットの売買を行っている。鉄道事業者が、CASEや地図・位置情報、コネクテッドカーの走行情報を利用し、高速道路や専用自動車道を含めた沿線の温暖化ガスを排出する企業等とカーボン・オフセットの取引を行うことで、車両や設備更新や路線維持に資する自助努力は可能だ。その先に路線維持による地元経済との協業を据えれば、鉄路にもより良い未来が見えてくるのではないか。売買に必要となるノウハウは国交省・環境省が持ち合わせている。*参考1 http://www.nilim.go.jp/japanese/organization/k_honbu/kankyosymposium/13-08.pdf、*出展1 https://www.marklines.com/ja/report_all/wsw0022_201608、*参考2 https://www.shutoko.co.jp/efforts/environment/review/air/、*参考3 https://japancredit.go.jp/
自動運転バス 運転手配置せず市街地で初の実証実験へ 大分市 他
2月25日 Wikipediaによれば、米国の鉄道輸送は1830年代から始まり、2006年時点の総路線延長は225,500km、世界最長と言われる。モータリゼーションと航空機との競争により旅客輸送は衰退の一途を辿るも、貨物輸送においては現在でも陸上輸送の主役と言われる。主な鉄道事業者(一級鉄道)は、ユニオン・パシフィック、ノーフォーク・サザン、カンザス・シティ・サザン、オムニ・トラックス、CSXトランスポーテーション、スー・ライン、グランド・トランク、BNSFなど(USRA、コンレール、旅客輸送のアムトラック、各都市圏の都市交通事業者は官の色が強い)だ。創業期から民間企業によって運営されているため、現在においても企業間の競争が激しかったが、近年では鉄道会社の統合が進んでいるようだ。アムトラックは一級鉄道の線路を借りる形で、旅客列車を運行するケースが多い。鉄道事業者は、現在上記の8社(一級鉄道)とアムトラック、近距離輸送を担う中小の鉄道会社という勢力図を展開している。鉄道事業者を統括するのは、アメリカ鉄道協会(AAR)。鉄道技術の標準化、列車運行の調整、鉄道技術の研究開発などを行う。車両メーカーは、エレクトロ・モーティブ・ディーゼル(EMD)、GEトランスポーテーション・システム。これに対して日本の鉄道は、総延長27,182km(アメリカの12%程度)、現在世界ランキング11位だ。ご存知の通り日本の鉄道の祖はイギリスで、同国の技術が、1853年に長崎に来日したロシアの軍艦上で、招待された日本人(幕府関係者、佐賀藩)に蒸気機関車の模型運転が展示されたという。続く1854年横浜でも、ペリーにより模型機関車の走行が展示された。1865年には長崎において、トーマス・グラバーが鉄道を紹介するためレールを敷設し、長崎の人々を乗せて走行している。明治時代に政府は官営による鉄道建設を決定、有名な新橋-横浜間の鉄道建設が始まった。歴史的な沿革から考えれば、日本の鉄道は官製であると言えると思う。鉄道事業者の構成は、かつての国有鉄道はJR貨物を含む7社に引き継がれ、この他に大手・中小の私鉄と第三セクターと若干の産業用の貨物輸送、都市部のが加わる。旅客輸送は、都市部の一部の私鉄を含む黒字路線が存在するものの、地方においては人口減少・モータリゼーションの影響がより、公的支援が投入される状態にあっても、採算が合わなくなってきているのが現状で、廃止によるバス転換が進む。ただ、不動産や観光など鉄道部門以外で黒字化を図っている事業者も見受けられるのが現状だ。JR貨物に関しては発足当初から、線路を保有せず他社の保有するインフラに使用料を支払い貨物列車を運行する。第三セクターにおいては第二種鉄道事業者となり、同様に使用料を払うことで、貨物を運行する。年々、上下分離方式導入の傾向は強くなって来ている。しかし、近年のトラック貨物・地方空港整備による航空便の隆盛などの影響で取扱量は一旦減少、つい最近になりモーダルシフト政策やトラック輸送におけるドライバー不足の問題から、利用は微増の傾向にあるという。聞けば自動車大国の米国において、MaaSにより鉄道の「復権」と言える現象が起きている。フロリダ州においては新たな都市間鉄道の敷設に伴い、アクセスさせる(電動の)移動手段を多数用意することで、環境に配慮した移動サービスを構築している。航空機と自動車による中距離移動が常識である米国において「脱炭素」の動きが本格化し始めていることを示すものだ。フロリダ州に本拠を置き、マイアミ中央駅とウェストパームビーチ駅を結ぶ旅客鉄道「ブライトライン」は、アムトラックのアセラ・エクスプレスに次いで米国市場2番目となる高速鉄道だ。第二期となるマイアミ~オーランド(240km)は、2020年後半までに開業と謳われていたが、現在同社ホームページのチケット予約は、フォートローダーデール、マイアミ、ウェストパームビーチ間の案内だけが表示される。ホームページでは、南フロリダと中央フロリダを結ぶサービスは2022年に開業するとのこと。同社のブライトラインは、地元のサウスフロリダエクスプレスラインの6駅と接続を図る予定だ。また沿線の交通機関としては、メトロレール、メトロムーバー、トリレールとのアクセスを図る。沿線におけるフードホール(飲食事業者)、オフィス、小売店、住宅、商業スペースなどの「交通ハブ」となり、静的な地域を活性化させる「不動産ビジョン」だと謳われている。加えてフロリダ半島に埋蔵されている豊富な花崗岩や石灰岩の「貨物輸送」も想定している。同社のブライトライン・ウエストは、「ラスベガスとロサンゼルス間の260マイルを最高時速180マイル、約3時間で結ぶ」。将来的には、メトロリンクとパームデールのカリフォルニア高速鉄道と接続させる。これら2つの目的地の間では、年間5,000万回の片道旅行が行われ、その85%が車やバスでの移動とされる。ここに鉄道が運行されることで、市場の約22%、つまり毎年1,100万回の片道旅行を「エコロジカルな移動手段」に置き換えることが出来る(ブライトラインの車両は電動だ)。このため、同社が発行する免税債はESG(環境、社会、ガバナンス)投資としてミーチュアルファンドや個人投資家以外にも、幅広い投資家の関心を集めている。運賃はクルマのガソリン代及び駐車場代と同等と謳う。また、列車内で利用できるWi-Fi、駅から電車へのADAアクセス、飲食サービス、荷物の受入れ、ホテルのチェックインサービスなども提供される。さらにブライトンラインは、地元に24億ドルの労働所得と、64億ドルの経済効果、フロリダのGDPに35億ドルを追加、鉄道建設後に2,000以上の雇用創出、鉄道建設を通じて作成された10,000以上のジョブ、連邦、州、地方の税収で6億5300万ドルの経済的なインパクトを投下できるとしている。同様に、ブライトライン・ウエストでは、40,000件の建設関係のジョブ、100億ドルの経済効果、上記に掲げた毎年300万台の車の撤去、ブライトラインによる1,000以上の恒久的な仕事、10億ドルの税収等の経済的インパクトと、ゼロミッショントレインセットなどの環境的な影響をアピールしている。米国と日本では文化は違えど、現在の鉄道業界がリノベーションし切れておらず、鉄道産業の「復権」を図るキーワードは幾つも埋蔵されている。鉄道路線に並走する高速や専用自動車道が排出する年間の規制物質を測定出来れば(首都高速道路などは大気の状況を把握するため、環境監視局で大気の状況を監視、測定結果をまとめ公表している)、移動を鉄道(但し、鉄道側は電化するかディーゼルエンジンとリチウムイオン蓄電池などのハイブリッド化、或いは蓄電池駆動方式の車両に置き換える必要はある)にシフトさせることで、ESG投資に繋げる道筋はある。先行事例は前述の通りだ。各地で「MaaS」の導入・検討が進み、マイカーのデマンドタクシー化・シェアリング化が進むことで、駅を交通ハブに据え直すことが出来、隣接する観光産業や小売・飲食業との協業が進み、沿線産品の物流も取り込み直すことが出来るなら(駅の自動化・多機能化)、人・物の移動は鉄道に回帰する可能性もある。地方の足を支える鉄道会社にこそ、自治体や投資家に向けた「経済的インパクト」のアピールが必要な時代だが、足元の「移動の価値」を構築するのは易しくはないようである。鉄道にはその「仕掛け」を創る仲間が必要だ。
コスモスクエア~舞洲で自動運転の実証実験 夢洲を経由 4月に体験運行も 他
2月24日 日産が2/8に2021年度第3四半期決算を発表している。第3四半期累計の営業利益は、1,913億円、当期純利益は2,013億円であり、第3四半期3ヶ月も前年比で大幅に利益を改善している。これにより通期見通しを上方修正するとしている。2021年度の販売台数は前回の見通しから変更なく380万台と見込んでいる。依然として厳しい状況にある半導体の供給不足や、オミクロン株による感染再拡大などが工場の操業にも影響を与えている。日産のCOO(最高執行責任者)であるアシュワニ・グプタ氏は、同日の会見で日産自動車は電気自動車(EV)シフトが進む欧州向けのエンジン開発を終了すると表明した。2025年以降に欧州に導入される予定の新たな排ガス規制「ユーロ7(EURO7)」だ。現行の「ユーロ6d」と比較し、大幅に厳しい内容が予想されている。同規制の検討を進めるのは、EU欧州委員会配下の車両の排ガス基準に関する諮問グループ「AGVES」(Advisory Group on Vehicle Emission Standards) で、研究機関などから構成される「CLOVE(Consortium for LOw Vehicle Emissions)」とともに検討を進めている。「ユーロ7」の規制内容の方向性は、①ガソリン車かディーゼル車か、乗用車か重量車かといった違いに拠らない単一の排出基準とする。②車両のライフサイクルに亘る実際の排出量をモニタリングするオン・ボード・モニタリングを導入する。③既存の規制物質の規制値の厳格化する。④加えて新規の規制物質を追加、⑤外気温-7度の低温WLTC(Worldwide harmonized Light vehicle Test Cycle)サイクル試験における規制対象物質を拡大する、⑥RDE(Real Driving Emissions)試験における適合係数(Conformity Factors、CF)を見直す、⑦前述のRDE試験における温度・標高に応じてCFを緩和する係数(Emissions corrective factor)を見直す、⑧RDE試験にも新たな規制対象物質を追加する、⑨RDE試験の市街地区画における最低走行距離を短縮する(ショートトリップ)、⑩車載型排ガス計測装置(PEMS)では、精度よく測れない成分については、試験室内での模擬的なRDE試験によって規制する、⑪排ガスの悪化は承知でエンジンや部品の保護などを目的に例外的に実施する制御(補助エミッションストラテジー、AES)は最新技術を使っても回避できない場合に限定するなど。AESとしては排ガス再循環(EGR)を低温時に停止させる、高負荷運転時に理論空燃比よりも燃料が濃い状態(リッチ)で運転する等。自動車から出る排ガスの大半は冷間始動時と高負荷運転時に排出されることを踏まえた規制強化内容と言えるとのこと。「ユーロ7」の施行は、25年以降とする予測と、25年以降でも27年か28年とする予測もある。新たに規制される規制物質としては、アンモニア(NH3)、二酸化窒素(NO2)、亜鉛化窒素(N2O)、メタン(CH4)、ホルムアルデヒド(HCHO)、アセトアルデヒド(CH3CHO)などが検討されている。これらの規制値をクリアするには、メーカー各社は更なる燃費の改善と規制物質を抑制するため、追加の開発投資が必要となる。日産では「ニッサン・グリーンプログラム2022(NGP2022)」を設けるとともに、コーポレートパーパス「人々の生活を豊かに。イノベーションをドライブし続ける。」を謳い、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向け、ゴールを事業活動やクルマによって生じる環境への依存と負荷を自然が吸収可能なレベルに抑え、豊かな自然遺産を次世代に引き継ぐとして、環境方針を定めている。取り組むべき重要課題とチャレンジには、気候変動(カーボンニュートラル)、大気品質(ゼロ・インパクト)、資源依存(新規採掘資源依存ゼロ)、水資源(ゼロ・ストレス)を掲げる。そのうち大気品質については地球規模で生態系の劣化が進行する中、企業がその活動により生態系への影響を抑制していかなければならない重要な課題だ。自動車メーカーである日産は、同領域の課題解決について、「排ガスクリーン化」により生態系への負荷を減らすとともに、自社の顧客にもより良い車両室内の環境の提供するため空質についても研究を進めるとしている。米国の健康影響研究所(HEI)は、世界人口の92%がWHO(世界保健機関)が空気質ガイドラインで定めた微小粒子状物質(PM2.5)の基準値10μg/m3(*μg=マイクログラム/mgの1000分の1)を超えている地域で生活していると報告している。また、OECD(経済協力開発機構)によると、2050年までに世界人口は90億人以上までに増加、約70%が都市に集中すると予測され、大気汚染がより深刻な課題となると予測されている。同社においてはこれまで「よりクリーンな燃焼を行うための改善技術」「排ガスを浄化する触媒開発」「燃料タンクから蒸発するガソリン蒸発ガスへの対応」など幅広い技術開発に取り組んできた。結果として、米国では、2000年1月に発売した「セントラCA」(*B15型サニーをベースにした乗用車)がカリフォルニア州大気資源局が制定する排出ガス基準値を満たし、PZEVに認定され、日本でも同年8月に発売した「ブルーバードシルフィ」が、U-LEVの国内初の認定を取得するなどしている。同社が全世界で累計52.4万台(2021年3月時点)を発売した「日産リーフ」を始め、走行時に排出ガスを全く排出しない電気自動車(EV)の普及は、都市部における大気汚染の改善の有効な手段になるとしている。同社は単に「排ガスクリーン化」に注力したEVの販売にとどまらず、各国の政府や地方自治体、電力会社や他業界とパートナーシップを締結しながら、ゼロ・エミッションモビリティの推進とインフラ構築のための検討を進めるとしている。また素材に関わる取組みでは、これまでも削減について対象としてきたホルムアルデヒドやトルエンなどの有機化合物VOC(Volatile Organic Compounds)の削減についても、車室内のシートやフロアカーペットなどの部材や接着剤の見直しなども行い、2007年度以降、市場に導入した新型車から基準をクリアすることを義務付けている。一方で、クルマの生産工場から排出される物質として、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、揮発性有機化合物(VOC)についても、厳しい対策を推進している。大気に放出される物質に関する管理基準と仕組みを徹底し、使用量と排出量の双方を低減する活動に取り組んでおり、各国それぞれの法規に対してもより高いレベルでの対応を目指すとしている。具体的には洗浄用シンナーなどの回収率を上げ、工場外への排出量を減らしたり、VOCの少ない水系塗装ラインへの切り替え、廃シンナーのリサイクル率向上を計画的に進めるなど、VOCの使用量そのものの削減に取組んでいる。また塗装工程などで大量の熱を消費することから、その熱源となるオーブンやボイラー設備への低NOxバーナーの採用、使用する燃料を重油や灯油などからSOx排出量の少ない燃料への転換も進めつつ、NOxやSOxの排出濃度を低減させている。「欧州向けのエンジン開発終了」の表明は、続けて米国ミシシッピ州のキャントン工場に5億ドルを投資、日産とインフィニティの新型電気自動車(EV)を生産するなど、EVシフトを進める日産の華やかな一面と両輪となり、地道に企業を支える「NGP2022」。懸命に規制対応における開発投資、規制対応コストの圧縮に取り組む、現在の日産の姿が色濃くにじむようにも思える。
世界初、可動部が一切ない自動運転用ソリッドステートLiDARを開発 他
2月22日 2/17に日本航空(JAL)が空と地上を組み合わせたリアルタイム経路検索サービス「JAL MaaS」(https://www.jal.co.jp/jp/ja/relations/jalmaas/)を開始した。*今後は「JAL」アプリでのサービス提供も予定、予約・購入手続きが可能な地上交通については今後順次拡大する。国内の空港を中心とした地上交通での移動について航空機を含めた経路検索と交通事業者と連携した予約や手配を実現した。シームレスという言葉に相応しく、空路を含む移動が必要な利用者の出発から目的地までの「旅行」(経路検索、予約、決済、利用)をアシストする。*空路より地上交通の移動が早い場合は、新幹線での移動も提案される。MaaSならではの柔軟性を持つシステムを構築している点を特筆・評価したい。システムには、東日本旅客鉄道(JR東日本)のリアルタイム経路検索サービスを利用、空の便と地上交通の遅延状況も反映するリアルタイム経路検索を行う。公共交通のチケット販売システムは「WELLNET」、タクシー配車は「電脳交通」、Eチケットプラットフォームは「LINKTIVITY」、複合経路検索サービスは「ヴァル研究所」、近距離モビリティ(次世代型電動車いす)は「WHILL」が提供している。現時点で鉄道会社はJR東日本、JR四国、青い森鉄道、小田急、京王、相鉄で、バス事業者は徳島バスが、その他交通事業者としてnearMe.が連携している。本アプリを利用すれば、自宅からバスや鉄道を利用し空港へ。機内で、目的地到着後の移動手配も可能だ。空港から宿泊施設などへの移動は、相乗りシャトル(「スマートシャトル」)を利用し移動することもでき、旅先を周遊する際にも事前に一日フリー乗車券などを購入しておけば、観光地においても一層自由に移動できるようになる。観光地は、本サービスで発行されるクーポン券を利用出来る仕組みも、お得感が高い。さらに航空機と相乗りシャトルの利用についてはマイルが提供される。特長的なのは、自治体との連携を強化し移動手段の選択肢が限られているなど、地域が抱える移動に関する課題解決や交流人口の創出にも取り組んでいる点だ。手始めに2022年の2月17日~5月31日まで、徳島県や山形県、青森県などの3つの自治体と連携し、空港から目的地までの移動のサポートに加え、地域の魅力を発信して行く。ちなみに徳島では「徳島阿波おどり空港」から人気スポットへ「JAL MaaS」で予約したnearMe.(ニアミー)の定額制スマートシャトルを利用し、移動の利便性を高める試みを行う。このスマートシャトルの利用は、予約時に「JALフライト番号」と「JMBお得意様番号・氏名」を入力しておけばマイルがプレゼントされる。2022年5月31日の利用分まで、付与されるマイル数は5倍となる。空港から比較的近距離となる徳島市・鳴門市・藍住町・北島町・松茂町までの利用は、980円/人。また「一般路線バス1日オールフリー乗車券」(大人1,000円/子供500円)購入・利用者には、大人1名につき80マイル、子供1名につき40マイルが貯まる。路線バス利用の場合は、乗車券を降車時に乗務員に提示する。また経路検索時に「お得な切符を探す」ボタンが表示される場合、JR四国のサイトに遷移し、徳島県内で使用可能な切符情報を確認することが出来る。「JAL MaaS」では徳島県内で利用できるお得なクーポンも多数用意されている。さらに徳島県内で行きたい場所を検索すると、画面下にクーポンが表示されるので「クーポンを見る」を選択し、行ってみたい施設やお店のクーポンを確認できる。実際に現地を訪れた際、お店などでクーポン画面を表示すれば、各々で用意された特典を受けることが出来る。地域ごとに移動や特典は異なるものの、同様の取組みは、山形県のおいしい山形空港、青森県の三沢空港においても行われている。(詳細 https://press.jal.co.jp/ja/items/uploads/JGN21115_MaaSサービスロウンチプレスリリース_Web版_0217.pdf)。今後の提携の詳細はまだ発表されていないが、各自治体やJR各社、地方の中小私鉄、バス、タクシーなどの交通機関やレンタカー各社、宅配サービス各社などとの連携が充実してくれば、全国を旅する利用者にとって、エクセレントな旅行ツールに発展していくものと期待される。
一般社団法人ロボットデリバリー協会発足のお知らせ 他
2月21日 関西におけるMaaSの本格導入が始まる。国土交通省の近畿運輸局では、2021年11月29日に「関西MaaS推進連絡会議の設置について」を発表している。資料においてはMaaSは次のように説明されている。「MaaSは、モード・業種横断的に幅広い事業者間で連携し、広域的に提供されることで利用者の利便が増進される」。MaaSを導入する狙いについては、特に関西地方においては、2025年に大阪・関西万博を控えるとともに、豊富な観光資源を有していることから、広域的なMaaSの活用による効果は大きいと期待される。また、同連絡協議会の設置目的については、MaaSの取り組みに関して、交通・観光分野をはじめとする幅広い業種間での連携を推進し、取組を協同で実施していくためと説明している。この呼びかけに呼応したのは、観光万博関係では、一財)関西観光本部大阪観光局、公社)2025年日本国債博覧会協会、交通関係では関西鉄道協会、関西MaaS検討会、近畿バス団体協議会、近畿ハイヤータクシー協議会、阪神高速道路㈱、自治体としては、関西広域連合、大阪府、大阪市、国からは近畿運輸局、近畿地方整備局、近畿経済産業局、近畿総合通信局、経済界からは公社)関西経済連合会、大阪商工会議所などだ。参加した各機関や団体において、情報共有や意見交換が行われる場となり、国や自治体、経済界は補助金等による支援や貢献を行う。このうち関西MaaS検討会に属するのは①大阪市高速電気軌道、②近鉄グループホールディングス、③京阪ホールディングス、④南海電気鉄道、⑤西日本旅客鉄道、⑥阪急電鉄および⑦阪神電気鉄道の7社だ。「関西MaaS推進連絡会議」では、昨年12月21日に開いた「第一回関西MaaS推進連絡会議」において「MaaSアプリ」の提供を始めることで合意している。当初は経路検索などからはじめ、決済機能などを順次追加していく。万博が開催される25年までには、周辺の観光地や飲食店検索やルート案内なども検討するとしている。各社のアプリを調べてみたところ①は昨年10/7に「Osaka MaaS社会実験版」をバージョンアップしオンデマンドバスの走行位置の表示を可能としている。②は2019年12月18日に観光地型MaaSアプリ「ぶらりすと」をサービスインさせ伊勢・鳥羽・志摩地域で2020年1月9日~3月31日まで実証を行っている。③は、2021年10月15日~11月30日まで、JR西の「WESTER」の基盤を活用し、叡山電車沿線にある鞍馬、貴船、八瀬や京都バスの大原などで観光促進と観光客の行動変容を念頭においたデジタルスタンプラリーを奥京都エリアで開催した。④の「南海アプリ」には、車のリアルタイム走行位置や、駅情報、遅延情報、トイレの空き状況、席ゆずりあいアシスト機能などが盛り込まれている。⑤の「WESTER」は2022年1月11日のアップデートにより、全国の新幹線の駅情報・時刻情報の提供を実現するとともに、新幹線停車駅については日本全国の各駅の登録・検索を実現させている(参考 https://www.westjr.co.jp/press/article/items/220111_02_wester_1.pdf)。⑥は「阪急沿線アプリ」(*TOKKアプリが同アプリに変わります)。利用者に阪急電車、阪急バスの交通情報の提供とともに、経路検索や遅延証明、能勢電鉄のダイヤや阪急タクシーのりば情報、沿線のお出かけスポット等を提供している。⑦は、2021年10月18日に⑤⑥との連携機能が追加され、ダイヤ検索、シェアサイクルのリンク追加、ている。②との連携による大阪難波駅の行先表示案内などが追加されている。*⑥⑦は2006年10月に経営統合している。各社が様々に取組んできたMaaSアプリ。アプリ提携先などの整理、社内リソース整理、開発投資における回収、利用客など利便性の確保など、数多くの課題・調整が必要であろうことは想像に難くない。令和2年3月に国土交通省総合政策局の公共交通・物流政策審議官部門が作成した「MaaS関連データの連携に関するガイドライン」(参考 https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001334057.pdf)に立ち返れば、事業者間の調整においては、MaaS関連データにおける「協調的データ・競争的データ」の考え方が重要となってくる。「協調的データ」とはMaaS関連データの内、各MaaSにおいて設定された最低限のルール等に基づき、該当MaaSプラットフォームを利用するすべてのデータ利用者が利用可能なものとして、該当プラットフォームに提供等が行われるデータをいい、「競争的データ」とは、同じくMaaS関連データのうち、当該データの提供者との契約等により個別に共有が行われるものとして、各MaaSプラットフォームに提供等が行われるデータと定義されている。プラットフォーマーや各事業者においては「協調的データ・競争的データ」の判断意外にも、アプリ提供の結果として収集・蓄積される「移動関連データ」の扱い、個人情報・プライバシー保護対策、セキュリティ対策、関係者間でのデータの取り扱い、適切なデータの取得・提供方法、データ利用者及びMaaSプラットフォームの連携、プラットフォーマー自身のデータの取扱い、プラットフォーマー間のデータ連携など、協議が必要な課題も数多予想される。協議会に名前のないが連携が予想される航空会社、フェリー等運航会社の早期参加も踏まえ「関西MaaS推進連絡会議」の推進力が試される。提供の見返りは「移動関連データ」(経路検索、座席等の予約・決済情報など)だ。大阪・関西万博開催に向け、推進連絡会議などがデータ提供者となる各事業者に、これらの解析方法やマネタイズまでのフローや手法・効果の青焼きを示すことが出来れば、各社からのデータ提供にも弾みが付くのかも知れない。
8割の区間で自動運転OK 課題は駐車車両への対応 岐阜市が走行実験報告 他
2月18日 岐阜市では、昨年10月23日~同31日まで、中心市街地における自動運転実証実験を行った。実験は持続可能な公共交通ネットワーク構築と公共交通への自動運転技術の導入を目的として、令和元年から取組みをはじめ、市内の金華橋通りや長良橋通りなど、中心市街地の幹線道路において実験を続けている。実験車両には仏ナビヤ社のNAVYA ARMAを使用、ハンドルやアクセル、ブレーキペダルのないのが車両の特徴だ。行われた実証事件の検証内容は、車両が信号機との通信により、信号を自動で判断して走行することや、横断者を自動で検知して走行することなど。将来的には、乗務員がいないバスとなることを想定し、車内の様子を遠隔で監視する実験や、キャッシュレス決済を見据え、顔認証による決済の実験なども想定されている。実験では市庁舎を乗降場所とし、市内の市街地を周遊するコースを2通りに分けて自動運転バスを走行させている。JR岐阜駅まで足を延ばす、所要時間40分程度のロングコースと、途中の若宮通りを経由し市庁舎に戻る所要時間20分程度のショートコースが設定された。同市では、公共交通を持続可能なものとするために、自動運転技術の導入が不可欠と見ており、車両や自動運転技術の開発や、道路管理者、交通管理者、地元のドライバーなど、関係者の協力を仰いでいた。この度、同市は、実証実験の全体の8割の区間で自動運転走行が可能であった旨の実験報告を行った。実験では、コース上に設定した2ヶ所の信号機の設置場所において、信号機から車両に通信を行い、信号を自動で判断して走行することや、事前に作成した高精度3次元地図データ(3Dマップ)を元に、GPSで取得した車両の位置情報を使用し、走行することにも成功したと伝えられている。今回の実験で課題となったのは、路上に駐停車する車両の回避などだ。本実験においては、車両に同乗するオペレーターが手元のコントローラーを使い、手動で回避操作を行ったとのこと。国土技術政策総合研究所の研究資料(参考 http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn1161pdf/ks1161_06.pdf)を見ると、「手動介入の発生要因の内訳」(2017年度に実施された実証実験13カ所の総走行距離は2,200km、イベント走行を除いた1,740km)における走行データ分析の結果において手動介入の発生は、1,046回。主な要因のトップは「路上駐車(17%)」であり、続いて「GPS等の自車位置特定不具合(12%)」「対向車とのすれ違い(7%)」となる。「路上駐車の手動介入」の発生は沿道状況によるところが大きく、特に人家連坦部(人家が連接または集中している区域)で走行距離10kmあたり、1.8回発生しているという。反対に山間部や田畑においては、殆ど発生しない。2/7に都内で日本自動車会議所が「第1回(2021年度)クルマ・社会・パートナーシップ大賞」(共催=日刊自動車新聞社)表彰式を開催し、大賞に茨城県境町の「公共交通機関の空白地帯における地域住民の手でなしとげた国内初の自動運転バスの社会実装に向けた諸活動」が選ばれた。その席上で橋本正裕町長は、「路上駐車を回避する技術開発は進んでいると思うが、100%ではないと思う。町民の皆様やドライバーが自動運転車を暖かく見守ってくれて、現在の運行状況がある」と事業を紹介している。日産自動車は、昨年9/9に横浜みなとみらい及び中華街エリアにおいて実施した自動運転SAEレベル2相当の自動運転車両を用いたオンデマンド配車サービスの実証実験についての説明会を行っている。「eNV200」ベースの自動運転車両と交通サービス「Easy Ride(イージーライド)」とAIを活用したNTTドコモの「AI運行バス」を組合せ、実証実験を行った。説明会において、日産自動車の常務執行役員 土井三浩氏は「技術的にはこれまで運転席に座るセーフティードライバー、システムを監視するオペレーター、更に(実験)車両の後ろを走る伴走車が必要というのがガイドラインだったのですが、今回はオペレーターと伴走車を排除することが可能なシステムを組んで行います」と、実証実験の内容をアピール。自動運転車のハードウェアについては「相当な数のセンサーを積み、360度見ながら運転するというのはもちろんですが、今回のアップデートの1つがオペレーターレスをやろうということ。コンピュータが熱などでダウンするというところ、それから消費電力が過大になるところを回避して、信頼性の高いハードウェア設計をすることが必要です。それから、EVで運行する場合、コンピュータが過大な電力を食うとそのまま航続距離に繋がっていくということになりますので、なるべく消費電力の少ない設計をするということを考えています。それからオペレーターがいないということは、今までオペレーターがやっていたシステムを監視するという機能をロバストに設計する、ECUに組み込むということが必要ですので、その辺も含めて本当のエンジニアリングをした組込みのECUということで、いわゆるディシジョンメイキングと言われる自動運転の部分をになっています」と解説し「これらにより、路上駐車をしている車両をよけて走る、割り込み車両の動きを予め予測するといった市街地における交通環境に合わせて走行することが可能」と説明している。実験環境の差があることは承知の上で申せば、昨年の実証実験前に岐阜市にこの情報は届いたのだろうか。報道の報ずるニュースも数多あるため、整理が難しい。全国で行われる実証実験の技術的な共有プラットフォームも整備が進み、別な方面では、知財検索データベース登録されている技術については既に検索が可能な世の中。自動運転技術の社会実装への速度に影響するため、情報の整理・共有の重要性が増している。関係情報の調査手段がより一層簡素化され、整備されてゆく必要性を感じる。
車載用カメラの市場規模、2026年には113億米ドル到達予測 他
2月17日 2/16に三菱UFJフィナンシャル・グループ、三菱UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行、三菱UFJ証券ホールディングス、三菱UFJニコス、アコムは水素を燃料として走行する燃料電池バス運営事業者(東京都交通局、大阪シティバス、南海バス)に対して、三菱フィナンシャル・グループを除く5社より寄付を実施した。MUFGでは、燃料電池バスの導入を推進する東京都交通局、大阪府の「令和3年度 燃料電池バス導入促進事業費補助金」の交付決定を受けた大阪シティバスと南海バスに対して、6年間で総額約2億円(企業版ふるさと納税による大阪府への寄付含む)の寄付を実施、これを受け上記のバス事業者は、2022年3月までに合計3台の燃料電池バスの導入を予定している。ちなみに大阪府の「令和3年度 燃料電池バス導入促進事業費補助金」は、2021年8月20日に応募が開始され(~9/20まで)、水素・燃料電池関連分野における今後の取組の方向性を示した「H2Osaka(エイチツーオオサカ)ビジョン」のもと、「水素の需要拡大につながる産業用車両等への水素エネルギーの導入促進や水素社会の実現」に向けた取り組みを推進するものだ。大阪府が交付の条件としたのは、補助事業者(及び運行者)の名前や住所、燃料バスの運行ルート。また事業完了については、令和4年2月28日までにバスを導入し、令和3年度内に運行を開始していること、燃料電池バスの利用実績を書面報告すること、燃料電池バスの燃費、車両整備等のノウハウなど実車運行に関する情報をH2Osakaビジョン推進会議に報告する等、補助金の交付決定後に、「水素・燃料電池関連産業振興に向けた府の施策」に協力すること、本事業における水素の利活用について多くの人に知ってもらえるよう、その取り組みについて積極的な情報発信に努めること。大阪府が定めた補助率は、燃料電池バス本体価格(消費税及び地方消費税を除く)から環境補助金を差し引いた額の1/2。補助上限額は、26,625千円。補助イメージは、燃料電池バス(1台当たりの)車両本体価格が、106,500千円の場合、環境省の補助金53,250千円+大阪府補助金26,625千円+事業者負担が26,625千円と見積もられている。公募の結果、令和3年10月7日に決定した交付先に上記の大阪シティバスと南海バスが選定され、各社に上記補助金が交付されている。MUFGでは、今回の動きを自社のサステナビリティの一角と捉えているようだ。持続可能な環境・社会の実現に向け、パーパス「世界が進むチカラになる」を掲げ、課題抽出を行い、社会からの期待とMUFGの事業領域との親和性の二面を考慮、MUFGとして優先的に取り組む10の環境・社会課題の一つに、環境支援として水素バス支援を設定している。同社ホームページにも、2025年に予定されている「大阪・関西万博」に向けた大阪府の補助事業である燃料電池バスの導入を、企業版ふるさと納税の仕組みを活用し、支援した旨が記載されている。「燃料電池バス」は水素(H2)と酸素(O2)の化学反応により発生する電気を利用し、モーターを駆動させ走行するバスのことで、走行する際、排ガス(CO、HC、NOx、PM、CO2などの有害物質)を排出せず、H2Oのみを排出する。但し、水素の生成にあたり化石燃料を用いるとCO2が排出されるため、風力などの自然エネルギーを用いて水素を作る必要がある。MUFGは「水素・次世代エネルギー」を重点領域と位置付け、今後も「水素サプライチェーンの構築」、並びにその先にある持続可能な社会の実現に貢献するとしている。MUFGの「水素サプライチェーンの構築」などの発言の主旨は、目指すは次世代エネルギーの消費媒体となる燃料電池バス普及を一つの仕掛けとした水素・次世代エネルギーのサプライチェーンの拡大であり、同様に複数の取り組みの結果、サステナブルな社会構築に企業として貢献することだと思われる。万博を控える大阪府にとっての本丸は、SDGsや低炭素社会といった環境・社会への貢献であり、水素社会「H2Osaka」の早期実現、BCP対策、そして「水素・燃料電池関連産業振興に向けた府の施策」の主旨は、多様で厚みある中小企業が集積した大阪産業界の活性化といったところだろうか。「H2Osakaビジョン推進会議」の構成団体は、池田泉州銀行、岩谷産業、一財)大阪科学技術センター、エア・ウォーター、大阪ガス、大林組、オリックス、加地テック、川崎重工業、関西エアポート、関西電力関西みらい銀行、鴻池運輸、堺化学工業、サカイ引越センター、神鋼環境ソリューション、積水ハウス、太陽日酸、大和ハウス工業、竹中工務店、帝人エンジニアリング、東芝エネルギーシステムズ、豊田通商、日本製鉄、パナソニック、日立製作所、日立造船、丸紅、三井化学、三井住友銀行、三井物産、三菱重工業、三菱UFJ銀行、りそな銀行(令和3年4月1日現在)となっている。メンバーを見ても「水素サプライチェーン」という経済的インパクトの裾野の広さが分かる。大阪の産業の振興とともにゼロエミッションが実現されることを期待したい。
「鳥取砂丘」エリアでの自動運転バス「NAVYA ARMA」を活用した実証実験においてWILLERから自動走行に関する一部業務を受託 他
2月16日 国土交通省で、2/17に社会資本整備審議会道路分科会 第77回基本政策部会が開催される。議事は、(1)道路空間の利活用において、(2)自転車利用環境についての2点だ。同政策部会に配布された資料のうち、「自転車利用環境の充実に向けた取り組みについて」がある。近年、各地でのシェアサイクル利用拡大もあって、興味深い。自転車を取り巻く背景としては、新型コロナウイルス感染症(まん延防止)やカーボンニュートラル、大規模災害などが想定されている。レジャー的な利用はどうなのだろう?とも思ったが、お題をよく見ると(道路空間における)自転車利活用空間の形成(同空間のネットワークに関する計画の策定、同空間の量・質の向上)、自転車利活用機会の創出(シェアサイクル、サイクルツーリズム)ということだ。本取組みとしては、これ以外にカーボンニュートラルを始めとする多様な取り組みへの位置付け強化、地域における自転車活用の推進力強化、自転車の効用の「見える化」による自転車人口の拡大などが含まれる。国内においては、コロナ流行後に4人に一人が自転車通勤を開始したとのデータもあるようだ(au損害保険㈱ R2.7アンケート調査)。金沢市では令和2年3月のシェアサイクルの月額会員延数は1,270人/月だった。翌年の令和3年10月の調査では、10,460人/月(8.2倍)、福岡市でも令和2年1月は11.6万回/月であったが、令和3年10月の調査では、40.5万回/月(3.5倍)であった。コロナ禍で公共交通機関の混雑を避け、利用ニーズが高まっている様子が伺える。欧州などでは、このニーズを契機として、自転車通行空間の整備や自転車の修理・整備、安全利用のための講習などソフト対策により、自転車の活用を促進する動きがある。パリでは「コロナピスト」(ピスト=走路)を52km設置し、2021年10月には「Plan vélo 2021-2026」(vélo=自転車)を発表、130kmの自転車道と390kmの自転車専用車線の整備なども打ち出している。ロンドン交通局では、「London Streetspase Plan」を作成、自転車通行空間を整備、英国運輸省は、約330億円の緊急資金の一部を活用すると発表、結果として約100kmの自転車通行空間が整備された。ドイツの切り口は、カーボンニュートラルであった。「ベルリンのエネルギーと気候保護プログラム2030(BEK2030)」を策定し、2019年には1990年比で41.1%のCO2排出を削減、予定よりも早い2020年に目標である40%削減を達成している。自転車通行空間の拡大やシェアサイクルの拡大、公共交通等との連携によるマルチモーダルの推進は、この総合的な施策の中の一角をなしている。視点を国内に戻すと、東日本大震災の際、鉄道の運行停止やガソリン不足により、被災地域の交通に甚大な影響が出たことは記憶に新しい。都内でも多くの帰宅困難者が発生した。この経験から、災害時の交通機関として自転車の有用性が認められたものの、2021年に関東地方で震度5強の地震が起きた際には、都心のポート(街中にあるシェアサイクルの拠点)は空の状態が続く結果となった。これらの経緯から国では、政策として自転車利用環境の更なる整備を急ぎたい意向があった。このことから令和3年2月には「東京23区における直轄国道の自転車通行空間の整備計画」では、直轄国道の放射軸路線のうち、約104kmを整備検討対象区間に位置付け、令和3年5月28日の閣議においては「第2次自転車活用推進計画」が閣議決定されている。計画の策定は、DID(人口集中地区)の広さに比例してするが、最も広いグループであっても半数は未策定、自転車事故の件数に比例しているが最も広いグループであっても8割は未策定(R2警察庁交通事故オープンデータより)との現状がある。対象となる自治体の未策定理由は「整備できる空間がないから」「他のプロジェクトを優先したいから」などが上位だ。自治体では自転車の効用等に対する市民の認識を高め、地域における自転車施策のプレゼンスを向上させる必要がある。道幅のない場所では、街渠(側溝)を平坦化、コンパクト化したり、利用率の低いパーキングメーターを撤去したり、車線の幅を減少させると共に制限速度を40→30kmに変更したり、路側にゴム製ポール等による路上駐車対策を施すなど、工夫を凝らして自転車通行空間の幅を確保している自治体もあるようだ。冒頭の資料によると、全国のシェアサイクルの本格導入都市は164(令和1年現在)。導入目的は「観光戦略の推進」「公共交通保管」が多く、ポートの設置は公共用地:民地が4:6である。先進国と比較した場合、ポートの密度は小さいためシェアサイクル利用を高めるには、ポートの拡大設置が求められる。自治体の関心の高い「サイクルツーリズム」を活用した地域振興、観光振興を活用する取り組みとして令和元年9月に「ナショナルサイクルルート」制度が創設され、これまでに6ルートが指定された。「つくば霞ケ浦りんりんロード」「ビワイチ」「しまなみ海道サイクリングロード」「トカプチ400」「太平洋岸自転車道」「富山湾岸サイクリングコース」である。今後の「更なる取り組み」の方向性については、カーボンニュートラルを始めとする、防災、まちづくり、安全、観光、健康福祉等施設への自転車施策のビルトインによる地方公共団体における自転車施策のプレゼンス向上、多方面の財政補助活用、継続的な地方公共団体の人材育成・ノウハウ蓄積(育成プログラムの開発・実施、ガイドライン、手引類の充実)、利用者となる市民の「乗る気スイッチ」を入れる機会の創出(拡大)がある。「乗る気スイッチ」は、サイクルツーリズムによる地域振興、自転車通勤促進による交通環境向上、健康促進に伴う福利厚生効果、免許返納後の交通手段確保等の効果を「見える化」し、有効な自転車人口を拡大するとされている。「観光資源が乏しい」とのぼやきも上がりそうだが、諦めるなかれ。全ての自治体に道はある。「ナショナルサイクルルート」の各地Webサイト(一部アプリ)も整備され、イベントなども開催される段階となった。次段階として、自転車保険の導入、生命保険などの予防・健康づくり・保険者インセンティブ等との連携や、MaaSアプリ(宿泊や地元交通機関の利用、地元小売店の利用)等との連携も進むのではないかと思われる。今年も引き続き「コロナを避けて」となるが、観光シーズンの到来は間近だ。