2月15日 山梨県の東部、リニアモーターカー実験線の拠点基地「山梨県立リニア見学センター」を有することで、その名が全国に知れ渡る都留市。同市のホームページにおいて、2022年2月3日更新時点の人口は、29,465人(参考:平成24年7月9日の法改正により、平成25年度からは外国人を含む)とやや小ぶりだが、公立大学法人都留文科大学、私立健康科学大学看護学部、県立産業技術短期大学都留キャンパスなどを擁し、人口に対して学生比率(学生は約3,000人)の非常に多い都市と言える。このため大学は市民に向けた聴講生制度や講座、イベントなどを多く開催している。市では、平成27年10月に学生を含むすべての市民に生涯学習や産官学民の地域交流の場を提供するため、「大学コンソーシアムつる」なども設立している。戦国時代には武田信玄に仕えた小山田氏により、城下町として始まった。江戸時代には、郡内縞(山梨県郡内地方特産の絹織物の縞海気のこと、夜具地や羽織の裏地として用いられる)の産地として名を馳せ、松尾芭蕉も逗留したという。毎年開催されてきた(令和3年はコロナのため中止)「八朔祭り(おはっさく)」や「お茶壷道中」(徳川家御用達の京都宇治茶を江戸城まで運んだ行列をお茶壷道中行列という)など往時の大名行列を再現した祭りが今でも行われ、各地からの観光客でにぎわう。この都留市で、2/21(月)~3/15(火)まで一風変わった実証実験が開かれる。全国で実施されているMaaSや自動運転の実証実験を俯瞰すると、高齢者の運転免許返納後の移動サービス、通院のための移動サービスを支援することを目的に織り込むケースが多いが、同士で行わる実証の対象は「学生」だ。「循環型ライドシェアローカライド(カーシェア)」と命名された本実証は、MaaS/物流サービス開発・研究のPathfinder㈱と、同市官民連携まちづくり法人「一般社団法人まちのtoolbox」により実施される。学生が多いことは、地域の活力向上や経済面での影響も大きいため、学生にとっても生活し易い環境整備が必要となる。しかし都留文科大学の学生にアンケートを取ったところ、現在は「移動が不便で、街に出る機会があまりない」といった声も寄せられている。学生のアルバイト先は「アルバイト先からの送迎がセットになっているから」との理由で、主に近隣となる富士吉田市、大月市となっている。このような背景から、学生を地域の活力に繋げるため、学生の移動ニーズに応え得る、学生主体で持続可能なモビリティのあり方が検討されることになった。実証実験では、①循環型ライドシェアと②ローカライド(カーシェアリング)の二つの移動手段が提供される。①は学生アンケートの結果、要望の多かった市内の7スポットを巡回するモビリティサービスだ。特長は学生の利用が多い「LINE」で予約・乗車が可能になる点と、乗客と「ドライバーが学生」となることだ。乗車には「ライドポイント」と呼ばれるポイントが必要となる。同ポイントは、利用登録時に2ポイント、毎週配布2ポイントとなり、自身がドライバーとなると1回10ポイントが付与される仕組みだ。ドライバーになるとポイントが多く付与されることで、「運転」と「乗車」を活性化させ、持続可能なサービス循環を構築する。なお、ポイントは友人間でプレゼントすることも出来る。②は、学生が格安で利用できる予約型のカーシェアリングシステムとなる。オンラインフォームで申込予約~返却まで非接触で利用できる。①で獲得した「ライドポイント」は1Pを100円分として利用でき、①のユーザーに大きなメリットがある。※ポイント利用以外にもクレジットカード決済も可能だ。本実証に提供される車両は、①用が1台、②用に2台が割り当てられているが、こちらはうち1台については、平日は①用に使用される。MaaS導入を検討する各地の自治体にとって「事業化」は喫緊の課題だ。「学生自身にドライバーを委ねる」判断は、或いは議論を要するのかも知れないが、学生は免許を有する社会人であることも確かだ。大学キャンパスを擁する自治体であれば、持続可能な移動サービス実現に向け、都留の実証実験は注目に値する実験と言えるのではないか。*写真提供:やまなし観光推進機構
MaaS・CASE関連の最新ニュース(9 / 65ページ目)
自動運転タクシー、桑名で初の実証実験 ゴーグルつけ試乗 三重 他
2月14日 各地の公共交通で沿線の配送需要・他を取り込もうとする動きが活発化しているように見える。①JR東日本の宇都宮線では、2/11~2/13まで、沿線となる栃木県壬生町産のイチゴ「ロイヤルクイーン」を小金井駅から普通列車に積み込み、都心側となる浦和駅で販売された。この取り組みは、JR東日本大宮支社初、在来線の列車荷物輸送により実現されたものだ。②同じJR東日本の水戸支社においては、JR東日本スタートアップ㈱、小型閉鎖循環式陸上養殖システムの設計・開発・製造及び付帯サービスの開発と提供を行う㈱ARKと協業し、JR浪江駅で食用に広く使われるバナメイエビの養殖を始めた。駅舎脇に小型の養殖場を設置した。3月中旬よりバナメイエビの稚魚の養殖をスタートする。まずは飼育したエビの出荷方法や、システム稼働の安定性を実証する。販路としては列車での荷物輸送を活用し、育成したエビをエキナカ店舗で販売する等を検討しているという。本取り組みは、JR東日本グループが持つ遊休地の活用、小型閉鎖循環式陸上養殖による安心安全な地産地消モデル構築を行うことで新しい地域産業の創造を目指し、再エネ使用による同養殖システムによるゼロエミッションへの挑戦を通し、持続可能な水産資源の未来を目指しSDGsへの貢献にも推進する。③JRバス関東では、1/28~2/5までJR館山駅で「貨客混載」の実証実験を試みたようだ。路線バスと高速バスを接続し、産品の輸送を試みる。地元農漁業者と地域内外5店舗が参加した。店舗からの発注を受け、当日の朝便に各地の生産者が産品を積載する。積載した産品は一旦館山駅に集められ、市内のレストランや居酒屋に配送される。また当駅から高速バスに産品を積載し、中野区内のレストランや花屋まで同社の車両で配送した。この取り組みはJR東日本とJRバス関東のモーダルシフトの取組みの一環(新幹線や在来線特急を活用)として行われたものだ。JRバス関東においては高速バスを活用し、野菜輸送なども推進している。④昨年末には、JR東日本とJRバス関東が、北海道函館市で朝水揚げされた鮮魚類を、新函館北斗駅から、新幹線と高速バスを利用(「輸送サービス『はこビュン』plus」)し、千葉県館山市内のホテルへ同日輸送する実証実験も行われている。JR東日本は、2017年7月からこの取り組み(新幹線による輸送サービス)を始め、昨年10月5日に列車を活用した輸送サービスのビジネス化を目指し、前述した「はこビュン」を開始した。新幹線の定時制と速達性、環境性(脱炭素)を活かし、単なる物流改善の視点だけでなく、SDGs対応やESG投資など、投資家・企業・顧客の三方良しの視点を織り込んだサービス展開と読める。JRは新幹線の車販準備室だけでなく客室の一部のスペースを割り当て、一列車当たり100箱程度の輸送量を見込む。またJR北海道やJR西日本と連携し、函館や金沢から新鮮な商品の輸送を可能とし、下り列車においては、反対に首都圏から地方への商品輸送需要の取り込みを目論む。また自社の「エキナカ」の商品充実、一次産品だけでなく、精密機械や医療品の輸送も検討する。反対に地域への貢献として「エキソト」への物流拠点としても駅を活用してもらうことを検討している。これらサービスは、新幹線から在来線特急に横展開が可能だ。伊豆半島方面からは「踊り子」、長野・山梨方面からは「あずさ」、宮城・茨城方面からは「ひたち」などの活用が想定されている。同社管轄・連携する各社の発地だけでも、東京、仙台、盛岡、新函館北斗、新潟、金沢(今後は順次拡大予定)など、そうそうたる産地が並ぶ。*サービスは㈱ジェイアール東日本物流との契約となる。荷主からは他にはない物流手段として、取引先への新規開拓に活用、輸送規模の拡大を検討する、市場流通より2-3日早く店舗納品が出来る、エンドとなる小売店などからは、「朝どれ」は売れ行きがいい、高鮮度が顧客に伝わるなどの声も上がる。新幹線であるか否かを問わず、鉄道の持つ物流、都市間ネットワークの力が再起動している。鉄道の資源(両輪)である「旅客と物流」は、国鉄民営化によりJR旅客鉄道各社とJR貨物に分断された。そこに新幹線ネットワークの拡充に拠る並行在来線問題、高速道路による物流網の発達、モータリゼーション、超高齢化社会による運営者不足、利用者減少が追い討ちをかけたのが、昨今の鉄道経営の姿だ。先の「はこビュン」の価格(東京⇔仙台間、東京⇔新潟間)は、最小1号ボックス(35×25×4.5、3Kgまでで1,010円)~最大5号トランク(52×38×27、30kgまでで4,450円)也。この送料が利用者に取ってお得と映るか、高めと映るか。安定輸送や定時配送の力が市場に評価される場面でもある。国交省では、2/14に「第1回 鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する討議会」が開かれる。各地のローカル鉄道が危機的状況にある中で、鉄道事業者と沿線地域が危機意識を共有し、相互に協力・協働しながら、改めて利用者視点に立ち、地域モビリティを刷新していく取組を促す政策のあり方を議論する有識者検討会として、議論を尽くすことが期待される。起点は様々であるが事業者側でも鉄道を活用した物流需要を、再度取り込むべく努力が続く。赤字ローカル線を廃線にし、バス転換したバス路線がなくなる時代。同省自身が取り組んで来た「MaaS」を現実に即して検討し、事業化可能な仕組みに昇華させる良い機会だ。
【国内初】スマートシティ実現に向けて5Gを活用した自動配送ロボットの公道配送実証を実施 他
2月10日 ティアフォー、川崎重工、KDDI、損害保険ジャパン、小田急電鉄、ホテル小田急、一般財団法人公園財団の7団体が1/22~2/10まで西新宿エリアで自動配送ロボットが5Gを活用し、公道を走行する配送の実証実験を行っている。2/3以降は自動配送ロボットの自律走行を遠隔監視・操作する実験も加わる。本事象実験は東京都の「令和3年度西新宿エリアにおける5Gを含む先端技術を活用したスマートシティサービス(5G等活用サービス)実証事業」に採択されている。7団体は、人の移動に加え、モノも自律的に移動する自動配送サービスプラットフォームの構築を検討している。都では本事業を行う目的として、西新宿エリアを全国に先行する5G等活用サービスの実証エリアとすること、5G等活用サービスの有用性を多くの都民に知ってもらうこと、都内において5G等活用サービスの事業化を促進することを上げ、助成として経費の一部を補助(補助率2分の1以上、上限4千万円)を用意し、実証を進める。同事業に参加する事業者は「西新宿スマートシティ協議会」と連携する。同協議会は令和2年5月に都が一般社団法人新宿副都心エリア環境改善委員会、新宿区及び通信事業者等と設立した団体で、デジタル技術を活用したエリア課題の解決を進め、この街に関わるQOL(デジタルサービスによる生活の質)の向上を図ることを目的としている。協議会の構成員は、東京都(デジタルサービス局/都市整備局/産業労働局)、一社)新宿副都心エリア環境改善委員会は、小田急電鉄、工学院大学、住友不動産、損害保険ジャパン、大成建設、東京瓦斯、東京ガスエンジニアリングソリューションズ、独立行政法人都市再生機構、地元自治体として新宿区、通信事業者としてNTTドコモ、KDDI、JTOWER、ソフトバンク、東日本電信電話、楽天モバイルである。事務局は東京都の戦略政策情報推進本部ICT推進部が担っていたが、現在は、東京都デジタルサービス局デジタルサービス推進部/一社)新宿副都心エリア環境改善委員会となっている(同協議会のWebサイト「NISHI-SHINJUKU SMART PROJECT」より)。都のWebサイト、5G CONNECTED CITY 西新宿2022 つながるまちと新たな生活(https://5g-connected-city.metro.tokyo.lg.jp/)のDX PROJECTを拝見すると、現在、都が推進する5G×DX事業が紹介されている。今回、西新宿エリアで行われている「自動配送ロボットが5Gを活用し、公道を走行する配送の実証実験」も含まれる。東京都では「TOKYO Data Highway基本戦略」に基づき、令和元年11月8日から「TOKYO Data Highwayサミット」(都と上記の通信事業者が超高速モバイルインターネット網の早期構築に向け、官民一体となり取り組むべく開催される都と通信事業者の認識の共有、意見交換などを行う会)を開催してきた。折しも、この1/21にも、令和3年度のサミットがオンラインで開催されたところだ。第一回サミットの後、「スマート東京・TOKYO Data Highway戦略推進協議会」が設置され、宮坂学氏(現・東京都副知事)の名前で、同協議会提出資料「スマート東京実施戦略~東京版Society5.0の実現に向けて~」(令和2年2月12日)が発表されている。本資料の3本柱は①「TOKYO Data Highway」②「街のDX」③「都庁のDX」だ。都を突き動かすのは、東京や日本を世界の諸都市と比較べた際の、都市全体のデジタル化が遅れだ。資料では、この状況を打開するため、DXを加速度的に推進する必要があることが述べられている。都は①に対し、TOKYO 2020大会時の5G、Wi-Fi環境の整備、都保有の「アセット」の積極的な開放、②については3つのシティ全てで、デジタルシフトを推進、3つのシティの実現を支えるデジタルツインの推進、③に対し、働き方のDX、行政サービスのDXを令和2年度の施策として掲げていた。ちなみに令和2年度の予算は158億円だが、「将来」の財政需要に備え、スマート東京推進基金(仮称)を設置し500億円(*資料に期間は記載されていない)を投入するとしていた。東京都は「つながる東京」実現(5Gアンテナ基地局等の設置促進)のため、既存の4G基地局67局を、都が保有する「アセット」(15,033件の土地や建物)を開放し、基地局数を約230倍にしようと構想している。想定された「アセット」の中身は都道(約2,200km)、橋梁(約1,200橋)、公園(約2,000ha)、バス停(約400個所*上屋付き/電気設備有)、地下鉄(106駅)、信号(約1万6千基)、地下道、地下街、街灯(約17万本)等である。これら「アセット」には、今後5G搭載のスマートポールが含まれる。スマートポールは、5Gアンテナや高速Wi-Fiはもちろん、人流計測カメラや環境センサーが設置されたポールやデジタルサイネージのことであり、自動配送ロボットや自動運転車両へのV2I(vehicle to infrastructure)となる。西新宿には既にスマートポールやサイネージがJTOWERや東京電力パワーグリッド、東日本電信電話などにより複数個所に設置・運用が開始されている。視点を変えれば、先頃から西新宿で行われている自動運転車両や自動配送ロボットの実証実験は、都の「アセット」活用のPRとも読むことが出来きるし、これらの「アセット」から収集されるデータを「21世紀の石油」と捉えるなら、スマホや自動運転車両に次ぐ新たな「油田」の誕生と読むことも出来る。
あいおいニッセイ同和損保の運転挙動取得技術を活用しレンタカーを利用するドライバーの安全運転促進に向けた実証実験を開始 他
2月9日 この2/7(月)に関西電力とWILLERが、次世代モビリティ事業及び関連ビジネスを展開するために必要となる企画開発・実施に関する業務提携を結んだ。国内における人口減少や少子化、高齢化に伴い、地域社会・交通の維持が困難となる現在、持続可能なモビリティサービスと、2050年のカーボンニュートラル達成に向け、モビリティの電動化や再エネ活用の重要性は増す一方だ。WILLERは、現在注力しているAIで運行経路を設定しながら、指定エリア内を巡回する相乗りサービス「mobi」についても、今後の電動化を検討中だ。「mobi」は現在東京の渋谷区や豊島区、名古屋の千種区、京都市の北端にある京丹後市などで、移動サービスを提供中だ。毎日の通勤・通学に、ママ友とのお出かけに、お子様の塾や習い事の送迎に、定期的な通院や家族のお出かけにも利用できる。渋谷エリアの料金は、家族一人目が、30日間5,000円、乗り放題(月~日の朝7:00~夜10:00)、二人目からは30日間500円だ。またスポットでの利用は大人300円、こども150円となる。関西電力は、モビリティサービスにおいて、再生可能エネルギーやワイヤレス充電等のエネルギー供給、最適化マネジメントのシステム開発に取組み、エネルギー×モビリティビジネスを推進している。モビリティの運行とエネルギー供給の最適化を検討する。関西電力は、2030年代に国内外の再生エネルギー電源の設備容量600万kWを目指し、開発を進める。2050年に向けては、再生エネルギーを含めたゼロカーボン電源や水素の取り組みを通じ、ゼロカーボン発電電力量国内No.1、2013年度比でCO2排出量半減を実現するとしている。再生可能エネルギーとは、石油や石炭、天然ガスなどのいわゆる化石燃料とは違い、太陽光や風力、地熱といった地球資源の一部など自然界に常に存在するエネルギーのことだ。ちなみに関西電力は、2020年2月に変圧器大手、EV充電システムの㈱ダイヘンと万博記念公園で次世代モビリティサービスの実証実験を行い、電動カートのオンデマンド予約サービスとともに、太陽光発電搭載ワイヤレス充電システムによる充電を行い、次世代モビリティと再エネ、ワイヤレス充電などの有用性について感触を得ている。ちなみに同社には、VPP(バーチャル・パワープラント・仮想発電所)と呼ばれる顧客の設備を活用し、顧客側のアクションで生み出したエネルギーを束ね、発電所に見立てて利用、電力の安定供給に向けた取組みがあり「K-VIPs」と呼ばれるデマンドレスポンスの状況が分かる可視化システムを構築している。VPP(仮想発電所)に参加した顧客は、制御される顧客設備の容量(kW)や制御された電力量(kWh)に応じた報酬を受け取ることが出来る。鉄道や車には「回生ブレーキ」という仕組みがあり、車両が減速・停止しようとして、ブレーキをかけるとモーターが回転する軸の運動エネルギーを電気に変換する(ブレーキ時にモーターが「発電機」になる)ことが出来る。発生した回生電力は蓄電池に一時的に貯蔵し、貯蔵しておいた電力を再利用することが出来る。またEV車両(「mobi」)は蓄電した電力を必要に応じて、VPP統合プラットフォームシステム(「K-VIPs」)経由で、電力会社に提供することができるようになる。ちなみに小田急電鉄は2018年5月からこの仕組みを導入、地下区間での大規模停電に備えるとしている。今後、WILLERの「mobi」が順調に軌道に乗り、使用するEV車両数が増えれば、同社は関西電力のVPPの利用者であり、電力提供者になる可能性がある。
損保ジャパンら、レベル4自動運転サービス向けの自動車保険を開発 他
2月8日 公共交通が弱体化した地方自治体内に新たな交通サービスである「MaaS」を持ち込めば、高齢者の外出機会が増加し、健康づくりに寄与、その結果街の経済も潤うとのグランドデザインが自治体やMaaS関係者にあることは否定できない。一方、MaaS提供者からは「MaaSは万能ではない」との声も聞かれる。どちらの言い分も正しいように思えるが、実際のところはどうなのだろう。免許返納した高齢者に医療施設までの交通手段を提供すれば、どの自治体においても、利用される事は、ほぼ確実だ。実際に全国で行われる実証実験では「グリーンスローモビリティ」と呼ばれる低速の電動カートを実証実験用にカスタマイズした車両やオンデマンド型のモビリティを走らせており、メディア上で高齢者が車両に乗り込む写真を見かける機会も増えた。グリーンスローモビリティとは、時速20㎞未満で公道を走ることが出来る電動車や短距離の移動サービスのことだ。自治体は、赤字ローカル線や赤字路線バスに代わる、新たな移動手段を多額の費用をかけて導入、中長期的に維持するモデルを築く必要があるため、「待ったなし」の状況においても導入前にその「効果」を見通したいのではないかと思われる。千葉大学予防医学センターとグリーンスローモビリティのメーカーでもあるヤマハ発動機は、2021年10月11日に低速モビリティによる移動が健康に寄与するかを検証するため、共同研究に関する契約を締結している。千葉大学予防医学センターは、健康な身体、健康な心、健康な環境を三本柱として生活習慣病や心の病、環境がもたらす健康影響などを事前に予防する「予防医学」の研究・普及を図っている。千葉大学大学院の、先進予防医学共同専攻社会予防医学の近藤克則研究室では、2021年10月1日に「電動カート導入による高齢者のQOL向上・介護予防・社会保障費抑制効果の評価等に関する研究」を発表している。研究は、電動カート導入前後の高齢者の健康、暮らしの状態を比較し、電動カートによる介護予防効果を明らかにすることを目的としており、介護予防効果が検証できれば、適切な高齢者の移動支援を推進できるとしており、研究の方法として電動カート導入の前後に利用者にアンケート調査に回答してもらい、電動カートの利用情報などを分析するとしている。併せて、説明会に参加したデバイスにより位置情報、活動量、歩数分析などを行う。今回の実証で取得された個人情報が匿名化されアンケートは、一般社団法人新情報センター、電動カート利用状況は、NTTテクノクロス株式会社が分析用データに加工。分析されたデータと電動カート利用情報は、日本老年学的評価研究機構、千葉大学予防医学センターに、位置情報計、活動量計から取得した活動範囲、歩数、活動量は、千葉大学予防医学センターで取り扱う。研究で取得したアンケート、電動カート利用状況、歩数、活動範囲、活動量を結合したデータは、千葉大学予防医学センターが分析、結果をヤマハ発動機株式会社に提供する流れだ。国交省では、令和3年度にも「グリーンスローモビリティの活用検討に向けた実証調査支援事業」を継続し「実証調査地域を募っている。同省の「グリーンスローモビリティの導入と活用のための手引き」を拝見すると、Green:電動車を活用した環境に優しいエコな移動サービス、Slow:形式を楽しむ、生活道路に向く、重大事故発生を抑制、その他:同じ定員の車両と比べて小型、開放感がある、乗降しやすいなどの車両の特徴が説明されている。資料においては、車両は4人乗り~16人乗り程度までの車種なども紹介されており、同省の政策コンセプトでは、従来の公共交通の補完、運転手と乗客同士、乗客と歩行者などのコミュニケーション、「福祉面でのお出かけ支援」、地域の賑わい創出、観光客の満足度向上、高齢者の見守り、地域防災・防犯のための絆の強化などの様々な「副次的効果」が期待されている。導入のゴールとしては、低炭素型・脱炭素型の持続可能な交通、持続可能な地域社会の実現などが想定されるとともに、地域はこれらをバス・タクシー事業として、自家用有償旅客運送、自治体による無償運送やボランティア輸送など運送の対価を取らない形などの事業形態で導入することが想定されている。前述の千葉大学予防医学センターの実証実験により、副次効果の中に新たに「介護予防効果」が加わり、利用者となるシニアに好意的に受容されれば、自治体へのグリーンスローモビリティ導入に、一層弾みが付くものと思われる。*画像(国土交通省) (https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/content/001405966.pdf)を加工して作成
高蔵寺ニュータウンで貨客混載型の自動運転×MaaS実証実験を実施 他
2月7日 愛知県春日井市で 2/1~3/11まで、春日井市と国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学と㈱KDDI総合研究所(以下、KDDI総研)が、自動運転車「ゆっくりカート」による人の送迎に加え、貨客混載型の自動運転×MaaSの実証実験を始めた。昭和43年に街開きをした高蔵寺ニュータウンは、初期の入居者が高齢期を迎え、人口減少、高齢化率の上昇に直面しており、地域内では坂道やバス停までの距離の長さにより外出機会の減少が起こるとともに公共交通サービスの衰退が課題であった。「高蔵寺スマートシティ推進検討会」は同地区を対象地区に設定、①新たなモビリティサービスの導入による移動支援、②拠点から核施設へのシームレスな移動、③バス専用レーンの整備、④交通社会ダイナミックマップの活用など、新技術やデータ活用を伴う都市や地域の課題解決に取組んできた。①では、公共施設にEVの基地を整備したり、自宅~バス停といったラストマイルの移動に「ゆっくり自動運転」などのサービスを展開、ニュータウン版MaaSアプリを用意し、配車予約なども実現させて来た。②では、商業施設等に相乗りタクシー乗り場を設置、自動運転サービスからのシームレスな移動を提供したり、MaaSアプリでオンデマンド対応を図り、配車オペレーションや需要予測にダイナミックマップを活用して来た。③地域の基幹バス路線は自動運転バスにより、運転手不足を解消、専用レーンにより、高頻度・低遅延のバスによるモビリティサービスを展開し、④ではクラウドやエッジ、組込みを有機的に連携した共通プラットフォーム設け、車両位置の共有、タクシーの配車効率化や自動運転車両の後譲り機能などに活用しているようだ。2019年には、ラストワンマイルの自動運転実証実験を1ヶ月に亘り展開、相乗りタクシーのMaaSアプリによるオンデマンド対応など、ユニバーサルタクシーとしてのサービス高度化にも取り組んで来た。今回の実証実験では「貨客混載型自動運転」に焦点を当てた。128箇所の停留所間をユーザーからの乗車・配達注文の予約に応じルートを決定「ゆっくりカート」を運行する。背景として近年では冒頭の課題以外に、運転免許証返納後の移動手段の確保、米や飲料水など買い物後の荷物を伴う移動に不便を抱える方も増えている等の事情がある。また、これは高蔵寺に限らずMaaSの移動実験を行う、殆どすべての自治体において新たな移動サービスを立ち上げ維持するためには、運賃収入や公費の補助以外に、これまでにない新たな収入源を育てるとの課題がある。本実証実験では、KDDI総研が2021年6月に開発した複数予約の運行経路設定や相乗り調整を自動で行う運行管理システムをさらに改良し、このシステムに「配達機能」として商品注文から、自動運転車予約までの自動化および、「人」と「商品」で優先度を変えた運行制御を追加することで、「車両稼働率」の向上を図る他、受容性の分析やビジネスモデルの検討を行う。人の送迎と商品の配達という配車要件の異なる移動サービスを組合せ、きめ細やかな停留所の配置により、住民の自宅近くまでの送迎・配達をオンデマンド型の自動運転で実現するという、新たな試みを行う。実際に実験には、商品配達サービス対象店舗として、生鮮食品を扱う地域のスーパーや、ドラッグストアが設定されている。KDDI総研の運行管理システムは、人の送迎・商品の配達に関して、異なる時間的制約を設け、配車調整、運行経路の設定を行い、ゆっくりカート内に設置された自動運転システムへの登録といった機能を自動化する。これにより人の乗降を優先し、その合間に商品を配達するといった効率的な運用を目指す。ルートについては、人と人、人と商品、商品と商品のような複数パターンの相乗りを考慮し、各種の制約条件を満たした上で、走行距離が最短になるよう、巡回ルートの自動調整を行う。「人と商品」を対象に「優先度」が異なる制御を行いながら、「複数予約に基づく相乗り調整」を含めた「運行経路の自動登録」を行うシステムは、自動運転車向けには初めてとなるという。今回の自動運転車両は、レベル3で運行されるが、車両オペレータが乗車し、停留所間は自動運転、停留所から自宅間は手動運転となる。本実証実験は、KDDI総研の運行管理技術の腕の見せ所でもあるが、各地の自治体としても、技術・路線維持の見地からも注目度の高い実験となろう。*写真は坂道のある住宅地のイメージです。
MaaS 九州で拡大 住民、観光客取り込む…鉄道、バス 交通事業のライバル連携 他
2月4日 連日痛ましい交通事故のニュースは絶えない。除雪車と歩行者の事故、タイヤ脱輪、登校する子供たちの列に乗用車が突っ込む、右折の際の巻き込み、ボールを追いかける子供の飛び出し、対向車などドライバーの死角から突然の歩行者が現れるなど、事故パターンは様々だ。電動スクーター(電動キックボード)が、歩道を走行出来ないとのルールも当然のように思える。車道の左端を走る15km~20km程度の自転車や電動モビリティばかりでなく、低速モビリティ(次世代電動車いすや母親を自動追尾するベビーカー、配送ロボなど)が歩道を往来する日もそう遠くない。国土交通省で、令和3年3月30日に開かれた令和2年度 第3回車両安全対策検討会の資料「第11次交通安全基本計画【概要】」を拝見すると、令和2年度の24時間以内死者数は2,839人(376人減(11.7%減))、死傷者数は372,315人(92,675人(19.9%減))であり、4年連続で戦後最少を更新している。これらを踏まえ、第11次目標は令和7年までに死者数を2,000人以下、重症者数を22,000人以下に設定している。歩行者の保護は喫緊の課題と言える。いわゆる「V2P(Vehicle to People)」の領域の話である。ホンダは、AIによる「知能化運転支援技術」や通信技術(人とモビリティ・インフラが通信でつながる)を活用し、「2050年に全世界でホンダの2輪・4輪の関与する交通事故の死亡者をゼロ」の実現を目標に掲げる。同社は、2020年代前半までに、fMRI(*磁気共鳴機能画像法:脳が機能している活動部位を、血流の変化から画像化する方法の一つ)を用いた独自の脳活動とリスク行動解析によるヒューマンエラーの要因解明や、ドライバーモニタリングカメラや運転操作から、運転中に生じるミスの予兆を推定したり、一人ひとりのミスを軽減し、不安を感じることがない移動を目指すなど要素技術の確立し、2020年代後半の実用化を目指している。ホンダの初手は「Honda SENSING 360」を2030年に先進国で販売するすべてのモデルに展開すること。そして順次、二輪検知機能の適用拡大やADAS機能の更なる進化に取組むとしている。同社が2021年11月に発表した「知能化運転支援技術」とは、人の行動や状態を理解する技術に加え、ADASセンサー/カメラを用いて周辺リスクを把握することで、AIが運転リスクを検出するとともに、最適な運転行動をリアルタイムで導き出し、それぞれのドライバーの認知状態と交通シーンに応じた適切な運転支援を行う世界初の技術のことだ。具体的な支援技術の中身は、①運転操作アシスト(AIによるフラつき低減、操作遅れ防止)、②見落とし、予知予測ミスをさせない(視覚・触覚・聴覚でリスク伝達)、③漫然運転によるミスをさせない(眠気や疲労の軽減)など。ドライバーにヒューマンエラー起こしにくい環境を提供するなどだ。これらは、メーターパネル上のリスクインジケータや、立体音響、シートベルト制御、バイオフィードバック(シートからの振動で漫然運転を抑止)などのハード(装備)を通してドライバーに提供(伝達)される。同社の安全に対する視点は、自社の顧客となる「車上の人」ばかりに非ず、すべての交通参加者に注がれている。その技術のもう一端は「車両周囲の歩行者などとの通信技術」にある。ホンダはドライバーを含む、すべての交通参加者の個々の状態や周囲の環境を「システム」で理解・認識し、通信によりリスク情報をサーバに伝達、仮想空間上の交通環境でリスクを予測し、導き出された最適な支援情報を交通参加者一人ひとりへ配信することで、未然にリスク回避行動を促す仕組みを構築し、2020年代後半の標準化を目指すとしている。ホンダの「安全・安心ネットワーク技術」は、自車周辺の路側カメラ、車載カメラ、スマートフォンの情報を通じ、検知した交通環境に潜むリスクをサーバに集約し、仮想空間上で個々の交通環境を再現、リスク回避できる支援情報をフィードバックさせる仕組みだ。日時や位置、地図情報を併せ持つスマート・ウォッチや、園児や児童たちが失くさずに携帯できるキーホルダー型やネックレス型、靴への埋め込み型GPSなどが、ホンダの想定するネットワークに繋がり、全ての交通参加者が安全に利用できる交通環境が整う日を期待して待ちたい。
電動スクーターの歩道走行といった危険運転を自動で禁じるテクノロジーをSuperpedestrianがまもなく実装 他
2月3日 2013年に創業者がMIT(マサチューセッツ工科大学)からスピンアウトして創業した米国のSuperpedestrianは、次世代のマイクロモビリティを構築する。チームには、エンジニア以外に都市計画家、デザイナー、会計士、作家や機械工を擁する。Webサイトにも「安全第一」を掲げる通り、安全を最優先事項として扱う(掲げるスローガンとしては、極めてオーソドックスな?)先端企業だ。同社は、すべての人(最も脆弱な道路利用者)、つまり歩行者と障害者の安全を確保するため、すべての車両やサービスを構築している。特に注目したいのは、同社のスクーター(電動キックボード)には、歩道の自社以外の乗り物や駐車ミスなどの行為を検出し、防止する「歩行者防衛(Pedestrian Defence)」を備えている点だ。「ビークルインテリジェンス(VI)」と呼ばれるアクティブセーフティシステムは、常時勤務の機内整備士(オンボード・メカニック)のように、車両を安全に動作する状態を維持し続ける働きをする。車両の自己検知システムは、問題発生の予兆を熱的、電気的、機械的異常として検出し、修正する。これにより、コンポーネントの故障を防止、車両寿命を延ばすとともに、各スクーターは、ユーザーの走行前に安全に乗車できるようサポートする。これらの車両電子システムは、エンドツーエンド暗号化を使用し通信を行う。この通信手段により、ハッキングを防止し、ユーザーのプライバシーを保護するとともに、バックヤードで走行を支えるエンジニアリングチームが、グローバルなフリートから詳細なライブデータに安全にアクセス出来る環境を持つ。前述の「VI」のおかげで、各車両のOSは定期的な更新が可能だ。OSの更新毎にバッテリー・レンジやパワートレインの効率を改善出来る。同社の技術の核となるのは「プラットフォームテクノロジー」だ。電動自転車や電動スクーター、EV(電気自動車)、エレクトリック・エアクラフト(ドローンetc)など、様々な電動ビークルに適用でき汎用性が高いと言える。同社のスクーター(電動キックボード)、LINK E-SCOOTER V2.0(以下、LINK)は、走る技術だけではなく、歩道上の歩行者の安全確保という設計思想を併せ持つ。具体的には、車両が歩行者ゾーンに侵入すると、スクーターは安全に停止するまで積極的に減速する。車両はユーザーの万が一の危険走行にも、受動的にアラートを上げるだけでなく、歩道には乗り入れないなどの抑制機能を、スクーターが自律的に働かせることができる点が評価されよう(特許取得済み)。「歩行者防衛(Pedestrian Defence)」は歩道への乗り入れや、逆走、駐車ミス、急ハンドルなどの危険運転をリアルタイムで検出し「修正」するという。LINKは、車両自体にマップやジオフェンスゾーン(地図データ上に仮想的に設定された任意の領域のこと、予め設定した「領域への出入り」をGPSの位置データを使い判断できる)、施行コマンドを格納している。データはクラウド上にあるため通常「遅延」が起こるが、同社の方式では0.7秒以内にコマンドが実行されるという。この歩行者防衛の概念を、自動車メーカ―を始め、電動キックボード、配送ロボット、電動自転車、次世代電動車いす等に導入すれば、歩道における接触事故や、コンビニ駐車場で起こる車両の後退時の店内突入事故を低減できる可能性がある。国内においては、規制官庁にあたる警察庁や国交省では、ジオフェンスを小型無人機等飛行禁止法などを裏付ける技術として考えているものと思われる。*ドローン等の小型無人機の飛行は、「航空法」および「重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律」により規制されている。㈱富士経済が1/22に発表した「MaaS関連のサービス、機器・システムの国内市場を調査」によれば、電動キックボードのシェアだけでも(2030年の市場予測)において30億円クラスとなる。近い将来、歩道周辺を行き交う車両等に「歩行者防衛(Pedestrian Defence)」の概念と、車両管理者から安全で能動的に発動できる「セーフティシステム」が必要となることは明らかだろう。*日本では現在、経産省の「新事業特例 電動キックボード」により、電動キックボードは道路交通法上の原付き自転車となりヘルメットの着用義務とともに車道(車両通行帯の設けられた道路では、最も左側の車両通行帯。車両通行帯の設けられていない道路では道路の左側)を通行すること等とされているが、事業者により「新事業特例制度」を活用し、令和3年1月25日付けで、普通自転車専用通行帯の走行、自転車道の走行、自転車が交通規制対象から除かれている一方通行路の双方向走行を認めることなどが認められているが(事業者の要望を踏まえ特例措置が整備された)歩道上の通行は認められていない。
SOMPOリスクとマクニカ、AIを活用したフォークリフト運転診断サービスを提供開始 他
2月2日 ポジティブデータとネガティブデータについて。一般的に定性情報を分類すると、前述の二つの評価が現れる。ネガティブデータは、研究の世界やその他さまざまな領域において「要領が良くない」「ネガティブデータを量産して実験の進みが遅い」などという批判を受け、あまり意味のないデータとして扱われる傾向があるのかも知れない。ある小学校の話である。小学校の研究クラブの生徒が研究を始めたという。初年度はアイデアも豊富に湧き出し、有意義な年となったが、2~3年目については繰り返しの実験が継続し、生徒のモチベーションは下がった。そのような状況の中、グループ中のある生徒の実験データに「偏り」が現れ始めた。教員がその生徒にヒアリングところ、「偏り」を蓄積した生徒の操作や再現性に問題は見当たらなかった。この研究クラブの教員は、実験環境を再度観察し直したという。その教員は再現性が高く偏った結果が出続けるなら、結果に属人性はなく、実験室にある机の傾きが影響しているのでは?と仮説を立てた。水準器(水平を測る道具)などない小学校の古い理科実験室の話である。机の傾き(仮設)をどのように調べるか、子供たちに尋ねたところ「ペットボトルに水を入れる」との新たなアイデアを得た。その後、教室内の机の中に傾いた机が混在していることが検証されるに至ったという。これ以降、この研究クラブは、水平でない机を使った実験は禁止という新たな実験ルールを創設した。実験を成功に導くのは、ポジティブデータばかりとは限らない。2/2に、損保リスクマネジメントとマクニカはAIを活用したフォークリフトの「運転診断サービス」を開始すると発表した。フォークリフト作業中の事故率(労災事故・物損事故など)は、トラックや乗用車に次いで高いという。このためフォークリフト・ドライバーへの安全運転指導は重要だ。「運転診断サービス」はAIを駆使し、ドライブレコーダを搭載したフォークリフトから作業中の映像を収集、解析する。安全に問題ありとされる「ネガティブデータ」は解析され、ドライバーの安全運転指導に反映・活用されるという事例だ。一般的に解析作業は、人手で行うと膨大な工数の投資を余儀なくされるが、人手不足が深刻である物流業界ゆえ、この解析をAIに任せることが出来るメリットは大きい。自動車フォレンジックは言うなれば、自動運転サービスのライフサイクルの末端に蓄積される「ネガティブデータ」の集積だ。自動運転領域のプレーヤーがレベル4に注力し、社会受容、認知度も向上していく2022年。これら「ネガティブデータ」の蓄積が、自動車、或いは自動運転サービス、保険、監督省庁などの人々に認知され、活用される日はそう遠くないのかも知れない。
Waymoが自動運転技術の企業機密が一般公開されるのを防ぐために車両管理局を訴える、車両管理局も自局を起訴するよう助言 他
2月1日 「北京2022オリンピック・パラリンピック」の開催日となる2/4(金)まで、あと僅かとなる。22日に北京に到着したトーマス・バッハ国際オリンピック委員会会長は、25日に釣魚台国賓館で習近平国家主席と会見している。バッハ氏は現地の新型コロナウイルス対策について「成功を目の当たりにしている」とコメントしたと新華社通信は伝えている。現地入りした日本勢は去る1/31に本番会場となる「国家スピードスケート館」で、初練習を行っている。経済産業省はオリンピックの会期中となる、2/17(木)に中華人民共和国工業信息化部と「第3回自動運転に関する日中官民合同セミナー」を開催する。中華人民共和国工業信息化部(中華人民共和国工業情報化部)とは、中華人民共和国の国務院に属する行政部門であり、2008年に設立されている。中華人民共和国国家発展改革委員会の工業部門、中国国防科学技術工業委員会の核電力以外の業務、情報産業部郵政事業などの一部、国務院情報化工作弁公室などが統合された「省」に当たる機関のことだ。同部(省)は、2021年にホンダの新型インテグラの発売間際に、広汽ホンダが取り扱う新型インテグラの存在を明らかにしたり(中国では発表前にメーカーが新型車情報を届け出るルールがある)、2021年7月には、AmazonやTikTokら145の開発元に「アプリケーションがユーザーの権利を侵害した」として、同年の7/26までに是正するか罰金の支払いを命じている。開発元としてはByteDanceや、中国最大級のポータルサイトを運営するNetEaseなども含まれている。また同年8月にはホンダのミニバン「オデッセイ」のマイナーチェンジが行われることなども明らかにしている。同部(省)はちょうど、米国の自動運転の報道で話題に上る、CPUC(カリフォルニア州公益事業委員会)、カリフォルニア州DMV(車両管理局)のような、メーカーにとってはお目付け御目付け役であり、メディアの情報源ともいえる立ち位置だ。2018年5月には、苗圩中華人民共和国工業信息化部部長が日本で行われた「日中韓情報通信大臣会合」において当時の世耕経済産業大臣と会談を行っている。会談の席上で、両国は同年7月を目途に自動運転政策を議題とする課長級の対話を開催すること、議論を踏まえ「自動運転に関する日中官民合同セミナー」を年内に開催することに合意している。上記会談に基づいて、2018年10月には「第一回 自動運転に関する日中官民合同セミナー」が開催され、続けて第二回が、2019年8月に行われている。第一回のテーマは、自動運転実証に関する評価、データ収集、ダイナミックマップ(地図データ作成・維持・提供等)、ヒューマンインターフェイス、情報セキュリティ、自動運転の国際標準化、自動運転技術に関するロードマップについての講演が行われている。第二回は北京で開催されている。テーマは、自動運転の実用化に向けた取組、自動運転システムの安全性評価手法、自動バレーパーキングの実用化に向けた取組などだった。昨年度はコロナによる開催中止を受け、今年は第三回目の開催となる。今回は引き続きコロナ禍での開催となるため、オンライン開催とはなるが、参加人数も初回の150名から大幅に増え約500名(日本側250名、中国側250名)が出席する。本セミナーのテーマは、自動運転の社会実装の促進に向けた取組、自動運転の実証実験、自動運転の国際標準法規、自動運転の安全対策となる。参加人数やテーマからも、自動運転への両国政府の関心の高まりや市場・商業化や技術の進展、社会的受容の重要性を感させる第3回セミナーとなる。