12月14日 神奈川県三浦市といったら、皆さんはどのような景色を連想するだろう。昭和35年に市のシンボルでもあり、かつて東洋一と謳われた城ヶ島大橋が開通、昭和43年には油壷のマリンパークが開園し、昭和50年に京急久里浜線「三崎口駅」が開業させた同市は、平成13年に入ると、旧三崎魚市場跡地に「三崎フィッシャリーナウォーフ・うらり」(マグロを中心とした水産物の産地直売センターや市の文化施設である三浦市民ホールなどを併設した複合施設)をオープン、いまでは1Fをさかな館、2Fをやさい館とする「うらりマルシェ」が海やまちを楽しむ拠点となっているようだ。三崎漁港は、昭和初期よりマグロ類の水揚げで先刻有数の遠洋漁業基地として栄えた。三崎に初めて魚市場が出来たのは、大正11年。今ではその姿を「三浦市三崎水産物地方卸売市場」という公設市場に変え、1日400~1,000本のマグロを首都圏を中心に出荷している。長年、首都圏から同地への観光の足を支えてきた「赤い電車」こと京浜急行電鉄(以下、京急)は、2009年から「みさきまぐろきっぷ」を発売、多い時では年間20万枚を売り上げて来た。しかし、この観光需要はコロナ禍により大きな打撃を被っている。京急グループは、現在「MaaS」に注目し、三浦の観光需要の復活を図っている。京急とアイシンは、12/13に混雑を避け、三浦半島を周遊できるナビゲーションサービスを始めると発表、12/16~サービスを開始する。このサービスは京急の観光MaaS「三浦COCOON」とアイシンの観光ルートガイドナビ「Smart Buddy」を連携させ、音声や画面で観光ルートをナビゲーション、または観光スポットの案内なども行うことで、交通渋滞緩和や三浦半島の周遊性向上を実現する。京急の「三浦COCOON」は、三浦エリアの観光事業者108団体(12/13現在)が連携し、「エリアマネジメント」と「すごしかた提案」に取り組むため、エリアマネジメント組織「COCOONファミリー」を形成し、地域と一体感のある取り組みを行っている。この2つのサービスが連携し、今回は9つの観光コースが提供される。さらに「三浦COCOON」では、三浦エリア周遊の際、エコロジーにも配慮した二次交通として、レンタルサイクル、電動キックボード、レンタルeバイクを提供、脱炭素化にも目を向けている。京浜急行電鉄は今年5月に発表したグループの総合計画において「取り組むべき事業への経営資源集中による収益構造の変革を図る」としている。取り組むべき事業とは、移動プラットフォーム(沿線拠点のつなぎ役として、快適でシームレスな移動を創造するプラットフォーマーとなること)と、まち創造プラットフォーム(拠点や沿線地域の魅力づくりを通じた人流・物流の創造)の連携を指す。その延長線上に今回の「三浦半島各エリア」(城ヶ島・油壷・三浦海岸)のエリアマネジメントが存在し、同社は地元・行政・企業・大学を繋ぐ三浦半島の「コミュニケーションハブ」を目指すとともに、三浦半島の課題解決と価値向上に取り組んでいる。この9月に惜しまれつつ「油壷マリンパーク」を閉館し、隣接する「ホテル京急油壷 観潮荘」と併せ、滞在拠点を一新するのもこの一連の動きと捉えることが出来る。令和の潮風を受けた三浦半島がどのような「都市近郊リゾート」に生まれ変わるのか、いまから楽しみだ。
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移動手段の利便性向上へ「MaaS(マース)」実証実験始まる 他
12月13日 西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)は、今年6月に「2022年度に北陸エリアで観光型MaaSを導入します!~導入に向け、実証実験を今年度中に実施します~」を自社のNews Release上で発表している。実証実験の目標は、北陸新幹線敦賀延伸の効果を最大限高めるためとして、2022年度まで「Japanese Beauty Hokurikuキャンペーン」(観光MaaS/「JRおでかけネット」*)を開催中だ。北陸エリアへの誘客拡大を図っている。実証期間は、2021年12月1日~2022年3月31日までとし、観光MaaSの本格導入は、2022年度下期を予定している。北陸三県(富山・石川・福井)側からは、北陸三県誘客促進連携協議会および日本旅行が参画する。同協議会には、各県の観光連盟・観光推進機構・北陸経済連合会・JR西日本金沢支社が集う。実証実験は、JR西の「WESTER」の基盤を活用した「おでかけクエスト」というデジタルスタンプラリーを用いるとしていた。2021年11月15日の株式会社ギックス発表によると「スマホdeスタンプラリー 北陸5つの美めぐり」(スタンプラリー)に、同社の顧客選択型スタンプラリー「マイグル」が採用された。スタンプラリーは、前述の北陸三県で行われ「5つの美」(「美食」「美観」「美技」「美湯」「美心」)とのテーマに沿って観光スポット・飲食店・宿泊施設など計418施設が対象となる。「5つの美」の中身は、11月に解禁され、既に旬を迎えている冬の味覚「カニ」を始めとする鮨や蕎麦といった美食と、世界遺産に数えられる日本の原風景とも言える五箇山・白川郷への美観(バス旅)、高岡のすずがみ(紙のように薄い錫の器)作りや、約360年の歴史を誇る「九谷焼」の九谷陶芸村での作陶体験などを美技としている。和倉、あわら、宇奈月などの名湯巡り(宇奈月エリアでは黒部の名水で地ビールを醸造する宇奈月麦酒館などにも足を延ばせる)は美湯、永平寺などでは心を癒す禅体験などを美心としている。JR東日本が主催し、東北6県(青森・秋田・岩手・山形・宮城・福島)が注力する「TOHOKU MaaS」と競演する恰好だ。コロナ禍で二年近くも足止めされた旅行好きの面々には、喜ばしい冬の旅路となる。*https://www.jr-odekake.net/navi/hokuriku-w7/jbh/
国交省、ビッグデータを活用する9事業採択 公共交通再活性化等を目指す 他
12月10日 国土交通省は、地域の人口減少、公共交通のサービス需要縮小、公共交通事業者の経営悪化、人手不足などの状況に対応するため、原則としてすべての地方公共団体において地域交通に関するマスタープランとなる計画(地域公共交通計画)を策定した上で、交通事業者をはじめ地域の関係者と協議しながら、公共交通の改善や移動手段の確保に取り組むことが出来る仕組みを拡充、特に過疎地域においては地域の輸送資源を総動員し、持続可能な運送サービスの確保に資する取り組みを推進するための「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」等の一部の改正法を令和2年11月27日に施行している。同省は地域の移動手段の確保・充実を図る取り組みについて支援する姿勢を示している。この12/6に、国交省は「ビッグデータを活用した実証実験事業」の実施対象を決めた。携帯電話の位置情報データ(ビッグデータ)を活用し、地域の課題解決や、従来の交通調査では得られなかった知見の取得を目指す事業について、採択されたのは日野町の「町の公共交通再活性化に向けたビッグデータ活用分析実証実験事業」、ふじさんゼロゴミアクションの「富士山周辺におけるビッグデータを活用したゼロゴミアクション」や、一般社団法人おしかの学校による「牡鹿半島における観光ビッグデータ活用の実証実験」など9事業だ。宮城県石巻市にある同一般社団法人は、石巻市の東地区及び女川町が東日本大震災から復興し、被災地の子供たちを応援、各種イベントの主催や支援、地元の雇用促進、復興の遅れに伴う人口減少・高齢化などについて地域と一体となり、これらを推し進めるため、2016年1月に「おしかの学校」を立ち上げた。その活動分野は、植樹活動から夏祭り、県道の清掃活動、学習支援、海外派遣交換交流など多岐に渡り、活動の中には地域・まちづくりやITの推進、観光、食・産業、漁業、林業なども含まれる。一般社団法人石巻圏観光推進機構が運営するWebサイト「海街さんぽ」の観光動態調査ページでは、2021年3月に「2020年度来訪者調査 調査結果報告書」(調査実施概要)を公開している。調査の手立ては、留置法(対象となる調査地点の施設にあらかじめ調査協力依頼を行い、施設スタッフから対象者にアンケートを依頼。自記入によって回答してもらい、その後回答済みアンケート票を回収する形式)となっている。石巻圏に観光目的で来訪している人へのアンケート調査を通じ、来訪者属性、観光行動実態、観光資源や受入体制に対する評価を定量的に把握、石巻圏観光の強みや課題を洗出し、今後の観光マーケティング戦略を検討するにあたっての基礎資料を得る目的で2017年度から行われている。調査対象は18歳以上の観光目的で来訪していると思われる男女(石巻、東松島市民、女川町民、外国人は除く)。調査地点は、石巻市では宮城県慶長使節船ミュージアム(サン・ファン館)、東松島市では同市震災復興伝承館、女川町ではシ―パルピア女川など。サンプル数は362、調査実施時期は2020年10月1日~2021年2月10日だった。調査項目は、来訪者の性別や年代から始まり、石巻圏観光場所、コロナ禍における旅行先について等々。調査によると来訪者の居住地域は宮城県内が48%で最も多いが関東地方居住者も3割程度いる。周遊状況は石巻市のみの訪問が最も多い。2市町を巡る人は38%、3市町全てを巡る人は11.6%にとどまった。石巻圏外への訪問は、仙台市内が14.9%、次いで松島町が11.6%、塩竈市内が8.0%となった。ちなみに宿泊旅行は全体の7割弱を占め、圏外では仙台市内での宿泊率が比較的高い。旅の同行者は家族・親族が25.4%で、旅行形態は個人旅行が8割を占めた。従来の留置法による調査によっても、観光や旅行者の傾向(属性・旅行形態・観光動態・観光評価)を浮き立たせることは出来る。携帯電話の位置情報と決済データなども掛け合わせ、その解析が進めば、さらに大量のサンプルから周遊の糸口につながるヒントを導き出せるのかも知れない。結果に期待したい。
JR山手線・京浜東北線で25年頃から有人の自動運転…30年頃ワンマン運転に 他
12月9日 JR東日本が発行する「JR東日本ニュース」が、12/7に「首都圏の輸送システムの変革を進めます」を発表した。本発表でJRは、ATACS(無線式列車制御システム)を導入し、ATO(自動列車運転装置)の高性能化により、輸送安定性の向上とお客様のニーズに応じた柔軟な運行の実現や首都圏の主要線区において「ワンマン運転」に向けた準備を進める、今後は技術イノベーションに取り組み、将来のドライバレス運転の実現を目指した開発を進めるとしている。Webを浚ってみると、目玉となるATACS、ATOなどの列車制御技術導入により、GoA4(IEC(JIS)による自動化レベルの定義、GoA0の目視運転から始まり、5段階ある)に向け、段階的な取り組みを進めるとの話題より、これら「変革」を進めるにあたって、運用の安全性から始まり、各路線で段階的に実施されているワンマン運転の導入、新形式の車両、運転士や車掌の雇用関係の問題、踏切問題、ホームドアの導入、設備導入コスト、人件費、運転士の負担の増大(責任範疇)など、むしろ周辺の話題に事欠かない様だ(*具体的なサイト名の掲載は控えるが、参考になるWebサイトが幾つかある)。意見を述べる人々の立場も様々だと想像する。JR職員、労働組合、JRのOB、沿線の利用者、鉄道ファン。皆それぞれの立場での持論があり(言い回しは様々だが)納得できる意見も多い。意見は賛成、部分的に賛成、反対、提案、期待など多様性に富む。「公共交通機関」と言われる由縁だ。人々は鉄道が自分と親しく関わり合うからこそ、この発表に関心を持ち、熱心に意見を述べる。困難だが、人々の日常生活に密着して動く企業だからこそ「変革」の前に、多方面の人々の意見に耳を傾け、対話し、最大限「調和」を導き出していく必要がある。自社が取り組んできた技術イノベーションの恩恵を、どのように社会に享受してもらうか?余計なお世話かも知れないが、特にコロナ禍により、多大な影響を受けた人々の「雇用・安全・安心」の部分については、よりオープンで丁寧な扱いが必要かもしれない。長年に亘り「鉄道」を動かし続けるべく、膨大なテクノロジーや法令を学び、安全技術を研鑽してきた社員を、今後どのように活かすのかについては、民営化の道を選択した時を思い馳せ、いま一度資料にある「人ならではの創造的な仕事」の部分を、より具体的に掘り下げ、アップデートしていただきたいと思う。この部分が技術の進化とセットで変革され、明確化されていくことが、より早いプロジェクト「完成」につながるのではないかと思う。「安全・安心」の部分については、各地で盛んに行われている自動運転バスなどの「試乗会イベント」や地域との協力なども、よき関係を醸成する一つの契機となっていると思う。
インテルがモービルアイ上場 車載半導体、成長取り込み 他
12月8日 滋賀県大津市で京阪バスと大津市による電気バス・自動運転バスなどの無料周遊バスの運行が11月1日(月)から、令和4年1月23日(日)まで行われる。無料周遊バスは、観光庁の令和2年度3次補正事業"既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業(自治体・DMO型)"を活用し、大津市内で開催される観光イベントに合わせて運行される。また期間中、大津市内の一般路線バスの周遊性を高める目的で、スマホ上でNFCタグ、QRコード読み込みによるデジタルチケット「京阪バス大津市内1日フリーきっぷ」の購入が可能となる。12月に入ってからはデジタルチケット購入者に限り、沿線の施設で利用できるお得なクーポンも配布される予定だ。電気バスと自動運転バスが投入されるのは、運行日限定(11/1~12/23の平日のみの一部便)ということだが、この便には大きな意味がある。今回の運行ルートとなるJR大津駅~琵琶湖ホテル~びわ湖大津プリンスホテル間は、経済産業省および国土交通省の「高度な自動走行・MaaS等の社会実装に向けた研究開発・実証事業:専用空間における自動走行などを活用した端末交通システムの社会実装に向けた実証」の一環で、産総研が幹事機関として受託した実証実験中(2020年8月30日)に、歩道柵の支柱とバスの左前部のセンサーカバーが接触事案を起こした時のルート(※その後、産総研と関係者により事案の要因分析と対策は講じられています)でもある。(参考:https://www.aist.go.jp/aist_j/news/announce/au20200911.html)本無料周遊バスの運行は、国交省、産総研、京阪バスにおいてリベンジの意味が強い。それは大津市や市民にとっても同じだと思う。事案から足掛け1年2ヶ月。事実上の実験再開に漕ぎ着けた関係者の努力に敬意を表したい。「京阪バス大津市内1日フリーきっぷ」の発売は11/1~1/23まで。期間中1日が乗り放題となる。利用範囲は京阪バスの大津市内路線(近江神宮前以南)、運賃は大人600円、子供300円。購入は、バス車内に設置されたNFCタグ、またはQRコードをスマホで読み込み、スマホ上で決済(Apple Pay、Google Pay、クレジットカード)を行う。乗車時に購入したチケット画面を乗務員に提示する。この期間中、大津市内では「SLOW OTSU」をコンセプトに、市内各地で観光イベントが開かれる。観光イベントをピックアップすると、近江米や近江牛、湖魚など魅力ある地元のスロウフードを味わう「柳が崎湖畔公園びわ湖大津館キッチンカー」や「琵琶湖ホテル ベルラーゴ テラス」などの食。地元作家の工芸品から名産品、お土産までが一堂に会する「スロウマーケット」(*11/3-11/28までのため終了)。また湖畔にパビリオンやテントサイトが出現したり、JR大津駅前にはリビングスペースなど「ひとやすみ」できる休息所が展開される。一日市内を巡りお疲れの体を癒すライトアップやプロジェクションマッピングなどの光彩「冬のイルミネーション2021」(柳が崎湖畔公園びわ湖大津館)、「大津 光の架け橋」(びわ湖プリンスホテル)、「なぎさのテラス周辺 ライトアップ」(なぎさのテラス周辺)。またONLINE EVENTSでは、11/21には、琵琶湖マニアの嘉田由紀子氏と淡水魚料理家の小松聖児氏がお店を訪ね、湖魚の魅力を語ったり、滋賀ふるさと観光大使の西川貴教氏による大津の魅力や"ぐうたら"な旅の楽しみ方などが動画(アーカイブ)で配信される。お帰り自動運転バス。日頃、勤勉に大津の足を支えてきた公共交通、たまには地元に支えられるのもいいだろう。
県境越え無料巡回バス 南砺-金沢-津幡 富山銀が仲介 1日3往復交流に期待 他
12月7日 去る10/16に富山銀行と富山県南砺市は「地方創生に向けたSDGsの推進に関する包括提携協定」を締結した。協定内にある「地域における産業の振興並びに雇用の維持及び拡大に関する事項」に基づいて、この度新たな商流の創出による地域活性化の取り組みとして、金沢市と南砺市を結ぶ、無料巡回バス「ラン♪Run♪Bus」(定員28名/1日3往復)の運行が開始された。南砺市と富山銀行の取引先となる株式会社アペックスグループのコーディネートを同行が請け負った。この開催セレモニーが11/13に南砺市にあるJR城端駅で行われた。セレモニーに出席したのは、南砺市の田中市長、富山銀行の中沖頭取、株式会社アペックスグループの沖野社長だ。アペックスは低温配送センターや長距離幹線車両、地域配送車両といった低温配送機能に強みを持ち、金沢市に本社のある物流会社だが、事業の裾野は広く、自動車修理・整備、不動産賃貸、生ごみ処理機の販売、特殊肥料生産及び販売、太陽光発電、損保保険代理店などの物流、環境分野の事業も運営している。同社は今回無料巡回バスの運行実施にあたって、ルート付近の施設などから協賛金を募った。同バスの運行はアペックスの子会社となり、タクシー、介護タクシーサービスや貸切バスを運行する「なるわ交通」が請負う。この無料巡回バスは南砺市から、金沢市および近隣で県境を跨ぐ、石川県河北郡津幡町にも足を延ばす全国初の画期的な事例だ。広域での無料バスの運行に、地域の小売業や観光事業者は期待を寄せる。ちなみに南砺市福光駅から金沢駅までJRを利用して移動する場合、福光駅から一旦新高岡駅まで出て、折り返し北陸新幹線で、金沢駅に向かうと所要時間はおよそ1.5時間で、片道3,370円となる。高岡駅であいの風とやま鉄道に乗り換える場合は、所要時間が1時間48分かかり、片道は1,350円となる。南砺市から車で移動する場合は、県道27号経由、国道304号経由、北陸自動車道経由などで移動する。加越能バスの路線バス(1日6往復)を利用する場合は、55分程度の所要時間で、片道870円となる。JRや加越能バスとのバランスもあり、ルートや便は限定されるものの、長年金沢市への移動に時間と移動コストを費やしてきた南砺市、津幡町の住民にとっては朗報となるだろう。バスルートの石川県河北郡津幡町側には、アル・プラザ津幡やイオン金沢店などがある。また南砺市側では、道の駅福光やJR福光駅、城端駅等に停車する。国内に目を向けると「県境を跨ぐことのできる利便性」が必要なケースはたくさんある。一例だが、自動運転バスの町内運行で、全国的に有名になった茨城県猿島郡境町なども、町内にバスターミナルを新設し、自動運転バス(無料)と高速バス(有料)を接続、東京駅や王子駅との接続を実現させている。経済効果という意味では、都心側で消費される可能性が高いが、自動運転バス利用のモチベーションを上げ、復路においては地元消費活動も期待できる。今後、地方創生・交通網再整備の場において、地銀の存在が再び脚光を浴びることになるのかも知れない。
ギックスの個客選択型スタンプラリー「マイグル」とJR西日本提供アプリ「WESTER」を活用し、太秦エリアの公共交通利用による観光需要拡大を目的に実証実験を実施 他
12月6日 株式会社ギックスと西日本旅客鉄道(JR西日本)が協業し、JR西日本のMaaSアプリ「WESTER」とギックスの顧客選択型スタンプラリー「マイグル」を活用し、エリア観光活性化を目的とした実証実験が行われる。コロナ第5波と第6波の端境期「コロナ・オフ」である今、前回のパンデミックにより経済に大きな打撃を受けた公共交通者および観光・宿泊業者。喉から手が出るほど観光客が欲しい状況の中、京都の映画のまち太秦(うずまさ)で行われる実証実験の目的を拝見すると、その中身は一風変わったものだ。国際観光都市「京都」では何が起こっているのか?日本だけではなく、世界各地の観光地では「オーバーツーリズム」と呼ばれる現象が起こっている。JTB総合研究所の観光用語集によれば、「特定の観光地において、訪問客の著しい増加等が、地域住民の生活や自然環境、景観等に対して受忍限度を超える負の影響をもたらしたり、観光客の満足度を著しく低下させるような状況」のことだ。観光地で観光客増加による交通機関の混雑や、交通渋滞、ごみ処理や騒音、場所によっては、自然環境や治安の悪化等が地元住民の反発を招いたり、生活に影響を及ぼすケースだ。京都でも、観光シーズンになると街中は人で溢れ、ごみのポイ捨てやトイレの不足、生活路線バスの混雑、レジャー施設や宿泊施設、飲食店等では、繁忙期に雇用が一極集中し、閑散期には雇用側での調整が入るため、雇用が不安定になるといった現象も起きています。また雇用される側にとっても繁忙期の観光客の接客などで忙しさが続くため、従業員が定着しにくい等の状況も起こっている。観光客側でも、混雑により本来の京都の良さを味わうことが出来ないなど、地元の受入限度を超えるツーリズムにより各所で不都合が起こっている。今回の「映画と暮らすまち、太秦イベント」では、これらの課題に対して、個人に合わせた旅の提供ニーズの高まり、非対面・非接触による安全・安心な旅の提供、オーバーツーリズムへの配慮を目的に置く。「WESTER」を通じて、AIが「個」に合わせた観光・グルメ・ショッピングスポット(東映太秦映画村、大映通り商店街エリア、JR太秦駅、嵐電嵐山駅、京都エリアのグルメ・商業施設の5ヶ所)を含む旅の提案を行い、「マイグル」のスタンプラリーで3つ以上のスタンプを集めると、商品抽選に参加できる。「マイグル」は利用者「おひとりさま」毎に最適なスタンプラリーを提供するスマホ向けWebアプリで、AIにより一人一人のユーザーにあわせ、最適なお店の候補をおススメし、ユーザーは自分が行きたい店を選択、スタンプラリーを作成でき、選択した店舗で買い物をするとポイントが付与される仕組みだ。またスタンプラリーの参加状況やスタンプの押印状況は運営者がリアルタイムに確認することも出来る。運営側にとっても、市中の状況に見合った提案がしやすくなる。京都の観光協会は多言語でのマナー啓発やAIを活用し曜日や天候などから混雑度を予測し「観光快適度の見える化」にも取り組む。オーバーツーリズム解消の鍵は「分散化」だと言われる。京都市観光協会データ月報(2021年10月)を拝見すると、緊急事態宣言が明けた10月の客室稼働率は39.1%(前月比で上昇、前年同月比は同水準)、日本人延べ宿泊数は60.2%(前月比の6割増し、前年同月比は同水準)、修学旅行再開により市内主要旅館の客室稼働率は45.1%(前月比から大幅に上昇)、客室稼働率の予測値11月は65.5%、12月と来年1月も前年同月比を超える稼働率となる見込みだ。スマホの位置情報をもとに集計した市内主要地点39箇所の来街者数は、昨年の73.7%(前月比55.8%から大幅に上昇)だ。株式会社ギックスと西日本旅客鉄道(JR西日本)は、今回の実証実験により、公共交通機関の利用や回遊性の向上、観光消費の増加に向けた「行動変容」が図れるかを検証することを目的に置いている。実験は12/11(土)~2/13(日)のおよそ2ヶ月に亘って行われる予定だ。第6波の影響を極小化し、京都市民の日常に配慮しつつ、京都経済も活かさねばならない。AIを駆使したMaaSにより企業・地域・グローバルを調和させる力が試される。
東京都、自動運転社会へ都市づくり案 都民の意見募集 他
12月3日 東京都が今年の11月にまとめた「自動運転社会」を見据えた都市づくりの在り方(案)に違和感がある。東京都が作成した資料の中で、第1章、2章、3章は、今の東京都の交通状況を丹念に調査し、東京都下の対象区域を4つに分類し、それぞれの地域の特性を洗出し、今後必要とされる自動運転社会の方向性を導き出していく((3)各地域区分の交通課題 表2-3 各地域区分の交通課題)などの内容は秀逸だ。また第三章に記されている自動運転技術の開発状況や、普及予測なども現状を良く俯瞰していると感じる。資料を拝見し「第4章 都市づくりへの展開に向けた基本的な考え方」の中に違和感を覚えるところがある。交通施設として道路空間、駅前空間、駐車場が、交通サービスとして自動運転車の活用が論じられている。作成者は(3)基本的な考え方として、歩車分離を説明、路車間通信、車車間通信を上げ、安全なすれ違いを謳った後、特定車両の進入許可を提示し、ライジングボラード(路上に設置する杭、進入抑止時には杭を路上に上昇させ、車両進入時にはこれを下降させる構造物)の必要性と、カーブサイドと呼ばれる路肩側空間の(荷捌き車両の停止や駐停車、公共交通の乗降場所、自家用車における駐停車などに使われる)有効活用として、これらの利用を「マネジメント」すると説明している。提示されている「配分」が可能と思われる場所は、第1章で分析された東京都全域を考えれば限定的と言え、駅付近の商業圏か車線数が2車線以上確保出来る場所だ。例えば、私鉄沿線(小田急線沿いの下北沢~成城学園前あたりをイメージした見て欲しい)の都心側でこのような施策を行おうとするなら、沿道の建物の移動から計画しなければならない。既存の狭小な駅前商店街の道路空間を、無理に再分配すれば、歩車接触の危険を助長しかねない。諸外国において、歩車分離が社会的に受け入れられ定着しているのは、そもそも都市計画の段階から、歩車を分けることが出来る空間を確保してあり、生活のリズムや文化に合った道の使い方をして来たからだ。道路空間を杭で仕切り、仮設店舗を設置し、荷捌きの車を止め、ある単位でこれらを入れ替える場合、別な不便が生まれる。そこには、日常決まった場所で荷捌きなどを行う、駐車スペースのユーザー側の「都合」や「使い勝手」が存在するからだ。例えば先週は車を止められたのに、今週は店が出ており止められないとしたら、通院などのため車を路肩に駐車したい利用者はどうなるのか?時間単位で配送をしなければならない、物流ドライバーにとって決まった場所にトラックを停車させ、納入店舗に運び入れる時間が計算しづらくなる。オープンカフェの直ぐ脇を通る車両が電気自動車に入れ替わるにはまだ時間もかかる。*ご参考:南海なんば駅前の歩行者天国の社会実験を取り上げたMBSニュースの動画がある(https://www.youtube.com/watch?v=oK0AdCG5-KM)。シチュエーションは異なるが「使う側」の声が取材されている。本案が採用となれば、いずれかの段階で実証実験を経て「都民の声」が案の良し悪しを決めることになると思う。東京都の「案」であるなら、都市づくりにおける「様々な立場のバランス」が重んじられるべきだと思う。課題解決出来るシーンが限られてしまい、使い勝手に難のある歩車分離に投資するなら、V2Nへの投資を充実させ、路肩のカメラやセンサーから車両に情報を送ることで死角を減らし、歩道を走行するビークル等にヒトやモノを感知し、減速・回避可能な装置を取り付けたり、駅前商店街前の駐車場にトラックを駐車し、配送ロボットによる店舗配送を進める、或いは歩道を通行する配送ロボット数のコントロールを行うなどを検討する方が、都下のより多くの地域のニーズに適用出来る「自動運転社会」を見据えた都市づくりになるのではないだろうか。
ヨーロッパ初「レベル4」の完全自動運転車が公道での走行を許可される 他
12月2日 ひたちBRTが実証実験中に大甕駅付近でガードレールに接触したのは、昨年の年の暮れ、12/14(月)だった。駅付近にて自動運転バス運行中にハンドルが急旋回、ドライバーが速やかに対応したもののバスの右前方部分がガードレールに接触した。幸いにも一般乗客は乗車しておらず、けが人も出なかった。茨城県は12/15に「12月14日発生のひたちBRT自動運転車両接触事案の原因調査結果と対策について」を発表、続けて1/20に「ひたちBRT自動運転 安全確認のお知らせ」を発表、茨城交通のWebページに「ひたちBRT自動運転 安全確認のお知らせ」を掲出し、1.発生事案と状況、2.要因分析(産総研ホームページ)、3.原因究明と安全確認の経緯を公開している。産総研は本件について、事案発生から10日後の12/25に「中型自動運転バスによる実証実験(日立市)におけるガードレールとの接触事案の原因調査結果と対策について」を産総研のWebページで、その概要、発生事案と状況、要因分析、対策までを公開している。迅速で好感の持てる事後対応だ。実験の実施組織・研究者・受託者としての責任感が感じられる。今年の11/15(月)に「しずおか自動運転ShowCASEプロジェクト」において、静岡県の伊東市内で発生した歩行者との接触事案について、静岡県は11/19に、県のWebページにおいて「しずおか自動運転ShowCASEプロジェクト実証実験の見合わせについて」を発表している。現在、12月に沼津市と掛川市で予定していた実証実験については見合わせとなり、原因究明と安全対策の検討をしている。一方、静岡県の「静岡交通ニュース」(https://www.pref.shizuoka.jp/kensetsu/ke-570/sub8.html)によると、令和3年度前期の乗合バスの退出意向の申出(4/14)は、2市町及びバス事業者4社(46系統)から、同じく令和3年度後期(10/14)は、6市町3事業者(38系統)から申出が出ており、地域公共交通会議等で退出、再編などの検討が進められている。その中には「しずおか自動運転ShowCASEプロジェクト」に参加する沼津市や松崎町、掛川市などの系統も含まれている。令和3年度前期の乗合バスの退出意向の申出(4/14)の場合、前述の退出意向申出から最終的な退出、再編の決定までの事務的な手続きの流れを見ると、最終的に県協議会幹事会が退出、再編を決定するのは8/25となっているので、申出から決定までは、およそ4.5カ月ほどの時間的な猶予があることが分かる。しかしながら、その先に地元のバス路線がなくなる住民にとっては早期にの不便・不安の解消が求められよう。同様に考えると、令和3年度後期(10/14)分の申出の決定が下るのは、4.5ヵ月後となる2月末か3月初旬程だろうか?自宅や通勤・通学先まで「市民の移動」を担ってきた路線バスの代替機能を持つようになるであろう「自動運転バス」。自動運転の技術は、複雑多岐に渡る。市民生活の足を確保するため、利用者の安全と安心のため、自動運転の実証実験中から社会実装後も、サービス運営者を確実にサポート出来る(従来の事故調査委員会に自動運転専門の部門が設置されるなどでも良いが)専門的な支援体制の確立が必要な段階ではないだろうか。
上小阿仁村 自動運転サービス開始2年も利用者数は低迷続 他
12月1日 気になるニュースがある。サービス開始以来、2021年度末で2年となる秋田県上小阿仁村で始まった自動運転サービスである。グリーンスローモビリティを用いた自動運転が村内の集落と役場、診療所などを結び、村民の移動を補助していたが、このところ振るわない。NHKのNEWS WEBによれば、サービスの利用者数を月別に集計したところ、一日平均15人を超えたのは、2019年11月のサービス開始以来2020年の3月だけで、今年に入ってからは一日平均8人を下回る。利用者が振るわない遠因として、国交省東北地方整備局には、コロナ禍の影響や運転手のいない自動運転車両が敬遠されていないのではないかとの考えがあり、サービス運営者となるNPO法人上小阿仁村移送サービス協会は「自動運転車を日常的に利用するユーザーと利用しないユーザーがおり、利用頻度に大きな差が生まれている現状を指摘、今後は日常的に利用のないユーザーにも利用してもらえるようにしたい」と述べている。上小阿仁村は、北秋田市、能代市、三種町(みたねちょう)、五城目町(ごじょうめまち)、秋田市と境界を接しており、北秋田市とは秋北バスの路線バスで繋がり、鉄道は秋田内陸縦貫鉄道の米内沢駅か阿仁前田駅が最寄り駅となり、高速道路は秋田自動車道の五城目I.Cが最寄りとなる。村と大館能代空港間、村と阿仁前田駅間には、デマンド型乗合タクシーが設定され、空港との連絡には地元などのタクシー会社が月替わりで上下合わせて4便/日、阿仁前田駅間との連絡には日に6便があり、住民の移動を支える。また、同村の社会福祉協議会は、電話予約により上小阿仁村有償運送(交通空白)こあに号を、上小阿仁~八郎潟駅間に運行している。MaaSは、地域で利用可能なすべての交通手段を網羅し、その情報を利用者に分かりやすく伝えるものだ。周辺地域との接続が、高齢者化率も高く、冬季には雪などの外乱要因の多いであろう同地で、同自治体内の結節点や高齢者の自宅内での閲覧も想定し、利用者が把握しやすい「情報表示」の仕組みが出来ているか気になる。また、高齢者化率の高さは健康上の理由などとあわせ、移動総数と直結する。ユニバーサルな移動環境が作られているかも、モビリティも含めた待合施設などのスロープや手すり、体調が悪くなった際の緊急連絡設備、食事や飲料の自動販売機、手洗、空調やベンチなど休息に必要な設備などを含めた使い勝手にも、再度目を配っていただきたい段階だ。上小阿仁村の昨今のニュースを見ていて、もう一点気になるのは、村が運営する移動販売車「こあにカー」の存在だ。同車両は高齢者化率の高い村内の20集落に向け、週1回(平日のみ)食料や日用雑貨などの移動販売、高齢者の見守り活動を行っている。村内において、食料品や日用品を扱う実店舗はコンビニを含め7軒あるが、それらを利用しづらい集落や移動弱者の買い物を支援している。「こあにカー」以外にも民間の移動販売車の存在がある。同時に「買い物」は、すべての交通利用者に共通する移動理由でもある。先ほど「こあにカー」は、村が運営すると書いたが、実際は道の駅「かみこあに」を運営するかみこあに観光物産に事業が委託されている。あくまで一案だが、移動と日常的な消費活動、どちらも両立するには、自動運転サービス運営者と観光物産を一つの台所にまとめたり、7軒の店舗への物流ルートを貨客混載方式にシフトしてもらう代わりに、自治体が近隣の市町も含めた施設・店舗利用のためのプレミアム付きの地域商品券などを発行する等の仕掛けをしてもよいのではないか。話は変わるが、林野庁(林政部木材利用課 https://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/biomass/con_2.html)は、地球温暖化の問題や廃棄物問題への対応の一環として「木質バイオマス」の利用推進に注目し、これを推進している。「木質バイオマス」の利用メリットは「二酸化炭素の排出抑制」と「地球温暖化防止」の2点だと謳う。森林を構成する樹木等は、光合成により大気中の二酸化炭素の吸収と固着を行う。その根拠は、木材をエネルギーとして燃焼させる場合はCO2を排出するが、排出されるCO2は樹木の伐採後に森林が再生された場合、その成長過程で再び樹木に吸収されるとの計算にある。化石燃料の代替燃料として、前述の2つのメリットを生み出すという。同庁はこの「木質バイオマス」のライフサイクルを通じ山村地域の活性化も図る。資源の収集や運搬、バイオマスエネルギー供給施設や利用施設の管理・運営など新産業は雇用も創出し、地域経済を活性化させる可能性を持つ。上小阿仁村にこれらの施設を誘致する、との選択肢も有効だと思う。これらは、農林水産省出身である小林悦次(こばやし えつじ)町長を始めとする同町の第2期上小阿仁村まち・ひと・しごと創生総合戦略にも「本村は、森林面積が92.8%を占めるため、木質バイオマス等の再生可能エネルギーの有効活用や産業振興を図り、カーボンオフセットやグリーン購入等を推進します」といった言葉で表現されているように思う。