10月29日 仙台市では10/30(土)~「仙台MaaS」を始める。仙台市は、昨年11月に、JR東日本とともに「TOHOK MaaS 仙台・宮城 Trial」にも取り組んでいる実績がある。実施エリアは宮城県内、交通系のデジタルチケット拡充、MaaSネットワークにオンデマンド交通を追加するなどしていた。当時は2021年に開催される予定だった東北デスティネーションキャンペーンに繋ぐことも目的とされ、JR東日本の「Ringo Pass」会員も登録なしで利用可能としていた。決済に関してはクレジットカードや「モバイルSuica」での決済を実現していた。オンデマンド交通をネットワークに組み入れたことで、地元の店舗や施設における客足の確保にも貢献した。課題としては、オンデマンド交通への誘導や予約、チケットの見せ方などが改善点としてあがっていた。目的は観光需要と地域の移動需要を満たすことだった。では「仙台MaaS」の目的とは何であるか?仙台市においては、交通分野に加え、まちづくりや環境、DX推進など幅広い分野に亘る重要施策であり、非接触決済が可能で新型コロナウイルスなどの感染症対策の観点からも有用性が期待されているようだ。まずはスモールスタート。まちの賑わい創出、仙台都心の回遊性向上を目指すが、段階的には他分野との連携も推進する。プロジェクトのターゲットは「都心を回遊しやすい方」を想定している。このため、市民のMaaSに対する認知度の向上と関心の醸成に取り組む。おすすめコースやスポットの紹介、ポスター、チラシ以外にもWebメディア(「せんだいマチプラ」)やSNS(Instagram)を活用した広報、Twitterのインフルエンサー「YUITO」氏などとも連携する。Webサービスとなる「仙台MaaS」は、主に「仙台ポータルサイト」と「チケット販売サイト」からなる。アプリダウンロードも不要だ。チケット購入は「仙台MaaS」内で完結させるため、クレジットカード情報の入力と、利用時は移動する交通機関の運転手や施設窓口にスマホの画面を提示し利用する。コースは全10コース、街中5コースと秋保(あきう)温泉、愛子(あやし)、仙台港などだ。同時にポータルサイトではサービス提供開始時点だけで、街中を中心とした全86スポットを紹介する。同市の観光サイト「せんだい旅日和」の情報を活用したり、Webメディア「仙台マチプラ」のおすすめスポットを掲載する。今後は、利用実績の検証や検討を踏まえつつ令和4年度も継続してサービスを提供する計画だ。JR東日本のえきねっと(https://www.eki-net.com/)の「えきねっとトクだ値」では、列車/座席/区間限定の割引きっぷを発売中だ。東京-仙台(通常価格:\10,890/「やまびこ乗車の場合」)は、期間限定(設定期間:2021年4月1日~2021年12月15日)でお先にトクだ値スペシャル20日前[※]までのお申込みなら、50%OFF!で¥5,440となる。[※] 1時50分まで。発売期間最終日がシステムメンテナンス日の場合は、その前日の23時50分まで(詳細:https://www.eki-net.com/top/tokudane/pdf/price/shinkansen/osakini_sp_yamabiko.pdf)。今秋しか会えない仙台へGO!だ。
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茨城県内の交通手段をアプリで便利に利用しよう-茨城MaaSが本格始動。まずは2地域で先行販売開始- 他
10月28日 秋山明浄にして粧うが如く(中国の北宋時代の山水画家「郭熙」臥遊録より)、秋の澄んだ空気と山々が紅葉で装う様が、生き生きと表現されている。この秋、自治体が主体となるMaaSや実証実験も「山装う」が如く活況を呈しているようだ。「茨城MaaS(https://ibarakimaas.jp/index.html#Ticket)」は、11/6(土)から龍ケ崎エリア・水戸エリアにおいて、参加する地元事業者とチケットなどの販売を始める。第一弾として、龍ケ崎と水戸エリア分から先行販売を始める。県内の交通事業者(茨城交通、関東鉄道、関鉄グリーンバス、関鉄パープルバス、関鉄観光バス、ひたちなか海浜鉄道、みちのりホールディングス)が参画する。龍ケ崎エリア11/6から販売が予定されているのは、関東鉄道竜ヶ崎線1日乗車券など4種類のチケット、鉄道・コミュニティバス・路線バスの1日乗り降り自由チケットにコロッケ店200円割引券・沿線店舗クーポン券がセット。水戸エリアでは、水戸漫遊1日フリーきっぷ、水戸駅周辺を運行する路線バスが1日乗り降り自由(店舗の割引サービスが受けられるクーポン券付)。順次、販売予定となるのは、高速バスの片道チケット(関東やきものライナー、勝田・東海-東京線、太田・大宮・大子-東京・新宿線、茨城空港線)だ。「茨城MaaS」は、ジョルダンの「乗換案内」を採用、アプリ上で上記の商品販売を行う。支払いはクレジットカードの他、QRコード支払いなどにも対応している。購入したチケットはスマホ画面上にチケットが表示されるので、バスや鉄道の乗車時に運転手や係員にチケットを提示するだけで良い。システム上でも、新型コロナ感染症防止のため、非接触が実現されており安心だ。「茨城MaaS」は専用アプリやWebページへのアクセスではなく、ユーザーが普段から使い慣れているアプリやWebサービス上で商品購入が出来る仕組みを構築しているのが特長だ。地域の交通事業者がMaaSに参入する際の手間やコスト削減まで念頭に置き、上記の仕組みを実現させるため、商品販売に必要なデータ(運行情報・価格、在庫情報、チケット発券・管理、料金精算、店舗情報)を提供する仕組みを地域MaaS基盤として構築している。今後、県内などの交通事業者(レンタカー、カーシェア、シェアサイクル事業者なども含め)がMaaSに参加しやすいよう、運行データなどは標準的なフォーマット(GTFS準拠方式)でオープンデータとして提供している。また11/6(土)~12/5(日)まで、龍ケ崎MaaS推進協議会は「茨城MaaS」と連携し、「龍ケ崎MaaS実証実験」を発表している(「龍ケ崎MaaS推進協議会」参考:https://www.fss.jp/ryugasaki-croquette/)。「龍ケ崎MaaS」も同様に「乗換案内」による交通チケットの販売・利用を試みる。チケットのラインナップは、竜ヶ崎線の1日乗車券(600円)、竜ヶ崎線+龍ケ崎市コミュニティバス1日乗車券(1000円)、竜ヶ崎線+龍ケ崎市内路線バス1日乗車券(1100円)、竜ヶ崎線+市内コミュニティバス・路線バス1日乗車券の4種類となる。チケットには龍ケ崎名物「龍ケ崎コロッケ」の200円割引券・市内店舗(*サービス提供店:26店)のクーポン券が付く。また電動三輪バイク「GOGO!カーゴ」のレンタルが出来る(*要:普通免許/Future株式会社/貸出場所:竜ケ崎駅前*要事前予約)。同時に「駅からハイキング」や「ビール祭り」などのイベントにも参加できる。*チケット販売については2022年3月31日まで継続。同協議会は、本実証実験に係る費用(電動三輪バイクのレンタル費用およびPR費用)をクラウドファウンディングで募る。金額目標は100万円で「マイカーに依存しない新しい移動のカタチ」と題し、龍ヶ崎市のまちづくりや商業観光振興に貢献するため、新たな移動手段の導入を目指すプロジェクトとして発信していくという。本プロジェクトは㈱CAMPFIREが運営するクラウドファウンディングサイト「CAMPFIRE」(https://camp-fire.jp/projects/view/489191)にて10/15から公開を開始、11/5まで支援を募集する。
【札幌観光バス】大型バス運転体験ツアーを開催 他
10月27日 札幌市にある「さっかん」こと札幌観光バスは、10/16(土)に日帰りバスツアー「夢がかなう時♪大型バス運転体験と札幌観光バス車庫めぐり」を行った。企画が秀逸なので、紹介させていただく。近年、運転体験系のイベント企画は、運転シミュレーターの発達や交通事業者(鉄道や航空会社など)のイベントで数多く見られる。「碓氷峠鉄道文化むら」の実物の電気機関車を用いた運転体験や、浅草東武ホテルの「東武鉄道 運転シミュレータールーム」の宿泊プランなども報道などで取り扱われた企画だ。「さっかん」の運転体験企画は「桁違い」だ。美唄市にあるJR北海道茶志内(ちゃしない)駅と、石狩川に挟まれた農道離着陸場「美唄スカイパーク」(APR:N43°23’15”、E141°51’46)の開場は1997年。当初、仙台空港経由で仙台市の周辺、およびトラック便を使い東京方面に農産物を運んでいたものの、採算面から農産物の航送に使われなくなり、現在はオーナーズパイロットの訓練やモーターグライダーやスカイスポーツの練習場、イベント会場、防災や救急医療輸送の中継基地などの役割を持つ。12/31-3/31までは冬季閉場となる。「さっかん」は同農道離着陸場を運転体験会場として借受け、広大な滑走路(800m×25m)において大型バスを走らせるという「破格の体験」を実施、離着陸場は公有地であるため、全国から集まった参加者は普通免許で運転体験を実現することが出来たとのことだ。現在、同離着陸場の管理会社であるピートエアのホームページを拝見すると、入場料等を徴収する行事、展示会等の会場としての使用の場合、貸切の料金は営利目的の場合で、30,800円/時間(詳細:https://petair.us/bibaiskypark_price)だ。昭和39年に設立された「さっかん」のホームページを拝見するに、その企画力はずば抜けており50年以上に亘って、同地の観光需要に貢献してきた企業の観光や移動ノウハウの蓄積を感じる。同社は同じく今年の10/11に「バスガイドと行く北海道の旅 by 札幌観光バス」と題して、バスガイドによる音声メディアでの情報発信にも取り組み始め、バス旅行の需要喚起を狙う。道内旅行で観光バスを使った旅行者は、道内観光客が1.1%、道外観光客が16.2%、外国人観光客が34.8%(2019年度北海道来訪者満足度調査/2020年3月 公益財団法人北海道観光振興機構)と少数派だ。一方メディア市場は、20-30台のユーザーがポッドキャストユーザー全体の50.8%を占め、若年層に拡大している。番組は旅行計画を立てる際や、自家用車やレンタカーで観光地に向かう際車内で聞く、または観光地で徒歩で観光する際などに聞くことが想定されているという。昨日もMaaSアプリの定番機能について語ったが、地域の移動・観光情報に誰より知見のある「バスガイドによる」音声コンテンツがプラスされれば、量産型MaaSアプリの域を脱し、旅行者に豊かなコンテンツや旅行体験を提供できると思う。ちなみに「バスガイドと行く北海道の旅 by 札幌観光バス」は開始時に12本のコンテンツを用意、以後は月2本程度の配信を予定しており、スマホやPCでApple Podcast、Googleポッドキャスト、Spotify(https://open.spotify.com/show/3moDtuiH6lRiYNhBZw3baC)、Amazon Musicなどで無料配信される(*データ量は課金されます)。MaaS市場における「デジタルでの情報発信」は、経営難であった地域の交通事業者を大手旅行者やメディアと肩を並べる「移動や旅行に関するコンテンツホルダ」に変化させ、事業者の経営に一筋の光をあてる可能性がある。
めぐって 遊んで トクして 南大沢を楽しもう!南大沢でMaaS等の実証実験を行います 他
10月26日 東京都では、八王子市、東京都立大学、京王電鉄、三井不動産と南大沢の地元企業と協力し、10/25(月)から南大沢で電動のシェアサイクルを含むMaaS等の実証実験を始めると発表した(https://minamiosawa-tanoshimou.com)。期間は令和3年11月1日(月)~令和4年1月31日(月)まで。実験は、京王電鉄相模原線「南大沢」駅周辺地区で行われ、スマホ用のWebサイトやアプリ(「TAMa-GO」)で各種チケットを購入、または参照することが出来る。鉄道やバスに加え、八王子市と連携し設置したシェアサイクルなど、複数の移動手段を組合せ、11月中は南大沢駅周辺の店舗と対象エリアの4つの公園(富士見台公園、上柚木公園、長池公園、小山内裏公園)と連携したイベントも実施、南大沢駅を中心とした半径1.5km程度の対象地域「まち」の回遊性や賑わいの創出効果を高める。購入できるチケットは2種類。「南大沢お買い物チケット」と「南大沢周遊チケット」だ。前者は電車での移動と買い物を、後者は南大沢周辺で路線バスと電動シェアサイクルを使った周遊を想定したものだ。地元の商業店舗や駅周辺の公園と連携したWebスタンプラリーを展開しつつ、スマホカメラを通じてARマップ(*AR/拡張現実のこと)を提供したり、スマホ専用アプリ「The TIMESALE」のスーパーや飲食店、ドラッグストアなどのタイムセールス情報を提供しながら、参加する対象者の行動変容についても考察する。また、本実証実験では、南大沢駅前に428,041.26 ㎡の広大なキャンパスを持つ東京都立大学の学生が作成したデジタルマップにより地域の公園や神社等のスポットが紹介される。南大沢スマートシティ協議会のホームページも、座長を務める東京都立大学の清水哲夫教授により運用開始が宣言されている。南大沢地区は5Gと先端技術を活用した分野横断的なサービスの都市実装を実施する「スマート東京」の先行実施エリアの一つ。先端技術の研究とICT活用を図りながら、持続可能なスマートシティの確立を目指している。プロジェクトには上記の他、イトーヨーカドー、㈱多摩ニュータウン開発センター、南大沢協力の会、NTTドコモ、KDDI、JTOWER、SOFTBANK、NTT東日本、UR都市機構、BOLDRY、HELLO CYCLE、FUJITSU、ベスプラなどが参画している。本実証実験で隠れた目玉とも言えるベスプラ社の「The TIMESALE」。店舗で企画される旬のタイムセールを店舗の近隣に居まい・移動し・働く人などに配信する。例えばドタキャンで余った商品、新商品のお試し&レビュー、誤発注により大量に仕入れてしまった商品、商品の入れ替え、在庫整理、雨の日割引、感謝祭・地域向け還元セール、キャンペーン告知など、お店で売りたい商品をタイムセールで捌くことが出来、食料品店や飲食店などでは「フードロス」低減にも貢献し、消費者のお財布にも優しい。MaaS的観点に戻れば、利用者の行動変容を促すツールと言える。まさに都立大のデジタルマップや、利用者分析ツールなどとも連携できるなら、今後はデジタルチケットやクーポン、スタンプラリーなどとともにMaaSアプリ中の定番機能の座を確たるものに出来るかもしれない。*本記事のアイコン画像は以下の著作物を改変して利用しています。「長池公園(https://www.city.hachioji.tokyo.jp/citypromotion/gallery/others/p202042.html)」、八王子市、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス 表示 4.0(https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja)
地方創生に向けた官民連携、地域課題解決型研修プログラムがスタート ~初年度は静岡県伊東市において「若年人口の流出・減少」をテーマに実施します~
10月25日 新型コロナウイルス感染症に第6波は来るのか?現在は束の間の休息なのか、このまま第6波の影響を受けることなく、観光需要は回復軌道に乗るのか?先行き不透明な状況が続くなか、東急は今年1月からコロナ禍により利用者が減少する首都圏の通勤路線沿線(東急田園都市線)向けに、首都圏におけるMaaS事業の一環として「DENTO」を提供して来た。創業時から東京への通勤需要が経営の大前提だった同社は、昨今テレワークなどの進展によりビジネスモデルの変革を迫られている。2020年4月~6月のデータだが、東急電鉄の通勤定期券利用客数は、前年同月比26.7%減となり、7月~9月期は29.9%減と更に悪化した。沿線に観光地を持たない田園都市線にとって定期券の売上下落は死活問題だ。そのような台所事情を抱えた東急が始めたサービスが「DENTO」だ。同サービスは、通勤定期を「生活定期」に変える試みだ。利用者は「LINE」上で移動の動機を喚起するよう企画された、仕事をしながら通勤できる高速バスなど鉄道以外の交通手段、テレワークスペース、飲食・レジャー分野を対象としたサービスチケットを購入する。高速バス運賃は片道1000~2300円、通勤定期があれば100円引き。帰路は同じく通勤定期保有者限定で相乗りハイヤ―(8人乗りを4人で利用)を片道3980円で毎週水金のみ用意した。テレワークスペースは沿線に7箇所、1000円~/日。屋外施設やスポーツジムの一角にもワークスペースを設けた。飲食・レジャー分野では定期保有者限定で沿線の飲食店や商業施設、映画館などの割引クーポンを提供した。水曜と金曜には会社帰りに大井町駅周辺の飲食店の特別メニューと前述の都心から大井町駅までの相乗りハイヤーのセットもラインナップに加えた。食事後は大井町から有料座席指定サービス「Qシート」と組み合わせればアフター5を満喫できる。1/13(水)から4/28(水)までの実証期間において登録会員数2万人を目指した、本取り組の結果は、5/11に東急のニュースリリースで発表されている。実証実験の結果はLINEのお友だちが18,287名、会員は10,203名、チケット購入数は22,706枚だ。高速バスは復路の需要も確認できたものの、平均客席稼働率は1割弱。都心から横浜市青葉区内の自宅を結ぶ相乗りハイヤ―の利用総数は低迷した。発着エリアやサービス利用時間帯の拡大や認知度の向上に課題があった。一方、テレワークスペースは、たまプラーザ駅以西を中心に8拠点展開したところ、30-50代の男性を中心に利用があり、リピートユーザー率は50%と比較的高水準だった。カフェや商業施設内に新設した拠点では家族利用もあった。100円乗り放題チケット(東急線ワンデーパス、東急バス1日乗車券)による移動や施設利用は、購入者の48%が予定外の外出を行い、45%は東急グループの施設を利用している。交通割引による移動や消費促進効果が確認できたという。アクティブクーポンの利用も2000枚を超えた。利用者アンケートでは57%の利用者から定期券保有満足度が向上したとの回答を得た模様だ。報告書の結びに東急は「今回会員登録者の6割がサービスを利用せず、また総販売数の9割以上は100円チケットだったことから、今回提供したサービスへの支持には濃淡が見られる」との結論を出しているが、ポストコロナを見据えた郊外地区の「職・住・遊」をシームレスにつなぎ、移動(「生活定期」)を基点とした新たなサービス開発の感触を得たという側面も見逃すことは出来ない。利用の中心となった「100円チケット」は、日常の移動からポイントを得、利用者をインセンティブに繋ぐ「根拠」になったし、沿線施設(南町田グランベリーパーク、二子玉川ライズ、東急ストア、渋谷ヒカリエ、東急スクエア、たまプラーザテラスなど)の優待クーポンの利用者数の多さも、インセンティブの消費方向を示す参考となった。自由で豊かな東急沿線での働き方を実現すると謳ったサービス「DENTO」に、敢えて注文を付けるなら、第6波が来たときにも安心して利用し続けられる生活サービス開発をお願いしたいといったところか。
砂丘周辺で自動運転バス 鳥取市が来年2月実証実験 他
10月22日 鳥取市は2022年2月より、鳥取砂丘周辺において自動運転バスの実証実験を始める。実験期間は2週間を予定している。バスの運行ルートは、市内の鳥取砂丘会館~チュウブ鳥取砂丘こどもの国までの約2㎞となる。同市が令和2年3月に出した「【概要版】鳥取市生活交通創生ビジョン」によると、南部地域(河原、用瀬、佐治)、南東部地域(国府)のバス路線の再編や、乗合タクシーの導入に取組んできた。市内の公共交通の現状は、人口減少(H21:196,110人→R1:187,034人)や少子高齢化(令和12年の高齢化率は33.3%となる見込み)、自家用車の普及等を背景に利用者の減少に歯止めがかからず、更に運転者不足、運転者の高齢化を理由とするバス減便、路線縮小が続いており、今後さらに深刻化してゆくことが懸念される状況だ。モータリゼーションの進展により、バスの利用者は平成20年から平成30年までの間に13%減少した。令和12年には年間利用者数が250万人を下回ると予想されている。また市内の交通空白地域(バス路線がない地域、バス停や鉄道駅から半径400m外の地域)が存在する(平成27年度の国勢調査に基づく市全体の生活交通による人口カバー率は93.4%)。市民の足を支える生活交通(路線バスや地町村の有償運送、乗合タクシー、100円循環バス「くる梨」)の維持・確保に支出される補助金等は、平成30年で313,902千円となり増加傾向を示す。また、生活交通の担い手となる路線バスの運転手は平成21年度から令和元年までの10年間で20人(全体の10.0%)減少した。同時に運転手の高齢化も進む。タクシーについても、鳥取県東部地域全体では、平成24年度から平成30年度までの6年間に124人(28.8%)減少している。市が公共交通事業者に行ったヒアリング調査によると、令和2年から5~10年後までに路線縮小や廃止の可能性がある路線は、民間バス路線で5路線、加えて市や地域が主体となり運行している路線が2路線の計7路線となる。鳥取市はこのような公共交通の背景を踏まえ、10月19日に公共交通事業者や有識者などを招き、今後の計画などについて「令和3年度第1回鳥取市次世代モビリティ推進会議」を行った。会議では、①鳥取市地域交通の現状と課題について、②国内における自動運転サービスに関する取組状況について、③令和3年度における自動運転実証実験の計画案について、④鳥取市公共交通自動運転化ロードマップの策定方針になどについて話し合われた模様だ。実験は最大12人乗りのEV車両を用いて、5段階にレベル分けされた自動運転の機能のうち「レベル2」(運転手が同乗し、ハンドルから手を離した状態で自動走行、緊急時には手動で対応する)で行われる。市は事前に予約を受け付けた上で、市民・観光客などおよそ400人に無料で乗車体験をしてもらい、今後、市街地や山間地でも実験を行った上で、令和7年度には本格導入を目指すとしている。集客については同じく自動運転バスの実証を行う前橋市が、前回の実験で参加者が伸び悩んだため、募集場所を駅や市役所に登録窓口を設けるなどの工夫を講じていた。実証実験では、参加する市民の声が非常に重要となる。本計画には、WILLER(自動運転技術の提供)や日ノ丸自動車(鳥取市/運行)、日本交通(同/運行)などが参画する。モデル地域は本年度内に市街地や観光地、山間地に1ヶ所ずつ設定される模様だ。
令和3年度前橋版MaaSについて 他
10月21日 この10月から前橋市で、令和3年度「MaeMaaS(前橋版MaaS)」実証実験が始まった。本実証実験は国交省が取り組む「令和3年度日本版MaaS推進・支援事業対象地域」として、採択を受け令和4年3月31日まで実施される。前橋市内の交通再編の有効化を目的とし、市内の多様な交通モードを分かりやすく案内し、市民向けの「サービス」の提供を行うとともに、社会実装を見据えた検証を行う。今回の実証サービス内容としては、まずリアルタイムの経路検索提供(JRや上毛電鉄、市内路線バス、デマンドバス、シェアサイクル「コグベ(cogbe)」に対応)が挙がる。オープンデータが活用され、「MaeMaaS」のWebサービス上で乗りたいバスのリアルタイムの運行情報をスマホで(「MaeMaaS」はスマホ専用サービス)閲覧できるようになった。次に、これまで各アプリに分散していた市内3エリアを運行するデマンド交通(るんるんバス、ふるさとバス、城南あおぞら号)の予約機能が、Webサービス「MaeMaaS」上に集約され、使い勝手が良くなった。更に同Webサービス上で「デジタルフリーパス」の販売が出来るようになった。本実験では、対象となる市内交通が<1日乗り放題>となる。利用時は画面上のボタンをスワイプ(横にスライド)し、表示されるチケット画面をバスの運転手に提示するルールとした。そして最後はマイナンバーカードと交通系ICカードを紐づけることで、前橋市民限定の割引サービスが使えるようになる。*本割引サービスは「デジタルフリーパス」「デマンド交通」で利用可能となる。その他には新型コロナウイルス感染症への対策として㈱ドコモ・インサイトマーケティングの「モバイル空間統計」の閲覧が可能となり、目的地まで(国内全域)の混雑具合を確認し、移動時間をずらしたり混雑エリアを避けることで安心して移動できるようになった。昨年度の実験は登録者が1,000人と伸び悩んだため、前橋市*は今回、市役所と駅に登録窓口を設け、利用者を増やしたい意向だ。*実施主体は「前橋市新モビリティサービス推進協議会」。同市はこの他、群馬大などとつくる「前橋5G社会実装プロジェクト」で顔認証技術を使った自動運転バスへの手ぶら乗車(きっぷ・現金精算が不要となる)実験なども行っている。今回の実証ではこの技術はお目見えしないが、「MaeMaaS」の本サービス開始時に、顔認証技術の利用が可能になっていれば高齢者の利用にも弾みがつくものと思われる。
折り畳めるモビリティ「WHILL Model F」 価格・重量が半分に 他
10月20日 国土交通省のホームページにひっそりと「地域鉄道対策」とのページがある。冒頭には「地方鉄道やLRTなど、地域輸送を担う鉄道、軌道等の活性化を図るための業務を行って参ります」とある。地方鉄道とは新幹線、在来幹線、都市鉄道に該当しない、中小民鉄やJR、一部大手民鉄、中小民鉄及び旧国鉄の特定地方交通線や整備新幹線の並行在来線などを引き継いだ「第三セクター」のうち、中小民鉄と「第三セクター」を指す。令和3年4月現在、全国で95社、うち74社(約8割)は鉄軌道業の経常収支ベースで赤字だ。国としては「まず、沿線地域が地域の将来にとって、どのような交通機関や輸送サービスが必要かを議論、判断すべきだ。その結論に基づいて鉄道活性化に取り組むのであれば、地元自治体・地域が中心的な役割を担い、国がそれを支援する」との立場だ。2008年6月に開催された「交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会」は、今後の少子高齢化を迎える中、地方鉄道には「バスや福祉タクシー等地域の様々な交通手段と連携しながら」高齢者の移動、駅の拠点性を活かし、地域の形成や発展に寄与、地域活性化に極めて大きく貢献するよう期待されており、地域と一体になったサービス向上を通じ、地域の暮らしに組み込まれた持続可能な存在になることが必要としている。現代のMaaS社会を見据えた提言と言えよう。そして、潜在的利用者が見込まれる地方都市近郊においては、駅間の短縮や覚えやすく利用しやすいダイヤ、弾力的な運賃設定等をパッケージ展開、地域の輸送ニーズにきめ細かく応える「コミュニティレール化」も有効なアプローチであり、また鉄道が地域の観光資源を結んで走ることにより、観光振興の役割を果たし、イベント実施や車両改装により「鉄道自らが観光資源」となり観光客の取り込みを図ることも有効としている。国交省は更に「地域鉄道活性化に向けた取組」や「地域鉄道の誘客促進及び経営改善に係る事例集」をまとめている。情報収集力の限られる鉄道事業者事業者向けに、エッセンスを取りまとめた資料だと思われる。国鉄宮福線、宮津線を継承した第三セクター北近畿タンゴ鉄道(KTR)は、2013年から上下分離方式を導入、2014年5月に運行事業の引継ぎを全国から募集、WILLER ALLIANCEを選定、WILLER TRAINS(「丹鉄」)を子会社として設立した。「丹鉄」は2015年4月から宮福線・宮津線の鉄道運行事業を始めた。KTRは同日以降、第三種鉄道事業者として鉄道施設を保有している。全国初の上下分離方式の認定で2015年4月~2025年3月まで10年間行われる。KTRは鉄道用地・鉄道施設を保持し、丹鉄に有償で貸与、丹鉄は運行に専念した経営を、KTRは施設や車両維持、修繕、施設整備に係る必要額を自治体から財政支援され、施設設備の費用は国の補助を活用する。KTRは鉄道施設・車両の維持、修繕業務を第二種鉄道事業者である丹鉄に委託、丹鉄も間接的に負担が軽減される仕組みだ。丹鉄は民間のノウハウやアイデアを活用、運行に専念した自由な経営が期待される。「第二種~」としては、安全な輸送サービスの確保、集客・増客対策の実施、地域が一体となって展開する利用促進による増収、沿線自治体等による取組み(観光整備事業推進による沿線観光地の魅力向上、駅待合施設、トイレ、バリアフリー設備等の整備)が委ねられる。現在の「地域鉄道」には、鉄道を走らせる事業以外にも、地域の移動ニーズを汲み、沿線交通体系の一部としての「席」が認められ、鉄道維持熱を引き出すなど様々な「経営力」が求められている。丹鉄の成果に期待したい。国には、地域・観光の価値を高める潜在的能力を持つ「鉄道」という素晴らしい事業・技術・文化を再認識し、自ら稼ぐ「95社の地域鉄道」を育てるため、事業者が経営に取り込み易い資料の充実、人的・技術(MaaSや自動運転との組み合わせ)・台所回りの支援(コンサルテーション)を、常時提供できる専門組織の確立を期待したい。
2021年10月18日『NIKKO MaaS』に「湯西川温泉デジタルフリーパス」がラインナップ! 他
10月19日 「GoToトラベル」の行方はどうなるのだろうか?10/15観光関連事業者などの団体「日本観光振興協会」は、斉藤国土交通大臣に「GoToトラベル」の早期再開を要望した。要望書では、ワクチン接種済みの人などを旅行自粛の対象から外すことが出来る仕組みづくりや、同事業の早期再開、海外旅行の再開に向けた、水際対策の緩和などが求められた模様だ。これに対し、斉藤大臣は「GoToトラベル」は期待が大きく、経済再生の起爆剤となる事業だが、感染防止も重要だ。ワクチン証明を活用する実証実験などを通して再開時期を検討したい」と述べた。観光庁では10/15から全国100余りのホテルや旅館で、新型コロナウイルスのワクチン接種を済ませた人などを対象にした行動制限の緩和に向け、実証実験を始めると発表している。実験では宿泊客がチェックインする際、ワクチン接種の履歴や検査結果の確認を円滑に行えるかどうかを検証、利用客に対しては宿泊した2週間後に体調の変化などについてアンケート調査を行うなどして対策の効果を確かめるとしている。岸田総理大臣は、政府が再開を目指す同事業について10/16に東日本大震災の被災地を訪れた際「週末に集中してしまっていた。せっかく平日があるわけですから。平日は少しまたポイントを深堀するというようなことを考えたらどうか」と発言し、また各自治体の県内の旅行割引を、隣接する県まで拡大できないか検討すると表明している。観光庁が発表している「主要旅行業者の旅行取扱状況速報(令和3年8月分)」によると、新型コロナウイルスの感染拡大による旅行の延期や中止の影響等により、対前々年(2019年)同月比で、総取扱額は各部門で大幅に減少したとの結果になった。主要旅行業者45社・グループの旅行取扱状況をまとめた結果は、海外旅行は総取扱額は対前年同月比172.0%、対前々年比2.7%、外国人旅行は732%、29.7%、国内旅行は108%、25.6%となっている。「GoToトラベル」の再開より少し前の開始となるが、浅草から東武線経由、会津若松からは会津線で相互乗り入れを行う野岩(やがん)鉄道の会津鬼怒川線(愛称:ほっとスパ・ライン)は、公式ページで10/28(木)から栃木県の日光地域で始まる環境配慮型・観光MaaS「NIKKO MaaS」で、会津鬼怒川線と湯西川温泉方面への路線バス(日光交通)が利用区間に含まれる「湯西川温泉デジタルフリーパス」をアピールしている。同デジタルフリーパスは4,500円(浅草発/大人)、有効期間は4日間、鉄道利用区間は乗車駅~下今市駅までの往復乗車券及び下今市駅~東武日光駅、湯西川温泉駅(乗り降り自由区間)、バス利用区間は鬼怒川温泉駅~東武ワールドスクウェア~日光江戸村と、鬼怒川温泉駅~川治温泉~湯西川温泉の2区間となる(*詳細は https://www.tobu-maas.jp/lp)。鉄道やバスなどの公共交通を利用するか、環境にやさしいEV・PHVカーシェアリング(24時間・365日貸出・返却可能)を利用し、併せてRE100による充電体験もしてみたいところだ。駅周辺の移動には、シェアサイクルも用意されているようなので、こちらもぜひ検索してみていただきたい。
衆院選北海道4区 立候補予定者討論会詳報<下> 自民党・中村裕之氏 立憲民主党・大築紅葉氏 他
10月18日 10/13に衆院選北海道4区の立候補予定者討論会が、北海道新聞の小樽支社主催にて行われた。立候補予定者は、自民党の中村裕之氏と立憲民主党の大築紅葉氏の両氏だ。討論の一つの論題となった北海道新幹線は、2030年度末の札幌延伸を目指し、新函館北斗~札幌までの212kmで工事が進む。新幹線の延伸が完了すると、並行する函館本線(在来線)の函館~小樽間はJR北海道の経営から分離されることとなる。分離された在来線は、今後沿線自治体と北海道により存廃が決まることとなる。その中で長万部~余市間と比較的輸送密度が高い余市~小樽間については扱いが変わる可能性がある。討論会で大築氏は後志(しりべし)の公共交通にはMaaSに注目していると発言している。自動運転やICTによる効率的な配車システムや移動手段によって費用の圧縮や人手不足の解消に期待を寄せる。余市~小樽間については存続、国の支援や企業版ふるさと納税、ガバメントクラウドファウンディングを利用、初期コストと維持コストを補う方法を考えているとした。長万部~余市間は維持を期待するも、輸送密度が低い点や高規格道路が出来ることなどを踏まえ、バス転換を想定しているようだ。一方の中村氏も、長万部~余市間は鉄路をJR自身の経営で残すべきとしている。長万部~余市間は新幹線の倶知安駅を起点にバス路線の充実を図るとしており、公共交通全般においては高速道路の延伸も考えているという。一方沿線自治体は、どのように考えているのだろう。函館本線の内、JRから分離される函館~小樽間は、北の①後志ブロックと南の②渡島ブロックに分けて議論が進む。2区間に分け議論されるのは、②は本州~北海道を結ぶ貨物が運行されており、物流の動脈を担うため鉄路そのものの廃止は考えにくい。しかし①は旅客のみのため、旅客列車を廃止すれば、鉄路そのものの廃止に直結する。長万部町は両ブロックの境界上にあるため、その意向は両区間の存廃に影響を与える。8月20日付けの北海道新聞では、長万部町の意向は「旅客廃止」の方向で町民の合意形成に動いているとされている。同町広報誌の5月号「並行在来線」の記事では、渡島ブロックの鉄道存続に肯定的な見解が掲載され、6月号においては、新幹線札幌延伸後30年間の「鉄道のみ」、「鉄道+バス」それぞれのケースの試算がなされた。結論としてはバス転換した方が自治体の負担は少ないとの結果だ。7月号に掲載された住民への聞き取り調査の結果では「バス網が充実すれば、鉄道には拘らない」との結果も出た。並行在来線周りの経済構造を簡単にまとめると、一般に新幹線を運営するJR各社は、鉄道建設・運輸施設整備支援機構に「新幹線設備の借り賃」を支払い、同機構はJR貨物に「貨物調整金」を補助、JR貨物はこの「貨物調整金+線路使用料」を第三セクタ―に支払う。第三セクターはこれらの財源と自社の運賃収入で台所を賄う。だが「貨物列車」や「バス転換」は持続可能な仕組みと言い切れるのだろうか?「貨物列車」は、高速道路を走るトラックの隊列走行が実用化されたり、航空各社・新幹線との競争に晒され、或いは置き換えられる可能性もある。転換されたバス路線に待ち受けるのは、乗客の減少と路線バスの維持コストだ。今や全国の路線バスは急速に自治体の運営するオンデマンドバスに置き換えられているのが実情だ。在来線問題と称される負のスパイラルから脱却するには、新しい交通システムと経済構造(MaaS経済)に対する俯瞰と、新たな交通経済の育成を念頭に地域の公共交通を再編する視点が必要となる。制限を生む補助ではなく、可能性を生む領域プレイヤーの協調よる需要創出と「共通コスト」はまとめ、支払いを分散出来る台所、「個に分散する移動」と「纏めても良い移動」需要をユーザーに提供できる仕組みの構築にあるように思う。