4月28日 昨日は、国内における「標準的なバス情報フォーマット(GTFS-JP)」および「GTFSリアルタイム」活用の草創期から、今回2022年3月の一社)社会基盤情報流通推進協議会(AIGID)による「GTFSデータリポジトリ」構築、試験運用までの流れについて、その概要についてお話した。本日はその続編となる。「GTFSデータリポジトリ」に登録されたデータは、国土交通省データプラットフォーム上で検索・表示・ダウンロードできるようになった。検討会では、有識者や県、民間事業者など多様なメンバー参加のもと、公共交通分野のデータ横断的活用の実現に向け、「国土交通データプラットフォーム」と連携して公共交通データを掲載・利用するためのAPI仕様検討や開発が行われている。これにより、簡単にはAPIを介した交通情報提供や交通分析等の活用が可能となる。*リポジトリは直訳すれば倉庫や金庫のこと。データの一元管理や世代管理(過去、現行、次期)、API配信などを行う。具体的には(「GTFSデータリポジトリ」の構築により)県や事業者等のデータ作成者はダイヤ改正時などに伴い、更新されるデータを「GTFSデータリポジトリ」に登録することが出来るようになる。「GTFSデータリポジトリ」は登録されたデータの提供情報を解析し、現在日時から相対的に、現在ダイヤ、次期ダイヤ、過去ダイヤを自動的に判定する。APIでデータを検索及び取得する際、現在有効なGTFSデータ、もしくは過去及び将来有効なデータを指定して、単一のURLでデータ取得が可能となる。①これにより、データ利活用者は、現在及び過去・将来の交通情報をデータ分析に活用することが可能となる。②また、乗換案内サービスなどのコンテンツプロバイダーは、ダイヤ改正後に有効となる交通情報を事前にシステムに取り込み、遅延なくサービス等に反映するといった利活用を見込むことが出来るようになる。「GTFSデータリポジトリ」のAPIを活用した事例として、GIS*を用いた交通分析システムが挙げられる。㈱MIERUNEは、GISオープンソフトウェアである「QGIS」のプラグイン(拡張機能)として、GTFSデータを可視化する「GTFS-GO」を開発・公開しているが、同プラグインは、GTFSデータを地図上に可視化し、バス停の表示や路線の色分けが出来、非常に便利である反面、利用者がPCに「あらかじめ保存したファイル」を選択してGIS上に取り込む必要があるなどの手間があった。そこで、この度「GTFSデータリポジトリ」のAPIを用いた連携機能を、同プラグインに追加した。これにより、GIS分析を行う利用者は、事前にデータを収集し、PCに保存することなく、「GTFS-GO」上の画面で「GTFSデータリポジトリ」に登録されたデータから、必要なデータを選択し、可視化することが出来るようになった。*地理情報システム(Geographic Information System)は、地理的位置を手がかりに、位置に関する情報を持ったデータ(空間データ)を総合的に管理・加工し、視覚的に表示し、高度な分析や迅速な判断を可能にする技術。今回「「国土交通データプラットフォーム」」と「GTFSデータリポジトリ」のAPI連携を実装したことにより、「GTFSデータリポジトリ」に登録された、現在有効なGTFSデータ(バス停、経路、バスの動き)を、国土交通プラットフォーム上で、検索、表示、ダウンロードを可能となった。「国土交通データプラットフォーム」では、その他様々なインフラデータ(国土に関するデータ、経済活動に関するデータ、自然現象に関するデータ)を横断的に検索や可視化を行うことができる。今後も、各種データとAPI連携し、データ連携を順次拡大していく予定としている(*国土交通データプラットフォーム:https://www.mlit-data.jp/platform/index.html)。前述の東京大学生産技術研究所の伊藤昌毅氏は、この度発足した一社)「日本バス情報協会」の代表理事に就任した。協会設立の狙いは、世界的に見ても信頼性が高い日本の公共交通機関のデータの整備や活用を進めるためとしている。いまや公共交通機関の利用者の多くが、米グーグルなどの地図アプリで経路検査kサービスを使っているが、データの用途は経路検索に限らない」とし、信頼性の高いオープンデータとして様々な用途に活用する「ワンソース・マルチユース」を実現するとしている。現状は、同じ公共交通事業者の運賃データでも、運輸局への届け出や、運賃収受システム、運賃案内向けで内容が異なるため、効率性に課題がある。公共交通事業者のデータをオープンデータとして活用するためには、ダイヤ改正ごとのデータ作成など、公共交通事業者がバス情報のフォーマットデータを継続して作成するのは難しい実態もある。バス事業者はダイヤ改正の前日の深夜にすべてのバス停の時刻表を人海戦術で貼り替えるなどの対応をしており、経路検索サービスへのダイヤ改正データの反映は大幅に遅れるケースなども見受けられる。このため、公共交通事業者や経路検索サービスなどの企業が協会に加わるメリットは、信頼性の高いデータを迅速に提供するノウハウを共有できる点にあるとした。その上で、日本の公共交通機関は運行時刻の正確さや柔軟な運行形態など、世界に誇れる特徴があるにも関わらず、(データが未整備のため)経路検索サービスに表示されなければ、地方の公共交通機関は(外国人の旅行客などに)その存在すら知られにくい。世界に情報を発信するためには、GTFSの国際組織がつくるデータ仕様に日本の交通機関のノウハウやアイデアを反映させる必要があると指摘、国際標準への参画が今後の課題だとしている。また、同協会の西沢明専務理事は、国内においては、現在、公共交通事業者が基本的に「紙」で提出している、国交省の許認可手続きにバス情報フォーマットのデータを流用できる必要性を説いている。今後、国交省の「国土交通データプラットフォーム」のデータ連携の進展や「日本バス情報協会」の活動に期待したい。
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公共交通データの活用広げる 「経路検索超える価値を」 他
4月27日 遡れば、2018年10月にヴァル研究所が公共交通機関情報のオープンデータ化事業を、㈱ビーグル―(愛知県名古屋市、コンピュータシステム及びモバイルソリューション企画・開発・販売等)と業務提携し、始めている。2社は同事業で「標準的なバス情報フォーマット(GTFS-JP)」および「GTFSリアルタイム」のデータ作成、作成支援、活用方法の提案、「えきすぱあと」製品への取り込みなどを行うものとしている。「GTFS」は、公共交通機関の停車場所(駅やバス停)の名称や位置情報、路線名称、時刻、運賃等の情報を記述する世界標準フォーマット。2022年3月現在、全国のバスを中心に船、私鉄・路面電車を含め、473の自治体及び交通事業者が自治体オープンデータカタログサイト等を通してデータを公開している。公共交通の静的データの標準化については、「Google乗換案内」で採用されていた公共交通機関の時刻表と地理的情報に関するオープンフォーマット「GTFS」に準拠した「標準的なバス情報フォーマット(GTFS-JP)」がある。同フォーマット(GTFS-JP)は、2017年3月に国土交通省がインターネットの経路検索におけるバス情報拡充のために定めたデータ形式を指す。また「GTFSリアルタイム」は、公共交通機関が、運行車両に関するリアルタイムの最新情報をデベロッパーに提供するためのフィード仕様とされる。「GTFSリアルタイム」のデータ作成は、ヴァル研究所グループのVISH(ヴィッシュ)株式会社*が提供するクラウド型のバスロケーションシステム「BUS CATCH(バスキャッチ)」や、ヴァル研究所が提供する位置情報の活用範囲を広げるロケーションサービス「SkyBrain(スカイブレイン)」を軸に展開された。*同社は現在も「BUS CATCH(バスキャッチ)」(バス位置情報サービス+施設の業務支援システム)の開発、販売、運用を行っている。その後も、バスの位置情報をリアルタイムに配信する「バスロケーションシステム」は全国のバス路線で提供されつつ、利用者の使い勝手の向上、様々な経路情報サービスへのデータ提供、ビッグデータを基に公共交通の改善が行われて来た。2018年当時、バスコンサルティング事業などを手掛ける㈱トラフィックブレイン(代表:太田恒平氏)が「日本モビリティ・マネジメント会議(JCOMM)」開催に合わせ、愛知県豊田市で「バスロケ世直し隊」を開催、全国のバス事業者やバスロケシステムの提供会社、経路検索サービスを提供するコンテンツプロバイダーや公共交通に関わる技術者や学術研究者が参加している。同社はこの場で、動的データの標準化・オープンデータ化について発表している。こうした動きに伴い、岡山市や神戸市、富山県、大分県など全国26カ所でこれらのフォーマットに準拠したオープンデータが公開され、「Google乗換案内」ではこれらの運行情報に基づいた経路検索が可能になった。「標準的なバス情報フォーマット(GTFS-JP)」に「GTFSリアルタイム」を用いることで、バスロケとも連携が可能になり、この形式でバスの動的情報をオープンデータとして公開することにより、「遅延情報」を加味した経路検索や複数のバス会社の情報を一覧できるバスロケマップの構築が可能となった。前述の太田氏は、バス情報の動的データを、GTFSリアルタイムをベースに標準化し、標準フォーマットとして公開されたオープンデータを既存サービスで取り込む仕組みを、自治体やバス事業者が負担するのでなく、バスロケシステムの提供会社が標準で提供していく流れの必要性を説き、こうした機能を備えていることを補助金の要件にすれば、バスロケシステム提供会社の(開発の)動機付けになるとしていた。「バスロケ世直し隊」の太田氏は、㈱トラフィックブレインの代表を務めながら、同時に国交省が設置した「バス情報の効率的な収集・共有に向けた検討会」の座長も務め、東京大学生産技術研究所の伊藤昌毅氏とともに、データに基づくバス事業の近代化に向けて、国交省に提言なども行い、動的データの標準化やオープンデータ化の推進と、バスロケ補助金要件に標準的オープンデータの提供を追加するよう働きかけを行ってきた。当時「バスロケ世直し隊」の決起集会に参加したのは、バスロケシステム提供会社となる㈱リオス、バス会社でもある国際興行㈱(*ジョルダンと連携)、経路検索サービス提供会社となる㈱ヴァル研究所など。その後も「GTFS」は、2021年1月には岐阜乗合自動車が、YE DIGITALと西鉄エム・テックが共同開発したスマートバス停(クラウドサービス:「MMsmartBusStop」)などにも活用が広がっている。「MMsmartBusStop」にGTFSを取り込むことで、時刻表を自動生成することが出来るようになり、ダイヤ改正日にも自動的に改正後の時刻表がスマートバス停に表示されるようになっている。また、2021年4月には、新潟県燕市が燕市のコミュニティバスの実証運行において、運行事業者となる新潟交通観光バス㈱との間でデータの受け渡しを行うために、「標準的なバス情報フォーマット」を定めたり、広島県のバス協会が県内のバス事業者12社の「GTFS-JP」「GTFSリアルタイム」とを公開するなどの動きがあった。これらの流れの中、今回2022年3月には、一社)社会基盤情報流通推進協議会(AIGID)が、国交省のデータプラットフォームにバス情報等のGTFSフォーマットによる公共交通データを連携するため、県や事業者等と実証実験、検討会を実施したと発表、GTFSデータを一元的に管理する「GTFSデータリポジトリ」を構築し、試験運用を開始している(*2022年3月現在、「GTFSデータリポジトリ」は、試験運用中となるが、「API仕様検討やその試験利用を行う検討会」に参加する山形県は28件、富山県は26件、兵庫県は27件のGTFSデータを登録しており、またその他の自治体や事業者からオープンデータとして公開されているデータを約370件取り込んでいる)。(続く)
独アウディ、「自動運転時はハンドル格納」の方針変わらず 他
4月26日 福岡県直方市において、新たなMaaS及びオンデマンド交通の実証実験が始まった。実施主体は直方市と伊藤忠テクノソリューションズ㈱となる。直方市は福岡県の北部に位置し、遠賀川に沿って開ける筑豊平野のほぼ中央に位置する。市の東側は、福智山山系で北九州市小倉南区と接し、西は宮若市、鞍手郡鞍手町と接している。南は田川郡福智町、飯塚市、鞍手郡小竹町と、北は北九州市八幡西区などに隣接している。東部には福智山とその支脈が、西武には六ヶ岳の丘陵が広がり、市域の中央は比較的平らな地域になっている。地域の中央には、彦山川、犬鳴川を集めた遠賀川が流れ、さらに下流となる遠賀郡芦屋町で玄界灘に注ぐ。市街地は遠賀川と筑豊本線に挟まれた地域にとなり、東部と西部は住宅地、南部は工業地帯、北部は農村地帯と言える。北九州都市圏に属し、市民全体の15%は北九州市に通勤・通学している。筑豊炭田に位置し、明治から昭和30年代までは石炭産業で栄え、筑豊地方の石炭集積地と問屋的役割を担う。エネルギー革命により、石炭産業は衰えるも、市内には大規模な炭鉱が少なく、鉱山労働者の比率が多くなかったこともあり、筑豊の他の市町村に比べると、閉山等の影響は少なかった。炭鉱閉山後は、市内に工業団地が造成され、鉄鋼業や機械工業が主力となり、近年は直方周辺に自動車産業の集積が進む。市内の公共交通機関は、JR九州の筑豊本線、筑豊電気鉄道、平成筑豊鉄道が走る。路線バスは西鉄バスとJR九州バス、直方市のコミュニティバス「なのはな君」が担う。コミュニティバスは、市から市民に向け、ホームページ上で「公共交通は乗らなければ、路線の維持が困難になり、路線の廃止や減便となってしまいます。環境保全のためだけでなく大切な公共交通機関維持のためにも、公共交通の「かしこい使い分け」への転換を家族や地域のみなさんで一緒に考えていきましょう。」と呼びかけたり、「状況によりジャンボタクシー車両ではなく、タクシー車両で運行することがある」との注意書きを添えるなど、運営側の苦しい台所事情も垣間見える。一方で、上頓野地区との直方駅を結ぶ、上頓野線などは「令和2年10月のダイヤ改正より、買い物時間を長くとることができるようになりました。」など、利用者を増やすため、関係者が手を尽くしている様子も伺える。高速バスは福岡市の天神と、特急バスは北九州市の砂津バスセンターと同市の直方バス停(旧直方バスセンター)を結ぶ。直方パーキングエリアには福岡市(天神)、北九州市(小倉*)、長崎市など、各方面へのバスが発着している。*西鉄バスの直方(特急)小倉線は2022年4月1日のダイヤ改正にて路線廃止となっている。この直方市で、2022/5/9~8/5まで「のおがたMaaS」実証実験が行われる。予約受付時間は、スマホ(24時間)/電話は8:00-17:00まで。電話予約とスマホアプリを利用した予約とが利用出来、さらに鉄道・バス・オンデマンド交通を含めた経路検索ができる。また、オンデマンド交通(予約制乗合タクシー)は、同市内の上頓野(かみとんの)、畑(はた)・永満寺(えいまんじ)の2エリアとの移動で利用できる。運行時間は、平日(土日祝日は除く)午前8時~午後5時まで、予約受付時間は前述の通りである。運賃は、大人1回300円(*小学生以下と障害を持つ方は150円)/人となるが、2022年5月9日~5月13日は「無料でお試し利用」ができる。この実験で運行されるタクシーは3台(車体には「のおがたMaaS」のステッカーが貼られる!)。運行協力は、MGタクシー株式会社、有限会社スタータクシー、直方タクシー有限会社の3社、サービス協力は、イオンモール直方、ゆめマート頓野店、ハローデイ直方店となる。オンデマンド交通については、対象エリアとなる上頓野(かみとんの)、畑(はた)・永満寺(えいまんじ)のエリア内での自由乗降が出来る規則だが、(おそらく移動の需要が見込まれる)「特別乗降地」としてエリア外となるイオンモール直方と道目木バス停(西鉄バス路線)付近、頓野郵便局前付近でも乗降可能とした。*但し、予約された方以外の利用は出来ないのと、乗降場所の双方を「特別乗降地」に設定することは出来ない点には注意が必要だ。アプリの経路検索の対象は、福岡県を通る鉄道各路線、直方市を通るバス路線とオンデマンド交通(*上記の対象エリアのみ)となる。この他、市民の利用を喚起するため作成されたチラシには、聞きなれない「オンデマンド交通とは?」が設けられており、「みなさまからの予約内容に応じて随時経路を変えながら運行する、予約制乗合いタクシーです!サービス提供エリア内であれば、(一部の例外を除き)ご指定の場所が乗降場所になります!まずは、「のおがたMaaS(マース)」で生き方を調べてみてください!!」などの、市民、とりわけシニアの方々にも分かりやすい説明が設けられている。また、同チラシの「オンデマンド交通ご利用についての注意事項」には、特別乗降地点から特別乗降地点への移動は出来ない、特別乗降場所でも停留所は設置されていないので、迎えの車を利用者自らが見つける必要がある点、自宅前でも呼び鈴と腕の呼出しはしないので、必ず屋外で待って欲しい、時間が来たら、利用者が乗車していない場合も出発する、原則、予約した場所以外での乗り降りは出来ない、交通事情等により、予定時刻より遅れることがある点、これにより乗り継ぎなどが出来ないケースも生じる場合がある点、上記の運賃説明、遅延による返金はない点、キャンセルは電話、もしくはスマーフォンアプリから実施して欲しい点など、未然に運営者と利用者間のトラブルを回避できるよう、予めオンデマンド交通を利用する上で起こりがちな注意点がまとめられており、さながらMaaS利用初心者、オンデマンド交通利用初心者向けに、よく練られた「便利手帳」的な機能を持たせている。伊藤忠テクノソリューションズ㈱は、川崎市とともに同市多摩区生田エリアで令和4年2月28日~4月28日まで、地元のタクシー会社となる生田交通㈱の車両を活用、生田山の手自治会(交通問題推進協議会)の協力を得て、オンデマンド交通の実証実験「トライアル shotl 生田山の手」を行っている。ちなみに本実証実験については、運行時間を平日8:30~15:30とし、運賃は、大人、乳児、小人一律で1回300円/人(現金のみ利用可)とし、2月21日~25日(8:30~15:30)は、お試し利用期間(無料)とし*、2月28日よりご乗車先着1,000名様に生田駅周辺のお店で利用出来る100円割引券をプレゼントした。*予約開始は、2月21日としているため。今回、伊藤忠テクノソリューションズ㈱は、直方市と情報システム開発を手掛ける連携協定に基づいて実証実験を行っている。二つの実証実験を機会に、今後地方創生におけるMaaSの現場においても、同社が存在感を表す機会は増えるのだろうか。同社は「明日を変えるITの可能性に挑み、夢のある豊かな社会の実現に貢献する。」という使命のもと、先進のITソリューションを組み合せ、お客様のデータ活用や施策を追求していくとともに、社会課題の特定や解決に努める」とした上で、「本実証実験を通じて、地域交通の活性化につながるアイデアや施策を追求して行くとともに、全国にある同様の課題を持つ地域の解決につながるサービス展開を図って行く」としている。株式会社ダイヤモンド社のデジタルメディア「ダイヤモンド ZAi」(https://diamond.jp/zai/)によると、国土交通省の「国土交通白書 2020」では、2030年には、MaaSの国内市場は約6兆円に、2050年までには、世界市場が約900兆円にまで拡大するとの調査結果もあると記載されている。伊藤忠テクノソリューションズ㈱は、タクシーを活用した「オンデマンド交通」に関する実証実験を行いつつ、DX(デジタルトランスフォーメーション)やクラウド、5Gなどの事業を展開している、などとも解説されている。「のおがたMaaS」の進展とともに、同社の今後の動向も見守って行きたい。
日産、30年までに全新車に自動運転 事故回避へ新技術 他
4月25日 自動車、産業車両のダイハツ工業は、4月22日に福祉介護・共同送迎サービス「ゴイッショ」の販売を開始した。同社の「ゴイッショ」は、主に地方自治体を対象に、通所介護施設の送迎業務の共同化をベースに開発した地域の高齢者の移動や暮らしを支援する移動サービスを言う。日々の送り迎えや、お出かけ、お届けものなど、人とモノの移動をもっと気軽に、そうすることで新しいつながりや体験が生まれ、一人一人の毎日がいっそう輝き出す。人が集うことで、地域全体がさらに輝いていく。「地域の想い」が「チカラ」となり、そこにある「資産」を活かし、「助け合う」ことで、今よりもっと豊かな地域になるという、この新モビリティサービスは、どのようなサービスなのだろうか。同社のホームページをひも解くと、「ゴイッショ」の仕組みは、現在、通所介護事務所が単独で行っている送迎業務を「外部の団体」に集約し、地域一帯で運行する共同送迎サービスだと説明されている。さらに「地域の課題に合わせたサービス」を追加することにより、地域移動を支援する仕組みを目指すとしている。各地域における通所介護事業所における現行の送迎スタイルは、各事業者が送迎用車両を保有し、施設の職員が送迎を行う形態が多いようだ。現場への負担やトライバーの人材不足に加え、地域全体で見ると「送迎ルートの重複」が起きていることがあるという。「ゴイッショ」を導入した場合、これらをどのように変化させて行くことができるのだろうか。サービスの導入をした場合、デフォルトで提案される送迎スタイルは、介護現場から一部の送迎業務を切り離し、外部の団体に集約してもらうことで、各事業所の送迎を地域で助け合いながら運行していくかたちになるようだ。その上で「地域の課題に合わせたサービス」とは、このような共同送迎に止まらず、送迎の空き時間を活用して、例えば、利用者のスーパーマーケットへの買い物や、子供が学習塾に通うための送迎、給食サービスを必要とする方への食事の配達、または食料品・生活用品の配達など、それぞれの「地域ニーズ」にあった人の移動や、モノの配送サービスを組み合わせることが出来、柔軟なサービス提供ができるシステムを表している。この共同送迎サービスを成り立たせるには、地域の通所介護事業所、その利用者、自治体などの連携や協調が必要だ。今まである意味、同じ地域・経済圏において、競合であった事業者同士が、利用者や地域のために「ひと肌脱ぐ」必要が出てくる。しかし、この三者が個々に持つ「チカラ」を集めることで、通所介護事業所は、職員の負担を軽減し、人材不足を補いつつ、利用者に今まで以上に高品質なサービスの提供が可能となる魅力は大きい。また、自治体としても市民の暮らしが、より良いものに変化していくことで、住みよい街づくりにつなげることができ、地域に人が集まるキッカケ作りとともに地域の活性化も期待できる。利用者である高齢者やハンディキャップを持つ方々に加え、子育て中の家庭も、この移動サービスの恩恵を受けることができるようになる点は見逃せない。そして、この三方良しの仕組みを成り立たせる核に「ゴイッショ」が必要となる。このような新しいサービスを住民に届けるため、同サービスは自治体向けの導入メニューも提案している。「ゴイッショ」の導入サポートメニューとして、初年度は主に調査や検討が行われる。初年度以降は、社会実装に向けた準備や、本番となる実装のサポートなどがある。調査・検討については、①介護施設送迎における人手不足や送迎に由来する課題を把握、先ずは共同送迎サービスの需要を調査し、②次には送迎の共同化による効果のシミュレーションを行い、自治体などが実証実験を検討する場合は、実験の企画や推進、検証、報告までを一貫してサポートする。③そして、本共同送迎サービスを基盤に、地域に住む高齢者の移動課題の解決に向けた「ゴイッショ」の活用方法の検討をサポートする。初年度に行われる調査・検討の後、社会実装に向け前準備や社会実装が必要との判断になった場合も、初年度以降に、④運営フロー、マニュアルの構築支援、ドライバーへの介助・接遇研修など、運営に必要なノウハウを提供、サービス体制を構築する支援を行う。⑤また、自治体などと介護施設との送迎に関する諸条件の調整・交渉や、運行開始に向けた地域交通事業者との調整・交渉についても支援を行うとする。多大な工数が掛かる段階に、第三者による「合意形成のための支援」は、実装を促進する貴重な助けとなるに違いない。ダイハツとしても、腕の見せ所だ。⑥社会実装前の準備としては、「共同送迎運行管理システム」の提供、「福祉有償運送資格」取得に関する業務支援など本番運行が適正に実施できる環境を整えて行く。⑦自治体に「ゴイッショ」が導入された後も、参加施設や運行区域の拡大に向けた取組みや、他のサービスとの掛け合わせなど、発展的な取組みの検討もサポートされるので、導入する団体の安心感は高い。ちなみに「共同送迎運行管理システム」は、複雑な送迎計画の作成や運行管理を支援するクラウドシステムのことを指す。複数の施設、複数の利用者からの予約受付や、介護領域に特化した独自のアルゴリズムによる最適なルーティング、運行団体、介護施設、ドライバー端末の情報連携などを行うシステムのことを言う。https://www.daihatsu.co.jp/goissho/ の香川県三豊市での取組み事例(2020年11月から実証事業を開始)を見てみよう。実証は同市において、令和3年11月~令和4年1月まで実施されている。実証の運行地域は三豊市内の市街地および山間エリアであり、参加したのは通所介護事業所5施設と、利用者62名だ。実証前の調査結果では、市内の75%の施設が共同送迎に賛同していたようだ。令和3年度の実証結果によると、実際に実証によるサービスを行ったところ、参加した職員の93%が業務負担低減を実感したという。また、同実証においては、デイサービス利用者となるご本人やそのご家族の方々の9割が本格参加を受容したという。送迎業務としては、平均で75分/日が削減され、車両台数は共同送迎により、約20%削減(*令和2年度実証結果)されている。山下昭史市長は、「地方に行けば行くほど自動車に対する依存度は高い。結局、人は日々の生活の中で移動しないと豊かさを実感することが出来ないと思い、MaaSに着目。介護施設の業務はどこかで限界が来る。共同送迎することで、大きく時代が動く。地域の困りごとを嬉しさに変えていく。」との声を残している。同市の社会福祉協議会の事務局長である滝口氏は「三豊市全体で少子高齢化・介護職員の人手不足が顕在化する中、地域を持続させる手段として共同送迎に着目。車両やドライバーの空き時間を活用した移動支援・生活支援は、社協として取組む大きな意義がある。」としている。施設の管理職や職員の方からは、「共同送迎があることで、職員が施設に残ることが出来る。受け入れ準備や掃除が効率よく出来た。施設送迎の計画作成も簡単になった。受入対応が手厚く出来た。夕方は事務作業に時間をあてられた。レクリエーションを考える時間を作れたのもよかった。運転が苦手な職員もいる。車のメンテナンスも含めてお願いできて良い。介護人材の確保に課題を感じている。職員の採用コスト、送迎車両の維持コストの負担は非常に大きい。共同送迎は、これらのコスト削減に加えて、地域の移動に貢献できるということで参加を決めた。」など、好評・支持が得られているようだ。ダイハツ工業は「少子高齢化」や「地域活性化」といった社会課題の解決に向け、「いくつになっても自由に移動ができ、快適に暮らせる社会」を、地域と連携して実現することを目指し、「コトづくり」の一環として福祉介護領域における新たなモビリティサービスの取組みを進めている。その一つが通所介護施設における送迎業務の効率化をサポートする「らくぴた送迎」である。2018年からサービス開始し、既に全国200個所の介護施設で活用されているという。同社は「らくぴた送迎」で培った知見をもとに、地域内の複数の介護施設における送迎業務を外部に委託することで、負担軽減を図り、共同化することで効率の良い送迎を実現する新たなモビリティサービスを開発した。この香川県三豊市の実証実験から、送迎車両を2割削減するなど、顕著な効果が確認できたことから、全国の地方自治体を対象に、この福祉介護・共同送迎サービス「ゴイッショ」の販売に踏み切ったという。昨今、施設内でのクラスタ発生など、日頃の業務に輪をかけて複雑化し・危険度の高い業務をこなさなくてはならなくなった地域の介護施設。加えて、高齢者において緊急度の高い病院間の移送などにも、余力を温存しておく必要があろう。本サービス、一見の価値ありと見るがいかがだろうか。
電動キックボード免許不要、自動運転「レベル4」解禁へ 改正道交法のポイントまとめ 他
4月22日 今年2月に北海道の函館エリアで、内閣府が推進する「戦略的イノベーションプログラム」の一環として、セブン-イレブン・ジャパン、ファミリーマート、ローソンの3社は各社の物流センター、店舗への横断的な共同物流の実証をしたことは記憶に新しい。昨年度は同じ実証を東京都の湾岸エリアで行っている。実証実験の内容は、配送センター間の物流の共同化、買物困難地域の配送の共同化であった。物流の共同・効率化により、買物困難者への対策、フードマイレージの削減、運行トラック数の減少、温暖化効果ガス排出量の削減を目的としていた。ファミリーマートは2020年2月に「ファミマecoビジョン2050」を策定、「CO2排出量の削減」「プラスチック対策」「食品ロスの削減」の3つの分野で数値目標を設定している。「プラスチック対策」の観点では、プラ製のカトラリー(お弁当などを購入する際に提供されるスプーンやフォーク)の取り扱いを集約する実証実験を始めるなど、環境への取り組みを強化している。また同社は、昨年6月から「大盛 明太子スパゲティ」など4品のパスタ商品の容器をバイオPP(ポリプロピレン)*に変更し、関東地域から順次導入している。*バイオPPは農作や、食品業界における廃棄物や残留物、廃食用油など再生可能な原料を利用した、バイオマス資源を原料とするポリプロピレンのことを言う。同社は、同じく昨年11月に長崎県対馬市に漂着した海洋プラゴミを原材料の一部にした買い物かごを東京都や埼玉県、千葉県、新潟県、三重県などの店舗に順次導入し、既に導入済みの長崎県と福岡県と合わせ、計28店舗で展開を始めた。そのファミリーマートが、4月19日に「LUUP」と資本業務提携契約を締結した。これにより両社はファミリーマート店舗への電動キックボードのポート設置を加速させるとともに、マーケティング面などでも全面的に協業を開始、地域の利便性向上、活性化を目指すとしている。ちなみにファミリーマートの国内店舗数は、16,571店舗(海外店舗数は、8,200店舗)。これらがポート化されることとなれば、環境目標に沿いつつ、ラストワンマイルを網羅可能な、一大交通インフラ網が築かれることとなる。「LUUP」は、「街じゅうを「駅前化」するインフラをつくる」をミッションに、電動・小型・1人乗りのマイクロモビリティの短距離移動のためのシェアリング事業を営み、現在は、東京や大阪、横浜・京都において小型電動アシスト自転車と、電動キックボードのシェアリングサービスを提供している(*電動キックボードのシェアリングサービスは、新事業活動計画が、規制所轄大臣の同意を得て主務大臣に認定されることを条件に実証実験として実施している)。モビリティの発着点となるポート数は、2022年3月現在、850個所とされる(同社集計による)。これまで、基本料金50円+1分あたり15円(税込)で予約や決済はアプリ一つで行って来た。同社のポートのオーナー(マンション、オフィスビル、宿泊施設など)となる場合も、空きスペースを収入源に転じることができることや、入居者の満足度アップにも効果があり、自動販売機2台程度のスペースがあれば工事不要で設置が可能と、非常に手軽であり、かつ導入費用や維持コストがかからない。モビリティへの充電・保守などは同社が行うため、ポートのオーナーの手間はないと好条件だ。ベーシックなポートの導入ステップは、同社ホームページからの申し込み、その後同社による現地確認がある。設置作業は20分ほどで行われ、通常作業後1週間以内に運用が開始される。*同社ホームページによると、エリアによってはすぐ設置できない場合があるとの注意書きがある。4月19日に電動キックボードの公道での走行ルールなどを盛り込んだ道路交通法の改正案が衆議院で可決され、成立した。改正道路交通法施行後の電動キックボードは、最高時速が20km/h以下等、一定要件を満たす電動キックボードが「特定小型原動機付自転車」という新しい車両区分に位置づけられることとなり、16歳以上であれば、免許不要で乗車が可能となる。ヘルメットの着用は任意とされた。走行可能な範囲については車道に加え、普通自転車専用通行帯、自転車道の走行が可能となる。「LUUP」は今後の事業展開について、①新しく整備されるルールに則り、車両とサービスの開発・改善を継続、②新たなルールが整備されるまでの期間、ルールの周知に向けた啓蒙活動に注力する、③これまでの安全性の検証のための実証実験から、今後は地域の課題を解決するための実証実験とし、「日本全国の地方都市や観光地へ」展開エリアを拡大する、④現行のシェアリングに加え、新しい保安基準に適合する電動キックボードの販売事業への参入の検討を行う、⑤代表の岡井氏は「マイクロモビリティ推進協議会」の会長として、関係省庁や自治体との連携を引き続き行っていくことを表明している。今のところ、EVほど深刻な給電スポットの普及・展開にさらされることはないのかも知れないが、ポート普及速度や保守・回収、多様な決済方法など、新たな課題が出てくることは否めない。しかしながら、これまでも様々な実証や関係省庁との交渉をコツコツと重ねて来た、同社や「マイクロモビリティ推進協議会」の努力は大いに賞賛を受けて良い。今回、全国展開するコンビニチェーンという、よき旅の道づれを得たことは、様々な意味で大きな進展だと感じる。「地域の公共交通を担う移動サービス」として、今後も続けて利用者の安全や、決済バリエーション等のサービス改善、公共交通との連携等の議論を先導し、深化させていただきたいと願う。*アイコン画像は電動キックボードのイメージです。
自動運転中のテレビ視聴はOK イギリスが交通規則を変更へ 他
4月21日 全国各地の自治体や公共交通事業者においてMaaSの導入が進む。この動きに追随し異業種からの参入も相次ぐ。この度「沖縄MaaS」に参画した、マーケティング・ソリューション事業を営む、CCCマーケティンンググループもそのような企業の一つだ。一般に「TSUTAYA」や「T-POINT/T-CARD」の印象が強い同社が、「公共交通」にどのように携わろうとしているのか、その動きを追ってみた。今回はその2回目となる。CCCマーケティンググループのホームページを拝見すると、「地域共生」の言葉が掲げられている。同社は「地域・市民価値」の高い豊かな暮らしの創造を目指し、地域の課題を最先端の技術を駆使、これらの解決を図ろうとしている。現在自治体で進むスーパーシティ、スマートシティの取組みについて、同社の持つ「Tポイント」で獲得・蓄積した膨大な「ユニークデータ」をオープン化し、地域や市民の価値を高め、豊かな暮らしを創造して行くとしている。その実証の場として「会津若松スーパーシティ」に参画し、オプトイン方式で官民データの連携を図る。会津若松のモデルケースを地域共生につながる日本のモデルに昇華、「Society5.0」の達成に貢献するとしている。平たく言えば「民間プラットフォームサービス」と「マイナンバー」を掛け合わせる共通基盤を築き、その上で都市OSを動かす構想だ。この共通基盤上で動く都市OSにより提供されるサービスは「共通サービス」と「地域サービス」だ。共通基盤サービスは、前述の会津若松以外のどの街でも利用が可能な共通サービスであり、市民から自治体への多様な申請や、納税などに用いることが想定されている。また、地域サービスは、反対にその地域独自のサービスとなり、この領域には医療や「交通」が含まれる。利用者(市民)はどの地域でも同じ操作性(UI/UX)を享受することができる。会津若松のスーパーシティ構想は、令和3年4月16日に同市が国の「スーパーシティ型国家戦略特別区域の指定に関する公募」に応募したことに始まる。会津市の資料「スーパーシティ型国家戦略特別区画の指定に関する提案内容 オプトインによる共助型分散社会の実現」を掻い摘んでみると、課題としては人口減少、少子高齢化による、医療費や介護費の支出の増大、高齢化率の上昇に伴う要介護・要支援指定者の増加などがあり、生産年齢人口の減少と相俟って地域行政の継続が危ぶまれている点にある。同市はICTの活用により市民生活の利便性向上、企業誘致などの手を打ち、一定の効果が上がっているとする。しかし、全国の地方の共通課題を根本的に解決にあたっては、首都圏一極集中の限界を認識し、構造改革が必要であるとする。具体的には自助・共助・公助の考え方を地域で共通認識とし、地域産業基盤の強化のための地域産業DXとWell-bing(幸福で肉体的、精神的、社会的すべてにおいて満たされた状態)を実現する市民生活のDXを市民や企業、地域の三者が手を組んで実現する必要があるとする。同市はスーパーシティ化を通じた「オプトインによる共助型分散社会」を実現し、で維持たる時代における地方創生のモデル都市となり、全国の地方創生に寄与することを目指すとしている。会津若松市の提唱するスーパーシティ構想の概要は、過去10年間取り組んできた「スマートシティ会津若松」の取り組みの踏襲し、伝統・歴史・文化・景観などを生かしながら、オプトイン&パーソナライズによる人間中心かつ市民同士が信頼関係でつながるデジタル共助社会を構築するとともに、分野横断型の地域経済基盤を強化する地域産業DXとWell-beingを向上させる市民生活DXを地域プラットフォーム上に実現する地域全体のDXにより、様々な分野や多様な利用者を意識した包括的かつ包摂的なデジタル化を図り、利便性・持続性等を向上させるブラウンフィールドでのスーパーシティを推進することで真の地域創生を実現する、というものだ。この取組みにより、市民は、モビリティ、フィンテック、教育、ヘルスケア、エネルギー、食・農業、観光(インバウンド)、ものづくり(Industry4.0)、防災、行政などの分野で具体的なサービスを享受することになる。「私どもは、データ中心でどれだけ社会に貢献できるのかということを定めるために、「UNIQUE DATA, SMALL HAPPY.」というミッションを作りました。会津若松スーパーシティ構想では、会津若松の市民の皆様が、自分のデータが自分のためにちゃんと利活用されて、便利さや便益を直接得ることが出来る社会が実現されます」CCCマーケティング株式会社 代表取締役社長の北村和彦氏の言葉だ。会津若松市では市民の9割の支持を得たという「会津若松スーパーシティ構想」で大事にされたのは、自分のデータを社会に役立てる「オプトイン」という考え方だ。市民自らが住まう会津若松という街がよくなって行くため、市民自らが自分のデータ(UNIQUE DATA)を使い、そして個人にパーソナライズされてフィードバック(SMALL HAPPY)されていかない限り、個々人の行動変容は起きない。データ活用の本当の意味は、行動変容にあるという。(アクセンチュア・イノベーションセンター福島 センター共同統括マネジング・ディレクター 中村 彰二朗氏)だ。参考までに「会津若松スーパーシティ構想」の推進体制を紹介すると、プロジェクトの責任者には、市長である室井氏が立ち、アーキテクトとして全体を統括したのが、アクセンチュアの中村氏だ。アドバイザーとして参画したのは、会津大学の岩瀬 次郎氏(ICT・デジタル)、JTQ㈱の谷川 じゅんじ氏(都市空間デザイン)、慶應義塾大学の宮田 裕章氏(ヘルスデータサイエンス)、北欧研究所の安岡 美佳氏(Well-being/海外知見)。事業推進・実施主体には、市と会津大学、一社)スーパーシティAiCTコンソーシアムと関係団体、企業としてはアクセンチュア(観光・ヘルスケア・行政)、凸版印刷(教育・食/農業)、ソフトバンク(防災)、バンブージャパン(廃棄物)、SAP(ものづくり)、その他TIS(決済)、三菱商事(モビリティ)、パナソニック(地域活性化)他が参画している。前述のCCCマーケティング株式会社の北村氏は、行動変容を促すためには、具体的なデータというファクトに基づいて「生活提案」につながる良いレコメンドを(サービス提供側が)して行くことが大切とし、加えて良い提案を市民に提供して行くためには「官民のデータ連携」が必然となるとしている。現在いろいろなサービスのプラットフォームを国や地域が作っているが、そこに参画するかどうかは市民の皆さん次第です。国や地域は共生することは出来ない。市民自身がデータ連携やオプトインに対する、また家族や街の未来への意識を変えてゆくことで、子供や孫の時代を変えることができる。CCCマーケティンググループが会津の地で培ったこれらのノウハウをもとに、同社は「沖縄MaaS」という新しいステージに取組む。スーパーシティ構想における会津若松モデルで磨かれたお仕着せやお任せでない、優れた知見が日本各地で進む「スーパーシティ構想」を深化させ、加速させることを願いたい。
完全自動運転、特定条件下で可能に 改正道交法が成立 他
4月20日 TIS株式会社と沖縄都市モノレール株式会社は、4月20日、両社が展開する「沖縄MaaS」において、CCCマーケティンンググループと協業し、沖縄MaaSと親和性の高い生活者に向けて、CCCが有する「Tポイント」のデータを活用した利用促進施策を実施していると発表した。「沖縄MaaS」は、国土交通省の「令和2年度 日本版MaaS推進・支援事業38事業について」によれば、①MaaS基盤整備への支援、②全国の牽引役となる先行モデル事業への支援を柱とする。内訳は、AIオンデマンド交通の導入が6地域・6事業者、キャッシュレス決済の導入が9地域・9事業者、そして②の先行モデル事業が19事業()となる。沖縄では、県全域と宮古市が対象として選定されている。沖縄MaaS事業連携体が実施する「沖縄全域における観光型MaaS実証実験」は、沖縄県全域のモノレール、路線バス、オンデマンドバス、船舶等の交通手段と、商業/観光施設など交通分野以外との連携、更に他MaaSアプリなど幅広い連携をAPI/データのオープン化により実現する観光型MaaS(以下、沖縄MaaS)を提供するものだ。この取組みにより「沖縄県における交通、観光の課題」を解決し、来年度以降の継続稼働や地域住民展開を見据え有用性の検証を行うとしていた。協議会は、沖縄都市モノレール、自治体としては那覇市、石垣市、浦添市、宮古島市、今帰仁村(なきじんそん)、伊江村、座間味村、竹富町、民間企業では、ゼンリン、TIS、琉球銀行、オブザーバとして、沖縄県と内閣府沖縄総合事務局運輸部で構成されている。沖縄県は全国と比較して公共交通分担率が低いため、分担率向上が必要となっており、その原因となっている観光に関する交通課題に対し「沖縄MaaS」での解決を目指していた。「観光に関する交通課題」を行政の立場から見ると、バスの輸送人員が全国平均よりも大きく減っており、地域の足としてバス網の維持が困難になっている点や、特定の有名観光地、観光施設に観光客が隔たり、他の魅力あるスポットへの送客が出来ない点が挙がる。また地域住民の視点からは、観光産業に対する期待は大きいものの、マイナスの影響のトップは「バスや自家用車の混雑等により、交通が不便になる」点が挙がる。困っている点としては「レンタカーによる事故」「交通渋滞」「違法駐車」が挙がる。沖縄を訪れる観光客の視点では、二次交通の多くは現金利用が殆どであり、行先や系統が分かりづらいなどの点が課題となっていた。2021年1月~2月に実施された沖縄全域を対象とした実証実験では、20社に上る交通事業者と10社の連携サービス会社が参加意向を示していた。実証で提供されたサービス(=課題の解決手段)は、複数交通手段の連携乗車券を含むチケットの電子化とスマホ上のキャッシュレス決済を利用した事前決済、ルート検索や地図情報の提供、情報配信、移動情報のコード化(トリップ単位でコード化し、収集・分析を行う)、データ利活用(AI活用等による分析を行い、公共交通や商業・観光施設への送客や誘客を行うことで、観光客の分散化を図る)、他サービス連携(前述の連携するサービスとAPI連携や相互リンク等により、連携し沖縄MaaSのサービス拡充を実現)などであった。サービスの利用方法は、ユーザーがスマホ上で沖縄MaaSへアクセスし、クレジットカードなどでチケットを事前購入、利用時には手持ちのスマホで各事業者の窓口等に掲示される固定QRを読み取り、チケットを表示させ、これを消込む(利用済の認証)などの手順としていた。「MaaS」領域において、富山県朝日町の「ノッカルあさひまち」の構築に博報堂が参画する等、異業種からの参入が相次いでいるが、「沖縄MaaS」もそのような潮流の一例となったと言える。時計を巻き戻すようで恐縮だが、カルチュア・コンビニエンス・クラブと言えば「TSUTAYA」であり、中高年世代では、ビデオやCDレンタルを利用された方も多いと思う。同社は1985年に「TSUTAYA」のフランチャイズ本部として設立され、2006年に子会社となる㈱TSUTAYAを設立、TSUTAYA事業を移管、純粋持ち株会社となった。2009年10月に㈱CCC(旧・㈱TSUTAYA)を吸収合併、再び事業会社となる。その後も様々な変遷を経て、2021年4月に中間持ち株会社4社とその関連会社を吸収合併し、再び事業会社となっている。本件で話題に上ったCCCマーケティンンググループのホームページを拝見すると、2020年4月1日に設立された、同社(CCCマーケティング㈱)の事業内容はマーケティング・ソリューション事業であり、メインメニューの中に「地域共生」の言葉がある。関連会社には㈱Tポイント・ジャパン、㈱Tポイント、㈱Tマネーがある。CCCマーケティンググループは、そのミッションに「UNIQUE DATA,SMALL HAPPY.」を提唱し、自らを生活者から預かる大切で多種多様なデータを、テクノロジーとアイデアで価値ある情報に磨き上げ、社会に届けることで新しい喜びを提案していく「情報製造流通カンパニー」としている。「UNIQUE DATA」(=唯一無二のデータ)とは何か?同社はパートナー企業が市場に対して持続的に価値提供するための「本業支援」を支援する。その範囲はアプリ開発から、デジタルコミュニケーション、現場でのオペレーション改善、商品開発、販促企画と実行、さらに経営における出店計画や事業戦略にまで及ぶ。彼らは「コンサルとデータ分析」×「データ活用ソリューション」に、自社の持つ(「Tポイント」で蓄積した膨大な)「ユニークデータ」を掛け合わせ、顧客を支援するとしている。これらの元となるのは、パートナー企業が保有するデータと、T会員から収集したユニークデータだ。これらによりパートナー企業の現場の事実把握(可視化、分析)しながら、次なる一手(アプローチ、CRM)を導くとしている。ここには専属コンサルタントとデータアナリストの姿が見える。専属コンサルタントとデータアナリストの仕事は、個社ごとに異なるマーケティングの課題に最適な解決策を打ち出せるよう伴走することだ。ここでは証券やデータ分析による新店開発、業界別市場予測による新商品開発と売り場改善、アライアンスネットワークを活かしたアプリ開発、循環型のデジタルコミュニケーションの提案などが提供される。但し、彼らの仕事は「提案」だけで終わるのでなく、次の一手、即ちプラットフォーム事業や地域共生に関わる事業など、様々なプラットフォームを通じた「ライフスタイルの提案」を行うものとしている。佐賀県武雄市の図書館を筆頭に、国内の様々な地域で図書館や文化複合施設を指定管理者とする公共サービスなども手掛けてきた。同社のこれらの事業を支えるのは、やはり「T会員」から収集した「ライフスタイルデータ」だ。リアルとネットの多種多様なデータがシングルIDで紐づいていることで、推測ではなく事実に基づいた最適な解決策を導き出すことが出来るとしている。数値的な言い表し方をすれば、カード累積発行枚数は2億枚、月間UU数4000万人、年間UU数7000万人、ネットID連携数は4000万人、関与売上は8兆円/年、トランザクションは35億件/年という。これが同社の核となる「UNIQUE DATA」の姿だ。7,000万人を超えるT会員を持つ。この数字はTカードの発行枚数ではなく、Tカードを複数枚所持する個人も、きちんと一人として数えた上での人数(1年に1回以上カードを利用している顧客)である。総務省は平成30年版の情報通信白書の中で、データは「21世紀の石油」と表現しているが、この表現が正しければ、彼らは既に相当規模の産油企業であり、資源保有企業と言える。(続く)
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4月19日 第二次世界大戦前の1930年代にアメリカのタイヤメーカーは恐慌を脱し、売り上げも順調に成長していた。タイヤはそれまで使用していた木綿コードからレーヨンを使用した乗用車用タイヤが市場に出回り始め、戦時下となる1942年頃にはナイロンが軍用タイヤに採用されるようになった。一般車にこのナイロンが普及し始めたのは戦後となるようだ。戦時下には、タイヤメーカーも本業ばかりでなく、ガスマスクや、航空機用の燃料タンクや輸送機の翼、戦闘機など多様な製品の製造を余儀なくされた。戦争により天然ゴムの供給は急激に減少(モノづくりの立場で申せば非常に迷惑な話だが、いつの世も戦争はモノの交易に影響を与える)したため、合成ゴムメーカーは合成ゴム軍需工場を創業し始めたという。欧州ではミシュランやピレリがラジアルタイヤを試作し、ラジアル構造の研究が進んだ。現在では、ほとんどの乗用車用のタイヤはこのラジアルタイヤが用いられている。「ラジアル構造」とは、タイヤ(ゴム部)の一番内周に近い「カーカス(骨格)」と呼ばれる部分を、タイヤの中心から放射状(RADIAL)に配置したタイヤで、これを一層上の外周部分に当たる「ベルト」で締め付ける構造のタイヤという。ちなみに対する概念としては、「バイアス構造」があるが、バイアス構造の場合、カーカスを斜め(BIAS)に配置しているため、この呼び名がある。しかし、バイアス構造は、斜め配置となるため、ねじれが生じやすい特性がある。これを防ぐため、逆方向に複数枚のカーカスを重ねる必要がある。このカーカスを先ほどと同じように一層上の外周部分に当たるブレーカーで締め付ける構造となる。バイアス構造は比較的製造方法が容易であることから、モーターサイクル用タイヤや産業車両用タイヤ、建築車両タイヤ、農業機械用タイヤなどに使用されている。日本では、1937年の日中戦争を機に、1938年にゴム統制規則が交付され、翌年にはタイヤも配給制となっている。ブリヂストンはこの時期、1934年に久留米市京町(現ブリヂストン久留米工場)に本社を移転、その後1937年5月に東京市麹町(現千代田区)に本社を移転、その後1939年に東京市京橋区に事務所用地を購入、1942年に新事務所での業務を開始するも、1945年5月の空襲で事務所は消失、この後、麻布飯倉片町に事務所を移転、英語の使用は制限しようとの風潮の中、社名を「日本タイヤ㈱」に変更している。1938年には日本足袋(1937年に社名を日本ゴムに変更/石橋氏が社長であった)の、横浜工場を継承し、再生ゴムの製造を開始した。久留米工場は1939年4月の「自動車用タイヤ・チューブ配給統制規則」が実施された後、トラック用タイヤの生産を主力とした。1941年にその生産額がピークに達するも、その後は天然ゴム、コード、カーボンなどの原材料不足のため、タイヤの生産は著しく低下して行くこととなった。1945年には、久留米工場が九州を戦場とする本土決戦の観点から、久留米工場の「本土疎開」を要求されましたが、石橋氏はこれを拒否したため、九州軍需管理官から責任者交代を命じられるものの、本件は決着を見ないまま終戦を迎えた。1939年4月からの配給統制下では、商工大臣の承認を得た生産数量に応じた天然ゴムが割り当てられ、日本ダンロップ、横浜護謨、ブリヂストンの3社が統制を受けている。当初、天然ゴムの割り当て比率は等分ではなかったが、1940年3月からは3社3等分となった。1942年3月には、オランダ領・ジャワ島に進出していた日本軍よりグッドイヤー社から接収したジャワ工場の経営を委任される。石橋氏は敗戦時に工場を破壊せず、整備の行き届いた工場を同社に返却した。このことは、戦後グッドイヤー社会長のリッチフィールド氏と石橋氏の間に信頼関係を醸成、同社との技術提携を結ぶ契機となったとしている。このように、戦中や戦後のさまざまな艱難をゴム製品の生産に携わりながら乗り越えてきたブリヂストンの今日の繫栄は、昨日の当欄で紹介した通りだ。しかし、その束の間の休息も終わろうとしている。同社は、いま世界が突入したばかりの自動運転社会、自動車における100年に一度と言われる大変革期、アフターコロナ感染症後の社会変化や消費者ニーズ、SDGsや脱炭素社会、デジタルトランスフォーメーションなど幾つもの荒波をどのように乗り切ろうとしているのだろうか。昨日紹介した同社のTechnology&Innovationのページを見ると、その答えの一端を伺い知ることが出来る。「ブリヂストングループは、世界を支える覚悟と責任を持ち、革新的な技術を磨き続けていきます」とのメッセージから始まるこのページでは、同社のリサイクル事業、ソフトロボティクス、建設・鉱山車両用タイヤの進化を支える独自技術、月面探索ミッションを足元から支える月面探査車用タイヤ、ゴムと樹脂を分子レベルで結び付けた世界初の素材"SUSYM(サシム)"、昨日ご紹介したバリアレス縁石システム「PlusStop」低燃費性能と耐久性能を両立するしなやかで強い"ダブルネットワークゴム"、運送ビジネスを支えるデータツール、タイヤの接地面を"見る"技術「ULTIMAT EYE™」、ブリヂストンプルービンググラウンド(テストコース)、空気を不要にするタイヤ技術エアフリーコンセプト®、分子構造を操る技術(ナノプロ・テック™)、パンク後の走行を可能にするランフラットテクノロジー、ブリヂストンのタイヤ開発、天然ゴム資源への取り組み、次世代の低燃費タイヤ技術「ologic®」、高圧充填を可能にする水素ホース、タイヤと路面を感知する技術など、テクノロジーとイノベーションを示す例は枚挙に暇がない。この内、新しいクリーン燃料である水素燃料の普及と水素社会の実現への貢献が期待される「高圧充填を可能にする水素ホース」などは、まさに同社の強みを活かした施策と言えるのではないか。「高圧充填を可能にする水素ホース」は、トヨタのウーブンシティ(Woven City)などでも製造や利用が期待される「水素」の供給スポットとなる水素ステーションで広く普及が期待される。水素は、常温、常圧では無色無臭の気体であり、燃焼させた際にも水と熱しか発生しないため、次世代のクリーン燃料として期待される。また化石燃料と比較しても重量が軽いため、燃料重量の軽量化にも貢献する。これにより、水素は燃料電池自動車の開発や、水素を供給する水素ステーション設置など、水素燃料の活用に向けた取り組みが進められているところでもある。水素原子は宇宙で一番小さな原子と言われ、小さな隙間でも通り抜けてしまう特徴があるのと、一度に大量に充填できるよう、水素ステーションで供給される水素ガスは、非常に高圧(現在日本では、70Mpa、将来は82Mpaが見込まれる)で圧縮されているという特徴があり、この高圧に圧縮された水素を漏らさず車両に供給するためには、水素ガスを閉じ込めることが出来る性質に優れた樹脂と、補強として「耐水素脆化性を追求した高抗張力鋼線ワイヤー」が必要となる(ブリヂストンの水素ホースには、このワイヤーを6層に巻き付けている)。同社はウォータージェット等に使用される超高圧ホースの技術をベースに、高圧の水素を閉じ込めることが可能で、かつ柔軟で使い易い水素充填用ホースを開発している。ここで開発された技術は、今後の水素社会や燃料電池自動車を擁するモビリティー社会に広く貢献していくものと思われる。ちなみに同製品は、早くも2017年3月に横浜市港北区綱島東にある「Tsunashimaサスティナブル・スマートタウン」(以下、Tsunashima SST)内の「横浜綱島水素ステーション」に、高耐圧性の水素充填ホースとして納入されている。「横浜綱島水素ステーション」は、Tsunashima SST内の水素供給拠点であり、将来の水素社会をリードする情報発信型水素提供フィールドとして位置付けられている。また「Tsunashimaサスティナブル・スマートタウン」は、パナソニック㈱、野村不動産㈱、JXエネルギー㈱ら10団体が推進する次世代都市型スマートタウン。街全体でのエネルギーの効率的な利用など、先進的な取組を行い、参加する事業者が環境配慮型のタウンマネジメント施設・集合住宅・技術開発・商業施設を計画する新たな街づくりプロジェクトである。ブリヂストンのテクノロジーとイノベーションは、モノづくりだけに止まらない。同社は、トラックやバス用の新品タイヤや、使用済みのタイヤの設置部分(トレッド)に新たなゴムを張り替え、再使用するリトレッドタイヤ、タイヤ交換や点検など、運送事業者のビジネスを支える製品として、様々なタイヤ情報を管理・分析することで顧客に最適なソリューション(安全運行や経済性向上)を提案するデジタルツールも開発している。「Toolbox」(ツールボックス)は顧客の車両や装着タイヤ、点検結果などタイヤに関する情報を管理するためのデジタルプラットフォームだ。世界80ヵ国以上のトラック・バス運送事業会社で利用される。同社は顧客や顧客のタイヤ情報を取得・蓄積して、サービスや販売・マーケティング、タイヤ開発に繋げる。また「Tirematics」(タイヤマティクス)は、センサーを用いてタイヤの空気圧や温度を計測、リアルタイムで遠隔モニタリングするシステムだ。今後、自動運転車両が主流となるであろう公共交通の運行・遠隔監視時の現場において、安全運行や事故予防ソリューションとして必須とされるシステムの座を獲得するであろうと予想される。「Toolbox」と連動させて運用することで、タイヤのライフサイクル全体におけるタイヤ情報の管理・分析が可能になるとしている。「BASys」(ベイシス)は、リトレッド工場向けとも言えるが、前述したリトレッドタイヤの製造・品質・在庫などの情報を管理するツールだ。使用済みのタイヤをリトレッド工場に預け、検査や修理、加工を経て、顧客の手許に再度タイヤが納品されるまでの過程を一元管理する。これにより、リトレッド工場は、各プロセス別にリアルタイムに情報を把握し分析することで、生産の効率化や品質向上にツン上げることが出来る。ブリヂストンは、2017年1月にデジタルソリューションツールの開発並びに展開を加速させるため、「デジタルソリューションセンター」を開設させている。ミシュランに次ぐ世界屈指のタイヤメーカーは、この「大変革期」にもタイヤの歴史に鍛えられたしなやかさで、DXやエコロジカルを身に纏いつつ世界の道を軽やかに走り続けている。
トヨタ、一部車種で車外画像データを収集 自動運転技術で活用 他
4月18日 歴史あるダイニングガイドのミシュランの起源は、より多くのドライバーが道路に行くことを推奨するために考案された小さな赤い冊子だった。1889年フランス中部のクレルモンフェランで始まった、アンドレ兄弟とエドゥアールミシュラン兄弟は、フランスの自動車産業の壮大なビジョンに支えられ、国に3,000台未満の自動車が走り回った時代、彼らはその名を冠したタイヤ会社を設立した。兄弟は運転手が自動車旅行を広め、それによりクルマの販売を増やし、ひいてはタイヤの購入を促進するため、地図、タイヤの交換方法、充填場所など、旅行者向けの便利な情報が満載された小さなガイドブックを作成した。ガイドには、旅行者が立ち寄る給油スポット、一日の冒険、旅路の休息を得、食事をとりブランケットを広げることができる宿を載せた。日本のミシュランと言えるかどうかは分からないが、日本のブリヂストンは、まだ日本が英米系の技術に頼り、日本のゴム技術がよちよち歩きを始めた時代、1930年に小型の乗用車用タイヤの第1号を完成させている。ブリヂストンの世界タイヤ市場シェア(売上高ベース)は、現在2位。一位はミシュラン、三位はグッドイヤーである。世界に展開したブリヂストンの生産拠点は139拠点(2022年1月現在)。同社の製品はタイヤをはじめ化工品(自動車関連部品、ウレタンフォーム及び関連用品、電子精密部品、工業資材関連用品、建築資材関連用品)、スポーツ(ゴルフ・テニス製品)、自転車など幅広い分野で使われ続けている。磨かれてきたその製品技術の応用分野も、タイヤをタイヤとして生まれ変わらせるリサイクル事業や建設・鉱山車両用タイヤ、月面探索車用タイヤなど広がりを見せる。これらの分野の中に「plusstop」と呼ばれるバス停の縁石形状に着目した、バス乗降のバリアフリー化に貢献するソリューションが開発されている。バスの自動運転化が進む中、報道などでよく話題となる正着(自動運転システムにより、バス停に正確に車両を寄せる技術)。公共交通機関の一翼を担い、子供からお年寄り、ハンディキャップを持つ利用者など、様々な人に幅広く利用される移動手段であるバス。このバスの乗降時のバリアフリー化は、利用者の安全や利便性のため、運行ダイヤを保つためにも、重要な役割を果たしている。しかし、現在の乗降システムは乗降口と停留所である路面の間に段差や隙間が存在し、心ならずも高齢者や車いす利用者、ベビーカー利用者に不便を強いる形となっている。そこで同社は横浜国立大学(「都市と交通研究室」:中村文彦教授)や公益社団法人日本交通計画協会、㈱アドヴァンスとともに、バス停の縁石に着目、利用者の乗降を容易にするソリューション「Plus Stop」の研究開発と普及に取組んでいる。ここで開発中の縁石(道路と歩道を隔てるコンクリートブロック)は、一般的な縁石と異なり、バスが縁石に接近した際にも、ドライバーがバスを縁石に寄せやすく、万が一タイヤが縁石に接触した場合でもタイヤへのダメージが少ない特殊な形状を持っている。ここでの共同研究成果は、2016年12月に「次世代正着縁石」並びに「バリアフリー用新コンセプトタイヤ」として、やはりバス停と停留所の間の隙間を可能な限り小さくすることを目的として発表されている。共同研究で挙がった課題は、①ドライバーに極力負荷をかけず、スムーズかつ安定してバスを縁石に寄せること、②縁石接触時のタイヤダメージを低減することの二点だった。①についてはドライバーの技量に応じて発生する、タイヤと縁石の間の正着距離のバラツキ及び接触時の衝撃を低減させること、②については海外の一部の地域で実施しているタイヤサイド部を厚くする既存の手法(タイヤ重量増、転がり抵抗悪化の傾向)を進化(改善)させることであった。縁石については、ドライバーの技量に依存せず、車両をバス停に着けるための進入角度を制御する手法として、僅かなハンドル操作で自然に縁石にアプローチできる路肩スロープが考案された。新たに考えられた縁石の断面形状は、道路のレベル(水平面)より続く、タイヤが踏む面を僅かに道路中心から外側に傾斜させ、同時にその傾斜面が垂直に立ち上がる面への繋ぎ部分は、直角とせずラウンド形状としている。この次世代縁石の効果測定のため、同社のプルービンググラウンド(栃木県那須塩原市)に実際に縁石を設置、試験を実施している。その結果「欧州一般正着縁石」と比べ、縁石と車両の間隔を半減することに成功、目標正着距離40mm以下を達成、縁石と車両との間隔のバラツキも大幅に低減させている。また同時にタイヤサイド部へのダメージ(摩耗量)も低減可能であることを確認している。また、タイヤ側ではこの縁石接触時のダメージを低減するため、摩耗対策を施す技術を開発、推進している。この技術はタイヤと縁石の接触時に生じる摩耗エネルギーを低減するコンセプトで開発され、結果的にサイド部の摩耗量を3割程度抑制できると予測されていた。この翌年2017年6月には、更に新コンセプトタイヤ開発と正着縁石の改良が発表されている。新コンセプトタイヤでは、ゴム自体を摩耗しにくくしていることに加え、接触を繰り返すことによりサイドゴムが摩耗した際はサイド部のみ貼付けによる交換が可能となっている(リトレッド工場で新たなトレッドゴムと再度ゴムを道に張り替えることも可能)。これらの技術により、タイヤの重量増や転がり抵抗の悪化を軽減することができるとしている。この時点における次世代の正着縁石改良については、前回導入した路肩スロープと縁石底ラウンド形状に加え、新たに縁石の角を欠き取る形で車両接触回避形状を導入している。初回の形状で58mmあった段差を減少させつつ、バスの車体と縁石の接触を回避する新形状により、さらに25mmの段差減少を実現しており、バス乗降時の車いすやベビーカー利用者の負担軽減を促進した。その後も同社は2019年に、横浜国立大学(「都市と交通研究室」:中村文彦教授)や公益社団法人日本交通計画協会、㈱アドヴァンスと、この「バリアレス縁石」の実用化について発表している。2019年6月10日に、この縁石は岡山市後楽園前に全6個が(全長12m)設置され、運用が開始されている。この際にも「バリアレス縁石」の形状には、工夫が重ねられ、一番道路の水平面に近い部分(センターラインと並行する方向)に連続する凹凸(警告用突起)が加えられている。これによりドライバーは、バス車体が縁石に接近したことを、振動により体感できるようになっている。これらの改良の結果、この「バリアレス縁石」は東京2020オリンピック・パラリンピック選手村(東京都中央区晴海5丁目)でのバス輸送のバリアフリーに貢献するとして、現地に216個(32ヶ所)、合計394.3mが納入されている(2019年9月25日発表)。竣工は2020年2月となった。2019年10月21日の発表によると、この「バリアレス縁石」は新たに「PlusStop(プラスストップ)」と新名称が冠されることとなった。バスの自動運転化については、自動運転システムや通信方式、センサーなど華やかな技術情報がメディアを賑わしているが、水面下ではタイヤメーカーによるインフラ側からの正着制御改善が黙々と行われている。天晴れ、日本のモノづくり!と言いたいところだが、同社はいまや既に単なるタイヤメーカーではなくなっている様子が伺える。同社ホームページのTechnology&Innovationを拝見すると、ゴムにまつわる様々な技術の宝庫となっているようだ(続く)。
テラモーターズ EV充電インフラの電気工事網を全国構築 他
4月15日 Terra Moters㈱が4月12日にEV用の充電インフラの普及を目指し、全国での電気工事を可能とした。この事業を開始後、全国各地のマンション管理組合、マンション管理会社から問い合わせが「殺到」しているとのこと。同社グループ会社のTerra DX Solutions㈱の全国対応の災害復旧事業のノウハウを活用することで、全国の電気工事に対応した。Terra DX Solutions㈱の災害復旧事業は、「ジェルコリフォームコンテスト ビジネスモデル部門」で 経済産業大臣賞 2021を受賞している。平時において、災害対策として全国規模の工事業者ネットワークの構築をし、災害時における工事業者の不足を解消し、被害の早期復旧を実現する事業である。大手損害保険会社やドローン空撮パートナーを加えたビジネスモデルが、被災した家屋などの迅速な復旧につながる(社会課題解決につながる)として評価されたものだ。住宅分野においては、大手損害保険会社と共同で自然災害時の家屋修繕サービスや屋根・外壁施工Webサービスなどを提供している。同社は建築業界のDX(足場管理ソフト事業、施工管理ソフト事業など)を推進すべく2021年に設立された会社だ。テラグループは、資本金合計33.2億円、社員数合計460人で東京都渋谷区に本社を置く。今回、EV用の充電インフラの普及を電気工事により迅速な普及を目指す、本事業においては、サービス提供に向け、前述の災害復旧事業で培った全国規模の工事業者ネットワークが大きく貢献する形だ。Terra Moters㈱の「TERRA CHARGE事業」は、現在、日本において進むEV(電気自動車)の普及に欠かせない充電インフラを提供し、地球温暖化の原因となるCO2の排出の抑制するとともに、政府が2035年までの乗用車新車販売において、EV(電気自動車、HV、FCV)100%とする目標の実現を後押しする事業と言えよう。2030年までに設置されるEV充電器は15万基、うち12万基が普通チャージ、3万基は急速チャージとされる。政府(国と自治体)は、この施策を実現するため、助成金の支給を本格的に開始している。この助成金を活用し、EV用の充電インフラの設置にかかる初期費用を大幅にセーブする。同インフラの導入には、ノウハウを持つ電気工事会社との連携が必須といえる。EV充電設備自体の開発は進んでも、全国規模で迅速に工事を進めてゆくには、電気工事会社とのネットワーク構築が重要だが、これまでは、全国の電気工事ネットワークそのものが構築できていなかった。Terra Moters㈱が大手損害保険会社と連携し構築したネットワークには、現在647社の電気工事会社が参加しているとのことだ。EV用の充電インフラ普及のため電気工事ネットワークを提供する、Terra Moters㈱(資本金:1億円、本社:東京都千代田区)は、電気自動車向け充電インフラの構築の他、EV2輪・3輪の開発から販売までをカバーし、日本とインドを拠点に、日本、南アジア、東南アジア圏におけるモビリティ・プラットフォームを実現し、EV(電気自動車)の社会実装に貢献するとしている。日本では、諸外国に比べEVの普及の増加が緩やかである。政府の助成金導入や、環境に配慮する意識の向上から、EV購入を希望するユーザーは増加しているものの、購入に踏み切れないとの状況がある。新車購入時にドライバーのEV購入を踏みとどまらせる理由の一つには、充電に時間を要する点が挙がる。同社ホームページによれば、走行距離約100㎞に対し、20分の充電が必要になると言われ、ユーザーにEVを思いとどまらせる要因となっている。また、EV充電スポットの不足もEVを普及させる上で、障壁となっている。特に地方などに遠出した際、高速などを利用し、走行距離が長くなる場合など、充電スポットの密度が薄い状態であることも、ドライバーの心理的な負担となっていることも否めない。あるいは、自宅に充電装置を設置する場合、設置の意思決定に関する自由度は高いが、集合住宅(マンションやアパート、テラスハウス、タウンハウスなどの共同住宅や長屋を含む)になると、EV利用者や購入希望者は、EV充電設備の設置を望むが、ガソリン車の利用者には不要な設備であるため多いため、設置のための意思決定自体、或いは導入後の費用負担などの調整に時間を要するケースも多いと聞く。この結果として、集合住宅における充電設備の不足も課題の一つとなっている。EVの現在のバッテリー容量では仕事とプライベートで毎日車を利用するユーザーにとって、充電頻度は4日に1回程度となり、ガソリン車に比べ、補給頻度が高いことなどもネックとされている。他方、集合住宅などにおける管理組合側でも、充電設備の導入費が50万円~150万円と効果であることや、助成金の申請が煩雑である点や、先に挙げた管理組合内での合意の形成に時間がかかる点、導入後の運用負担が大きい(運用費用を受益者に負担する仕組みへの移行が出来ないなど)点などが、EV用充電設備の導入を妨げる要因となっている。Terra Moters㈱の「Terra Charge」では、集合住宅に住んでいて、充電設備がなく困っているユーザー向けには、専用モバイルアプリを提供し、最寄りの充電スポットの検索機能を提供したり、アプリ上から充電の開始や充電の途中での終了、充電終了後の決済までをカバーできる。また、集合住宅を管理、導入費用の合意形成に困っている管理組合向けには、EV重電機器の購入費用を軽減する助成金サポートを行うとともに、設備費+工事費をTerra Moters㈱が負担、実質無料での導入を可能としている。合意形成が出来た後は、EV充電器へIoT機器を設置、専用アプリでクラウド管理し、ユーザーの支払い管理までをサポートする。同社による現地調査後に、見積りも作成される。設置工事は、管理組合から駐車場での充電設備の設置を同社が請け負い、同社のEV充電器と、クラウド一括管理を行うためのIoT機器を設置する。充電器設置後に、居住者に専用アプリでの充電時間の予約を提供、課金を行うことも出来る。同時に管理組合では、ユーザーの利用履歴を確認することも出来るようになる。EV充電器を設置したが、受益者負担に移行できず困っているという管理組合などには、状況のヒアリング(EV充電器の設置台数、利用状況など)の後、受益者負担にスムーズに移行できるプランを提案、理事会などで合意形成後、同社がIoT機器を無料設置し、居住者にはアプリを通じて使用料を直接決済するなどのサービスを提供している。Terra Moters㈱の「Terra Charge」は発表から2週間程度とのことだが、全国の大手マンション管理会社やマンション管理組合より、多数の問い合わせが来ているとのこと。現在、EVの充電機器設置の問題を抱える集合住宅関係者の多さ、充電機器の設置を望むユーザーの多さを物語る反響と言えよう。今後の同社の活躍に期待したい。